パラダイス・ロスト Birth of UNKNOWN 作:さみに
私はどうしてしまったんだろう。というのも、最近記憶が無くなることが多くなった。
その分の空白が出来て、けれどそれが普通に思えて、そこに違和感も恐怖感も覚えない瞬間があることそのものが怖い。
久我さんはどこに消えてしまったのだろう。
いつの間にか、登校しなくなっていた。ご家族も行方不明として届け出を出して捜索が続いているらしい。
マネージャーが居なくなって、部の備品などの整備には支障が出てきた。
だが、それもまた事情が変わりつつある。部員もまた減り始めたからだ。
今月に入って二人、先月に一人。既にバスケ部関係者に四人もの行方不明者が出ていた。
責任を問われることはあったが、一体何が起きているのか私にだって解らない。
保護者などから寄せられる声に、次第に私は追い詰められていった。
ストレスの発散がてら、外出することが多くなった。
山岳や森林地帯に主に出向いた。自然がとても心に優しい影響を与えてくれるように思えて、そしてそれは確かなことだった。
けれど、それに比例するかの如く記憶の空白もまた増えていく。
そこに因果関係があるのは間違いない、のだろうか。
こう考えている間も、いつの間にか深夜だというのに一人で森に、居る……。
「おねえちゃん。」
ふと声をかけられて、振り向く。
そこに居たのは、小さな女の子。こんな時間に外に出ていることは許されるはずもない年齢に見える。
いや、そうではなくて……何故か、私は彼女に酷く既視感を覚えた。けれど、初めて見たようにも思えた。
「あたらしいからだはどーぉ?」
次に発せられた言葉の意味は、汲み取ることが難しくなった。
所詮この年齢の子供の吐く言葉などはそんなものなのだろうが、どこか底冷えする”ナニカ”が込められているように感じる。
少女の背後にある街灯、その逆光によって表情が隠されていたはずだったが……眼に真鍮色の輝きが灯った。
瞳孔がはっきりと自分の身体を捉えた、と自覚した瞬間に、突如――身体が燃えるような感覚に襲われた。
「ッ…ぁぁあ……!!!!」
股座が煮えるかの如く熱を持って、衣服を透過し突き抜けて灰色の肉棒が飛び出す。
胸の上に、謎のエンブレムが出現する。
膝をついて、身体の熱ともどかしさに耐えている間に、少女が歩み寄っていた。
にこにこと笑いながら、真鍮色の輝きを灯したままの瞳を向けて、優しく身体を押した。
簡単に私の身体は倒れて地面に転がった。少女は私の身体に生えた肉棒を優しく撫でると、その小さな口に――
「ぁむ。」
ぱくり、と咥えた。
少し熱を帯びた口内、むにむにした頬肉、無垢な乳歯たち。
そして、ざらざらした舌の感覚。
それら全てに、私の理性は容易く崩壊し、視界が暗転した。
びゅ、びゅごっ!びゅりゅ…るっ!びゅるる、びゅるるるる………!!
「んぶ、ん…んっ…♪」
粘液を猛烈な勢いで吐き出し始めた肉棒を、少女は嬉しそうに咥えたまま顔に黒い紋様を浮かべた。
喉を鳴らして飲み干し始めた少女の姿が陽炎のように揺らめいて、灰色の怪人へと変じていく。
幼く、凹凸の乏しい肢体が大人の女性よりも更に妖艶に実った身体に成長していく。
喉を鳴らして飲み込んでいく度に、股座に刻まれている紋章が青白い光を強くしていった。
逆関節の両脚が形成され、三本の圧倒的な毛並みの尻尾が生え揃う。
変化が完了し、粗方飲み干した後に手で唇の端から零れていく液体を口に収めていく。
口を離し、倒れ伏した華の唇に寄せて、重ね……残っていた液体を無理矢理舌に乗せて送り込む。
喉を通って飲み込まれた瞬間、華の身体を虚空から溢れ出した灰色の粘液が包みこんでいった。
それらは全く別の女性の姿を象ると、次第に表面が砕け、中から水色の美しい髪を持つ、神秘的な雰囲気すら漂わせる女が現れた。
「あは、うまれたんだね♪」
少女の変じた怪人から伸びた影に、幼い少女の裸体が青白く投影されて、言葉を発した。
優しく抱き締めて愛でるように身体を撫でてやる。
「ァ…ぁ……。」
「しゃべれそう?がんばって?」
「Ma…m…ま……ま、ま。」
「まま?ねこがまま?」
「ま、ま。ねこ、まま。」
「あは、あははは!ねこまだきゅうさいだよ?なのにまま?おっかしー!」
「まま、まま。」
「えへぇ、ありがとー。でも、ままっていいたいのはねこのほうなの。だから、あなたがままをやって?」
「まま…わた、し。」
「そう、まま。できるでしょ?ねこみたいになって?”おるふぇのく”に。できるでしょ?」
「う、う。」
水色髪の女が何度か頷いて、瞳の色を真鍮色に変じた。
黒い紋様が顔と身体全てに刻まれるかの如く、鮮明に浮かび上がる。
豊かだった胸部が更に実り、暴力的とさえ表現できるほどに膨れていく。怪人同士の胸が押し合い拉げる。
豪奢なドレスがその肢体を覆い、七つ以上の目に見える青白い光と、樹木の幹にも似たゴツゴツとした装飾の顔面部が形成され、そこから二房の髪が飛び出していく。
それらはぐるぐると顔面を完全に隠しきるほどに巻き付いて、やがてその色で真っ黒なシルエットと、僅かに目の光が漏れるのみになった。
活け花にも見える帽子、そこから垂れたベールがそれを陰にし、背中と肩からは枝らしき装飾が伸びるとそこにぽつりぽつりと花が咲いていく。
腰にぐるりとリングが出現し、子宮の真上にあたる部位に、目の前の怪人――少女の変化した、フォックスオルフェノク――と同じ紋章の刻まれたエンブレムが嵌められた。
周囲に、ふわりと花の香りが舞う。
森林の中で、更に安らぎを与えるような優しい匂い。
「あは…♪すごいすごい、”いままでで”いちばん!ままみたいに、おちつけそう♪」
フォックスオルフェノクが、少女の姿を映したまま抱き着く。巨大で、柔らかな反発を伝える胸部に顔を埋めて、至福の声を漏らす。
新たに変じた怪人、フラワーオルフェノクと化した少女もまた、影に自身の姿を投影して笑顔を見せる。
それらだけを見れば、仲の良い姉妹にも見えるかもしれなかったが、実際の姿は非現実そのものの怪人でしかなかった。
森の中に、人外の楽し気な声が暫しの間漏れ聞こえていた……。
お久し振りです。
投票で続き待ってるって言われたんで書きましたけど、多分需要と合ってません。
続きを意識したらこうなりました。
読んだら感想ください。絶対書け(豹変)