後篇
◇◆◇◆
制服はハンガーに戻したが、ヴィータは結局ワイシャツのまま夕飯の準備をしていた。
いや、それは準備と言うにはおこがましいだろ。帰り際にコンビニで買ってきたお弁当を温めているだけなのだから。
「………………おいしくねえな」
だが味気ないのはお弁当のせいではない。いつも隣で笑ってくれている彼がいないから。
彼が隣にいてくれれば半額の総菜だって、おにぎり一個だって心の底からおいしいと言えたはずだ。
自分にとってカイズがどれだけ大きい存在になっているかは、とっくに気づいているつもりだ。
だがその大きな存在が隣にいないだけで、ここまで覇気がでないとは思わなかった。
しかしそれは仕方のないことだ。彼に告白され、こんな長い期間彼がいなかったのは初めてのことなのだから。
やがてお弁当を食べ終えると、お風呂の準備をする。ヴィータはその間なにもすることがないと、ベッドに身を預けていった。
「……一人じゃでかすぎるんだよ。このベッドは」
初めてカイズと同棲を始めた頃。もともと一人用のこのベッドには悪戦苦闘したものだ。だが彼がデスイーターとの戦いで眠りにつけなくなり、そんな彼のためにと一緒に寝ないという選択肢は存在しなかった。
最終的に「もっとイチャイチャしましょう!」ということで決着がついた。カイズは執拗なまでに、自分を抱きしめてきて、そんな彼の温もりが恥ずかしいながらも嬉しかったのを覚えている。
「でもあいつ、一緒に寝るといつもあそこおっきくしてたな。固いのが太股とかお尻にぐいぐい突きつけられて」
だがそうだとしても、カイズは無理矢理体を求めるようなことはしなかった。
『俺はヴィータさんと抱き合ってるだけで幸せですから』
それはきっと彼の本音だったのだろう。だがヴィータを求める欲求もまた、偽物ではなかったはずだ。
ヴィータは彼の固さを思い出しながら、自分の人差し指をじっと見つめた。
「これよりも全然大きいのが、あ、あたしのなかに入ったんだよな」
正直初体験を終えた今でも信じられない。いや、体験を終えているからこそ信じられないのかもしれない。
今でもあの時の痛みは覚えている。だが同時に彼と深く繋がった嬉しさも覚えていた。
「こうやって、ここにカイズのが入ったんだよな」
ヴィータは人差し指をスッと自分の秘部に運ぶと、それを優しく添えた。
―――――ビリリ!
「ひゃ、ひゃうっ!?」
ヴィータの指が触れた瞬間、彼女の体に小さな電流が走る。この感じは、彼との行為で何度も感じたことのあるものだ。
ヴィータはビクリと体を動かす。そして体が落ち着くと、頭に疑問符を浮かべた。
「あ、あれ。どうしていまビクってなったんだろう。……自分で触っただけなのに」
その現象はヴィータにとって初めてのことだった。確かにカイズに秘部をイジられて、声を上げてしまうことや体にビリビリが走ることはいつものことだ。
だが性知識がほぼ皆無の彼女にとって、自身で触れることで快感を得たのは初めてのことなのだ。
「一度、興味本位で触ったことはあるけど。……その時には特になにもなかったよな。だから誰かに触られたらって思ってたけど。……何か違うのか?」
ヴィータは気になって先ほどのように指で触れてみる。だが自分の思ったように、先ほどの快感を得ることはできなかった。
「さっきと何が違うんだ。さっきだって同じように。――――あっ」
そこでヴィータはある違いに気づいた。それは動作のことではない。
ヴィータはカァーっと頬を赤くすると、秘部の指をくいっと動かした。
「――――カイズ。カイズ、カイズ!」
その指を自分のものとは思わず。まるで彼の指が自分を乱しているように声を上げる。
「カイズ、もっと、もっと動かして。あっ、ひゃうっ!」
