カリカリとシャーペンを走らせる。浅く静かな呼吸を繰り返しながら、文字列に目を通し、ヒントを探し出して答えを導き出す。時に全体を読み込んで熟考し、時に当たりをつけて瞬時に答えを書きこむ。
時計をちらりと見ると――時間も残り少ない。見直しの時間はあるだろうか。刻一刻と迫るタイムリミットに否が応でも焦りが出てくる。思考にだんだんと靄がかかり、シャーペンが止まりそうになってしまう。
……いや、これじゃだめだ。
意図的にペンを机に置いて、ゆっくりと目を閉じる。真っ暗な世界で深く、深く息をする。脳に、身体中に酸素をしっかりと行き渡らせていくが……まだ足りない。抑えようとしていた焦りはどんどん膨張していく。
――お兄ちゃん。
――おにいちゃん。
自分だけの世界に声がする。真っ暗な、自分すら見えない世界に、いつの間にか彼女たちはいた。
小町といろは、あざとくもかわいく、健気で明るい二人はいつものようににひっと俺に笑いかけてくれた。
――頑張って!
幻想のはずの声は確かに俺の耳に届いて、増長する焦りを不思議と抑えてくれる。逆に溢れてくるのは温かくて優しいなにか。
大丈夫。思考も視界も限りなくクリア、もう靄なんてかかっていない。再びシャーペンを手にして問題と向かい合った。
…………。
………………。
……………………。
「テスト終了。全員解答をやめたまえ」
平塚先生の声が聞こえると、教室全体の空気が弛緩する。それに合わせて、俺も大きく息をついた。十二月の中旬、三学期が自由登校になる三年にとって、この期末テストが最後の学内テストになる。進学校である総武高校の最後の期末は当然受験を意識したものになり、実質模試のような難易度になるのだ。実際最後のテストである現国が終わるこの時まで、俺の神経はずっと張り詰めた状態だったしな。気を緩めると相当疲れが溜まっていたようで、思わず机に突っ伏してしまった。いやもうマヂ無理……。
「比企谷、おつかれ」
「……おう、お前もな」
テスト用紙を回収した先生たちが退室したようで、葉山が声をかけてきた。こいつもかなり疲れたのか、いつものイケメンスマイルにも若干の陰りがある。いつもテストの後というものはそこかしこで談笑が行われるものだが、他のクラスメイト達も相当疲れたのか多少の会話は聞こえても、あまり活発というほどではない。あ、由比ヶ浜があーしさんに慰められてる。今回難しかったからね、気落ちしたらだめだよガハマさん。
「さすがに模試レベルになると皆疲れちゃったみたいだな」
「まあ、全教科だからな。一般入試じゃ多くて三教科くらいだし、そこだけ見たら今回の方が大変かもしれん」
一理あるかもな、と苦笑する葉山とは今回もさも当然のように勝負をすることになっていた。もちろん文系オンリー、さすがに二年のブランクがある理数系で勝負とか無理だからな。まあ、面倒くさいとは思いつつ分かりやすい目標の葉山に勝負を挑んだのは俺なんですけどね。
ただ今回は……。
「現国はどうだった?」
「途中で頭の中真っ白になったわ。見直しの時間が少ししか取れなかった」
今回はお前に負けたかもなと言うと、当の葉山は一瞬キョトンとした顔をして、フルフルと首を横に振った。
「俺じゃなくて、雪ノ下さんに勝てるかどうかだろ?」
「なっ……!」
なんでこいつがそのこと知っているんだよ。確かに、こと現国に関して俺の目標は葉山ではなく雪ノ下だったわけだが……なんなのお前、俺のこと好きなの?
