ビーチの端の端。人影の少ない岩場地帯までくると、ヴィータはほっと一息ついた。
カイズは青ざめた顔でヴィータの体をぺたぺた触ると、心配そうに声を上げる。
「大丈夫でしたかヴィータさん。あのクズどもに何もされてないですか」
「だ、大丈夫だって。それにあたしがあんなひょろい男にやられると思うか?」
「そ、それはそうなんですけど。その、心配で心配で」
だがヴィータの言葉を聞いてようやく安心できたのだろう。カイズはほっと胸をなで下ろす。
きっと言葉だけではなく、本当に心配してくれたのだろう。行動でそれがわかると、ヴィータの心のもやもやが少し晴れた気がした。
「すみません、本当はすぐにでも追いかけたかったんですけど。さすがにあんなことがあった後で、二人を置いていけなくて」
「……いや。来てくれて、その、嬉しかった」
カイズはこんなにも自分のことを思ってくれているのに、どうして自分はあんな子供っぽいことをしてしまったのだろうか。
ヴィータは頭を抱えながらちらりとカイズを見る。すると、カイズは岩場のほうを見ていた。
そこには人もいないし、何かがあるわけでもない。だがこちらに視線を向けないことに、ヴィータはイライラが蘇る。
「そうだよ。それのせいで、あたしは今日イライラしてたんだよ」
「な、何ですかそれって」
「お前、今日ずっとあたしのほうをみないようにしてただろう。…………まあ理由はわかるけど、そういうの結構気にするんだからな」
「えっ!? き、気づいてたんですか」
「まああからさまだったからな」
ほかの人の水着を見るのはもう仕方ないが、それでもこちらを見なさすぎではないか。
(……ん、あれ? でもあの岩場には誰もいないよな??)
先ほどとは何かが違う今の状況。カイズは恥ずかしそうに口を閉じると、ヴィータのことをギュッと抱きしめてきた。
「へっ、どうしたんだいきなりって。あっ、当たってる。固いのがせ、背中に」
「すみません、これでもヴィータさんのこと見ないようにしてずっと我慢してたんですけど。でもこんなどこでも発情するような男じゃ、ヴィータさんだって呆れちゃいますよね」
「は、発情って、えっ、へっ!?」
腰を動かされると、塗れた水着越しに熱いものが押しつけられる。ヴィータは「えっ、えっ」と戸惑いながらカイズの方を見た。
「な、何でこんなことになってるんだよ」
「それはヴィータさんの考え通りですよ。……というか、そのピンクの水着すごく似合ってます。ヒラヒラの部分なんて、下は当たり前のように水着なのにちらちら見えるたびに興奮しちゃって。それにポニーテールは不意打ちです。初めて見た瞬間から、その、もう、こんな感じになっちゃって」
「そ、それじゃああたしのほうをずっと見なかったのって」
「もちろんこんな公共の場でこんな状態でいるわけにはいかないからですよ。……って、ヴィータさん俺がずっとムラムラしてたから怒ってたんですよね」
思いも寄らないカイズの回答に、今度はヴィータの顔が真っ赤になる。
(そ、それじゃあカイズはずっとあたしの水着姿に興奮してて。……そういえば、海にあがるときも先に行っててくれって言ってたよな)
だがそれでもほかの女性に目をやっていたことには事実だ。ヴィータは心を落ち着かせると、カイズに質問する。
「だ、だけどカイズはずっとうちのみんなのこと見てたよな。あたしのことを差し引いても、それはどうしてだよ」
「そりゃヴィータさんの家族ですよ。皆さんに粗相がないようにしてましたし、えっと。……気の利く姿をアピールして、心証を良くしようと思ってた気持ちは少なからずありました。……せっかくヴィータさんとの交際を認めてもらってるわけですし」
「そ、そんな理由だったのか…………」
全てのピースが繋がると、ヴィータの中で急激に羞恥心がこみ上げていく。つまり全ては自分の勘違いで、カイズに対しての怒りは全て見当違いなものだったのだ。
