※この作品はR-18です。

パラダイス・ロスト Birth of UNKNOWN   作:さみに

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反響があるのかどうなのかわかりませんがUAを見ている限りでは600人ほど目に留めて下さったようですね。
ありがとうございます。これも偏に原作者様のおかげですね、えぇ。
とりあえず続きになります。話が進まないなと思ったそこの貴方、鋭いですね。


Panther or Leopard

歌う。詠う。謡う。

灰色の獣が、謳う。

 

 

時間は少し巻き戻る。

荒木悠子が、不幸にも暗闇の中へと沈む、少し前まで。

 

 

 

私立栄開高等学校2年3組、水並涼花。

年齢は17歳、身長は173cmとやや高い。

家族は母親のみで二人暮らし、従姉妹が居るが随分と会っていない。

部活には入っていない、所謂帰宅部なのだが、持って生まれた肉体はほどよく引き締まっている。

女性らしい体つきでは無いのが少し悩みの種で、同学年でも胸の大きな子を密かに羨んでいた。

素行は悪く、専ら深夜に街中を徘徊しては年下の生徒から金銭を奪ったりと、近隣住民からの印象は悪い。

 

そんな、言ってしまえばどこにでもいるような不良女子高生。

それが水並涼花の全てだ。

 

――否、「だった」と形容すべきか。

彼女のパーソナルデータにはもう一つ、見逃してはならない一文が最近付け加えられていた。

 

 

普段通り、慣れ親しんだ夜の街を行く彼女。その足取りは軽い。

誰が見ても「あぁ、何かいいことでもあったのかな?」と思えるほどに。

それは事実、正しかった。

最近身体の調子が良い、おかげで日課である夜の探索も快調そのもの。

これで近頃増えた一つの「楽しみ」があれば良い…そう思いながら、歩を進める。

 

「…そっか、居ないなら探せばいいじゃん?」

 

不良として過ごした期間はそれなりに長い。

どういう場所を同じような奴が好むのか、縄張り意識の強い以上どのエリアにどのグループが居るのか。

知っておいて損は無かったし、むしろ得だらけだった。

この街は既にありとあらゆる道を覚えてしまうほどに歩き尽くしてしまった。

知識と経験に、“今の自分の身体”を加えれば、探すなんて酷く容易なことじゃないか。

そうと決まれば目を閉じ、耳を澄まし風の匂いを探る。―――10秒と待たず、結果は返ってきた。

 

逸る気持ちを抑えつつ、目的地までの道のりを辿る。

ほんの数百メートル程度の短い距離でも、我慢できないほどに胸が高鳴る。

既に数人ほどの知能指数の低そうな声が聞こえてきていた。

すぐ近くの曲がり角で立ち止まって、深呼吸。

まるで、恋する乙女が意中の相手に告白する前に緊張を解すかのように。

 

月明かりを背に、角を曲がって踏み込んだ。

 

そこに居たのは同じ学園の三年生が三人。

輪を作って談笑でもしていたのだろうが、こちらに気付くと怪訝な表情で睨み付けてくる。

目つきの悪いショートカット、茶髪をポニーテールに纏めてマスクを被った長身、明らかに一人だけ小柄な間抜け面といったところか。

気の弱い少女ならば萎縮し怯えて逃げ出すかもしれないが、涼花は意にも介さない。

 

「…ンだよ、お前」

 

リーダーなのかは知らないが、最初に口を開いたのは小柄の女だった。

立ち上がって向き直り、近寄ってくる。他の二人も同様だ。

 

「あれ?ねぇ、こいつ二年の水並じゃない?」

「あー知ってる知ってる、何か最近一人でこのあたりのヤツ気紛れに潰してるとか?」

「そうそうそれそれ!ムカついちゃうよねぇ、そうやって大きい顔されるとさぁ」

 

ショートカット、ポニーテールマスクもそれに呼応し言葉を吐く。

しかし、こっちも相手を知らないわけではないのだが、向こうはこちら以上によくご存知のようだった。

おまけにどうも自分の存在が不満らしい、確かに身に覚えはあるけれど。

…だがそんなことはどうでもよかった。

 

