-あらすじ-
神力を過剰摂取したことで限界突破したルーミアがパワーアップ
見てくれはさほど変わっていないが妖力と能力が大幅に強くなりました
「いよいよ残すところ2ヶ月切ったねぇ…」
「そうだな、詳しく言えばあと1ヶ月と28日だ」
(今頃数人はどうしているんでしょうね)
のんびり。
家事から掃除、村の見回りに至るまでほとんどの仕事を子白蛇たちに任せっきりしている2柱と1匹は、今日も朝から優雅にお茶を味わっている。
(いつ出発するのです?)
「んー?、何のことー?」
ハクが首をもたげながら今日の予定を確認する。
しかし諏訪子はそれが一体何のことなのか、本気で分からないようだ。
大の字に寝転んで呆けている。
「…脳みそ溶けちゃったんじゃないのか」
胡座をかく神奈子は村人の陳情が書かれた木片を読みながら、ボケてしまった諏訪子を横目に呆れた。
ちなみに陳情と言っても諏訪国において村人から言われる文句は、道の整備をしたいので許可をくれ、新しい果物の種を手に入れたので植えても良いか、など随分と平和なものばかりである。
「今日は年に一度の集会だろうが、一応この国の頭なんだからしっかりしろ」
「はーい」
神奈子は喝を入れるつもりで少し語気を強めたものの、諏訪子はぼんやりしたまんまだ。
「ハクー、今日はねー、早めに昼ごはん食べてから出発するからー…」
そう言うと諏訪子は瞼を閉じてしまう。
神奈子が何か文句を言おうとする前に、すーすーと寝息を立て始めてしまった。
(平和ボケですねぇ)
「平和ボケもあるが、数人がいないとこんなに腑抜けるのかコイツは…」
(…私、子白蛇たちにご飯を早めに作るよう伝えてきます)
するするとS字を書くようにハクは這って部屋から出て行った。
諏訪子と2人きりになった神奈子は、もう一息だとやる気を起こすつもりで湯呑みをあおって陳情を捌き出した。
カラン、カランと乾いた音を立てて出来ていくのは種類別に分けられた陳情の山だ。
神奈子の正面に出来たのが何かしら許可を求める陳情の山、右膝の前にあるのが村人ではなく神が処理するべき事案の山、そして反対側にあるのが今後村だけでなく国として発展するためにどうしたらいいか等という相談事の山。
(まったく、私は軍神だぞ。戦で輝くはずの神がどうしてこんなことをやっているんだか…)
真に目を通すべきなのは隣で二度寝している諏訪子のはずなのに。
しかし馬鹿らしくなってきたとは言え、やり始めたからには最後までやり通さなければ気が済まない。
結局、神奈子が取り敢えずと陳情を仕分け終えた時には既にお昼ご飯は出来てしまっていた。
目の前を子白蛇とハクたちが器用にお昼ご飯をお盆に乗せて運んできている。
「ん、ん~~~~~~~っ!!」
軽く上半身を反らすだけでパキパキッと背骨や肩甲骨辺りから小気味いい音がする。
やはりこういう事務仕事は自分に向いていない。
(神奈子様お疲れ様です、結構陳情溜まってたんですね)
「まぁ、隣で寝てるコイツが溜め込んだのが原因だがな」
もう寝始めてから結構経つというのに未だ起きる気配のない諏訪子に段々腹が立ってきた。
こっちは真面目に仕事をしたというのにだ。
露出したへそ周りをおっさんのようにポリポリと掻いているのを見て、ついに神奈子の堪忍袋の緒が切れる。
「い・い・加・減・に……起きろっ!!!!」
砲弾型の胸を突き出して背伸びした神奈子は、大きく天井に向かって伸ばした手をそのまま諏訪子の額に振り下ろした。
ゴンッという鈍い音を立てて、諏訪子の上半身は一瞬バウンドする。
