パラダイス・ロスト Birth of UNKNOWN 作:さみに
ディケイドのテレビ朝日版ブログに書かれていたような気がしますね、この言葉。
見た当時は何を御大層なことを言っているんだと思いました。
だってあんな投げっぱなしジャーマンあります?
と愚痴を零すのはやめておきます。
それから注意が一つあります。
本当にR-18な描写が今回入っている上に、随分アブノーマルなシチュエーションになってしまいました。
読む際には充分注意を払ってスクロールしてください。グロ方向ではありませんが、人によっては不快な気分になってしまうかもしれませんので。
※この前書きをすっぽかして読んだ方はご愁傷様です、としか
「私からもプレゼントがあるの」
喜んでくれるかしら。
そう呟きを残して母親の身体が揺らめく。シルエットが崩れる。
身体全体に奔った紋様から放たれた仄かな光が輝きを増していく。
下腹部――子宮のあるあたりだろうか――に奇妙なエンブレムが服の下から浮かび上がってくる。
表面には三つの矢印が複雑に絡み合った模様が刻まれており、側面からは腰に沿って一周するように帯が伸びていた。
劣情に侵されたような笑みを浮かべながら、背筋を弓なりに逸らしたその瞬間に、エンブレムの中心から灰色の幕が彼女を包み込んでいく。
顔も、手も、足も全て飲み込んだ後に残ったのは灰一色で作られた繭と、その表面に刻まれた紋様のみ。
しかし、すぐさま空間ごと奮わせるようにその“繭”が鳴動し、鼓動音が悠乃の耳朶を叩く。
ミチミチと血と肉が軋み、絡み合うような水音と共に内側へと収縮していくと同時に、徐々にその意匠が現れ始めた。
キャリアウーマンさながらに着こなしていた黒のスーツは、大胆に胸元を開き背中と臍も丸見えで、辛うじてその局部を覆う程度にしか役目を果たさないほど露出の激しいジャケットに変わっている。
おまけに表面は「蛇」のような鱗で覆われ、人間の頃よりも更に大きな胸部を強調するかのように「蛇」の形をした装飾具が下乳、谷間の中を通って∞字に走り肢体を戒めていた。
腕は細くしなやかだが、先端が他よりも更に濃く灰色に染められた鋭い牙のような外殻が各部に見られ、武器の類だと一目でわかる。
エンブレムから伸びた帯からはパレオのような装飾が下がっており、股間部には僅かに前張りのようなものが見られるのみだ。
隠れてはいるものの女性の肉質たっぷりの尻と太腿も艶かしく、腕と同じ牙と鱗に覆われた外骨格をガーターベルトに似た装飾が支え、足の部分はハイヒールのように踵が尖っており高圧的な印象を受ける。
眼鏡をかけ理知的な印象を与えていた顔も灰色の中へと押し込められ、代わりに怪物としか言いようの無いものに挿げ替えられていた。
頭部そのものが「蛇」の意匠を持たされており、「顔」にあたる部分は二対四本の鋭い牙が交差していておよそ人型の体裁を成していないが、こめかみの辺りから冠に似た骨格が形成されており見るものを威圧する。
後頭部からは尾のように体毛らしきものが一本垂れ下がっていて、先端部分は鋭い針が鈍い光を放っていた。
身体中に斑紋が見られ、体長は二メートル半は確実にあるだろう。
“蛇”、それも世界最大級といわれる“グリーンアナコンダ”の特質を備えたオルフェノク。
悠乃の母であった荒木悠子は、その姿を人外の怪物へと変えてしまっていた。
蛇に睨まれた蛙。
頭部にある眼がこちらを射抜いた瞬間に、金縛りにあったかのように身体が動かなくなった。
否――動けない理由はそれだけではないだろう。
愛する母。自分以外のたった一人の肉親。
それが目の前で、見たことも無い化け物になってしまったのだから。
現実を受け入れられず、圧倒的な喪失感が心を満たしていく。
自我が崩壊する寸前でどうにか踏み止まっているような状況で、最早その目は開いていても何も見てはいない。
リビングの明かりが扉越しに少し届いてるだけの暗い廊下の中で、壁に投影された怪物の影が青白い母の裸体に変わる。
『どうしたの、悠乃』
その母が喋る。口調は普段の優しい母そのものだ。
だが、違う。それは「ヒト」のものではない。
例えそこに映し出されたものが見知った姿でも。
例え鼓膜を奮わせるその声が見知ったものでも。
目の前に居るのは決定的に「荒木悠子」であり、同時に「母」ではなかった。
