※この作品はR-18です。

比企谷兄妹の甘い日常   作:暁英琉

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海で兄は本物を確認する

 期末テストが終わったということは程なくして夏休みになる。例年なら家でごろごろゲームをしたり、家でごろごろテレビを見たり、家でごろごろ読書をしたり……家でごろごろしかしてねえな。

 ごほん、まあそうして怠惰に生活をしているわけだが、今年は受験生な俺、自然と生活の比重が勉強に傾く。予備校の夏期講習に参加したり、時間があれば自学もするわけだ。

 とは言っても、実際は自学の勉強時間は少ない。

「お兄ちゃん、この問題どうやるの?」

「ここの訳はどうすればいいんですかね?」

 大抵妹たちの家庭教師をやることになるからだ。期末テストで成績の向上が見られてから二人もやる気になったのか勉強に積極的に取り組むようになった。しかし、特にいろはは一人で勉強することに慣れていないのか自室で勉強していてもあまり集中できず、俺と一緒に勉強をするようになった。そこへ頬をむくれさせた(かわいい)小町もやってきて今の状況である。

 二人ともちゃんと勉強はしているのだが、近いしいい匂いするし柔らかい。俺自身こういうスキンシップには一定の耐性がついたと思うのだが、それでもやはり完全に平静を保つのは無理だから控えてほしい。勉強しながら楽しそうに笑う二人を見ると何も言えないんだけどね。

 実際、二人と一緒にいられる時間は俺も楽しい。それに、人に教えるという行為も自分の勉強に繋がる。頭の中では理解していたつもりでも、いざ説明しようとするとできなかったりするし、新しい発見をすることもある。違う立場で問題と向き合うというのはいい機会だった。去年までの復習にもなるしな。

 後、ジョギングも雨の日以外は毎日続けている。少しずつ距離を伸ばして、今では十五キロが普通になってきた。あまり走りすぎても時間をかけすぎるだけなので、これ以上距離を伸ばす必要はないだろう。最近、足回りに筋肉がついてきて上半身とのバランスが悪く感じてきたので、腕立てや腹筋もするようになった。こっちはまだ始めたばかりで、腹筋三十回で音を上げた時はあまりの不甲斐なさにしょぼんをなり、妹たちにドン引きされた。そこは優しく慰めてほしかったのんな……。

 ちなみにジョギングの時以外はほとんど家から出ない。むしろ自宅を警備するという過酷な仕事をしているわけだし、仕方がないことだ。しかし、たまに妹たちに引っ張られて家の外に出ることもある。やめて! 最高に灰になっちゃう! まあ、大体が三人でウインドウショッピングなんだが、受験生の俺に遠慮してか本当に時々しか誘ってこない。気分転換になるし、俺も悪い気分ではないんだけどね。

 そんな夏休みを過ごしていたある日、珍しく休みをもらったお袋となぜか二人で喫茶店にいる。妹たちも来たがっていたが、有無を言わさぬお袋の目に渋々同意してお留守番をしている。

「……で、話って何だよ」

 注文したコーヒーに口をつけて、何も話してこないお袋に目を向ける。三白眼で睨んでいるように見えてしまうのは仕様である。話があるから、と言っていたくせに何も言わないとかちょっと怖すぎんよ。

 お袋もアイスティーに口を付けて息をつくと、ようやく口を開く。

「八幡、あんた大学はどうするの?」

 ああ、そういうことか。大学のこととなると学費の話にもなるだろう。だいぶ比企谷家になじんできたとはいえ、いろはにはあまり聞かせられない。

「今年になって理系分野の成績上げてるけど、まさか国公立志望に切り替える気? さすがに二年間の遅れを取り戻すのは後半年じゃ厳しいと思うし、別に文系私立の学費くらいならお母さんたちも払えるわよ?」

「あー、いや……」

 確かにいきなり捨て教科の成績上げてる受験生なんて、その教科を使う大学狙いって思われても仕方ないよな。

「大学の志望は変わんねえよ。あの大学は前から興味があるから行きたいと思ってたし。それに、ここなら給付型の奨学金もいろいろあるから、頑張れば学費をかなり抑えられる」

