-あらすじ-
突如表れた謎の妖怪に襲われてしまった妖怪一行
彼女たちが気を失っている間に数人は何処かへと連れ去られてしまうが…
1
「…はよう、数…」
「数人、…きて、…人」
「う、ぅん」
誰かにお腹を揺さぶられて数人は寝惚けた瞳を擦る。
鈴が鳴るような声だ。どこかで聞いたことのある声にぼんやりと意識を取り戻していく。
「おはよ。元気してた?」
数人の瞳を覗き込む顔がある。ようやくピントが合ってきた数人は声の正体に気付く。しかし身体からは疲れが未だ抜けておらず、微妙に気怠い。そんな寝起き抜けに相手をするのは面倒な人物だと数人は認識して、上から降り注ぐ好奇の視線から逃れるように身体を横にした。すると、目の前に青と赤の2色の出っ張りのようなものが目に映った。
「元気してたもなにも、月から見てたんなら知ってるでしょ…。元気じゃないよぉ」
何でこの2人がここにいるんだろうと思いながら、今まで放置された恨みを込めて皮肉を言う。初日に助けに来てくれればいいのにさぁ、と心の中でも悪態をつく。額にしわ寄せて、筋肉痛のような鈍痛を訴えるお尻を右手でさすると、撫で心地の良い布地に触れた。巫女服は色んな体液でびしゃびしゃになっていたはずだが、乾かして着せてくれたのだろうか。
ふいにその手をどちらかに掴まれる。数人は怪訝そうな声を上げた。
「……何よぉ」
「何よぉ、じゃないの。寝呆けないの」
「俺は疲れてるの。元気じゃないの。見てたんなら知ってるでしょぉ?」
「…起きないと永琳特製の超強力な媚薬打ち込むわよ」
「起きます起きます、……まだ寝たいのに」
末恐ろしい脅し文句を言われて、数人は慌てて身体を起こす。そして胡座をかくと1つ大きな欠伸をしながら、思いっ切り背中を伸ばした。
「おはよう、鴇矢数人」
「…何で今更フルネームで呼ぶの輝夜」
「別に?、意味なんてないわよ?」
しれっと言う輝夜に早くも面倒臭さを感じた数人は、視線をもう1人の存在へと移す。輝夜の隣にいるのは永琳だ。いつからこの2人はこの部屋に来ているのか、襖の隙間から差し込む光を見て数人は不思議に思った。
「久しぶりね」
「そう…ですね。お久しぶり、です」
永琳は数人ににっこりと微笑みかける。数人は吃りながらも愛想良く返した。永琳も輝夜と同じく絶世の美女なのだが、そういう部分で吃ったのではない。色々と周りがやらかしてくる中、永琳だけは自分に目立ったことをしてこないのだ。やったことと言えば拉致計画の立案及び主導くらいだが、それだけに済むはずはないだろう。彼女の能力の恐ろしさは同人誌で嫌というほど確認しているので、どうしても1歩引いた反応を取ってしまうのだ。永琳特性の媚薬と聞いて慌てて起きたのも、彼女の能力の恐ろしさを信用しているからであった。
「どうして私の時と反応が違うのよ」
「いや輝夜はなぁ…」
輝夜が頬を膨らませる。
輝夜も怖いことには怖い。実力的に言えばどう足掻いたって勝てる存在ではないのだから。でも輝夜を相手にすると、高校の時にいた色んなことに興味を示すお転婆な女の子、という認識がまず最初に来るのでついつい気の知れた友人のように扱ってしまう。
正直言うと月のメンバーの中では輝夜が1番怖くない。ちなみに永琳がトップで次は豊姫である。
「そこで濁されるのが1番腹立つわね」
「でも笑ってない?」
「久々に数人とお喋りしてるから。やっぱり数人と一緒にいると楽しいわねぇ」
数人は、ん、と1つ咳払いをする。前言撤回だ。輝夜はそういうむず痒くなる言葉をさらっと言うので別の意味で怖いかもしれない。照れを誤魔化したつもりだったが、2人ともしっかり気付いていた。永琳は微笑ましいものを見る目で見つめ、輝夜はしたり顔でニヤニヤ笑っていた。
小っ恥ずかしくなった数人はどうして2人がこの小屋にいるのかを聞く。
「色々とね?、説明したいことがあるのよ」
「そう。だから数人にはそろそろ起きて欲しかった訳なの」
(諏訪子に迎えを頼まれたのか?)