「最近の比企谷を見ていたら、なんとなくわかるよ」
本当にホモの可能性がありますねこれは。残念ながら海老名さんを喜ばせるようなルートはNGな上に、俺は妹たち一筋なんで戸部あたりとやっていてください。
「どうだろうな、相手は雪ノ下だぞ? 満点取らなきゃ勝てないんじゃないのか?」
いや実際あいつの底は全く見えない。本当に全教科満点とか取っているんじゃなかろうか。チート系主人公か何かかな? やばい、マジで勝てる気がしない。
「そんなことはないと思うけどな」
頭を抱える俺に葉山はただただ苦笑してくるだけだった。
***
テスト後というものは大抵の生徒にとっては羽を伸ばす時期だが、逆に教師にとっては鬼のように忙しい時期なのかもしれない。それぞれの教科に複数の教師がいるとは言え、数日で全員分のテストを添削しなくてはならないのだ。
「それじゃあ、テスト返すぞ……」
そして、それを一日で成し遂げたらしい平塚先生は死んだ目に濃い隈のダブルコンボを披露していた。公務員まで社畜みたいなことしているのを見ちゃったら俺、もう働きたくなくなっちまうよ……いやちゃんと働くけどさ。
「次、比企谷」
「うっす」
さっさと先生から答案を返してもらい、席に着く。机の上の答案用紙は――裏返したまま。ごくりと唾を飲み込んでそれと対峙する。
「…………」
恐る恐る用紙の端を摘まんで……離す。こんなに点数を見るのが怖いと思うのはいつ振りだろうか。いや、そもそもそんな感情を抱いたことすらなかっただろう。いっそこのまま、点数を見ない方がいいのではないだろうか。箱の中の猫が中身を確認するまで生きているか死んでいるか分からないように、この答案も裏返さなければ点数は分からない。分からないままにした方が幸せなのではないだろうか。楽なのではないだろうか。
「……いや」
そんなことをして逃げても仕方がない。どんなに捻くれたところで、既に出た結果は変わらないし、それは紛れもなく俺が出した結果だ。なら、正面から向き合うのが正しいのだろう。
もう一度慎重に答案の端を摘まみ、何度か力を加えたり緩めたりを繰り返す。ことさら大きく息を吸いこんで、一気に捲った。俺には鉛のように重く感じた紙は、当然のことながら難なくふわりと翻って、その全容を眼前に広がらせた。
「ぁ……」
――――――……。
放課後になり、部室へ行くために一人廊下を歩く。由比ヶ浜は相変わらずあーしさん達と談笑タイムだったので置いてきた。
あの後も大半の授業がテスト返却だったり問題の解説だったが、正直ほとんど聞けていなかった。今だって周囲の音がどこか遠いように感じるし、視界が少し暗いような気がする。足はパワーアンクルでも付けているのかと思うほど重いし、なによりも朝とさして内容物が変わらないはずの鞄が取り落してしまいそうなほど……重かった。
「はあ……」
状況を確認するだけで気分が沈み、ついため息が漏れてしまう。
原因は当然のことながら、バッグの中にある現国のテスト。あぁ、思い出しただけでまた身体が重くなる。
九十八点。
間違いなく過去最高の点数。葉山にも勝る点数で、今までの俺だったら確実にガッツポーズを取っているレベルだ。
けれど、これじゃあ全然足りない。相手は完璧超人雪ノ下だ。いや、体力ない時点で完璧じゃないけれど、そこは置いておいて。結局、この点数を取っても全く安心ができないというか、既に敗色濃厚というか……。
「それに……あそこを間違えたのはなぁ……」
減点二点。長文解答のミスでの減点ならまだ納得はできたが、あろうことか漢字問題での凡ミスだった。解答のタイミング的に焦りがピークになった頃……悔むに悔やみきれない。
結局、あいつには何一つ敵わなかったなぁ。
そんな事を考えていると、部室の前にたどり着く。まあ、考えたってしょうがないか。俺の努力が足りなかった、ただそれだけのことだ。
「うっす」
「あら、こんにちは九十八谷君」
扉を開けた瞬間、罵倒なのか判断の難しいあだ名を呼ばれた。指定席に腰を下ろしている雪ノ下は、俺を見てクスリと微笑を浮かべていて……というか。
「なんでお前が俺の点数知ってんだよ」
なんなのストーカーなの? 何それ怖い。
「テストが返された時に平塚先生から聞かされたのよ」
おい教師! なんで生徒の個人情報をそんな軽々とばらしてんだよ。しかもそれ、俺が止めること無理じゃん。そんな横暴だから結婚できな……なんでもない、誰かもらってあげて!