 私立大学というものは給付型、つまり返還不要の奨学金というものが結構ある。この大学だと家庭の経済状況を基準にした奨学金の他に成績優秀者に対する奨学金もいろいろと用意されていた。比企谷家は一般的な中流家庭と比べると少し裕福な方だと思われるので前者は取れないだろう。だから俺が狙っているのは成績優秀者向けの奨学金だ。それを駆使すれば、国公立大学に行くよりも安くすることも可能だろう。

「確実に奨学金を取れるわけじゃないけど、少しでもあいつらに使ってほしいからさ」

 俺のせいで年頃の妹たちに節制をさせるなんて心苦しすぎる。いや、節制とか関係なしに妹たちに金をばらまく可能性のある親父にこそ危機感を持つべきなのでは……。

「あの子たちのこと、大事に思ってるのね」

「そりゃそうだろ、妹が大事じゃない兄なんていないんだし」

「恋人としても……でしょ?」

「っ!?」

 後数秒会話が遅かったらコーヒーを盛大に拭きだしていたところだった。冷汗がだらだら流れてくる。落ちつけ八幡、ここは冷静にならないと切り抜けられんぞ。

「にゃんのことだよ……」

 思いっきり噛んだ、死にたい。お袋は一瞬キョトンするとクククッと忍び笑いをしてくる。やめてよ息子を笑いの種にしないでくれよ……。

 しかしやばい。いろははともかく実妹の小町とまで付き合っていると知られたら……あれ、マジでやばくね? 高坂家だって期間限定お付き合いだった事を考えるとこれは勘当まであるぞこれ。思わず本当に睨んでしまう。そんな俺に対してお袋はまだ笑いが抑えられていない。そろそろ納めてもらえませんかねぇ。

「別に睨むことないじゃない。あんたも小町も、いろはちゃんも幸せそうなんだから」

「……気づいてたのか」

「私を誰だと思ってるのよ。いろはちゃんは何となくだけど、実の息子や娘のこと分からないわけないでしょ?」

 アイスティーで喉をうるおして手を組むお袋はどこまでもまっすぐな目で、そこからは怒りとか嫌悪という負の感情は見出せない。ただただ包み込むような優しい目だった。

「……怒ったりしないのかよ」

「まあ、堂々と二人相手にしたり、その片方が実の妹だったり、相当歪なのは事実でしょうけど、あんたたちはそれで幸せなんでしょ?」

 あんたら昔から仲良かったからねえ、とお袋は独りごちた。

「それがもし悪い影響を与えるならまだしも、皆勉強も頑張ってるし、あんたが奨学金取ってできる限り学費を抑える、なんて言うようになるんだから。そんなあんたたちを離そうなんて、私もしたくないわよ。それに……まだ何かあるんでしょ?」

 にやりと笑う表情は小町そっくりで、やっぱり親子だなと自覚させられる。本当にこの母親は厄介だ。さっきから隠し事が全然できていない。まあ、この件に関してはどの道卒業までに話そうとは思っていたわけだが。

「……はあ、そこまで知られてたら無理に隠す必要もないか。実は、相談があるんだ……」

 

 

     ***

 

 

「わあ! ここからもう見えますよ、お兄ちゃん!」

「海だー!」

 それから数日後、俺の提案で三人は海に来ていた。千葉の海というと南房総市の和田浦海水浴場や勝浦市の守谷海水浴場が快水浴場百選に選ばれているが、俺達がやってきたこの海もなかなか綺麗なものである。人も少ないし、所謂穴場スポットというやつ。

 駅からも少しだけ見える砂浜に二人はだいぶはしゃいでいる。そういえば、小町と最後に海に行ったのはもうかなり前か。夏休み時期でもほとんど仕事漬けの両親に海に連れて行けというのはなかなか酷なものだから仕方がないが。

 近づくにつれて磯の香りが強くなる。臨海部に位置する総武高校で感じるものとはまた違う潮風を肺いっぱいに吸い込むと海に来たという実感が身体の内側から湧いてきた。

 更衣室で着替え終えて最低限の小銭を防水クリアケースに入れて外に出ると既に二人とも着替えて待っていた。たぶん二人とも中に水着を着こんでいたのだろう。

「あ、お兄ちゃん早く早く!」

「ん? お兄ちゃんどしたの?」

「…………」

 目を奪われるとはこういうことかと実感する。青い海に二人の白い肌が宝石のように輝いている。小町はオレンジのホルターネックビキニで胸元には大きなフリルがふんだんにあしらわれたかわいらしいデザイン、いろはは淡いピンクと水色のグラデーションが鮮やかなモノキニに身を包んでいた。

 声も出ず二人のまぶしい姿に見惚れているといつの間にか視界が二人の顔で埋め尽くされていた……って近い近い近い!

