時系列としては『仮教導試験(後)』~『夢の中へ(前)』の間となっています。
なので、ヴィータはカイズの家でまだ暮らしてません。
いろいろ書きたいことはありますが、それはあとがきにでも~
夏のお誘い
窓から照りつける太陽。外から聞こえる蝉の鳴き声はいやでも夏の存在を示しつけてきた。
ヴィータはワンピース一枚の姿でソファーの上でぐでっと横になっており、力ない声をあげる
「あづいー。なぁー、はやてー、もう一個アイスー」
「もぉーヴィータ。そうやって今日だけで三個は食べとるよ。もう少し我慢しいやー」
「はやてだってもう少しって、何度も言ってるぞー。うあぁー、ミッドには魔法も科学もあるんだからずっと天候操作すればいいのにー」
外の景色や音によって季節を楽しむことはもちろん悪くない。だがそれでも暑いものは暑いのだ。
ヴィータはソファーの上で、ゴロゴロ、ゴロゴロと往復する。
――――ピンポーン。
その時玄関の呼び鈴が鳴る。そういえば何かを買いに行くと、先ほどシグナムとリインとアギトがどこかに出かけていた気がする。
自分はこの暑い中出かける気力もなく家に残ったが、もうそんな時間のようだ。
「はーい、ちょっと待ってなー」
はやてはエプロンをはずすと、トコトコと玄関に向かう。ヴィータはその場から動くことなく、天井を見上げた。
「えへへー、何かおみやげ買ってきてくれたかなー」
にやにやと笑みを浮かべる。そして二人分の足音が廊下から聞こえると、瞬間なにか違和感を覚えた。
(あれ、どうしてわざわざ呼び鈴を鳴らしたんだろう)
ゴロゴロしていたヴィータの体がピタリと止まる。
ソロソロとリビングの扉を見る。そして黒髪の男性と目が会うと、口を大きく開けカァーっと頬が赤くなっていった。
「こんにちわ、ヴィータさん」
「こ、こんにちわって、カ、カイズッ!?」
ヴィータは自身の恋人である男性を目の前にすると、その場から飛び上がる。
「わ、わわわっ!」
だがそんなに大きくないソファーで激しく動いたことにより、当然のごとくその場から転げ落ちていった。
「だ、大丈夫ですかヴィータさん」
「あいたたた、そ、それよりもどうしてカイズがここにいるんだよ」
「えっ、俺は今日はやてさんに呼ばれて。何かお話があるようで。あっ、これおみやげのアイスです」
「話し? そんなのあたしは聞いてないぞ」
ヴィータははやてのほうに目を向けると、彼女はやれやれと首を振る。
「今日の朝ちゃんと話したよー。だけどヴィータ暑い暑いって空返事だったんよ。シグナムもリインもアギトも今日はその買い物に行ってるしな」
「えっ、そ、そうだったっけ……」
そういわれてみれば、そんな気もしてくる。
ヴィータはカーペットから立ち上がると、カイズのほうに歩いていく。
「暑い中悪かったな。それに別におみやげなんて気にしなくてもいいのに」
「カイズ君な~、さっきまでヴィータそこのソファーで寝そべってあつい~、あつい~、はやてアイス~ってな」
「は、はやてっ! ち、ちちち、違うからな。あたしは決してそんなダラダラした生活を送ってるわけじゃなく。って、はやて笑うなよー」
家族の前では決して見せない一面をかいま見て、はやては口元に手を当てるとくすくすと笑い声をこぼす。
ヴィータは「うぅー」と照れくさい顔を見せた。
「カ、カイズ、違うからな! 違うんだからな!!」
「わ、わかりましたって。……えっと、まずこれがアイスです。あとは、えっと、その…………」
「んっ、どうした。―――――んんっ!?」
カイズの視線をたどり、自分の服を見る。
するとどうであろうか。ずっと寝っ転がっていた服はシワだらけになっており、暑いと外されたボタンは彼女の胸元を露わにしていた。
「うぅー! うぅー!!」
ヴィータはアイスの入ったビニール袋を受け取ると、頭から湯気を上げながら、冷蔵庫まで早歩きする。
(うぅー、絶対だらしのない女だって思われたー)
ヴィータは冷凍庫にアイスをしまうと、火照った顔を冷ますためにしばらくその場に止まった。
すると、静かになった室内から二人の会話が聞こえてきた。
「それではやてさん。今日はどういった話しでしょうか?」
「それはやねー。ヴィータも言うように、最近は随分と暑くなってきてるからな。今年はまだ行ってないなら、ちょっとしたお誘いをしようと思ってなー」
「と、言いますと?」
カイズのその言葉を聞くと、はやてはぐっと拳を突き上げ高らかに宣言した。
「来週の休日、我ら一家は海に向かおうと思うんよ!」
「「えっ!?」」
カイズとヴィータの声が重なりあう。
今日のはやての目的。それは一家のフレッシュタイム計画とカイズへのお誘いであった。