 

「ねぇ。」

 

「は?気安く話しかけてくんなよ、うざったい」

 

「あっそ。じゃあ、精一杯後悔してね?」

 

 

何をと問うよりも早く、涼花の瞳が真鍮色に輝き、そして薄らいでいく。

元の茶色に戻るとほぼ同時に、涼花の周囲の空間が陽炎のように揺らめき、肉体が鈍い灰色の光を放つ。

 

衣服の下から涼花の腰にベルトのようなものが突如出現し、下腹部の中心には奇妙な文様の刻まれた物体が嵌められているようだ。

燐光の奥から、涼花の肢体を包み込み肥大化するように灰色の何かが膨れ上がっていく。

元々高かった涼香のシルエットが、二メートルを超えるほどまでに伸び、

引き締まっていた脚は美しいラインを描き、その逆に両腕は太く荒々しい線を描いたかと思えば、肘から手首までは鋭く研ぎ澄まされた刃のように月光を反射する。

女性らしい凹凸など皆無だった体つきは――灰一色とはいえ――ふくよかな双丘と肉感たっぷりの尻の稜線で艶かしく彩られていた。

恍惚とした表情の顔も異形の頭部が覆い隠し、此処に変化が完了する。

 

 

オルフェノク。死者の骨を想起させる、病的にまで灰色に染め上げられた怪物。

水並涼花は、その内の一体。豹の特質を持つオルフェノクだ。

 

 

「――ひ、ぁ……?」

 

状況を飲み込むどころか、口に入れることもできずに間抜けな声を出すチビ。

その身体を、鋭利に生え揃った鉤爪が貫いた。簡単に身体が宙に浮く。

だが背中まで突き破ったわけではない。血は一滴も出ていないし、爪は深々と肉を抉っているが、体内で静止している。

――確実に致命傷だった、だがそれだけはない…何が起こるのか?

 

 

「ん、っ…あぁぁあああぁ……!」

 

はしたない嬌声を上げて、オルフェノク――涼花は、身体の最奥から湧き上がる“ナニカ”を爪に乗せて注ぎ込んでいく。

その瞬間、突きこまれたチビの心臓あたりから、青い炎が吹き上がる。

炎と、月光に照らされて伸びたオルフェノクの影に青白い涼花の裸身が投影されていく。

苦悶と快楽が綯い交ぜになった表情を浮かべ、“ナニカ”が注がれる度に湧き上がる悦びに身体が震えていた。

 

一頻り堪能し終え、爪を引き抜くとボロ雑巾のように地面に倒れ伏すチビ。

身動きができずに一部始終を目の当たりにした他の二名の内、ショートカットがようやく我に帰って踵を返して駆け出した。

…だが、

 

「―――~っ!!」

 

獲物となる運命からは逃れられない。

既に彼女らは、哀れなことにオルフェノクの、水並涼花の舌の上だ。

腰から生えていた美しい毛並みの尻尾が触手と化して、首筋に巻きつき口を塞ぐ。

必死にもがき足掻いて引き剥がそうとするものの、締まる力は次第に強まっていき、胴体へと巻きつくと軽々と持ち上げてしまう。

今度は逃げないように、ポニーテールを左手に鷲掴んで、二人とも眼前で隣同士にしてやる。

先ほどのチビと同じ行く末を辿ることを予想してだろうか、顔は恐怖に歪み、涙に塗れていた。

 

青い炎が止まらないままのチビが、ふと起き上がる。

驚愕に目を見開く二人の前で、一瞬目を真鍮色に輝かせた彼女は、指先から灰となって崩れ去った。

後に残ったのは、身に着けていた衣服のみ。

 

『なんだ、ハズレか……お前らは当たりかなぁ?どうかなぁ…?』

 

影の中で全裸の涼花が問いかけるが、二人とも最早まともに思考回路が動いているのかもわからない有様だ。

だが壊れてもらっては困る。

 

『ほーら、次はお前だよ?それっ♪』

 