2人はそう言うと立ち上がる。ただ立ち上がっただけなのに、一々挙動が美しい。無駄がないというか、何というか。久し振りに見る2人の清楚な動作に一瞬見とれてから、数人も立ち上がる。
(がさつって言うとあの5人は怒るんだろうけど。マミゾウとかてゐはおっさん臭いんだよね…)
立ち上がる度に、よっこいせ、と口にする狸と兎を思い浮かべた。特にマミゾウは口臭が煙臭いのもあって一際おっさんに近い。
永琳が襖を開けると、輝夜と数人が先に外に出た。数人は艶艶として歩く度に揺れる輝夜の黒髪と、音を立てずに歩く永琳に挟まれて廊下を歩いている。するとふんわりと優しくて如何にも高貴さを感じさせる薫りが数人の鼻梁を刺激する。一体何の匂いだか分からないものの、2人のイメージに合う薫りが数人の中に残っていた眠気を覚醒させた。
(いい匂いがするなぁ…。あの諏訪子でもいい匂いするんだけど、この2人は別格だよなぁ。香水なのかな?、確か匂い袋とか香木とか色々あるような気がするけど)
何言われるか分かったもんじゃないから絶対に言わないけどね、と数人は思う。
輝夜の足が止まる。すると何故か輝夜は数人の方を向くと、囲炉裏部屋の入り口の前で少し横にずれた。
「ああ、戸を開けろってこと?」
諏訪子が言うなら自分で開けさせるだろうが、輝夜相手だと不思議と従いたくなる。気の知れた女友達と感じながら、でも無意識の内に輝夜をエスコートしたくなる。端々に滲み出る気品さが自分にそう思わせているのだろう。東方Projectの強キャラたちが大概持っているカリスマという存在を数人は強く意識した。もし自分があの目的を持たずして輝夜に初めて会ったなら、自ら進んで従者になったかもしれない。…なったとしてお互いにからかい合う姫と執事という関係になりそうだけど。
そんなことを思いながら、数人は入り口の引き戸に手を掛ける。
「違うわよ。先にお入りなさいってこーと。その気持ちは嬉しいけどね」
「何だよもう…」
輝夜はくすくすと笑う。後からもふふと笑う声が聞こえた。
数人は自分の早とちりに顔を赤くして、逃げるように戸を大きく開けて部屋に入る。そして数人はそこに居た妖怪たちの衝撃的な姿に思わず言葉を失った。
2
「なっ」
「遅いよぉ…、かずとぉ…」
「そう、じゃよ。もちっと早く来て看てくれれば、ごほっ、ええのにのう」
「どっ、どういうことだよ、コレ…」
恐る恐る振り返った数人は2人に尋ねた。数人の後ろには包帯でグルグル巻きになった妖怪たちが寝かされていたのだ。
てっきり数人は昨日自分が気絶した後、皆はそのまま自分を連れて帰ったものだと思い込んでいたのだ。輝夜たちが起こしに来たのも何か適当な他の要件があるものだと、そう勘違いしていた。だから彼女たちが満身創痍で呻いているとは夢にも思わなかったのだ。
しかし輝夜は数人を見据えて言う。
「ざまぁみろ、とは思わないの?」
「は?」
「てゐたちは貴方のお尻を無理矢理掘ったじゃない。何度も泣いて抵抗する数人を彼女たちは笑いながら楽しんでいたでしょ?今がチャンスじゃない。やり返したいとは思わないのかしら」
「何言ってんの輝夜…」
戸惑う数人の肩を輝夜の両手が優しく掴む。そうしてゆっくり振り向かせて、再び彼女たちの怪我に向き合わせた。
数人は改めて部屋の中を見渡した。自分から見てルーミアとリグル、影狼の3人が左側、てゐとマミゾウの2人は右側に並べて寝かされている。2人は起きてはいるものの、全身に巻かれた包帯と四肢を固定するギプスがあまりにも痛々しく、皆一様に点滴を打たれていた。動かない、あるいは全く身体を動かせない彼女たちを見て血の気が引いていくのが分かる。
昨日の今日で一体何があったのか。あんなに元気に自分を犯し抜いたというのに、どうしてこんなに惨い姿になってしまったのか。もしかしたら他の妖怪から襲われたのではないか。数人は知りたくなって再び振り返ろうとするが、輝夜の異様な力強さに身体を動かせない。
「やり返さないの?彼女たちはみんな凄く弱っているわ」
「い、嫌だよ」
数人は声を絞り出す。
「あら、どうして?」
数人の耳元に生温かい声がかかる。輝夜が彼の背中に身体を密着させているのだ。
「だって、見ててつらい、から」
「つらいの?」