というか、なんでお前はそんなに不機嫌なんだよ。むしろ俺が不機嫌になるまであるんだが。
俺の視線を避難と受け取ったのか、雪ノ下は咳払いをして居住まいを正す。
「とりあえず、おめでとうと言うべきかしら?」
……は?
「なにそれ、学年二位おめでとうっていう嫌味か?」
ちょっと雪ノ下さんいい性格しすぎじゃないですかね。肩の力を脱力させる俺を見て、雪ノ下はキョトンと首をかしげていたが、いきなり声を上げて笑いだした。こんなに面白そうに笑う雪ノ下雪乃は俺にとって初めてで、思わず動揺してしまう。
「な、なんだよ……」
「ふふふっ、まさか比企谷君は私が満点を取っていたとでも思っているのかしら?」
「え……違うのか?」
いやだって、雪ノ下雪乃だよ? 眉目秀麗成績優秀、欠点と言えば体力のなさと口の悪さと方向音痴と人心掌握能力のなさ……あ、すみません一部誇張なんで睨まないで。つうか、ナチュラルに心読まないで。
三白眼で俺を射抜いていた雪ノ下ははあ、と呆れたように大きなため息をついた。そして、どこか優しげな眼をしながら鞄のチャックを開く。
「あなたは私を過大評価しすぎなのよ。私は完璧でもなければ、まして万能でもないわ」
取り出されたのは一枚のプリント。俺のものと同じ現国の解答用紙の最終問題は空欄になっていて、名前の下には九十五の数字が赤文字で大きく記されていた。
「テストの内容を話す相手を作らないあなたは知らなかったかもしれないけれど、そもそも今回のテストで全ての解答を埋めた生徒自体がほとんどいなかったのよ。誰よりも努力を重ねていたあなただからこそ、その点数を出せたのよ」
だから、おめでとう。そう口にする雪ノ下の瞳はどこまでも澄んでいて、底抜けの優しさを見せていた。
「そっか……」
俺の小さな呟きは、どこか柔らかい空気に滲み、混ざって溶ける。冬だというのに、気恥かしさからか全身は不思議なくらいポカポカとしていた。
そうか、それじゃあ俺は――
「目標は達成できたかしら、比企谷君?」
「お前はなんでも知ってるのな……」
まさか、密かに目標にしていた相手にそのことがバレバレとか、ちょっと恥ずかしすぎません? いや、なんか前にも葉山にバレバレだった節あるけれど……。
「なんでもは知らないわよ。あなたは分かりやすいもの」
「……そんなもんかね」
目を伏せて「そういうものよ」と返してくる雪ノ下はどこか嬉しそうで、俺は頬をかいて視線を逸らした。なんだよ、皆して俺のことよく知っていますみたいに……お前ら俺のこと好きすぎでしょ。
「こんにちは~!」
「どもです! ……あれ? お兄ちゃんどしたの?」
部室に入ってきた小町といろはが不思議そうに覗きこんでくる。なんだお前らかわいい顔しやがって、キスした後に抱きしめてやろうか。
「な、なんだよ……」
「ほっぺゆるゆるだよ」
「笑ってるじゃないですか~」
ハッとして頬に手を当てる。ああもう、触っただけで分かるくらいふにゃふにゃじゃねえか。最近事あるごとに頬緩ませすぎじゃないですかね、俺。
「なんでもねえよ」
まあ、きっとそれだけいいことがあったってことなんだから、いいのかもしれないな。
二人の頭に手を乗せてわしゃわしゃとこねくり回すと、二人ともわーきゃー言いながら楽しそうに笑いかけてくる。
きっとまだ足りない。最近になって気付いたが、俺はどこまでも貪欲なんだ。もっと二人に笑ってほしい、もっと二人の自慢になれるような存在になりたい。もっともっと、まだこんなものでは全然満足できなかった。
だから俺は、いくらでも前に進む。自分のために、そして隣で支えてくれるこのかわいくて仕方のない二人の妹たちのために――
「まあ、今回は負けてしまったけれど、センター試験では勝たせてもらうわ」
俺達の兄妹愛空間にはもはや慣れてしまったのか、いつも通りな口調で雪ノ下は髪をかきあげた。いや、正確にはこれは兄妹愛なのだろうか。いやけど、やっぱり俺達兄妹だし、けれど恋人でもあるわけだし……むむむ、難問だな。
というか……センター試験?