目覚まし代わりにげんこつを叩きこまれた諏訪子は口から涎を吹き出しながら、悲鳴を上げることなく撃沈。
ついさっき寝ていたはずが、今度は白目を向いて気絶してしまった。
(やり過ぎですよ…)
「いやぁ、いかんな。力の加減が出来なくなってる。最近身体を動かしていないのが原因だな。……それに諏訪子も、この程度で気絶とは弱体化も良いところだ」
神奈子は、むしろ気絶する方が悪い、と言い放つと子白蛇たちが頭に乗せてきたお盆を机に並べ始める。
ハクも神奈子を責めつつも思うところはあるようで、時折指をヒクヒクさせる諏訪子を放置してお椀にご飯を盛り付けていく。
「まぁ、しかしここ最近は諏訪だけじゃなく、他の国もだいぶ平和だからな」
(そうですねぇ、お土産話を聞く限りではこの島自体が色々落ち着いたのでしょうか)
「どうせ今日の集会も特に何事も無く終わる。そのまま晩ごはんを食べるだけになるだろうさ」
(それでしたら今度またあの大きい海老を持ってきて下さい、あれ美味しかったんです)
「海老かぁ、数人も多分気に入ると思うがなぁ。食べさせてやれないのが残念だ」
机に料理が並べ終えられたところで、ハクの尻尾が諏訪子をゆさゆさと揺さぶった。
「う、う~~~ん……、い、痛い、デコが痛いぃ…、何でぇ?」
「寝ぼけてないでご飯食べるぞ」
鈍く痛む額を擦る諏訪子。
都合の良いことに神奈子に殴られたことが記憶に無いらしい。
寝ていた仕返しをもう少しするつもりで、患部を軽く突いてやったら悲鳴を上げてのたうち回った。
……面白い。
(神奈子様、遊んでないでご飯食べましょう)
「そうだな、そうしようそうしよう」
「うぅ、数人ぉ、2人が苛めるよぉ……」
昼の献立に出ていた川魚の塩焼きに舌鼓を打ち、食後の甘味としてきなこ餅を頬張った。
子白蛇たちの料理の腕前も随分と成長したものだ、と神奈子は頷く。
そして食器やお櫃などを下げたあと、2柱は集会の準備を始めた。
今までは適当に手ぶらで出発していたが、国が発展してからは特産品とかを持ち寄ることになったので少々面倒になった。
鉄製の器、水差しなどの工芸品や、諏訪国で採れる美味しい野菜などを纏めて風呂敷に包む。
「…諏訪子、何ふらふらしてるんだ」
「う~、神奈子が寝ている私に攻撃したのが悪いんだろっ」
諏訪子は恨みがましい視線を神奈子にぶつけると、さっと患部を見せ付けた。
そこには、寝呆けてぶつけたとは言いにくいまんまるのたんこぶが出来ていたのだ。
「元を辿れば寝たお前が悪い」
やり過ぎたのは否めないが、素直に謝るのも癪だと言い放った。
「数人が帰ってきたら1番にここ舐めてもらうもん」
「何馬鹿なこと言ってるんだ、そんなたんこぶ程度明日にでも治るだろう」
「やー、それがねー…」
諏訪子はポリポリと頬を掻く。
明後日の方向を向いて何か言いづらそうにしているのを見て神奈子は何か嫌な予感を覚えた。
「ど、どうも神力がお腹の子に行ってるみたいで……」
的中だった。
そう言えば諏訪子は妊婦だ。
300年以上身籠っているのに身体的変化が一切無いから忘れていたが、妊娠しているのだ。
もしようやくお腹が出てくる段階に来たとして、妊婦として身体的に疲労を感じ始めたというのであれば今朝のことも頷ける。
胎児に諏訪子の神力が供給されるとなれば生まれてくる子に色々と期待出来そうだが、今どれほど諏訪子は弱っているのだろうか。
「あー、でも大丈夫大丈夫。今朝のは普通に二度寝しただけ………ッ、ヒギィッ!!!!」
「ほぼ問題ないじゃないか、ええ?!!」
トントントントントントントントントンッ!!
