一ヶ月以上放置してました申し訳ないです
最新話の投稿から3週間経ってようやく68話を書き始めたのですが、定期的に書くことを続けないとリズムというか感覚がおかしくなるのを改めて感じました
文章のリズムが気持ち悪いとか、このキャラはこうは言わねぇとか、この時代の文化的にそれはおかしいとか、自分に突っ込みながら書いていたらこんなに経ってました
早いものです本当
-あらすじ-
神と月人と妖怪の3種の力が混ざり合ったことで数人の生命力は爆発的に増大した
歪んだ生命力を自然の摂理という常識が元に戻そうと数人の身体に変化をもたらす
これから数人はどうなってしまうのか
「ほんと良かったのよ~。何だか若返った気分なの」
「お主仙人なんじゃから歳なぞ不変であろうが。…というか、何で我の部屋におる」
いつの間にか部屋に入ってきた青娥に、布都は机に向かったまま背中で答える。
音もなく部屋に入ってきたことにさして驚いていないのは、青娥の能力を知っているからだった。
「聞いてよん。布都ちゃんにしかお話出来ないんだしぃ」
「いや帰ってくれ。明日は明日でやることがあるのでな」
「…布都ちゃん明日はお休みでしょう?」
布都は自室に居座ろうとする青娥に首だけ振り向いて忌々しげな視線をぶつけた。どっか行け、と睨みつけると、青娥はどこ吹く風とひらひら手を振って返した。
彼女には全く効果がないようだ。
大きく溜息を吐いた布都は、首だけでなく身体も青娥の方向に向き直した。さっさと話しを聞いて帰らせよう。そう決め込んで、両手を両袖の中に入れた。
「で、あれから結局数人と最後までしたのか」
「ううん。違うわよぉ。そんな勿体無いことする訳ないじゃない~」
話しを聞くとは決めたが、何も冗長に聞き続けるつもりはない。
布都は結論から聞こうとして直球な質問をぶつけたが、青娥はそれに対して呆れたように返した。全然分かってないわねぇ、とでも言いたげな反応が布都の額に青筋を1本立たせる。
(鬱陶しいなコイツ…)
朦朧とする数人を送っていった青娥は、なんとそれから4日もの間人前に姿を見せなかった。
そして日が経って行為を終えたにも関わらず、青娥の興奮は冷めないままらしい。ニコニコニコニコニコニコと、不気味なくらい爛漫とした笑顔を浮かべている。
久し振りに鬱憤を晴らすことが出来て気持ちが軽いのも分かる、と布都は思いつつも、青娥の纏う異様な雰囲気からどことなく身に迫る嫌な予感を早くも感じ始めていた。
布都は屠自古と違って、危険や障害の存在にかなり敏い。人物と少し話をしただけで、神子に対してどれだけの危険性を持ち得るかを判断することが出来る。老人たちに真正面から向かう屠自古とは対称的に、布都は搦め手や暗部対策の役割なのだ。だからこそ、青娥の頬笑に自分の負担を増やす何かを感じ取ったのだった。
「お主数人に何か…」
「数人ちゃんのおちんちん凄いのよ!!」
「はぁ?」
青娥の発言に布都は眉を顰める。
先ほど感じた予感の正体を確認しようとするつもりが遮られ、しかもよりによってその単語が男の股間を指すのだから彼女の反応も当然だ。
「三日三晩ずっと元気で、どれだけ出してもおっきなままなのよ」
「みっ、三日三晩じゃとぉ?!、そんな馬鹿な」
「ほんと~なのよぉ。文字通り浴びてきたわぁ」
「あ、浴びて…?」
青娥は両手を受け皿のように構えた。そして一拍置いてから、まるで身体を清める為に水桶を身体に傾けるような動作をしてみせた。
彼女の発言に素っ頓狂な声を上げてしまった布都は直ぐ様ハッとして、青娥の冗談に付き合わされてしまった、と戒めるように咳を1つして落ち着いた振りをした。
馬鹿らしい冗談を一瞬でも信じ込んでしまった自分を恥ずかしく感じながら、布都は青娥の、冗談よぉ、という言葉を待つ。しかしいくら待っても青娥は何も言わない。三日三晩も性交が出来る人間がいるわけないわよもう~、とからかってこない。
そこに来て、布都の頭の中でついさっき感じ取った嫌な予感が今の妙な不安感と重なった。一体その予感が何に繋がるのかは分からないが、何やら果てしなく面倒なことが起きる気がする。自分が負担しなければならない不安要素が、今青娥と自分の間で膨れ上がっているような気がする。
布都の過敏な危機察知能力はかつて無い速度で稼働した。
「あ、浴びたとは、男の、“アレ”じゃな?」
「“アレ”だなんてそんな布都ちゃんらしくない…。“アレ”じゃなくて精液でしょう?」
「あ、ああ、うむ、うん、そうであるな、そう、精液」
青娥に指摘されて布都は少し頬を染める。まるで生娘のような反応だが布都は処女ではない。
本来なら素直に精液と言えたところが、気が動転していたこともあってぼかした表現で言ってしまったのだ。
「その、…数人の精液をぉ、浴びたのか?」
「だからそう言ってるじゃないの。……こうやって手で受け止めたり、或いは直接浴びたりね」
(精液って両手で受け止めるほど出るか…?)