「雪ノ下、俺奨学金狙いだから一般入試一本なんだが……」
志望大学の返済不要の奨学金は一般入試での上位成績者に配布されるものだ。まあ、安全策としてセンター利用の方も受けた方がいいのかもしれないが、正直あまり金はかけたくないし、より確実に上位に入るために記述試験の勉強に集中したいっていうのもあるからな。我ながら真っ当な考えだと思う。
「…………」
「雪ノ下?」
しかし、それを聞いた雪ノ下はなぜか呆然としている。その頬は、いや顔面全体が次第強張っていき、学校一の美少女がしてはいけない表情になってしまう。え、何これホラー? 尋常じゃなく怖いんですけれど……。
「私が……勝ち逃げをされる……? 姉さん以外の人間に、勝ち逃げ……。一生の、敗北……敗北……敗北……ふふふ。ふふふふふ」
「「「――――――ッ」」」
怖い超怖い後怖い底なしに怖い! 不気味に嗤う雪ノ下を中心に室温は完全に氷点下。やめるんだ雪ノ下、お前が氷属性の絶大な空間干渉力とかもったらやばい、主に声的な点で。小町といろはも涙目になって震えながら抱きついてきている。ごめんな、お兄ちゃんもあれには勝てる気がしないんだ……。
「やっは……さむっ!?」
ああ、ガハマさんいいところに。早く火属性のゆるゆり攻撃で雪ノ下を鎮めてあげて。
結局、ガハマさんの力でも雪ノ下の暴走は抑えきれず、俺がセンター試験を受けるという形でようやく収まった、なじぇ……。
***
「以上で入学式は終了となります。新入生、保護者の皆様は退席してください」
俺のアナウンスを皮切りに、会場中が喧騒に包まれる。未だ着慣れないであろう真新しいスーツに身を包んだ新入生たちがぞろぞろと出口へと向かう。まあ、そのスーツはすぐにタンスの肥やしになるから着慣れることなんて当分ないんですけどね。
なぜ俺が大学の入学式の進行役なんて面倒くさいことこの上ないことをしなくてはならないのか。いや、ゼミの教授と学部長から頼まれたから断るに断れなかったんですけどね。上司に逆らえない社畜みたいだぁ。
「おにいちゃん、お疲れさまです」
「おう、マジで疲れた……」
手伝いに来ていたいろはが声をかけてくる。いつもはもっとキャピキャピした格好のいろはがピシッとしたスカートスーツを身につけていると、普段とのギャップについドキリとしてしまう。いやしかし本当に疲れた、大学入ってからそこそこ行事だとかに参加してきたけれど、やっぱり人が多いのは本質的ぼっちである俺にはなかなかの重労働だ。
「ただまあ、すぐ近くで小町の晴れ姿を見れたからいいか」
「お兄ちゃんはあいかわらずシスコンすぎますなぁ」
噂をすればなんとやら、聞き慣れた声に振り返ると、今回の式の主役の一人、いや八幡的には今回の主役中の主役である小町が呆れた顔をして立っていた。二年半ほどでだいぶ女性的に成長した小町と、大人っぽいパンツスーツが相まってかわいいというよりは綺麗と呼ぶべき印象になっている。
あれから、俺の受験、いろはの受験、小町の受験と、毎年誰かしらの受験があった三年間も終わり、無事に三人共同じ大学に入学することができた。二人とも事前に勉強を頑張っていたのもあって、あまり苦労しなかったのは幸いといったところだろう。
「ていうか、帰らないのか? 俺達まだ片付けとかあるんだけど」
「ヴぇー、そんな言い方酷くない? 小町的にポイント低いよ」
いやまあ、一緒にいたいって気持ちは痛いほど伝わってきて嬉しい限りなのだが、現在進行形で周りからの視線がやばいと言いますか……。
「あの子って比企谷の妹さん? いろはちゃんもかわいいけど、あの子もかわいいじゃん」
「しかもお兄さんにべったりなのね。まあ、八幡君も妹さん至上主義なところあるけど」
「くー、比企谷先輩羨ましすぎっす!」
おいこらお前ら、聞こえてるから。ていうか、鋭い視線と生温かい視線混ぜるのやめて! 八幡のライフ既にないから!