まるでキツツキのように神奈子の人差し指がたんこぶに何度も突き刺さる。
「あっ、あ゛っ、あ゛っ、ごめ、ごめんっ、でもっ、でも前に戦った時ほどの力は出ないよっ」
「それでも十分だろう…」
心配して損したと神奈子は溜息を吐いた。
適当に荷物を纏め終えると、諏訪子のこぶに左手を当てがって神力を流し込む。
一瞬淡く光るとたんこぶは消え、鈍い痛みも収まった。
「さぁ、もう出発だぞ」
「はいはい、分かってるよ、……数人が居ない分変な心配しないで済むのは有り難いかもねぇ」
「それはまぁ、分からんでもない」
数人がいないということは、あのような出来事への心配はしなくて済むということでもある。
とは言え今度はハクに何かあっても嫌なので厳重に結界を貼って、尚且つ近くにいた子白蛇たちに守衛が務まるように力を与えて念を入れる。
そして2柱はハクに出発することを伝えると、境内に出て空へと一気に飛び上がった。
目的地は出雲。
この島国に済む神々が一同に会し、それぞれが各地で起こったことなどの情報を伝え合い、そして日頃の疲れを癒やし晴らすために飲み明かすパーティーが始まるのだ。
諏訪子たちが出雲へと飛び立った頃、迷いの竹林にある長屋の一室に妖怪組が囲炉裏を囲んでいた。
彼女らにとって非常に大切な話し合いをするため、念を入れて数人はリグルのある蟲の睡眠毒によって深く眠らされている。
「最近の数人はどういうことなんじゃ」
「てゐが悪いよ」
「てゐが悪いわね」
「私?!、…あんたたちも楽しんでたでしょ?」
悪いのは私だけじゃない、あの時止めなかった皆も悪い。
因幡てゐは白濁酒の入った竹筒を、ダンッと床に叩きつけた。
お酒のアテになるようにと準備されたイナゴの佃煮とかが乗ったお皿が一瞬浮く。
重要な会議をするというのは建前ではないのだが、5人が集まってまず口にしたのはここ最近の数人の豹変ぶりだった。
「…儂がヒィヒィ泣かされるとはのう。屈辱じゃよ」
マミゾウはそう愚痴るが頬は少し赤い。
精液をひりだしながら受け止め続けたあの夜を思い出しているのだ。
「影狼の遠吠えうるさかったよ」
「リグル、あなたの泣き声もうるさかったわ」
影狼は狼化した時のプレイが非常にうるさかったとリグルに文句を言われるが、リグルも大概だったのでお互いに罵り合っている。
「んぅ?、気持ちいいし何でも良くないー?」
数人に泣かされようがイカされようが気にしないのはルーミアだけであった。
みんながあーだこーだ言うのを疑問に思いながら、クピクピと白濁酒を飲んでいる。
他4人はそれぞれの体験を思い返して頬を染めながら悔しんでいる。
「良くないの、……というかルーミア、何であんただけ妙に相性いいのさ」
「さぁー」
ルーミアが妖怪としてワンランク上の存在になったと気付いた4人は非常に驚いた。
ふたなり化しても早漏気味だったあのルーミアが、である。
あれから身体はどういうわけか元の大きさに戻ってしまったものの、瞳だけは綺麗なルビーのように透き通ったままだ。
そして肝心の闇を操る能力というのも神力のおかげで随分とパワーアップしていた。
「今どれだけ闇を展開出来るんじゃ」
「うーん、どうだろー?、迷いの竹林ぐらいなら真っ暗に出来るんじゃない?」
「他に出来ることは増えたのかしら」
「闇がご飯を食べれるようになったよ」
ほら、とルーミアは自分の右手に小さな球体の闇を作り出す。
そこに影狼が恐る恐る白濁酒を零すと、手から溢れることはなかった。
「まさか自分の身体に通じとるのか」
「それも出来るけど、なんて説明すればいいんだろーなー」
「触れた物がどっかに行っちゃう感じ?」
「そうそう、それそれー」
「…それ凄くない?」
今までは自身を球体の闇で覆うくらいのことしか出来なかったのがとんだ成長である。
視界や光を封じることが出来る闇と、触れたものを飲み込み消滅させる闇の2種類を扱えるようになったのだ。
マミゾウやてゐも神力を子宮や胃で受け止めることで今まで以上に力が漲ってはいるのだが、流石にルーミア程の成長は未だ得られてはいない。
リグルはイナゴの佃煮を頬張りながら白濁酒を呷る。