カイズのことを想い指を動かすと、先ほどの快感と同じものが体を走り抜ける。
いや、理由がわかったからか、その波は先ほどよりも大きかった。
「カイズ、寂しいよ。カイズ、カイズ」
――――プルルルル、プルルルル。
「ひゃ、ひゃあっ!?」
突然のコール音に、ヴィータの体が飛び上がってしまう。いったい誰から電話だろうか。
ヴィータはそっとその名前を覗く。
「カ、カイズだ。カイズから電話が来てる」
ヴィータは電話に手を伸ばすと、それを耳元に当てる。だがもう片方の手は自身の割れ目から離すことはなく、着信を受信した。
『もしもし、ヴィータさんですか!』
「お、おう。どうしたんだいきなり?」
『いやー、ヴィータさんとずっと会えなくて、頭がどうかしそうになっちゃいまして。それでとりあえずは電話と思いまして』
電話越しにカイズの声を聞くと、ヴィータは感情が高ぶるのがわかる。ヴィータはいけないとは思いつつも、秘部に添えた指をクチュリと動かした。
『どうですか。ヴィータさんも俺に会えなくて、めちゃくちゃ寂しいですよね。なんて、はは』
なに馬鹿なこと言ってるんだよ。普段の彼女なら、そう軽口を叩いたかもしれない。
だが今の彼女は違った。カイズと一週間離れただけで、胸にぽっかりと穴があいてしまい。そしてそんな気持ちを垂れ流すことに、彼女はもう羞恥を持っていなかった。
「…………寂しい」
『えっ。……ヴィータさん?』
「カイズに会えなくてすごく寂しい。今までカイズがずっと隣にいてくれたから気づかなかったけど。……カイズが近くにいてくれないと、寂しくて。……あたしもどうかしそうだ」
『ヴィ、ヴィータさん! ヴィータさん! ヴィータさん!!!』
いったい電話越しで彼はどんな顔をしているのだろうか。だが渇望するような彼の声を聞くと、秘部をイジる指にさらに力がこもった。
いつのまにこんなに濡れたのだろう。
動かすたびに、クチュクチュ水音が鳴るのが彼には聞こえているのだろうか。
ヴィータはいけないと思いつつも、指を動かすのをやめることができなくなってしまった。
『大丈夫ですよヴィータさん! 明日は教導自体がお休みなので、ヴィータさんとデートだって何だってできます!』
「だ、だけどよ。それじゃあカイズの負担になるんじゃねえのか」
『さっきも言いましたよね。俺もヴィータさんと会えなくて頭がどうかしそうだって。いいんですよ休日くらい。そのほうが絶対に効率もいいと思うので』
「カ、カイズゥー」
ああ、何自分は情けない声をあげているのだろうか。だが久しぶりにカイズに会えると思うと、自然と声は止まらなかった。
そして同時に彼を求める指もその激しさを増した。
「そ、それじゃあ、明日、アッ、ど、どこで待ち合わせ、んんー」
『ど、どうしたんですかヴィータさん? なんか声の調子が変ですけど』
「い、いや、なんでもねえ。そ、それでどこで、アアッ!」
いけない。いけない。こんなことしてはいけない。
頭ではそう思っていても、久しぶりに聞く彼の声が耳元に届くたびに、指の動きは激しさを増すばかりだった。
『ヴィータさん、本当に大丈夫ですかヴィータさん!』
ヴィータさん、ヴィータさんと名前を呼ばれるたびに、欲求がどんどん高まっていくのがわかる。
ヴィータは上がりきらない快感にうずうずすると、割れ目の中に初めて指を挿入した。
まだ奥までいれる勇気はないが、膣をかき混ぜ始めるとその快楽は先ほどの比ではない。
「カイズ、カイズ、カイズ!」
『だ、大丈夫ですかヴィータさん! 待っててください』
快楽がドンドンと上り詰めるのがわかる。
この快感は覚えている。このままいじり続けたら、自分は彼の声だけで。
「あっ、カイズ。い、いくぅ……」
『大丈夫です。すぐ行きますからね!』
「ふわぁ?」
――――ガチャン、バンッ!!