「はあ、じゃあちょっと待ってろよ。さっさと済ませるから」
「はーい!」
三人で付き合い始めて三年。未だに両手に花状態に慣れない俺であった。
「「「ただいまー」」」
いつの間にか小町も手伝っての会場撤去作業も終わり、三人で帰宅した。帰りも二人が腕に抱きついてきたりするもんだから、八幡のライフガリガリ削れたけど。家に着くころにはもはやマイナスだった。ゲームオーバーしてるじゃんそれ。
帰りついたのは長年慣れ親しんだ比企谷邸ではなく、旧一色邸。俺の大学進学を機に三人で移り住んだこの家にもだいぶ愛着というか、慣れが出てきたように思える。それにしても、学生三人だけでの生活を認めてくれるとは、うちのかーちゃん懐が広すぎるだろ。渋い顔をした親父を説得してくれたし、老後はかーちゃんを存分に労わろう。親父も当然労わりますよ、かーちゃんの次にね。
リビングの時計を見ると昼過ぎのちょうどいい時間。食材もそんなになかったはずだし、着替えてから買い物がてら外食でもするのがちょうどいいかな。
「昼外で食うからさっさと着替えようぜ……んんっ!」
振り返ると、いきなり二人に口を塞がれた。さすがに不意打ちで二人分の体重は支えきれず、フローリングに背中から倒れ込んでしまう。
「ぷはっ、どうしたんだよ二人とも……っ」
ようやく唇への圧迫から逃れて至近距離の二人を見て、呼吸が止まりそうになった。いつからそうなのか、二人の頬は見間違えようのないほど朱に染まり、熱い呼気を纏わりつかせるように漂わせている。その唇は小さく開かれ、紅い舌をちらりと覗かせており、その瞳には、深い情欲の炎がぐるぐると渦巻いていた。
完全に臨戦態勢。え、さっきまで普通だったのにこの変わり身の早さはなんなの? 俺の速さが足りないの?
「お昼……別に食べなくてもいいじゃん」
「え……?」
「受験続きであんまりできませんでしたし……」
「え……?」
ちょっと待て、確かに毎年受験受験だったわけだが、俺の記憶が正しければなんだかんだ二人から求められて週一、週二ペースでやっていたぞ? ていうか、小町の合格が決まったその日からほぼ毎日――
「……いや」
小さく音を口の中で転がして、余計な思考をやめる。そもそも二人がこんな表情をした時点で俺の選択肢なんて一つしかない。……だから二人の受験中もしょっちゅう交わっていたわけだけれど。
「ったく、しょうがないな」
全然しょうがないなんて思っていないのにそんな事を言いつつ、俺は二人を抱きしめたのだった。
間違って、近づいて離れてもう一度近づいて、いろいろあったし、やっぱり傍から見たら歪な関係なんだろうけれど――
俺達兄妹の青春ラブコメは、決して間違ってなんていない。
二人の柔らかい香りが、俺にそう強く思わせてくれた。
これにて前作「ある日妹が増えまして」から続いていた妹シリーズは完結です。
途中、二ヶ月ほど更新が止まってしまったりもしましたが、なんとか完結させることができました。
虜シリーズの方でR-18はだいぶ慣れたと思っていましたが、三人動かすことの大変さは予想以上で、四苦八苦しながら、しかし楽しく書くことができました!
今後は現行シリーズの更新をしながら短編を書いたりしたいなーと
けど、長編向けのネタもいくつかあるんですよね・・・さすがにもう3シリーズ掛け持ちとかしたくないですが!
というわけで、他の作品も読んでもらえるとうれしいです!(ダイマ
ではでは!