『大丈夫よ、何も心配しなくても。お母さんと一緒に、素敵なところへ行きましょ。
何も怖がらなくていいの、安心して……私と一つになるのよ…』
再び、母の――怪物の身体が光を放ち、シルエットを変える。
脚が一つに結合し、パレオが消え去って蛇の胴体そのものと化したのだ。
エンブレムのすぐ下には大きな裂け目が見られ、何度か水音と共に開閉していて、その奥に灰一色の肉が蠢いていた。
「ひっ……!」
『ほら、こっちにいらっしゃい…』
悲鳴を上げそうになったが、極度の恐怖と緊張で掠れてしまって出ない。
喉がひくついた程度の声だけが空しくその場に響き、裂け目から伸ばされた触手と両手に身体を絡め取られてしまう。
仕草と外見に相反してその声と手つきはどこまでも優しくて、目の前の存在が紛れも無く自分の母なのだという現実が容赦なく襲い掛かってくる…。
衝撃と恐怖の嵐に晒された少女の心はいとも容易く破壊され、力を失い持っていた鞄が手から落ちて、床の上に資料が散らばる。
『まぁ、やっと大人しくなって……良い子ね、悠乃。それじゃあ、ゆっくり…“おやすみ”。』
足から大きく口を開けた肉穴に飲み込まれても、既に言葉すら漏らさず、光の消えた瞳が虚空を眺めていた。
やがて首から下までが体内へと消えると、優しく娘の頭を撫で付けてから中へと押し込み、裂け目を閉じる。
人を一人飲み込んだおかげでぽこんと膨らんだ胎を撫でながら、僅かに甘い吐息を漏らす悠子。
やがて膨らみが尾の方へと降りていくと、青い炎が体内で燃えているのが透けて見える…他でもない、娘を母親が殺したことの証左である。
安堵したように嘆息すると、オルフェノクのシルエットが白く輝いて縮小し、元の人間――荒木悠子へと戻る。
「うふふ……大丈夫よ、悠乃…私が護ってあげる。ちゃんと大事に、“私と同じようにして”……」
愛おしそうに下腹部を撫で、母親の慈愛と雌の情欲の混じった表情を浮かべ、彼女はリビングの扉を開いた――
新たな命の鼓動を響かせて。
はい、というわけでアブノーマルというのは「丸呑み」要素ですね。
お恥ずかしながらこういうのも好きなんです。
で、食べられてしまった悠子ですが、これも使徒再生の一種ということでよろしくお願いします。オルフェノクっぽさとか無いですよね、こんなのじゃ。
個人的に彼らオルフェノクの名前の由来とか、あとは“蛇”という生物の神話での扱われ方とか、フィクションでの役割だとかそういう要素を鑑みれば、ありっちゃありかなと思ってこういう方法にしてみました。
「使徒再生の一種」なんですよね、これ。……つまり…?
■荒木 悠子(あらき ゆうこ)
年齢:38 身長:168cm 体重:57kg→52kg(使徒再生後) B-W-H:91-60-93 → 91-56-93(使徒再生後) 血液型:A
不運にも“豹”に襲われて死んだ会社員の女性。
けれど、彼女は蘇った……人ならざる者として。
それが幸運なのかそうでないのか、気付くのは少し先のことになるだろう。
■グリーンアナコンダオルフェノク
身長:260㎝ 体重:220kg
蛇の中で最も大きいと言われるグリーンアナコンダの特質を持つオルフェノク。
体中に見られる斑紋が特徴で、森林地帯や都市部などで迷彩効果を発揮できる皮膚を持つ。
蛇であるがゆえに全身の筋肉は外見からは判断できないほどに発達しており、同族の中でも大きな身体に長いリーチと組み合わせた近距離戦を得意とする。
この形態でも固有武器として鞭を扱うことができる。
また、怪人態が外殻をほとんど纏わない露出過多な理由は、親に躾けられそして自分でも娘を躾けていたにも関わらず、衣服をきちんと整えることに心の奥底で嫌気が差していたから。
抑圧されていた「生まれたままの自分を曝したい」という欲望がそのまま投影された結果であるという。
■グリーンアナコンダオルフェノク 蛇人態
全長:5m20cm 体重:330kg
形態変化を行った状態。脚部が変わり、蛇そのものになった。
この状態でのみ、胎(はら)を開いて人間を捕食、丸呑みにして体内に取り込むことで使徒再生を行うことができる。
死亡した人間は灰となり身体に吸収されるが、万が一覚醒してオルフェノクになった場合、対象者は二重の意味で人間ではなくなるだろう。