「うおおおおおおっ」
朝方。部屋の惨状と昨日のことを思い出すと、ヴィータは思い切り頭を抱える。
飲み過ぎた。普段飲まないくせに、明らかに飲み過ぎた。二日酔いはないが、それでも昨晩のことを思い出すと、恥ずかしさのあまり頭を抱えてしまった。
「なにが、ヴィータも同じ気持ちだよ。なにが、『きゃ♪』だよ。うわ、うわああぁぁぁぁっ!!」
穴があったら入ってさらに埋まってしまいたい。ヴィータは赤面したまま、何度も何度もベッドに頭を叩きつけいった。
「んん、なんか音がすごいな」
「あっ、カイズ……」
「ヴィータさん、おはようございます」
「~~~~~!!」
昨日のことを思い出すと、ヴィータの顔が真っ赤かになる。だが恥ずかしかったのは、何も自分だけではない。
ヴィータは両頬をぱんぱんと叩くと、気を静める。
「カ、カイズ、その、あのな……」
「――――ヴィータさん! すみませんでした!!」
「ふえっ!?」
突然頭を下げるカイズは、昨晩のように土下座の体勢に入る。きっと昨日のことを謝りたいのだろう。
だが何も悪いのはカイズだけではない。
「え、えっとよ。その昨日の夜はあたしも――――」
「四日前の朝のことです。その、なぜか朝起きたら、ヴィータさんがその、お、俺の……股間を握ってて。それでほんと早くなんとかしようと思ったんですけど。そ、その、ヴィータさんの手の中で出しちゃって」
「だからその話は。――――えっ?」
「本当にワザとじゃないんです。すみませんでした!」
頭を下げるカイズを見て、ヴィータは呆気にとられてしまう。いったい何を言っているのか。その話は昨晩にもう解決したはずだ。
まさか。いや、あれだけ激しい夜を過ごしながら、そんなはずはない。そう思いながらも、ヴィータはひくひくと口を動かす。
「え、えっと。昨日の夜のことは覚えてるか?」
「昨日の夜ですか。――――たしかヴィータさんがお酒を買ってきて、それで乾杯しましたよね。本当はその時にすぐに謝ろうと思ったんですけど、俺アルコールに弱くて。――――初めの一杯で酔いつぶれちゃったんですよね」
「…………はぁっ!?」
カイズはいったい何を言っているのだろうか。酔いつぶれるどころか、瓶を四本開けても飲み続けていたはずだ。
「お酒は好きだけど得意じゃない。……それって酒は飲めるけど、酒には弱いってことだったのか」
その答えがわかると、昨晩サクヤが大笑いしているであろう姿がありありと浮かぶ。ヴィータは深いため息をつくと、そんな彼女を見て、カイズがおどおどし始める。
「ご、ごめんなさいヴィータさん。俺、ほんと酷いことを」
「…………許す」
「そうですよね、許せるわけ。……えっ?」
「だから許すって言ってるだろ! だあああ、もう!! 全部全部許す! 許すからもうその話に触れるなあぁぁ!!」
「だけど、それじゃあ俺の気持ちが」
「お前の気持ちなんてもう嫌ってほどわかってるんだよ。とにかくもうこの話はおしまいだ。だから今までのことは全部忘れる。はい、おしまい。もうこの話題には触れない。わかったか!」
「は、はいっ!」
ヴィータのものすごい剣幕に押されると、カイズはコクコクと頷いてしまう。
結局昨日の恥ずかしいイチャイチャ体験を覚えているのは自分だけで。そんな恥ずかしさをずっと自分の中で引きずっていくのかと思うと、ヴィータの頭からぶしゅーっと湯気が上がる。
ヴィータはその場から立ち上がると、大股である場所に向かおうとする。
だがそこにきて、一つだけ言っておかなければいけないことを思い出した。
きっとこの言葉を口にしなければ、彼は自信をなくしたままになってしまうからだ。
もうここまできたらいくらでも恥の上塗りをしてやる。ヴィータは思い切り体を曲げると、唖然としているカイズに言い放った。
「――――カイズ、お前はすごいからな!」
「えっ、突然なんの話ですか?」
「だ、だから。――――早くも遅くもないし、回数だってすごかったし。だから変に落ち込む必要なんてないんだからな!」
「へっ、それって。――――ヴィータさん、昨日の夜って何があったんですか!!」
「知らねえよ! もうこれで本当にこの話はおしまいだからな」
「そ、そんなヴィータさーん」
追い縋ろうとするカイズを一蹴すると、再び歩き出す。
ヴィータは昨晩執拗なまでに弄くられた秘部をギュッと抑えると、替えの下着を持ちいそいそとトイレに駆け込んでいくのだった。