※この作品はR-18です。

比企谷兄妹の甘い日常   作:暁英琉

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体育祭とは戦いである

 さて、文化祭が終わると我が校はすぐに体育祭である。……文化祭と体育祭のスパン短すぎない? 一学期あんまりやることないんだから体育祭そっちに回せよ。暑いから参加したくないわ。

 ところで総武高校の体育祭は全校生徒がクラス関係なく赤組と白組に別れる。つまりはクラス内で対抗意識が生まれるわけだ。ぶっちゃけ十クラス三年なんだからクラス単位で分けた方がややこしくないだろと思わなくもないが、学校の方針に口を出すなんてめんどくさ……めんどくさいこと俺がするわけないでしょう?

 いやほんと、文化祭でクラス一致団結したと思ったら体育祭では敵同士とかこの学校怖いね。後怖い。まあ、俺は二年連続文化祭は蚊帳の外だったけど。あ、一年の時も大して参加してなかったわ。

 それは置いておいて、俺は今年も赤組である。そして――

「やあ、比企谷君。今年も敵同士だね」

 さわやか笑顔な葉山隼人は白組である。ていうか、そんな笑顔で「敵同士だね」って言うやつ初めて見たわ。きゃー葉山君はらぐろーい。

 そもそもなんでこいつ組み分け決まった後に即俺のところに来てんの? 今から参加種目決めるし、お前が寄ってくると海老名さんとかが大量出血(鼻)するからやめてあげてほしいです。

「ところで比企谷君。俺の参加種目この三つにする予定なんだけど、当然君も参加するよな?」

「は? 一人一種目参加すればいいのになんで俺が三種目も参加する必要があるんだよ」

 葉山が参加するらしい種目は200m走、1500m走、棒倒しの三種目だ。棒倒しは全員参加の種目なのだからそれに参加すれば十分だよな。ていうか、今年も棒倒しやるんだ……。

「テニスでもテストでも決着つかなかっただろ? それとも、俺の不戦勝ってことでいいのかな、“お兄さん”?」

「てめえ……」

 こいつにしては雑な煽り方だ。釣針が露骨過ぎて普段の俺なら歯牙にもかけないだろう。しかし、事妹に関してはどんな釣針にだって俺は食いつくのである。だってそれがお兄ちゃんだから!

「いいだろう……その減らず口を黙らせてやる。妹は誰にも渡さん!」

「交渉成立だな。楽しみにしてるよ」

「互いに燃える闘志をぶつけ合う俺と葉山。視線と視線、想いと想いが交錯する。その最中、俺はふと思ったのだ。『葉山、俺は……」

「人のモノローグを捏造するのやめてくれませんかね、海老名さん!」

 「えー」っと口をとがらせてくる海老名さんはもう無視しよう。腐女子の相手とかマジ無理。ていうか、今ののせいでせっかくの空気が全然締まらなくなっちゃったじゃん!

 まあ、空気とかもうどうでもいいや……。

 つまり、まあ、あれだ。俺と葉山の闘いが始まったわけだ。

 ちなみに、雪ノ下と小町、いろはは赤組で由比ヶ浜は白組だった。その事実を知ったガハマさんは部室で思いっきり雪ノ下に抱きついて泣いていた。今日も奉仕部はゆるゆりです。

 

 

     ***

 

 

 思いがけず葉山と勝負をすることになった体育祭もあっという間に当日を迎えた。去年みたいに運営の手伝いとかをしたわけではないので本当にあっという間だった。あっという間な上に特に変わったこともないのでカットしてしまうくらい。

 あえて説明するなら勉強して運動していちゃついてた。十六文字で説明出来ちゃったよ。

「ところで……」

 なんか今日はやけに視線を感じるのだが、俺なんかした? ひょっとして社会の窓開いてる? 体育用のハーフパンツにチャックは付いてないな。

「あら、今日はやけに挙動不審じゃないかしら、不審者谷君?」

「…………」

 今日も元気に絶好調な雪ノ下さんだった。俺にそんな趣味はないから、そんな笑顔で罵倒してくるのはやめていただきたい。別の世界線なら一週間無視しちゃうレベル。挙動不審だったのは認めるけど。

