前オマケでさでずむされてしまった数人を癒やすつもりで話を書きましたが…
イチャラブ超難しい
というか今回も例によって分割してますが、
まだイチャイチャしてません
「あ゛いっでぇっ!!!!??」
ドサッ、という音を立てて、数人の身体が黒土の剥き出した地面に落ちる。その際、偶然にも尻で小さな小石を下敷きにしてしまったものだから空に向かって怒りの篭った悲鳴が噴き上がった。
「~~~っ!!、いたいいたいいたいっ!、いやちょっと本当痛いっコレ、あぁあ゛っ!!!」
呼吸困難になるほどの激痛が尾骨と小石のめり込んだ右臀部から発生し、彼は一瞬飛び上がったのち、その場に倒れ込むように蹲った。
しかし痛みは一向に尻から引こうとしない。骨が砕け、内部に出血でも起こしてしまったかと錯覚するくらいにジンジンと痛むのだ。
「ふざけんなって!!!!、なんでっ、こ、こんなさぁあ゛っ!!!!」
幻想郷陵辱譚の始まりがこれではあまりにも情けないではないか。
数人は心の底から湧き上がる怒りから辺りに喚き散らした。当然その相手は何処にもいないし、そもそも周りに誰もいないので聞かれることもないのだが、それがまた彼の怒りを煽った。
地面に蹲ったままであるのも何だか腹が立つ数人はまるで駄々をこねるが如く、その場で転げ回った。
黒土と青草がまばらに生えた地面をゴロンゴロンと怒りが収まるまで転げていると、目が回ってしまったのか少し身体を左に転がし過ぎてしまった。誰もいない空間に、ゴンッ、という鈍い音が響いた。
彼は後頭部を地面から生え出ていた太い根にぶつけたのだ。まさに泣きっ面に蜂だった。
「…………、最悪なんだけど…、もう……、ぐすっ」
多分たんこぶが出来ただろう。手で触らなくても分かる。
そう思わせる程の痛みは、数人を強引に落ち着かせた。
冷静に、視界に涙を滲ませながら、寝そべったまま、辺りに意識を向ける。
「何処だよ…、ココ…」
数人の視界には太い木の幹と赤と白の茸、そして少し背の高い草が横から生えているのが映った。
首を90度回転させると、幾重にも重なっている枝と葉が見えた。どうやら自分は森の中に転移してしまったらしい。
尻もまだ痛いし、頭も痛む。
それでもこのままではいけないだろうと数人は身体を起こし、痛みで座れないことに苛立ちながら立ち上がった。そのまま幹に身体をもたれかける。
より一層意識が落ち着いてくると、今自分が何の森にいるのか、という事に気付いた。
「なんでわざわざ魔法の森に転移させるんだ馬鹿か」
どうもあの声の主は気が利かない。普通ならもっと誰かに出会いやすい場所に転移させるだろう。
人里かせめて神社前にしろよ、という数人の恨み言は木々の間に吸い込まれていった。
「にしても魔法の森ってどれだけ広いのか知らないよ。これからどうしろっていうんだ」
まだ痛む頭の中で、幻想郷の地図を思い浮かべた。
確か魔法の森は紅魔館と太陽の花畑、湖、香霖堂と隣接していたはず。
彼は有志の人達が考えた地図と、原作知識からそう導き出し、加えて森に住む住人たちを数え始めた。
「え~と、魔理沙でしょ、リグルでしょ、ルーミアでしょ、ミスチーでしょ。……あと、あと誰だっけ、あの~名前が…」
後頭部を襲った衝撃はそれなりに強かった。だからなのだろうか。口からあの人形師の名前が出てこない。代わりに頭には彼女にまつわるネタしか思い浮かばないのだ。
某サークルの電波曲がネットで大流行したあのキャラ。魔理沙をパチュリーと彼女とで取り合いになると二次創作で良く書かれるあのキャラ。やたらとぼっち扱いされるあのキャラ。
誰だっただろう。
焦る必要など一切無いのに、異様なほどもどかしさを感じる数人は必死に思い出そうとしていた。
腕を組み、頭を傾ける。
「あの~、アレ、ロンドンの…、ブクレシュティ…違う、グランギニョル…も違う、何だっけな。…アレ何だっけ?!」
口から出るのは彼女のスペル名や関連するワードのみ。
東方のキャラを皆屈服させるのだ、と意気込んでこのザマでは恥ずかしい。せめて名だけでも思い出したい。
