※この作品はR-18です。

パラダイス・ロスト Birth of UNKNOWN   作:さみに

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これで〆の予定です。前書きの予定ではそうなんです。
後書きの時にそうでなかったのなら、心の中や感想にて「終わってねぇじゃねぇか!」と突っ込んでください。
感想の方がありがたいので感想でお願いします。


培養

詩乃の胸元が鳴動する。

彼方の視線は釘付けになっている。一体誰の声なのか、それは何故胸の中から響いてくるのか?

その答えは、ほんのすぐ後にやってくるという予感をさえ伴って。

そしてそれは現実になった。

 

詩乃の変化した怪物の甲殻、胸の半分を覆っている部分の隙間から、白い液体が溢れ出す。

それは体表を流れて筋を作り、ぽたぽたと地面へ零れ落ちていく。

甲殻が剥がれ落ちるようにして、右胸を露にした。

白い液体は怪物の胸、その頂きから溢れている…母乳のようなものだろうか?

そして、先程の声も、液体を零すその腺の奥から聞こえてきているらしい。

 

――ん、は、ぁっ…♪…うま、れ…っ♪――

 

ずるり。

乳首の中から、人の両腕が現れる。乳白色の液体を纏ったそれが、乳首を押し広げ、拡張させる。

次第に、艶めかしい水音と声を伴いながら、女性の裸身が這い出てくる。

すらりとした身体、程よく実ったたわわな果実、すらりと引き締まった脚、その爪先までを吐き出し終えたところで、胸の甲殻は再び元の位置へ戻る。

怪物から這い出てきた少女は、熱に浮かされた表情で彼方を一瞥し、そして詩乃であった怪物に抱き着いた。

 

「はぁ…はぁ、あっ…うふふふ、浦澤さんったら、昨日の今日で、私のことを呼んでくれるなんて。嬉しい、嬉しいわ、浦澤さん…私達やっぱり通じ合ってるんだね…。だから大丈夫、やっと一つになれたんだから、ここからは私が浦澤さんの分も、浦澤さんの身体の一つになった私が、頑張るからね。」

 

裸身を隠すことも無く、少女は――咲本奏は瞳(・)を(・)真(・)鍮(・)色(・)に(・)輝(・)か(・)せ(・)な(・)が(・)ら(・)、(・)こ(・)う(・)言(・)っ(・)た(・)。

 

「――変、身…♪」

 

黒い紋様が身体の全てを埋め尽くす。

何も隠すものは無い、全身のありとあらゆる場所に紋様が浮かび上がってくる。

身体に纏わりついていた乳白色の液体が灰色に転じると、そのまま少女の全てを灰色にした。

 

元のスタイルはほぼそのままに、体長が二メートル半程度までに引き延ばされる。

腕、肩、腰、腹に噛みつく牙のような意匠の装飾が顕れ、そして肩を露出したドレスのような甲殻も併せて形成されていく。

袖元は開いた生物の口、内側には牙が生え揃ったような装飾、そしてそこから覗くのは女の指先。

フリルのような装飾を華美にあしらった甲殻が脚部を覆い隠すようにして引き締め、それを腰からガーターベルトさながらに提げられたベルトが固定させる。

二の腕、肘から手首までには魚のヒレに似た装飾が鈍い光と共に生え揃っていく。

顔面部には鮫が象られたヘッドギアに似た甲殻が嵌められており、側頭部や後頭部にも大口を開けた鮫の意匠が刻まれている。

そして、最後に人体で見れば子宮の上にあたる部位に三つの矢印が絡み合ったエンブレムが出現し、変化を完了させる。

 

彼方と同じく、夕刻間際で伸びた奏の影に、先程と同じ裸体の奏の姿が青白く投影される。

 

「あは、あははははは!!なれた、なれたよぉ…私も浦澤さんと同じになれたっ…!!やった、やったぁ…!これで本当に浦澤さんの一部…!」

 

「……う、ど、ど、同族の、人、なら……襲う必要、無い、ですね。あう、ぅ…。」

 

狂気と狂喜の声を上げて身を震わせる奏をよそに、彼方は残念そうな表情で呟いた。

鹿に似た怪物がシルエットを崩して白い輝きと共に元の人間、島村彼方の姿へと戻る。

だが、そ(・)の(・)隙(・)を(・)鮫(・)は(・)見(・)逃(・)さ(・)な(・)い(・)。

瞬時に地面を蹴ると、奏は彼方の両脚を、あらぬ方向にぞんざいにへし折った。

悲鳴をさえ上げさせぬままに、彼方の顔を手で掴み、口を塞いで黙らせた。

 

「お前に無くても、こっちにはあるんだよ。」

 

冷え切った語調で、奏は囁いた。怪物の顔面と、その冷酷さに、思わず彼方は凍り付く。

憎しみと恨み、怒りが湧きたち過ぎて、逆に言葉から一切の感情が消えていたからだ。

そこからはどんな予断も油断も隙も見つけられなかった。

痛みを忘れる程に、涙が引っ込む程に、その一言が強烈だった。

 

「さ、浦澤さん。今日の分だよ、私が取ったの。ちゃーんと食べて、いっぱい作らないと、ね。」

 