甘辛くてさくっとした食感にお酒も進んでいる。
薄まった精液が喉を通って胃に落ちていくと、ふわっと身体に力が溜まっていくのが分かる。
自分がルーミアのように強くなったら能力的にはどうなるのだろうか。
「ルーミアだけ進化した理由も考えられなくはないのよね…」
「食欲でしょ?」
「むしろソレ以外にあるのかのう」
ルーミアは影狼たちにそう問われるが、本人自身も理由は掴めていない。
首を45度傾けて、ん~と唸っている。
「ああー、でもあれだよー、もうお腹いっぱいだぁーってなってから注がれると強くなった気がするよ」
ポンポンとお腹を叩く。
ルーミアは物理的な意味でも神力的な意味でも破裂する限界の先に進化の理由があるのだと説明した。
限界の先。
マミゾウは子宮の上辺りをさすって、てゐは胃のあたりをさすっている。
「でもそれが通用するのってルーミアくらいじゃないの…?」
「というか偶然上手くいったのかもしれんしのう…。儂らがやったらそのまま破裂死しそうで怖いわい」
実例を前にしても、その実例が実は核心を突いたことを言っていたとしても、自分の命を掛けるまではいかない。
より大きな存在になれるとしても、死ぬ可能性、しかもよりよって破裂死という酷い死に方をするとあっては及び腰になるのは仕方ないのである。
それぞれが自分の進化に思いを馳せる中、話が一段落したと判断したてゐが空気を一新するつもりで手を鳴らした。
「さ、雑談はここまでにして、本題に入るよ」
今回てゐが周りの知恵を借りて話し合いたかった事、それは。
「何処に数人を預けるか、じゃな」
「そう」
事前に聞かされていたマミゾウが代わりに発言した。
リグルたち3人は大事な話をするとだけしか聞かされていなかっただけに驚きを隠せないでいる。
「ね、ねぇ。洩矢神に素直に返した方がいいんじゃないの…?」
「そうよ。またいつか借りられるかもしれないし、何もわざわざ波を立てるような事をしなくてもいいじゃない」
文句を言うリグルと影狼にてゐはハッキリと言い放った。
「気に入らないのさ」
「何がー」
「あんな面白くて可愛くて面白い子をすんなり返すのは気に入らないってこと」
てゐのあまりに身勝手な考えに呆然とする2人。
ルーミアだけ、うんうんと頷いていた。
ルーミアも素直に数人を返却することに思う部分があるようだ。
「……」
「え?、それだけっ?!」
あまりに身勝手で、しかも理由がそれだけしかないことに影狼は思わずツッコミを入れた。
前もって知っていたらしいマミゾウに視線で訴えかけても、首を横に振って、諦めろとでも言うような表情を浮かべている。
マミゾウも聞かされた時は呆れ半分、バレたら諏訪子に殺されるだろうという怒り半分でてゐを説得しようと試みたものの、やたらてゐの意志は固かった。
「そう。……だって気に入らなくない?、自分は数人のご主人様だから、みたいな顔してさ、私たちに中途半端に数人を味見させて取り上げるんだよ?、ムカつくじゃない。そもそもね、あんな良い男の子はあいつだけの手には余るのよ絶対」
「…やけに熱弁するのう、てゐお前」
「何」
ははーん、此奴もしや。
マミゾウは口角を釣り上げててゐを見た。
数人を預かるという話を聞いた初めの頃は数人を利用して使い捨てるつもりでいたのに、今では素直に返したくないという気持ちになったのだ。
じっと見透かされるような視線を浴びるてゐはマミゾウを睨み返すが、マミゾウ本人はてゐの内心に気付いて生暖かいものを見守るような立場になっている。
こんな捻くれ妖怪兎を落とすなんてあいつ中々やるのう、と煙管をぽかぁっと吹いたその時だ。
「分かる、分かるわよその気持ち!!!!」
「だ、誰っ!!!、ていうか眩しっ!!!」
誰もいないはずの庭から姦しい声が飛んできた。
そして声と同時にあまりに眩しすぎる光が障子を貫いて部屋を煌々と照らす。
スパァァンッ、と豪快に襖が開けられると、そこに立っていたのはいつぞやに会った月の姫、蓬莱山輝夜であった。
「あ、あんたは…」
「てゐ、分かる、分かるわ。私もずーーーーーーっと思ってたの。あいつ300年もの間何してたか知ってる?、日がな横になって過ごしてたのよ。さも数人は自分の元に必ず帰ってくる、みたいな態度取っちゃっててね。ムカつくったらないわ」