(カイズはあたしのことしか考えてなかったのに。……ごめん、カイズ)
だが今更全て勘違いだったとは口に出せず、ヴィータはその場で俯いてしまう。カイズはヴィータから体を離すと、海水パンツのポケットからデバイスを取り出した。
「それじゃあはやてさん達に連絡しちゃいますね。それから少しだけ二人でどこか回りましょうか」
カイズはデバイスを操作する。だがそんな平常心の彼とは違い、目の前の海水パンツの中ははちきれんばかりに大きくなったままだった。
「あっ、うっ…………」
ヴィータは世話しなく左右を見渡す。そして誰もいないことをこれでもかと確認した。
「……カイズには心配かけたから。だからこれはその恩返しな」
「へっ、ヴィータさん? ヴィータさん!?」
ズルズルと海水パンツが下ろされる。ぐいぐいとヴィータが何度もそれを引っ張ると、最後には弾かれるようにカイズのモノがブルンと飛び出してきた。
エッチな行為にはまだあまり慣れてはいない。だけど今のこの気持ちを伝えるにはこれしかないと、いきり立ったそれに口を添えていく。
「あんっ、んちゅ」
「ヴィータさん、えっ、何で突然!?」
『はいはーい、カイズ君ヴィータ見つかったんかなー』
サウンドオンリーではやてとの会話が繋がる。カイズは欲望の先に刺激を感じながらも、何とか平常心を保つ。
「あ、はい、それで少しだけ、はぁ、二人の時間をいただけたらと」
『それはもちろん大丈夫やけど。息苦しそうやけどどうしたーん?』
「そのちょっと全力で走りすぎて息切れが、あぅ、いえ、ちょっと休まないとだめかもしれません」
「んー、んんっちゅ、ん、ん、んんー」
カイズが平常心を保とうとすればするほど、ヴィータの攻めは激しいものになる。小さな口を思い切り開くと、カイズの先っぽがすっぽりと口にふくまれる。
「ああう、す、すみません、それじゃあ切りますね」
『ず、随分と疲れてるようやねー。ゆっくりしてきてなー』
念話が切られると、カイズは「ううっ」とヴィータのことを見た。
「あ、怪しまれたらどうするんですか」
「だってカイズのここすげえキツそうだったからよー」
「それでもこんな公共の場で」
「だったらもうやめてもいいのかー」
ヴィータはわざと口をすぼめると、吸いつきながらカイズのそれから口を離していく。
ヴィータは座ったままの体勢で小首を傾げると、じっとカイズのことを見上げていった。
その間にも、中途半端な快楽にカイズのものはビクビクと上下運動を続ける。
カイズは恥ずかしそうに口元を押さえると、ボソボソと声を出す。
「…………お願いします」
「んー、何か言ったかー」
ヴィータは意地の悪い笑みを浮かべると、カイズは頭のてっぺんまで真っ赤にしながら声を上げる。
「お願いです。その、最後までしてください」
「んー、全くしょうがないなーカイズは♪ それじゃあ、あんむ♪♪」
再び快楽に包まれたカイズの欲望が、口の中でひくひくと動く。ヴィータは再び口をすぼめると、根本から流れるようにそれを舐めていった。
「海に入ったから、いつもよりしょっぱいな」
「す、すみません。嫌になりましたか?」
「ううん。――――大好き♪」
ヴィータは再びそれを口に含むと、何度も何度も彼の欲望を往復していく。カイズはできるだけうめき声を抑えながらも、岩に置かれた手に力が増すのが見て取れた。
それに従いカイズの体が小刻みに震えるのがわかる。ヴィータは吸引する力をさらに強めると、それが沸き上がるのを喉で感じた。
「うっ、あっ、くっ!」
ひと際激しくカイズの欲望が跳ね上がる。
ヴィータはドクン、ドクンと何度も何度も熱い液体が喉にぶつかるのを感じた。
「んん、んっく、ごくっ」
ヴィータはそれを真っ直ぐに受け止めると、一滴もこぼさないようにと喉を鳴らしていくのだった。