「おおぉぉ、さすがミッドランド一番のジェットコースターだったな。高さもあったけど、回転数がすごかったな」
「そうですね。しかしある程度飛べるようにはなりましたけど、あの速度でのマニューバーはなかなか……」
「なーに弱気になってるんだよ。お前は私を守れるくらい強くなるんだろ。だったらあれくらいで根をあげるんじゃねえよ」
「―――――はいっ!」
ヴィータとしては檄を飛したつもりだ。だがらこそ、やたら笑顔になる彼を見て、首を傾ける。
次は高さよりも回転重視のジェットコースターに乗ろう。勢い込んで走り出すヴィータ。
だがその行列に並び出すと、ハッと今回の目的を思い出した。
アトラクションを純粋に楽しんでいる場合じゃない。自分はカイズに好きだと告白しようと決意していたのだ。
先ほどまでのハイテンションがクールダウンする。ヴィータは心臓を高鳴らせながら、カイズのほうに視線を向けた。
「あ、あのよ。そういえば言いたいことがあったんだけどさ」
「はい?なんでしょうか」
「その、あのな。なんて言うか、今更これを言うのもあれなんだけど。あ、あたしはさ、その……」
チラリと視線をあげると、カイズと視線が合う。今なら行ける。そう思い口を開く。
「私はお前のことがす――――」
『それではお客様。前進をお願いします』
「えっ、お、おおっと」
アナウンスと共に動き出す列。ヴィータはその人混みに飲み込まれそうになる。
「危ないですよヴィータさん」
ヴィータに手を伸ばすと彼女の手を握る。
「お、おう、ありがとうな」
「どういたしまして。……それで、さっきは何を言おうとしてたんですか?」
「えっと、そのな……」
一度タイミングを逃してしまったからか。周りに大勢の人がいることを今更思い出すと、恥ずかしさのあまり俯いてしまう。
「な、何でもねえよ!ほら、また列が動くぞ」
「…………はい」
今日一番の弱い返事。だが頭の中が混乱状態のヴィータはそんなカイズに気を回す余裕もなく、手を離すと前に進んでしまった。
「あかん。それはあかんよヴィータ」
「一回は思い切った表情をしてましたけどねー。タイミングが悪かったとしか言えませんね」
その頃。二人よりも先に並んでいる八神一家は、双眼鏡を片手にエキサイトしていた。
「心配することはありません主。ヴィータもベルカの騎士です。こと相手に接近することなら、ほかの者に遅れはとらないでしょう」
「シグナムはその何でも戦いで考える癖をなんとかしいひんとなー」
「そうだぜ姉御。姉御は戦闘はピカイチだけど、女心と男心がわかってねえからなー」
「なっ。だったらアギト、お前には男心がわかるというのか!」
「あったりまえだぜ。何せあたしは少し前までずっとゼストの旦那と一緒にいたんだからよ。少なくとも姉御よりはわかると思うぜ」
「ぐっ、ぬぅ」
言われてみれば確かにそうだと、悔しそうに拳を握り込むシグナム。そんな彼女の肩をリインはポンと叩く。
「悔しいと思うなら、シグナムもまずはおしゃれの勉強をしましょう。今度リインが一緒についていきますから」
「す、すまない」
三人よれば姦しいというが、総勢五人の女子トークは止まるところを知らない。
そんななか。頭に耳飾りをつけ、おみやげを六袋持ち、さらにポップコーンやチェロスなどの大量のお菓子を持ったザフィーラが悲しそう目を五人に向ける。
「…………主。言われたものを買ってきたのですが」
「あっ、ザフィーラ遅かったなー。でも次でアトラクション乗る番やから、もうしばらく持っててやー」
「主、どうやら私たちの番のようです」
「それじゃあ私ははやてちゃんの隣に座ろうかなー」
「はやてちゃんの隣はリインのものです」
「だったら姉御はあたしと乗ろうぜ」
「ああ、そうするとしよう」
わいわい、がやがやとアトラクションに乗り込む五人。そんな彼女たちを列の外で見ていたザフィーラは、その拳を悲しく震わせる。
「テエオォォォォォォッ!!」
そんな彼の悲しみの叫び。だがその声に今のヴィータ達が反応できるはずもなかった。