彼の声は震えながらも明確な拒絶を示していた。今彼の胸に嗜虐心は無い。ただ憐憫の情が湧いていた。
「俺、…血とか痛いの嫌だから。こんなの襲ったって気分良くないし、その…、てゐたちも、可哀想かなって…」
「自分のやられたことはいいの?」
「それは、まぁ、ムカつくしやり返したい…けど、こ、こんなんになったの犯したってみんな悲鳴しか上げないでしょ?、骨折してるんだろうしさ…、それは、嫌だし…」
「…そう、分かった」
輝夜の手が離れる。ようやく振り向くことが出来た数人に輝夜はギュッと抱き着いた。
「ちょ、ちょっと!!」
朝起きて、のほほんとした会話を交わした後にてゐたちの悲惨な姿を見て、驚いた後に復讐を促されて、そして最後には輝夜に抱き着かれている。何が何だか分からない数人は目を白黒させた。自分の預かり知らないところで勝手に話が進んでいる。背中からは掠れたブーイングが聞こえてくるが、それにどう答えていいのかも分からない。
「やっぱり数人は素敵ね。そういうところ、ホントに大好きよ。ねぇ永琳」
「ええ、そう思うわ」
「いやホント何なの、どういうことなの?」
「はいはい。ちゃんと説明するわね」
輝夜は離れると、てゐたちが大怪我を負った理由を自分たちの考案した作戦、そして目的を絡めて全て話した。最初は神妙に聞いていた数人も、話が終盤に近付く頃には呆れた顔で輝夜を見るようになり、そしてその半目は後ろで呻いているてゐたちにも向けられた。
「何やってんだか…」
色々と理解した数人は内心二度寝したくなったが、何とかその気持を抑えつつ、その一言だけを絞り出した。はぁ…、という大きな溜息が床に落ちる。何かもう、色々と呆れてしまった。確かにあの馬鹿ガエルをどうにかしてやりたいとは思うが、その為だけに自ら大怪我をするとは。一瞬でも心配した自分が大間抜けみたいだ。
「それにさぁ……、輝夜のその、……何?、なんだっけ?」
「戦闘用キグルミバージョン2よ」
「何が、バージョン2、だよ。いや、もう、あのさぁ…」
輝夜は比較的平らな胸を張ってドヤった。開発者である永琳も心なしか自慢気な顔をしている。
朝から随分と悪趣味なドッキリを食らって、立っているのが辛くなって床に座り込んだ数人は言おうか迷った。そのキグルミ、実は将来的に妖怪「鵺」として出現するんですよ、と。もう自分の正体が大方バレてしまっているので、まぁいいかなぁ、なんて思いつつも、でも目の前にはてゐたちがいる。彼女たちには自分が未来人であることは告げていないはずだ。
(やー、でもこの際言っちゃっても良いんじゃないかなー。言わなかったせいで諏訪子にバレたら元も子もないしなぁ)
昨日の露出プレイによるまだ抜け切らない疲労感、そしてさっきから続く混乱、そして起き抜けの低血圧によるローテンションが混じり合って数人の中で何かが切れた。
まぁいいや、他のキャラたちにバレなきゃセーフ。今んところ輝夜たちとてゐたちにバレちゃうけど、今後バレなければ良いんだし。どうにかなるなる。
まるでテスト前日まで遊んだ挙句、その上でもう勉強したって意味無いや、と投げ出してしまうような、そんな吹っ切れ方だった。
「そのキグルミなんですけど」
「あら、どうかしたかしら」
凄いでしょ、褒めてもいいのよ、と訴えてくる2人を見上げる。
「それ、多分平安時代辺りに鵺って言う名前で妖怪として出ますよ」
「え」
にこやかな笑顔の永琳にそう告げると、さしもの彼女でも驚いたのか目を一瞬丸くした。それは隣にいる輝夜も同じで、永琳と顔を見合わせると自分たちの作戦がいかに確実であるかを喋り出す。
「で、でもわざわざ永琳と私でこの島を全部調べて、それでいないことを確認したのよ?」
「それに平安時代ってどういうことなの?」
あの永琳ですら焦っているのはとんでもなく珍しい光景なのではないだろうか。楽しくなってきた数人は、次々に将来的に起こる要素を話していく。
「まぁそこら辺はおいおい説明しますけど、取り敢えずそのキグルミは将来的に妖怪として出ます。あとそれに加えてなんですが……、もういいや全部言っちゃえ。その鵺っていう妖怪の、親玉…なのか?、そういう鵺の中でも強力な存在がいて、封獣ぬえっていう女の子も多分そのうち生まれます」