呆然としている妖怪組に対して挨拶をするどころか、いきなりてゐの両手を握ると自分の思いの丈を吐き出す輝夜。
目を丸くして聞いていたてゐも輝夜の熱に絆されたのか話の途中から強く頷き出した。
「でしょ?!、ほらやっぱり素直に返すのは無しだね、一泡噴かせてやらないと気が済まないもん」
「いや、まぁそれは分かったが…」
「ちょっと姫様ぁ!!!!!」
「うひゃぁっ、なになにーっ」
「あ、青と赤の人」
「私は八意永琳ですっ。ってそれは今はいいんです、姫様勝手に地上に行かないで下さい」
またピカーッと強く光ったかと思うと、今度は姫のお付きの八意永琳が登場した。
一緒に地上に行くつもりが輝夜が先行してしまったからか、慌ててすっ飛んできたらしい。
その証拠に髪が少し乱れている。
「いいじゃない。今私は因幡てゐと心の友になったのだから」
「ああ、そうさ」
「何2人して無い胸張ってるんですか、………凹ませますよ」
「「ひぃっ」」
いつの間に心の友になったのか。
てゐと輝夜は肩を組んで誇らしげに胸を張る。
永琳はあまりの輝夜の勝手さにこめかみ辺りに青筋を立てつつ、普段より1オクターブ低い声で2人を脅した。
「ちょっと面白いね」
「ドタバタしてるもんね」
「儂もどうでもよくなってしもうたわ」
てゐの身勝手さに呆れていたリグルたちも、突然賑やかになったことでどうでも良くなってしまっていた。
どうせてゐを止めることは出来ないのだし、事の流れを見守っていくとしよう。
そんな諦めの表情がそれぞれの顔に浮かんでいた。
「で、輝夜はどうしてここに来たのさ」
「そう、数人を何処に預けるかって話でしょ?」
月から逐一監視していた輝夜はさも当たり前のように話を繋げる。
てゐもそれに疑問を感じてはいるものの、月の姫の提案とあれば確実性もそれなりだろうと言う一種の安心感を感じていた。
実はてゐはこの計画を思いついたは良いが、全くもって適した場所を考え付くことが出来なかっただけに縋る思いで輝夜を頼った。
「もしかしていい案あるの?」
「あるわよ~。あの蛙ですらおいそれと手が出せない場所よ。そこに数人を預けてしまえば、諏訪子も多少大人しくなるはずよ」
それは何処だろうか。
……まさか大国主様のところではないだろうか。
そこならばあの洩矢神であっても手は出せないだろうけど…。
「姫様、大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫、だってもう向こうと話ついてるもの」
「は?」
「あ」
永琳は輝夜が何処を言うのか分かっていた。
というか豊姫たちと相談し合った上で何処に預けさせるか決めていたのだ。
まさか、勝手にアポイントを取っていたとは思わなかったが。
「………………まぁまずは豊姫からにしましょう。…次は輝夜、あなたですよ」
こめかみに浮かんでいた青筋は消え、それと同時に永琳の顔から表情も消えた。
抑揚のない声で輝夜と今頃モニター室で頭を抱えているであろう豊姫への処刑宣言がされる。
「話を進めてくれんかの」
永琳から発せられる非常に剣呑な雰囲気に呑まれかけているマミゾウは、額から一本の汗を流しながら話を続けるように促す。
リグルや影狼は怒気に当てられて縮こまってしまった。
「そ、そう、そうね、そう、うん。あ、ああ、あのね、てゐ」
輝夜も本気で怒った永琳の恐ろしさを知っているからこそ、今のとてつもない失言に自分を責めつつ、お仕置きへの恐怖を隠し切れずに何度もどもってしまう。
「うん」
「ん、ん゛んっ、あのね、…………豊聡耳神子って知ってる?」
てゐ含め妖怪たちは聞いたことのない名前に揃って首を傾げた。
「いやぁ~面白い話がたくさん聞けたね」
「…そうだな」
いつかの時と同じように、2柱は満天の夜空を泳ぐように飛んでいる。
神奈子は酒を飲み過ぎてふらふらと蛇行しているが、その原因は今回の集会にあった。
海を渡った先からの侵略も途絶え、一島国として内陸の発展に勤しむことが出来るねと大国主と神奈子が盃を交わしていた頃、諏訪子は他の神たちと各地の出来事などの情報の交換に努めていた。
