再びコートを羽織ると二人は雪が降る町中を歩いていく。気候がそう設定されているからか、あたりはもう薄暗くなっており、あたりに配置された色とりどりの光にヴィータは目を輝かせた。
「すごいな。この街全体がクリスマスツリーみたいだな」
「クリスマスツリー? クリスマスって、ヴィータさんの住んでた世界の行事でしたよね」
「あっ、そうか。カイズも一応あっちのクリスマスは見てるんだもんな。――――そうだな。雪も降ってるし、街も綺麗だし。本当にクリスマスみたいだな。ほら、見てみろよ。あっちでピエロがすごい数のジャグリングしてるぞ」
ヴィータはカイズの腕を抱きしめると、ぐいぐいと町中にとけ込んでいく。決してカイズの気を使ってはしゃいでいるのではない。
カイズといられるだけで、目に見えるもの全てが輝いて見えると、そんな無邪気なヴィータを見てると、カイズもまた満面の笑みを見せた。
改めて見て回れば、さすがは万年予約殺到の娯楽エリアである。
ただ町中を歩いているだけでも、客を楽しませるものは数多く存在し、巨大な雪だるまや、旅行者へのサービス、さらに無料でもらえるおみあげなど料金以上の充実感がそこには存在してた。
それにある程度割高の旅行プランで、普段が常夏であるこのエリアが雪であることが関係しているのだろう。
時空艇のホームで見たとおり、噂ほど観光客で街がごった返していない。だからこそどの施設もゆっくりと見て回ることができた。
そして街の中をある程度楽しむと、二人は約束の海へと足を運んでいた。
ヴィータは砂浜に踏み込むと、少しだけ体を震わせた。
「あはは、やっぱり海はある程度寒いな」
そんなヴィータの背中にカイズはゆっくりと近づく。そしてコートのボタンをはずすと、抱きしめるように彼女を包み込んでいった。
「これで、暖かくなりましたか」
「…………んーんー」
「えっ!?」
ヴィータの言葉に思わずうわずった声があがる。そんなカイズの反応を見て、ヴィータは少し頬を染めながら続きを口にした。
「まだ寒いから。……もっと、ギュッとして」
「あっ。……はい」
カイズは控えめにしていた腕に少し力を込める。細く柔らかいヴィータの体を抱きしめると、彼女は嬉しそうに笑みをこぼした。
二人は互いの体温を感じながら、じっと海を眺めていた。静かに行き来する波の音。電灯が反射し、それ自身が輝いているように見える水面。そしてゆったりと降りつもる雪。
その全てが自分達の今を祝福しているような気がして。今この瞬間を彼と一緒にいることができて幸せだとヴィータは彼の手を小さな両手で包み込む。
「ここまで。……本当に長かったな」
「期間的には半年でしたけど。……それでも本当に長い半年だったと思いますね」
「ごめんな。あたし、その、あんまり素直じゃなくて。カイズにいっぱい迷惑かけちゃって」
「迷惑だなんて思ったことないですよ。それに俺、ヴィータさんの素直になりづらいところも、恥ずかしくて照れてる顔も、怒ってる顔も、笑ってる顔も、全部、全部大好きですから。だから、その、毎日幸せでした」
「なんだよそれ。……でもまぁ、あたしもそうだな。カイズのことを好きになって、カイズと一緒になることができて。……毎日幸せでいっぱいだった」
何度も、何度でも思う。闇の書のプログラムとして生まれた自分が、こんな幸せになれるなど。それもはやて以外の誰かをこんなにも愛することなどずっとありえないと思っていた。
きっとこの感情は自分が生きていく中で必要のなかった感情なのかもしれない。だけど、カイズと出会いその感情はなくてはならないものに変わっていった。
だからこそ口にしようと思った。きっと言葉にしなくても彼はわかってくれるはずだ。だけどしっかりと言葉にして彼に伝えたかったのだ。
ヴィータは抱きしめられたコートの中で、もぞもぞと反転する。上目遣いでカイズのことを見ると、その気持ちを口にした。
「――――愛してる。あたしは何があっても、ずっとずっとカイズのことを愛してるから」
「俺だってずっとずっと、ずーっと愛してますよ。……ヴィータさんが愛想尽かしたって、俺がおじいちゃんになったって、ずっとイチャイチャしますからね」
その言葉を聞くと、ヴィータはカイズの首に手を回す。カイズは彼女の体を抱きしめると、そのまま抱き上げていく。
そしてゆっくりと、ゆっくりと唇を重ねていくのだった。