ショートカットの口を塞いでいた尻尾が、固く閉じていた唇を抉じ開けて体内へと潜り込む。

異物を挿入され、咽ることもできずに悲鳴を上げる女のことなど意にも介さず、触手は進んでいく。

間もなく心臓に辿り着くと、鎌首をもたげて一気にその身を突き立てた。

再び、青い炎がその身を躍らせた。

 

『はぁ、っ!これ、これぇ…ほんと、やめられなぁい…!』

 

涼花が身を捩る中、既に力なく腕をだらけさせるショートカットが、灰となって崩れていく。

残ったのは、たった一人。掴んだ左手に、生暖かい液体の感覚が流れていく。

 

『ちょっと、汚いんじゃない?あたしよりも年上なのにおもらしだなんてはっずかしー…まあいいや、さっさと死んじゃいな。』

 

呆れたような物言いで言葉を投げかけ、最後の一人、自失してしまったポニーテールの唇を怪物に似つかわしくない艶やかな唇が塞いでしまう。

花の女子高生、大人と子供の中間ともいうべき十八歳の唇の感触を楽しみながら、口内から直接触手を潜らせて心臓を一突き。

犯しているのだという征服感と嗜虐心を満たしながら、快感に酔いしれつつ、最後の一人が灰になって崩れ去っていく。

 

 

『あ、ははは………ぜぇんぶ、ハズレ。でも、きもちよかったぁ……ふふふ、あは、あははははは…♪』

 

 

三人の少女の成れの果て、灰の積もった中で、怪物が――少女が笑う。

 

 

時間は戻る―――

 

荒木悠子が同じ裏路地を歩いていたのは、家までの近道だったというただそれだけの理由だ。

それがたった一日、たった一日ずれていたかそうでないかが、彼女の命運を分けた。

鋭利な爪に抉られた彼女の胸から青い焔が立ち上ったのを見届けると、オルフェノクの肉体が淡く燐光を放ち、灰色の身体が萎むように消えて、人間…水並涼香の姿へと戻る。

一日に四人もの人間を襲い、沸き立つ欲望のままに注ぎ込んだ影響か、肩を上下させて呼吸を整える涼花の表情は、熱に浮かされたように悶々としていた。

倒れ伏した悠子の身体はぴくりとも動かない、ただただ青い焔が彼女の身体を舐め、揺らめいているだけだ。

 

「あーぁ、こいつもハズレかな……疲れちゃったし、もう今日はいいや…帰って寝ちゃお…」

 

丸っきり興味を失って、その場を離れていく涼花。

“人の命を四つも奪っている”にも関わらず、“さも当然といった様子”で。

彼女は、夜の闇の中へと消えていった―――

 

 

地面に倒れ伏し“青い焔が鎮まり”、“眼を開いて、瞳を真鍮色に輝かせる”荒木悠子を残して。




修正する前に矛盾点に気付いた方は見なかったふりをした後によければ感想を残してくださると筆者は喜びます、多分、きっと、恐らく。

■水並 涼花 年齢:17 血液型:AB
身長:173㎝ 体重:52kg スリーサイズ:B80-W58-H82 家族構成:母、父(故人)

不良女子高生。私立栄開高等学校二年三組所属。
凡百の少女と変わらぬ一市民だった彼女を変えたのは、異形としての新たな力と姿。

■“豹”のオルフェノク
身長:228cm 体重:238kg

水並涼花が変化する、豹の特質を備えたオルフェノク。正式名称は不明であるが、パンサーとレパードの二つが有力とされる。
マッシブな外骨格と脚から俊敏な印象を受けるが、それを引いて余りあるほどに力強い両腕と女性としての起伏に富んだスタイルが目を引く。
フットワークを活かした高速戦闘を得意とするが、肘に備わった鋭利な刃のような骨格による純粋な近接戦闘や、体表と唇から特殊なフェロモンを発して獲物を誘惑し、動きを鈍らせた後で仕留めるという搦め手も使用する。
手の爪、唇からの触手、尻尾を使って使徒再生を施すようだ。
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