鍵が開けられると、勢いよく扉が開くのがわかる。
『大丈夫ですかヴィータさん!!』
「大丈夫ですかヴィータさん!!」
目の前の彼と電話の声が同じ言葉を発する。
ヴィータは目を点にすると、そんな彼と対面した。
「えっ、やっ、う、嘘。だめ、そんな」
だがどんなに抗おうとも、爆発寸前の欲求を止めることはもうできなかった。
「み、見ないで。カイズ、カイズ、あ、やああぁぁぁっ!!」
ギュッと目を閉じながら、ヴィータの体は何度も何度も痙攣する。自分でいじることが初めてだった彼女は、その快感を抑制することが少しもできず、ただ乱れた姿を彼にさらし続けた。
そんな普段見ることのない、彼女の行為に目が離せず。カイズはゴクリと唾を飲み込みながら、ヴィータを見つめ続けていた。
ビクッ、ビクリと快楽の爆発がやがて収まると、ヴィータはうっすらと目を開く。だがそこには幻ではなく彼がいるのがわかると、「ううぅー」っと目に涙を浮かべた。
「み、見るなって。見るなっていったのに。バカ、バカ、バカァー」
力のこもっていない罵倒を吐き出すと、ヴィータはぐしぐしと涙を擦る。そして合わせる顔がないと、布団を頭にかぶった。
「…………幻滅したよな。あたしが、こんなエッチな女で」
「げ、幻滅なんてしてませんよ!」
「嘘だ! 本当は心の中では呆れてるんだろう!!」
「そんなことありませんって!」
カイズは布団に手をかけると、何とかそれを剥がそうとする。だがヴィータは頑なにそれを離そうとはしない。
何度かそんな攻防を繰り返すと、カイズは布団から手を離した。
「俺はヴィータさんに幻滅なんてしてませんよ。むしろ俺のことをずっと思っててくれて。性知識がほとんどないヴィータさんが、俺のことを思ってこんなことをしてくれて嬉しく思ってすらいます!!」
「……だけどはしたないって思ってるだろう」
「思ってませんって。でもヴィータさんが俺に見られて傷ついたっていうなら。……俺も同じことをします」
カイズはそう言うと、カチャカチャと金属音が部屋に響く。そしてバサリと何かが床に落ちた音が聞こえた。
「カ、カイズ?」
ヴィータは布団からちらりと目を覗かせる。すると、そこにそそり立つ彼自身を見て、「ひゃあ」と声を漏らした。
「カ、カイズ何してるんだよ!」
「何って、ヴィータさんと同じことですよ。……もう開き直りますけど、ヴィータさんは決してはしたなくありません。――――といいますか、ヴィータさんが許してくれるなら、俺だってやってみたいです」
カイズは正直な気持ちを口にすると、自身の怒頂を握りしめる。そしてその手をゆっくりと上下にシゴき始めた。
「お、俺だってヴィータさんと会えなくてずっとムラムラしてたんです。正直、ヴィータさんの声を聞いただけで、ズボンの中がやばかったです」
「カ、カイズ……」
ヴィータは布団から顔を出すと、ベッドに横になりながら彼のを見上げる。
そんな彼女の視線にさらに興奮したのか、カイズのモノはさらに逞しさを増した。
「ヴィータさん。俺の名前を呼んでください。さっき俺がそうしたみたいに、何度も何度も名前を呼んでください!」
「カイズ。……カイズ、カイズ、カイズ、カイズ!」
ヴィータが彼を呼ぶたびに、それに応えるようにしごきが早くなる。カイズはヴィータの声と視線を感じながらも、一週間ぶりの膿が高まり出すのを感じた。
「ヴィータさん、ヴィータさん。あっ、あぅ」
カイズはティッシュに手を伸ばすと、乱暴に数枚取る。そして亀頭にそれを押さえつけると、ブルッと体を震わせていった。
ティッシュがジワリと濡れていくのが見て取れる。カイズがティッシュを亀頭から離すと、彼のモノがヴィータの目の前でだらんお辞儀をした。
「ほら、俺だってヴィータさんの声だけでこんな興奮するわけですし」
「…………ぷっ、あっはっは。何だよそれ。そんな変な説得ありかよ」
だがそれに笑い、それで安心してしまっているのだから、十分にありなのだろう。
ヴィータはいい意味で、あまりにもバカらしくお腹を抱え笑い出す。
カイズはそんな彼女を見て、照れ笑いを浮かべながら頬を掻いた。
「あっ、ほらカイズ。まだここ汚れてるぞー。もう、しょうがねえなー」
ヴィータは鈴口にじわりと浮かぶ精液を見ると、ティッシュを二枚取る。それを綺麗に畳むと、ポンポンとそれをふき取っていった。
「ほら、綺麗になりまちたよー。なーんてな。ひゃっ!?」
ヴィータは突然抱きしめられると、可愛らしい声をあげてしまう。カイズはそのままヴィータベッドに押し倒すと、堅さを取り戻したそれをぐりぐりと彼女に押し当てた。
「や、やっぱり俺のほうが変態ですよ。その、また……」
「ずっと教導実習で忙しかったんだもんな。それにカイズには我慢させてばっかりだし。……だ、だけどよ。まだその本番は怖くて。だからその」
「大丈夫です。俺はヴィータさんがいるだけで、もう何度でもイケますから」
「そ、それはそれでどうかと思うぞ」
と言いながらも、自分の好きな男性に言われると悪い気はしなかった。