「いや、なんかやけに周りから見られてるなと思ってな」

「あら、知らないのかしら……あぁ、ぼっちだからタイムリーな話は耳に入ってこないのね」

 ナチュラルに罵倒の材料にするのやめて。いや、本当に楽しそうですねあなた……。

「今回の体育祭で貴方、葉山君と勝負をしているんでしょう? それで他の生徒の間でもどちらが勝つか予想しあっているみたいね」

「なんじゃそりゃ……圧倒的葉山優勢でただでさえ狭い俺の肩身が余計狭くなるんだけど」

 葉山個人ならともかく、葉山周辺の集団とかマジで相手にしたくない。ありゃ一種の宗教だからな。新興宗教葉山教。新興宗教怖い。

「そうでもないと思うよー?」

 声のした方を振り返ると飲み物を買ってきたらしい由比ヶ浜が駆け寄ってきた。あぁ、なんで雪ノ下が赤組テントじゃなくてこんな中途半端なところにいるのかと思ったら由比ヶ浜のためか。相変わらず仲良すぎるでしょ。

「そうでもないって、どういうことだよ」

「確かに前までのヒッキーは悪い印象ばっかりだったけど、最近は小町ちゃんやいろはちゃんの影響とか隼人君との正々堂々の勝負とかで結構いい評価されてるんだよ?」

「そ、そうなのか?」

 面と向かってそういう事を言われるとさすがに照れるんですけど。今まで妹達以外から褒められることなんてそうそうなかったから耐性がないのですよ。

 いやしかし、自分のことは思いのほか分からなかったりするもんだなーとか考えていたら、ぼっちセンサーが後方からの強い視線を感知。これは……殺気!?

「「……お兄ちゃん?」」

「……なんでございましょう?」

 反射的に口調がおかしくなっちゃったぞ? だってしょうがないじゃない! 振り向いたら小町といろはがこっわい笑み浮かべてるんだから。怖すぎて妹相手に三歩後ずさるレベル。

「なーんでお兄ちゃんはにやけてたのかなー?」

「浮気は……ダメですよ?」

「イエ、ウワキナンテスルワケナイジャナイデスカ……」

 本当に耐性がないだけであって……いや確かに嬉しいんだけどさ。いい評価がつくようになったってことは、転じて言えば妹達が白い目で見られることが少なくなるわけだし。あれ? けどそのせいで俺が妹達から殺気当てられるとかひどくない? 世界残酷すぎない?

「ふう、まあお兄ちゃんが浮気しないのはわかりきってますけどね~」

「そだねー。あ、お兄ちゃんそろそろ200m走だよ」

 どうやら俺を呼びに来てくれたらしい。しかし、勢いで勝負乗っちまったけど……。

「やりたくねー……」

「うわ、お兄ちゃん始まる前から弱音吐かないでくださいよ~」

「いや、テニス勝負と違って純粋な身体能力勝負だからな……」

 そうなのだ。テニスはあくまで二人とも素人だったから多少追いすがることもできたが、この勝負は三戦中二戦が単純な身体技能の勝負。最近になって多少運動を始めた俺とサッカー部部長を務めていた葉山とでは勝敗は明らか……。

「大丈夫だよ! だってお兄ちゃんだもん!」

「それ、理由になってないぞ?」

 根拠もないことを言いながら背中をぽんぽん叩いてくる小町に呆れてしまう。お兄ちゃんだから完璧超人に勝てるなら一人っ子に未来ねえな。

 まあ、よく分からんことを言われたおかげで少し気が楽になった。気負っていても仕方あるまい。俺は、やれることをやるだけだ。

 

 