数人の首は右に傾き、そして左に傾き、また右に傾いた。
喉に細い小骨が刺さった感覚。隔靴掻痒。出そうで出ない違和感は違う意味で数人をイライラさせる。
「あれ何で出てこないんだ。人形だって。人形遣い、人形師。上海とか蓬莱とか……、あのぉ………、アレ。……、あそうだ!!、マーガなんちゃらだ、マーガ………と、ト?、そうだっ!!!、思い出した!!!!」
「何がかしら?」
「いや何がって名前だよ。…そう、アリス・マーガトロイドだよ!!!!、…………………はい?」
もたれている木の後ろから、“彼女”が覗き込むように数人を見ていた。いつから隣にいたのだろう。
思わず数人は二度見してしまった。綺麗な二度見だった。
「大丈夫?、後頭部に大きなコブが出来ているけれど」
名前を叫ばれたことを気に留めていないのか、アリスは心配するように数人の頭を撫でる。
彼女の身体が近づくと、香水だろうか。ふんわりと花のような香りが数人の鼻をくすぐった。
しかし数人は慌ててアリスから顔を背けた。そんな香りを楽しんでいる余裕など無い。
今さっきの独り言までも聞かれてしまったのだろうか。
「いや…、あの…、だい、じょうぶ、です。多分」
数人は焦った。額に脂汗が滲み、首筋に汗が流れる。
それを痩せ我慢と勘違いした彼女は数人の手を取った。
「やっぱり痛むんじゃない。家に来なさい、手当てをしてあげるわ」
数人は更に慌てた。“手当て”という言葉が“尋問”という意味に履き違えてしまうぐらいに慌てた。
自分はやらかしてしまったのだ。魔法の森であれだけ騒いでいたら妖怪や魔法使いが物見に来るのは当然なのだ。野良妖怪に見つかって襲われることは無かったからまだ良いものの、これはこれで大ピンチなのだ。
数人は両手を前に出してまで遠慮の姿勢を貫こうとする。
家に連れて行かれたら何をされるか分からない。
「や、あの。大丈夫っす、大丈夫っすから」
「大丈夫そうじゃないわよ、顔も青くなってる。さ、付いて来なさい」
「いやホント大丈夫ですって」
そういう意味で青いんじゃない、と数人は叫びたくなった。
「くどいわね、上海、蓬莱。この子を縛っちゃって」
「シャンハーイ」「ホウラーイ」
頑なに手当てを拒もうとする数人にいい加減イライラし始めたアリスは、使い魔的存在の上海人形と蓬莱人形に命令を下した。
するとあの人形たちが数人の目の前に現れた。上海人形は金髪で赤いリボン、蓬莱人形は少しくすんだ金髪に黒いキャペリンハットだ。服装もそれぞれ違う。上海は青と白のメイド服なのに対して、蓬莱はゴシック調のメイド服をそれぞれ着ている。
2対の人形がふよふよと数人の身体を回り始めると、見えない魔力の糸で締め付けた。
「うわぁ本物だ、あっ何でもないです。あ駄目、ちょ、ちょっと」
数人はテンパり具合も高まって、ますます墓穴を掘ってしまう。
そして遂にミノムシみたいに巻かれてしまうと、数人の身体の両端に上海人形と蓬莱人形が挟むように浮き、彼の身体を引き上げた。
まるでヘリコプターで輸送される戦車のように身体が浮かんでいくと、数人の焦りもピークに達した。
アリスは魔法使いではない。魔法使いは魔理沙だ。アリスは“魔女”なのだ。人間から外れた存在なのだ。
数人の頭の中で魔女の悪いイメージが急速に膨らんでいく。
生贄、生き血、大釜、呪い………。
(もう駄目だな)
肩から足首までご丁寧に巻かれてしまうと、指先一つ動かせない。
数人は静かに項垂れた。諦めの境地だった。
そんな、人形師“アリス・マーガトロイド”との出会いは、両脇の人形からバカジャネーノと罵られる形で始まったのだった。
イチャイチャっていうのはね…
過程が大事なんだ…
事の過程を省いてしまってはイチャイチャの価値が下がってしまうんだ…
数人の能力が誰かれ構わず惚れさせる能力だったら話は早いんですけどね
そうじゃないのでね
ちゃんと男女の馴れ初めを書かないと違和感バリバリですからね(絞首
そんな考えだから本編も鈍亀の如く進まないんだけどね