奏は、手の中の少女を立ち尽くしたままの詩乃の元へと運ぶ。

その言葉を聞いたのか、詩乃の腹部…表面に刻まれた紋章が白く輝くと、内側から甲殻が開いた。

中にあったのは、人間の姿の詩乃を模したレリーフだ。その両隣には何かの口が開いている。

そして、その広さはゆ(・)う(・)に(・)女(・)子(・)中(・)学(・)生(・)程(・)度(・)な(・)ら(・)一(・)人(・)は(・)入(・)り(・)き(・)る(・)程(・)に(・)、(・)広(・)か(・)っ(・)た(・)。

奏は静かに彼方をそこへ横たえさせると、最後に出られないよう念の為、両腕さえもへし折った。

悲鳴が上げられる前に、甲殻が閉じられる。

 

閉じ込められた彼方の耳に、何かの液体が注がれていくような音が聞こえた。

光も無く何も見えない空間で、それだけが聞こえた。

あっという間に、身体全てが飲み込まれてしまう。

どんなに叫んでも、何を叫んでも、もう何も解らなくなってしまった。

薄れていく意識の中で、どこか安らぎを感じたと思った。それが彼方の最後の感情だった。

 

「あはは、…あは……♪この中に入ってるんだ…私(・)と(・)同(・)じ(・)よ(・)う(・)に(・)…♪」

 

詩乃の腹部にもたれかかりながら、奏はその表面を撫でる。

先程中に収納した少女の最期を感じ取りながら。そして、嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、私も戻るね、浦澤さん…また呼んでね。その時は、きっと妹(・)と一緒に。お休みなさい、ママ。」

 

そう呟いた奏の身体が、乳白色の液体に変わって溶けていく。

人体一つを形成していた液体は再び露になった怪物の乳首に吸い込まれていき、その全てを吸い終えた瞬間、漸く怪物のシルエットが崩れて詩乃の姿へと戻る。

先程までの全てを、何も把握していないまま、そして何も感じる事のできないまま、詩乃はその場を後にする。

何事も無かったかのように。

何も自分は知らないように。

知ることも、感じることもできないままに。

覚えることさえ、できないままに。




はい、これで終わりです。
あっさりだなーって思います。文章力と集中力と演出力と構成力があればいいんですけどね、無い物ねだりはできません。

詩乃編はこれで終了です。しかし、拘りとはいえオルフェノクの名称を使えないのは辛い。
彼女らはどうやってオルフェノクって名前を知るんでしょうね。それはこの後の章一つを経て、その次の章で。
章って言うほど長いものにする気は無いんですけどね。

◆咲本 奏(さきもと かなで →「さ」きもと 「かな」で →さかな)
身長:162cm 体重:部外秘 年齢:15歳 3サイズ:90-58-88

私立栄開高等学園附属中学校三年二組所属、生徒会長。通称「コミュ力お化け」。
文武両道、品行方正、成績優秀、容姿端麗、体型抜群。短所とは、という疑問すら浮かぶ程のハイスペック少女。でも本人曰く私生活はだらけていたり体型に慢心が見られるのだとか。友人曰く「嫌味かそれは。」
然し彼女には大きな秘密があった。浦澤詩乃への病的なまでの愛である。
土曜日の件は小学校四年生で詩乃と出会ってから長々と計画だけして実行できないまま、肥大化した愛情によって引き起こされた暴走。不幸なのは相手が特殊過ぎる身の上だったということだろう。
だが不幸なのは第三者から見た場合であって、彼女は今の境遇に心底満足している。
人間・咲本奏として生活するつもりは既に毛頭無く、詩乃の右胸の中で必要に駆られるまで詩乃に包まれているだけで絶頂しそうだとか。

◆グレイトホワイトシャークオルフェノク
身長:261cm 体重:224kg

ホオジロザメの特質を備えたオルフェノク。
身体のあちこちに自傷するような装飾があり、服の裾には誰かを傷つけるための牙の装飾がある。これは奏の根本の性格に因る。
腕のヒレは固く、刃にもなるしクッションにもなる。無論泳ぐ時には便利に働く。
顔面には側頭部と後頭部に鮫の顔が存在するが、これらをエネルギーとして放出することで遠隔武器としても利用できる。また、手持ち武器として鮫型の鋏を持ち、これを使って使徒再生を行う。
魚型のオルフェノクなので遊泳態も備える。35ノットの速度を誇るとか。

この姿になった理由は、「盲目的な愛」によるもの。
鮫は前へ前へと泳ぎ続けていなければ死ぬ。酸素が取り込めないからだ。
彼女の詩乃への愛は、そういった病的で危うい感情の上に成り立っている。外部に求めるそういう精神性が、鮫のオルフェノクとして彼女を覚醒させたのだ。

◆浦澤詩乃 ●新規情報の開示
甲殻内部のレリーフが刻まれている空間に対象を捕えることでオルフェノクエネルギーで精製された母乳に浸透させて使徒再生を行う。
成功した場合はそのまま母乳に肉体を溶融されて体内を循環し、乳房に蓄えられてその中で培養された後にオルフェノクへと堕ちる。
そのオルフェノク次第であるが、精神の自由を奪い拘束する機能もあるようで、一定期間を経ても彼女の体内に残り続けた場合、本編の奏のように戦闘員として飼育されることとなる。
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