「お兄ちゃん、どうしたのかにゃ~?」

「……別になんでもねえよ」

 こいつにまにましやがって……絶対わかってやがる……。ていうか、ナチュラルに腕に抱きついてくるのやめて! 柔らかいあれとかが当たってお兄ちゃんドキドキが止まらないんよ!

「お、お兄ちゃん……その、どうですか……?」

 いろはも抱きつきながら、少し恥ずかしそうな上目遣いでこちらを見てくる。そういえば、いろはとは冬ごろからの知り合いだから水着姿を見るのは初めてなんだよな。なんか、水着を見るよりももっとすごいこともしているはずなのに恥じらう姿がかわいらしい。

「二人とも綺麗だぞ。その……思わず見惚れた」

「ほんとですか!」

 うわあ……。

 ぱあっと表情を輝かせるもんだから一瞬太陽と勘違いしちゃったよ。最近でもあざとい部分を出すことの多いいろはだけど、その分素のこういう表情は小町以上にぐっとくるところがある。

「ふへへ、お兄ちゃんが『かわいい』じゃなくて『綺麗』って言ってくれたの初めてな気がするよ……」

 小町も小町で顔を赤らめたとろけ顔で照れている。にへらっとした表情を見ていると思わず抱きしめたくなるのを必死に我慢。八幡君は我慢の達人なんだから!

 というか、捻くれ者のはずの八幡君からこんな素直な言葉を吐かせるなんてなんと恐ろしい子たちだろうか。自然と「綺麗だ」なんて言ったことに今更ながら顔がほてってくる。いや、これは夏の日差しのせいだから。

「ほ、ほら、早く海行こうぜ!」

「「は~い」」

 抱きついた二人をそのままに海の方へ向かう。

 向かって後悔しました。

 いや、言い訳をさせてほしい。最近家でも学校でもところ構わず二人が抱きついてくるし、周りももうそういう俺達兄妹を受け入れている節があってだな。つまり……知り合いのいないこの海水浴場だと好奇の強い視線で見られることをすっかり失念していたわけですよ。わー八幡のうっかりさーん、死ね!

 そりゃあ美少女二人に抱きつかれている男とか視線集めないわけないですよね。しかも目が腐ってるし。特に男たちからの視線に殺意が混ざってて超辛い。水着という普段よりも露出の高い布に二人が身を包んでいるせいかららぽデートとかよりも視線が辛い気がするのん。

 ま、まあ気にしていても仕方あるまい。せっかく三人で来たんだから楽しまなきゃ損だね!

 波打ち際に足を突っ込むと冷たい海水が日差しに熱された肌に沁み込む。波が寄せたり引いたりを繰り返す度に足元の細かい砂が踊りくすぐったかった。

「ふおぉ、きもちー」

 小町は風呂にでも入ってるのかと思う声を上げながらばしゃばしゃと入っていく。女の子がそんな声出していいのかよ、一瞬やけに声の高いおっさんだなとか思っちゃったじゃん。

 俺ももう少し深いところまで行こうと海をかきわけて進む。胸元くらいまで海水に浸かるころに腕が少し重くなった。

「いろは……?」

 顔を向けるとさっきからやけに大人しいいろはが抱きついていた。水の中なのでそこまで重いわけではないが冷たい水の中だといろはの体温がはっきり感じられてって、いやなんでもないです。

「…………」

 いろはは何もしゃべらない。その口元はきゅっと引き結ばれていて……緊張している?