いやー面白い。あの2人が完全に固まっている。月の賢者と言われた八意永琳と月のお姫様である蓬莱山輝夜が自分の言葉でフリーズしているなんて。勝手に計画に巻き込まれたことへの意趣返しとしては完璧じゃないだろうか。
「おいおい、輝夜ぁ、どうなっとるんじゃ…」
「もしかして私たちやられ損ってこと、ないよね…?」
マミゾウとてゐが視線だけを輝夜に向ける。首も動かせないのだろう。
輝夜たちに非があった訳ではないのだと思う。キグルミに似た存在がいないかわざわざこの日本中を探して回ったんだし。とは言え、何故よりにもよってその形なのか。それにキグルミってことはあれか、輝夜四つん這いで戦ってたってことなのか。
手足を地面についた状態でてゐたちを蹴散らす姿を想像すると、その強さへの恐ろしさよりも滑稽さが先に来る。
「もう巻き込まれちゃった以上、もし諏訪子にバレでもしたら1番割りを食うのは間違いなく俺なので色々言いましたけど。………どうすんの。てか何故よりによってそのデザインなの」
「妖怪っぽいかなあって…。最初はモヤを身体に纏わせるっていうのを考えたのよ?!、でも、それじゃぁつまんないかなぁって…。ねぇ?、永琳」
「私も一緒になって考えた以上何も言えないわ。…しかし、そうとなれば面倒なことになったわね」
「どうする永琳。絶やす?」
「それはやり過ぎでしょう。一度戻って考えないと。それに、もう」
「そうね。もう時間ね」
時間?、と数人は首を傾げて、半拍遅れてこの後自分が何処に行くのかを思い出す。そう言えば自分は今から豊聡耳神子の元に行くのだ。あの飛鳥時代を象徴する聖徳太子のお膝元に行くということは、歴史的建造物の建築を生で見ることだって出来るかもしれないし、もしかしたら十七条憲法とかの草案を見せてもらえるかもしれない。そう考えるとちょっとワクワクしてきた。
あとは神子が自分に優しくしてくれれば完璧なのだけど…。数人はこの1年弱を振り返って思う。
「それじゃぁてゐ、ちょっと行ってくるから」
「いってらっさい。……数人、また遊びにおいでよ」
「お前らが俺のお尻を虐めないっていうなら遊びに行くわ」
「…そら無理な相談じゃのう」
マミゾウは呵呵と笑った。
あれだけ虐められて泣かされたというのに、数人はこの別れ方は死に別れのパターンの気がしてきゅんと胸が寂しくなった。一瞬このまま彼女たちの怪我が直らずに死んでしまうことを思い浮かべたが、幻想郷に彼女たちは絶対に来るはずなのだ。てゐは最終的に迷いの竹林で永琳たちと永遠亭に住むはずだし、マミゾウはぬえに呼ばれて幻想郷に来る。何でこんな変な妄想しちゃったかな、とズタボロの2人に的外れな恨みを向けながら数人は立ち上がる。
その時思わず、よっこいせ、と言ってしまったことに自分で笑った。
「まぁ、また会いに来るから。それまでナナマキのこと、よろしく」
「……ああ、私死んじゃうかも」
「…儂はもう死んだぞ」
「何言ってんだか。…それじゃね」
3
「行っちゃった」
「あ~あ、具合のいい性奴隷がいなくなってしもうたわい」
「寂しい?」
「たわけ。それはお主じゃろう」
「んなこと無いって」
「寂しくても泣くなよ?」
「泣かないっての、もう。………それにしてもね」
「そうじゃなぁ」
「可愛かったねぇ」
「可愛かったのう」
「諏訪子に一泡吹かせるために大怪我したけどさ」
「怪我の功名というやつじゃな」
「あーぁ、諏訪子にはもったいないよ」
「次あいつに会ったらもっと可愛がってやらんといかんの」
「そうだねぇ」
「いつになるんじゃろうな」
「さぁねぇ…」
皆さんは「MooLich =エロリッチの逆襲=」というサイトをご存知でしょうか
2010年を目処に更新が完全に止まってしまった官能小説サイトで、長編系小説はほとんどどれもが未完のまま終わってしまっていますが、どれもが読み応えのあるものばかりの素敵なサイトです
自分がハーレム系を愛するようになったのもあれが一因だと思っているほど、強い影響を受けました
特に少年が片っ端から年上の女性を落としまくる「女族隷属」という物語には何度もお世話になりました
学校の美女3人は良かった…
あと旅館の仲居を堕とすのもホント良かった…
是非読んでみてください