照りつく太陽はいつものように容赦がないが、海にいるからかその暑ささえどこか心地よかった。
ヴィータはポニーテールを左右に揺らすと、のろいウサギがついたパラソルを見つけた。
「場所取りありがとうなー」
ヴィータは右手をブンブンと振ると、ちょうどビニールシートを敷き終えたカイズと目があった。
「ヴィータさん、早かったですね」
「みんなが逆に時間かかってるんだよ。それにリインのやつは何かコソコソしてたみたいだし」
それに付き合うかのように、シグナムもやたら行動が鈍かった気がする。だがそんなことはどうでもいい。ヴィータはシートに座るカイズ(とついでにザフィーラ)の前に立つ。
彼女は腰の後ろで、自身の手首を握ると上半身を曲げカイズの目をのぞき込んだ。
「なっ、なっ、どうかな」
「いやー、ここらへんって結構穴場なんですね。他のビーチより人がゴミゴミしてませんし」
「えっ、あっ、この場所はハラオウン一家に教えてもらって。――――いや、そうじゃなくてだな。えっといま着てるこの」
「いやー、でも今日は晴れてよかったですね。絶好の行楽日よりですよ」
「えっ、おおぉ……」
何だろう。なぜか話しが全くかみ合わない。
いや、それどころかカイズの視線はどこか明後日の方向を向いてしまっている。
それはまるでヴィータの姿など見ていないかのようだった。
ヴィータはカイズの視線の先をちらりと見る。するとそこには自分以外の女性陣が歩いてきていた。
「いやー、ほんまにありがとうなカイズ君」
「ザフィーラもありがとうねー」
麦藁のウエスタンハットをかぶり、青いビキニに身を包んだはやて。その隣には自身のパーソナルカラーである緑のビキニに身を包んだシャマルがいた。
二人が歩く度に上下に揺れるそれは、ヴィータの手には絶対に届かないものだ。
彼女たちがきただけで、海岸のざわめきが三割増しになった気がする。そんな彼女達をカイズが見てしまうことはある意味仕方のないことかもしれない。
(…………ベッドの下にあったのも、おっぱいが大きなやつばっかりだったしな)
だとしても、彼女が目の前にいるのに他の女性を見るとはどういうことであろうか。
ヴィータはジト目でカイズを見る。
――――オオォォォォッ!!
「ひゃ、ひゃい!」
ビーチに沸き立つ突然の声に、思わず変な声がでてしまう。いったい何があったんだ。男達の視線が集まるその後ろを見ると、そこにはシグナムと。――――アインスがいた。
「や、やはりこの水着は、ちょっと布地が……」
「あはははー、ここまできたら観念するですよシグナム」
「そうだぜ姉御。女ならバシッと決めていこうぜ」
満面の笑みを浮かべシグナムを引きずるアギトとリイン、だが彼女はリインであってもちろんアインスではない。
だがシグナムと同等のそのボディラインは、完全に大人のそれであった。
さらにビーチが騒ぎたつのは、巨乳の三人の水着姿にあった。
シグナムの水着は去年までの飾り気のない競泳用のそれとは違い、白を基調としたビキニだ。アギトはそれに対比するように黒のビキニを身にまとっている。
リインの水着はビキニよりは布地が多い。だがどう表現するべきか。一番分かりやすい表現とすれば、やたら胸と腰とお腹まわりが開いたワンピース水着といったところだろう。
大人っぽい水着を天真爛漫に着こなすリイン。子悪魔的な表情が印象的なアギトのビキニ姿に、恥ずかしがる気の強そうなシグナムの姿。さらに前にいるはやてとシャマルの姿も加わり、このビーチにおける最強集団が完成したと言ってもいいだろう。
ヴィータはあんぐりと口を開く。だがハッと意識を取り戻すと、リインの元にズカズカと歩いていった。
「な、何でそんな姿してるんだよ」
「ふふーん、今年のリインは去年のリインとは違うのです。もうお子さま枠として蚊帳の外なのは嫌なのですよ」
「わざわざ自分達から問題増やしてどうするんだよ!」
「まあいいじゃねえか、ヴィータの姉御。今年はボディーガードも増えたことだしな」
「そ、そういう問題じゃなくてよ」
これではお子さまなのは自分一人だけではないか。
ヴィータが言わんとしていることは、もちろんリインには伝わっているようだ。にやにやとヴィータの姿を見ると、その頭を撫でていった。
そんななか、オズオズとシグナムが手を上げる。
「わ、私は恥ずかしいからやめろと言ったんだぞ。だが買ったはずの水着がいつの間にかすり替えられてて、これしかなくてだな」
「…………わかってる。シグナムは被害者だってことは」
だがわかっていても、いまある現実は変わらない。
はやて達一行は、パラソルの下に座ると一息ついた。
カイズは彼女達の姿を見ると、満面の笑みで答える。
「いやいや、皆さんお綺麗ですね。これはボディーガードしがいがありますよ」
「ありがとうなーカイズ君」
「…………すまないカイズ」
はやて、シグナムを筆頭に誉められて満更でもない面々は次々に感謝の意を述べる。
そんな彼の姿を見て、ヴィータはぷくっと頬を膨らませた。
(あたしには可愛いの一言もなかったくせにっ!)
やはり口では何と言おうと、男という者は大きな胸が好きなんだ。そうに違いない。
ヴィータはイライラとした気持ちを募らせると、プイッとそっぽ向いてしまうのだった。