話が終わったのか神奈子のところに戻った諏訪子はいやにご機嫌で、どういう風の吹き回しか神奈子と大国主の空いた盃に酒を注ぐ。
目を丸くする2柱を前に諏訪子はとんでもない発言を大国主へと投げ掛ける。
神が妖怪と懇意になるのは不味いのか、と。
大国主は諏訪子の意図を直ぐ様理解した上で、こう言ってのけた。
人々に影響を与えないのなら、そういう遊びも構いませんよ、と。
神奈子は含みかけていた酒を吹き出すと慌てて、諏訪子が話していた神々の元へと飛んで行く。
そこで耳にしたのは神奈子が1番聞きたくない話だった。
「人間が朝廷という政府を作り、この島全土を管理に置こうとしてるなんてね。夢のある話じゃない、ね!!」
「……あ、ああ、うん」
「それに、それにねぇ」
諏訪子の楽しげな声が、キンキンと酔いの回りすぎた頭に響く。
「な、なぁ、諏訪子」
「うんー?」
「止めような」
「うん?」
「止めよう、な」
な、の部分を強調する神奈子。
効果があるとは思えないが、言わずにはいられなかった。
「………それは数人次第かなぁ」
「……う、む。そうだな」
諏訪子の脳内には一体どんな風景が描かれているのか、今彼女の表情は満面の笑みを浮かべたままだ。
神奈子は痛む頭をなんとか駆使して今後の展開を必死に予想する。
しかしどう足掻いても、どう都合の良く考えても、嫌な予感はこびり付いて離れない。
これはもう運命なのかもしれない。
数人は女難の運命に囚われ、そこから逃げ出すことは出来ないのだろう。
「しかし凄いよね。神に立ち向かえるほど強大な妖怪がちらほら生まれてるなんてさ、面白いよね~」
「私は会いたくないなぁ、会いたくない」
「なんでぇ、軍神としては戦ってみたくないの」
「やー……、どうだろうなぁ……」
神奈子の意気消沈としたテンションとは対照的に、諏訪子は非常に饒舌で無駄に飛び回ってすらいる。
神奈子はそれに腹立たせる余力すら残ってはおらず、濁すような反応しか出来ていない。
「私は会ってみたいなぁ。数々の鬼共を従えた女鬼、鬼子母神と境界を操れる最強の妖怪、八雲紫。それに他にも花を……」
あー、聞きたくない、聞きたくない。
顔も知らない女の名前など聞かせるんじゃない。
神奈子は耳を塞いで飛行スピードを上げに上げた。
「いやいやいや、待った、待ってくれ。帰ろう、な。ハクが海老を心待ちにしてるんだ」
諏訪子は神奈子のスピードに置いて行かれるどころか、朝の話はどこ吹く風と言わんばかりに余裕の表情で追いついている。
「う~ん、そうだね、ハクにお土産話聞かせてあげないと」
神奈子の吐いた溜息は夜空に消えて溶けていく。
もうこの際女が増えるのは諦めよう。
言いたいことは山程あるけど、諦めよう。
諏訪子の計画に乗ってしまった以上、こうなることは分かっていたはずじゃないか。
自分に出来ること、それは数人を愛してあげるだけだ。
だから数人が帰ってきたらとびきり抱き締めてあげるんだ。
数人の身体に私の体臭が移ってしまうくらい、思いっきり。
とうとう色々と出てきました
ここら辺からどんどこ登場キャラが増えていく予定です
最近Kindleのセールがあったので思わず買ってしまいました
あまりに手頃に電子書籍が買えてしまうシステムに恐怖しております
現在の私のKindleの中身
・ウィッチ&エッチ クールな魔女をマゾ調教してみた
・紳士なオークを目指します(1)
・騎士様の奇矯なコレクション(1)
・おさない疼き 美少女たちの秘密基地
・貸し出し妻、満里奈の“ネトラセ”報告敏感妻と絶倫大学生
・ランプの魔神が美女だったので、恋人にして同棲性活を初めてみた
・淫靡な洞窟のその奥で(1)
・お嬢さま三姉妹にぺろぺろされ続けるのをやめたい人生だった
・いけないこと、しよう?
・僕だけの未亡人義母 こんな衣装を着せないで
・人妻と痴漢集団
・最高の年上誘惑レッスン ママと叔母とピアノの先生
フランス書院の作品が安いのが悪い
あとオシリス文庫の作品の1巻が軒並み100円切っているのも悪い
電子書籍を食わず嫌いしてましたが、今や虜です