布都は一族から選抜されて神子の元に付くことになった際に処女を失った。
神子に近づく男に何かしら不都合がある場合に、その男を隠密に排除する1つの方法、所謂ハニートラップの練習で失ったのだ。
そうして今に至るまで何人もの男と交わり、性技能を磨いてきた彼女は性行為に対して、男を操る最も簡単な方法、という穿った考えを持つようになった。
青娥は性行為を気持ちよくなれる楽しいものと考え、布都は男を堕とす手っ取り早い方法と考える。これが青娥と布都の間にある性行為に対する認識の違いだ。だからこそ、布都は堕とす必要のない数人を襲いに行った青娥がよく分からなかったのだ。
「ねぇ見てほら、この肌。凄いツヤッツヤしてるでしょ~、たぁっぷり浴びたおかげなの」
青娥は胸元をグッと広げて艶々とした谷間を布都に見せ、更に指でぷにぷにと押して弾力感をアピールした。生命力に満ち満ちた精液でパックしたおかげで、まるで赤子の肌のようにモチモチツヤツヤになっている。
しかし布都はそれでも訝しげな表情で青娥を見た。
「いや、青娥。精液じゃろう?、浴びるも何も、そんなに出るはずがなかろう」
「だぁから出るんですってば。私の話を信じてないでしょう」
「信じられる訳ないじゃろう?、大体精液なぞ1人の男から精々出せて片手2杯だ」
「ん~まぁ、確かにね。布都ちゃんにこれを信じろっていうのは難しいわねぇ。どうしようかしら」
青娥の話は、実際に体験してきたことをただ言っているだけで一切脚色していない。そして布都の考えも、色んな男と交わって得られた知識から出来ているから間違っていない。両方に非はないが、どちらかと言えば青娥の方が非現実的な内容だけに布都の理解を得るには難しい状況だった。
「あぁ、そうだわ。布都ちゃん」
どうにか布都に分かって欲しい青娥は、考えた末に何かを思い付く。
「いやじゃぞ」
しかし布都は即座に切り捨てた。青娥が何を思い付いたかなど言うまでもなかった。
性行為は疲れる。まだまだ仕事で手一杯な時に、する必要もない行為などしたくない。
そんな素っ気なさ過ぎる態度に青娥もカチンと来たのか、身を乗り出して詰め寄った。
「でも、これが1番手っ取り早いのよ」
「面倒臭いから嫌じゃ」
「ね、1回でいいから」
「いや」
「何なら私がやるのを側で見てくれるだけでもいいのよ」
「なんでお主の性交を我が見なければならん」
「ふーとーちゃーん…」
突っぱねる布都に青娥は絡みつく。
どうにもこうにもこの話は実物が無いのでは説明しにくいし、信用に値しない。そこら辺の悩みを簡単に解消させるには、彼女に数人を抱かせるのが一番早いのだ。布都に数人の射精を見てもらえば、全てが解決し、自分が本当に話したいことが話せる。だと言うのに彼女は一向に首を縦に振ろうとしない。
布都も布都で先程感じ取った危機感が一体何だったのかを知りたいが為に、青娥の話をとっとと終わらせたかった。
自分の危機察知能力は、気の所為だったことは一度も無い。青娥の性交体験の話はどうでも良くて、その後の話が一番聞きたいのだ。
押し問答がしばらく続いた挙句、遂にキレたのは青娥だった。
猛然と立ち上がると、布都にビシっと指を突き付ける。
「さっきから面倒臭い面倒臭いって、……、良いわ。この際だからその布都ちゃんの考えを矯正してあげます」
「結構である。大体いつやるという……」
ここまで言って布都はしまったという顔をする。
「明日、休みでしょ?、この部屋でやりますから」
そう言い残して青娥は部屋から消え去った。
青娥が消えた後、布都はがくんと頭を垂らした。
今思えばまるで誘導尋問のように、話は流れていったように思える。もう少し自分が青娥の言葉を聞いていれば、こんな面倒臭いことにはならなかっただろう。
融通効かない相手に分からせるには、無理矢理にでも実物を見せるのが手っ取り早い。そんなことは分かっていたはずだ。
「あぁ、めんどうじゃ…」
ヨロヨロと身体の向きを変え、机に向かい直す。
青娥が来るまでにらめっこしていたのは、敵対する豪族たちから寄せられた政務に対する改正案の束だった。
パッと見れば神子のことを思って書かれたように見えるこれも、実のところ良く読めば4人の間に亀裂を入れるような弱体化させるものばかりなのだ。
しかし向こうはそれを改正案として出してくる以上、つっけんどんに返す訳にはいかない。布都はそうしたい気分に何度も駆られたが、実際にやってしまえば神子の評判が悪くなってしまう。だから案1つ1つに角が立たないように訂正を入れ、そして波が立たないように丁寧に返さなくてはならないのだ。