「お前……ひょっとして泳げないのか?」

「い、いえ……泳げないわけじゃないんですけど、ほら学校のプールとかって足がつく深さじゃないですか。だから、その……足がつかない深さを経験したことがないと言いますか、立ち泳ぎとかができないと言いますか……」

 確かにこのあたりの深さだといろはは顔を出すのがやっとだろう。俺としたことが全く気が回っていなかった。おどおどしながらしっかり腕にしがみついているいろはの頭をくしゃっと撫でると少し表情が緩和される。

「じゃあ、ちょっと練習しようぜ。難しかったら浅いところに戻ればいいからな」

「! はい!」

 結局のところ、いろはは立ち泳ぎを教わったことがないだけでやり方が分かるとあっさり習得してみせた。ちょっとしがみついたままのいろはもかわいかったから残念ではあるが、初めてゆらゆらと海に立つ感覚に興奮しているいろはもかわいいので良しとしよう。

「お兄ちゃん!」

「ん? んぶっ!?」

 呼ばれて振り向いたら思いっきり水をかけられた。頭を振って海水を飛ばすと少しむくれた小町がいて、そういえばずっとほったらかしにしていたことを思い出した。そもそも一人で飛び出していったの君だけどね。

「ひどいよ、かわいい妹を放置するなんて!」

「すまん、ちょっといろはに立ち泳ぎのやり方教えてたらな……」

「もんどーむよー! えいえいっ」

 ばしゃばしゃと容赦なく水をかけてくる。冷たくて気持ちいいけど目に海水入るのはいやなんだけど! ていうか、こいつただ水かけたいだけだろ。もう悪戯っ子のみたいに笑ってるし。

「ちょ、ちょっと待て! タンマ、タン……うおっ!?」

 小町の水責めから逃れるために後退していると横から思いっきり水を浴びせられる。意識を小町に向けていたため少し海水を飲んでしまった、しょっぱい。

「ふふふ~」

 水の飛んできた方からは手で水鉄砲を作っているいろはが小悪魔どころか悪魔の笑みで次弾を装てんしていた。まさかの二面楚歌。二正面作戦とかエジプトで内政屋をやる俺には無縁なんですけど、いつから俺はモンちゃんになったんだ。

「お兄ちゃん覚悟ー!」

「けっちょんけちょんにしてあげますよ~!」

 交渉の余地なし。もう二人とも満面の黒い笑みで水をかけてくる。ではお兄ちゃんにできることは何かというと。

「おら、かかってこいよ!」

 全力で妹たちと遊ぶことである。

 

 

「はっ、はっ……お兄ちゃん強すぎ……」

「も、疲れました……」

 精根尽きたように浜辺に転がる二人。一対二とはいえ、そもそも毎日走って夏休み前あたりから筋トレも積極的にやっている俺とこいつらではスタミナの差が海堂と壇きゅんくらい違うのだ。その上俺には風見雄二上官殿直伝(ゲーム)での水中ゲリラ戦法もあったので攻めてきた妹軍の猛攻をかわしながら奇襲攻撃を繰り返したのだ。さすがに俺もだいぶ息が上がっているけど。

「こういうところではお兄ちゃんの方が体力があるところを見せないとな」

「十分見せつけられました……」

 ははは……と乾いた笑いを浮かべるいろは。いや、さすがに女の子相手にあそこまでやる必要はなかったのではとかちょっと思っちゃう。

「お兄ちゃんの身体、最近どんどん筋肉質になっていくよね。なんか細マッチョって感じ」

 筋トレもまだ期間が短いとは言え毎日やっているので少しずつ身体もしまってきている。まだうっすらとしか腹筋割れてないけどね。特に筋肉がついているのはやはり足だ。ふくらはぎあたりは力を込めると結構硬くなる。だからと言ってふくらはぎをぺたぺたするのやめてくれない? 恥ずかしいから。

 ひとしきりふくらはぎをぺたぺたすると小町は「よし!」と起きあがる。

「じゃあ次はビーチボールやろうよ!」

「いいね! 三人で一番ミスした人がジュース奢るとかどうですか、お兄ちゃん?」

 いろはも立ち上がると提案してくる。君たちさっきまで疲れてたのにまた勝負とかして大丈夫なのかにゃ?