ヴィータはそっと手を伸ばすと、彼の猛りに手を伸ばし、ゆっくり、ゆっくりとシゴき始めていくのだった。
◇◆◇◆
次の日の休日。午前いっぱいはゆっくり寝た二人は、午後からショッピングモールにでかけていた。
ヴィータはノースリーブの赤いワンピースで外にでている。今日は気分を変え、三つ編みをほどくと、黒い大きなリボンでポニーテールを作っていた。
「えへへへー」
「ヴィータさん、ものすごくご機嫌ですね」
「カイズはご機嫌じゃないのか?」
「――――もちろん最高に上機嫌ですよ!!」
腕に抱きつくヴィータをさらに引き寄せると、二人は眩しいぐらいの笑みを浮かべる。
今日はこれからサクヤの旦那さんの店で、遅めのお昼の予定だ。
二人は身長に差があるからか、歩き辛そうであったが、その辛ささえ幸せに変換していた。
そんなラブラブな二人を見つけると、目の前の彼女はまるで自分のことのように頬を赤くする。
「ん、んん。奇遇だなヴィータ」
「おっ、シグナムじゃねえか。今日休みだったんだな。ってかその荷物は何だ?」
ピンクのポニーテールの女性、シグナムは両手の紙袋をもちあげると、「これか」と声を上げる。
「ちょうどトレーニング用の道具が寿命を迎えていてな。鉄アレイやミット、サポーターなどを買い込んできたところだ」
「そりゃ、色気がないことで。……まあ買い物に文句はないけど、その服装はどうにかならねえのかよ」
「服装がどうかしたのか。動きやすくていいと思うんだが」
シグナムは小首を傾げると、自らの服を見る。彼女をイメージカラーである紫の服は、上下ともジャージだった。
いや、彼女ほどの凛々しさがあればそれすらもおかしくはない。おかしくはないのだが、(外見的に)年頃の女性がそれはどうなのだろうかとも思っていた。
「シグナムよー。もうちょっと服装を気にした方がいいんじゃねえのか。まあ昔のあたしもそんなに気にしてなかったけどよ」
「そういうヴィータは随分と変わったな。――――そ、それに随分と仲むつましいようだな」
「まあなー。いろいろあったし、あたしはカイズのこと大好きだからな」
少し照れくさかったが、彼を思う気持ちに嘘偽りはないし、恥じる部分もない。ヴィータは堂々とそう言ってみせると、シグナムは「ふっ」と少し落ち着いて見せた。
「……変わるものだな」
「変わるもんなんだよ。シグナムだって誰かを好きになれば、いろいろ考え直すと思うぞ。……特に休日の繁華街をジャージで歩こうとは思わなくなるしな」
「変わらないさ。私はヴォルケンリッターの将。主のための剣だ。それに私が男にうつつを抜かすことも、そのために女らしい格好をすることも生涯ありえないことだろうしな」
「そんなこと言って。シグナムもどちらかというとあたしよりだからな。何か切っ掛けがあったら、コロッといくと思うぞー」
「まあ期待せずに待っているさ」
言葉通り期待をするつもりもないのだろう。シグナムは表情を変えることなく答える。
「おっと、それじゃああたしたちこれからお昼なんだ。そろそろ行くなシグナム」
「ああ、わかった。……そうだ。最後にカイズ君」
「えっ、あ、はい。何ですかシグナムさん」
まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのだろう。カイズは少し戸惑ったような声をあげる。
「今の二人を見ているとそう遠くない未来かもしれないな。……我ら家族で君に会いに行くときが来るかもしれない。その時はよろしく頼む」
「へっ、は、はい。こちらこそよろしくお願いします」
何とも的を射ない質問だ。だがシグナムはそれだけを伝えると、二人に背を向けてしまう。
何か、重要なことを伝えていた気がした。シグナムの目を見れば、それだけで理解はできた。
その問いかけの答えは、結婚式の前に語られる。だがそのことに今の二人が気づけるわけもなく。疑問符を浮かべながらも、頭を切り替えた。
「それじゃあサクヤさんの旦那の店に行くか。そしたらショッピングして、その後は、えっと」
「その後は二人で一緒に考えましょう。大丈夫ですって、俺、ヴィータさんと一緒だったらどこだって天国ですから」
「――――まあな。あたしもカイズと一緒ならどこでも大丈夫だ」
ヴィータは再び彼の腕に抱きつくと、上機嫌に鼻歌を口ずさむ。そんな楽しそうな彼女を見て、カイズもまた柔らかい笑みを浮かべるのだった。
一人が寂しい。彼が隣にいないことがこんなにも不安だとわかった一週間。
だけど彼が隣に帰ってくれば、そんな不安などどこかに吹き飛んでしまう。
大切な存在と気持ちを再認識した。
そんな教導実習期間の中休みの出来事だった。
あとがき
そんなわけでお久しぶりです。
今回の話は自宅通販特典のものになります。
もう結構な時間が経ったので、そろそろいいかなーということで更新に踏み切りました。
※ヴィータちゃんは男友達が少ないEX5 二人の半休と密着映画鑑賞に続きます。
https://syosetu.org/novel/5614/103.html