「さあ、次の種目は男子200m走です。今回の200m走はただの200m走にあらず! 隼人君対比企谷君の三本勝負の一試合でもあります! そう! ハヤハチ! ハヤハチです! 総武高校の中心と言っても過言ではない葉山隼人君と最近人気急上昇中の比企谷八幡君が互いに熱い視線を交わし、互いを高め合う! 戦うことでしか互いを意識することができない! 相容れないハヤハチ! キマシタワー!」

「ちょっ、姫奈擬態しろし!」

 ……あーしさん大変そうね。ていうか、人気急上昇とか嘘乙。俺の人気とか上昇するわけないじゃん。後、今ヒキタニじゃなくて比企谷って呼んだよね? 本当の読み方分かってんならちゃんと正しく呼べよ!

「よろしく、人気急上昇の比企谷」

「うっせ、総武高の中心の葉山」

 ほーら、こいつも調子に乗って絡んでくるし、ほんとめんどくせえ。

 しかし、妹のため……いや俺自身のためにもめんどくさいなどと逃げるわけにもいかない。今回は二本先取の勝負、しかも時間の制限もない。いままでの二回の勝負と違い、明確な勝敗が出る。お兄ちゃんとして、負けるわけにはいかないのだ。

「さあ、もう一組目二組目はどうでもいいから早く終わらせて! 問題は三組目のハヤハチ対決! 勝つのは! 攻めはどっちかああ!」

 ……いや、もはや実況としてどうかと思う上に攻め受けを競っているわけではない。誰か実況変わってよ。やだよこの実況……。

 いつの間にか終わっていた前二組。第三組で一緒になった俺と葉山は隣同士で位置に着く。周りの他の選手は完全に場の空気に飲まれている。そりゃあ、自分たちを完全に無視した実況をされているのだからアウェー感も半端ないだろう。どの道普通に走ったら葉山が一番になる。だから他の奴は関係ないのだ。狙いは葉山ただ一人!

 

 ――パンッ。

 

 ピストルの音と共に走り出す。脚部に込めた力を推進力に変える。先頭は葉山。ダッシュの練習はあまり出来ていなかったが、俺も思った以上の速度が出ている。しかし、相手はサッカー部だ。ダッシュへの慣れが俺とは全く違う。あと少しという差はなかなか縮まらず……。

「一位は隼人君だー! 三本勝負の一本目は隼人君の勝利! しかし、比企谷君との差はほとんどなし! 文化系の部活所属の比企谷君に負けて、他の選手は立つ瀬がない!」

「……くそっ」

 結局葉山が一位のままゴールして、俺は二位。実況の海老名さんの言葉を聞く感じだと、他の選手もサッカー部や野球部なんかの運動部だったようだが、これは葉山と俺の勝負なのだ。葉山に勝てなければ意味がない。

 妹達が、恋人達が自慢できるような比企谷八幡でなければ……悪評の多い俺がそうなるためには葉山と同じくらい、いやそれ以上の結果を出す必要がある。だから……負けられない。絶対、絶対に……。

「絶対に……勝つ」

 さっきまではどこか遊び半分だった。相手はついこの間までサッカー部でエースを張っていた完璧超人。負けて当たり前。そう考えていた。けど、そうじゃないんだ。

 男には、絶対に負けられないときがあるのだ。

 




体育祭編です

ぶっちゃけ一話でサクッと終わらせる予定だったけど、長くなったので二話に分けるスタイル

運動部に短距離で勝てちゃう八幡って・・・
まあ、基本高スペックだから・・・多少はね?

そういえば、この妹シリーズ思った以上に長くなりそうなんですよね
ぶっちゃけ、別シリーズのネタもいろいろ上がっているので、そっちも書いていきたいなーって思っていたり
あくまでこのシリーズが最優先ですが!

今は俺ガイル×SAOのクロスオーバーを書きたいと思っています
アクションのあるSSって書いたことないから書けるかわからんけど・・・
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