「いいぞ、相手してやるよ」

「ふっふっふっ、体育の授業で鍛え上げられた小町のスパイクを見せてあげるよ!」

「いや、そこは普通にパスとかトスだけにしておこうよ……」

 

 その後もまた海に入ったり、海の上にあった大きなフロートの上に乗ってのんびりしたりと海を満喫していると日もだいぶ傾いてきて、着替え終わる頃には夕日が沈む様を見ることができた。

「海に沈む夕日って綺麗ですよねー」

「ああ、いつもは建物の影とかに沈む夕日しか見れないもんな」

「そこは、『お前たちの方が綺麗だよ』って言うところだよ、お兄ちゃん」

「え、そうなの?」

 浜辺の端の歩道から夕陽を眺めながら他愛ない話をする。こんなどうってことない時間が、今はとても楽しくて輝いていた。

「けど、お兄ちゃんが海に行こうって言うなんてびっくりしたよ」

「ひょっとして、何か悪いことしちゃったんですか~?」

 俺自身柄にもないことをした自覚はあるが、それで悪いことをしたと思われるのは心外すぎるんだけど。

「まあ、ちょっと二人に話しておきたいことがあったからな」

「話?」

「ああ、俺達の今後のことだ」

 俺の言葉に二人が身を固くする。俺達の関係が歪なことは俺達自身が一番よく理解している。なによりも倫理的な壁が分厚い。だから不安になるのも当然だろう。

「そんなに固くなるなよ。別に別れ話とかじゃないから」

「じゃ、じゃあ何の?」

「二人とも分かっていると思うけど、俺は今年で卒業だ。そしたら大学に進学する。その時に……家は出ようと思う」

「「なんで!?」」

 押し倒すぐらいの勢いで詰め寄ってくる二人をなんとか落ちつかせる。

「落ちついて最後まで聞け。家を出るって言っても志望の大学は近くだし、家もその近くになる。いろは、その引っ越し先をお前の元の家にしたいんだ」

「え?」

 いろはの旧家は定期的に掃除をしているとはいえ誰も使っていない。せっかくのいろはの大事な場所をこのまま放っておくのはどうかと思っていた。

「それでその……来年からあの家で、お前の育ったあの家で三人で暮らさないか? いや、俺と一緒に暮らしてください!」

「…………」

「…………」

 沈黙。頭を下げているので彼女たちの表情はわからない。わからないのが底冷えするほど怖かった。

 どれくらいその沈黙が続いただろうか。不意に両の手を握られた。顔を上げると少し涙を浮かべながら優しく微笑むいろはと満面の笑みの小町。

「あたりまえじゃないですか。むしろ、お兄ちゃんには私がお兄ちゃんを大好きになった責任を取ってもらわなきゃいけないんですよ? 仮にお兄ちゃんが何も言わずにいなくなっても私は付いていきますから!」

「小町がいないとお兄ちゃんはだめだめだからね。小町もお兄ちゃんがいないとだめだめになっちゃうから大賛成だよ!」

「……ありがとう」

 二人の言葉にわずかに視界がぼやける。愛されているという温かい実感が身体を満たしていった。

「あ、お兄ちゃん泣いてるー」

「うれし泣きですか? かわい~」

「……うっせ」

 二人の頭をわしゃわしゃ撫でるときゃーきゃー言いながら楽しそうに笑う。それにつられて俺も笑っていた。

「ほら、そろそろ帰るぞ」

「「は~い」」

 薄暗くなった海沿いの道を三人でゆっくりと歩く。ゆっくりだけど、三人そろったその足並みは不思議と心が落ち着く。

 きっと俺達の関係は歪だ。周りからは理解されず、嫌悪すら抱かれるかもしれない。それでも、俺達の関係は壊れない。俺には小町といろはが必要で、小町には俺といろはが、いろはには俺と小町が必要なのだ。この関係は何物にも代えがたいもので、だからこそこの関係は一つの……本物なのだろうと思う。

「お兄ちゃん……」

「お兄ちゃん……」

 帰りの電車の中で遊び疲れた二人が俺の肩で眠っている。

 傍から見たらきっと間違っているのだろう。けれど、俺は間違っていないと断言できる。

 

 だって、俺の見つけた本物はこんなに温かいのだから。

 




水着回だったけど、よくよく考えたら文字じゃあんまりひゃっほー! とならない罠


このシリーズもこれで10話目
予定では後二つほど大き目の話を入れて完結の予定です


そういえば、今朝R-18週間ランキングを見たら・・・1位に!
皆さんの評価のおかげです
ありがとうございます! がんばって完走するのでよろしくお願いします


あ、ただ、そろそろ2週間ほど忙しくなると思うので、ひょっとしたら毎日更新はできないかもしれません
そもそも最初は毎日更新なんて考えてなかったんだけどなー(遠い目
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