布都は筆をおもむろに右手で取って、いざ返しを書こうとして、何も思い付いていないのに気付く。
「うぅむ、疲れたな…」
布都の疲れはピークに達していた。数人を呼んでしまったことで巻き起ころうとしている騒動が、彼女のストレスを増加させていた。
そして思わず言ってしまったことで、心の底から疲れたという感情に支配されてしまう。
(青娥には言っていないが、休日は2日連続して取ってある。1日目は残念ながら潰れてしまうとして、2日目は何処か山にでも出かけようか。綺麗な野花の景色でも見て、この鬱屈した気分を晴らそう)
そうでもしなければおかしくなってしまう、と自嘲気味に笑う。
布都は筆を置くと、だらしないとは思いつつも、そのまま身体を倒した。
溢れ出る疲れたという感情が、水浴びすら行く気にさせない。彼女はゆっくり瞼を閉じて深い眠りについた。
数人が神子の元に移ってから1週間後の夜。それは諏訪子が数人を迎えに行く予定日から2日前でもあった。
彼の為に増設された八意研究所のモニター室に、いつもの4人と所の警備を任されている月兎3人組が集まっていた。
「依姫、次」
「はい、お師匠様」
モニター室中央に置かれた白のラウンドテーブルには、永琳が掻き集めた怪しい道具が散らばっている。
それら一つ一つの性能を依姫が読み上げ、永琳が選別していた。
そんな2人の様子を意に介さず、輝夜と豊姫は何か喋ってはクスクスと笑ってばかりいる。
月兎たちだけがこの集まりの意味を知らされていなかったこともあり、この妙に浮ついた空気に居辛さを感じていた。
「あの、……輝夜様」
「ん?、なーに?」
「今日は、何かあるのですか?」
居ても立っても居られなくなった鈴仙が輝夜に話しかけた。
豊姫を選ばなかったのは、輝夜があまりに落ち着いていないからだった。
長い髪をくるくるといじり、机を指で鳴らし、訳も無く両手を絡ませる。落ち着かない、という言葉を分かりやすく表現したのが今の彼女だ。
「鈴仙」
輝夜がにこっと笑みを見せた。
その笑みは他所の男が見れば一発で落ちてしまうような鮮やかな笑みだった。しかし、鈴仙にはどうにもそれが牙を見せるような恐ろしい笑みにしか見えなかった。
彼女の中にある好奇心が大きく歪んだ笑みを見せたと、そう感じた。
「私ね、今とぉーっても興奮してるの。今まで何千、何万、何億と生きてきて此程までにテンションが上がったことは無いわ」
「はい…?」
「そしてこれからも楽しい楽しい一時は続く。最後には最高のフィナーレを迎えて、私の心に褪せぬ思い出が刻み込まれるの。……鈴仙、青蘭、鈴瑚。その幕開けが、今日なの」
豊姫がおもむろにリモコンを取り出してモニターの電源を入れた。
モニターには諏訪子の正面姿が映し出されている。
諏訪子は今誰かと会談中のようだ。
隣には神奈子の姿があり、その後ろにはハクがいる。
「今諏訪子たちは誰とお話してると思う?」
「誰、ですか?」
「そうよ」
輝夜は先程からずっと笑顔を浮かべている。
鈴仙はそんな彼女の異様さに、自分が今責められているではないかという妙な錯覚を起こした。
彼女の気分に水を差してしまったのではないかと不安に思ってしまったのだ。
そんな鈴仙の気持ちを察したのが鈴瑚だった。鈴仙の代わりに鈴瑚が彼女の問いに答えた。
「妖怪、ですよね輝夜様」
「正解よ。名前は分かる?」
「ついこないだ言っていた八雲紫とかいう妖怪では…?」
「流石鈴瑚ね、花丸あげちゃうわ。あと鈴仙、別に怒ってなんかいないから安心なさいな」
「どうもー」
「あ、あはは、すみません」
再び豊姫がリモコンを操作すると、今度はカメラの向きが180度大きく回転した。
「あれが、ねぇ…」
「うわぁ、きれいー」
「八雲紫の他に、…2人?」
モニターには複数の人物の姿が映っている。3人はそれを見て思い思いの感想を呟いた。
その画面に映る人物たちこそが蓬莱山輝夜を熱り立たせる原因になっていた。
「あの紫色のドレスを着た人がー…」
「八雲紫だね。あの島国に何の前触れもなく出現した大妖怪。下級の神相手なら余裕で勝ってしまうぐらい強いって」
「はえ~、そんなん私たちじゃ無理だねぇー」
鈴瑚は豊姫からファイルを手渡される。
そのファイルから八雲紫についての情報を鈴瑚が読み上げると、青蘭はそれに対して何処かとぼけたような反応をした。
鈴仙はそんな2人の会話を耳にしながらモニター越しに映る彼女の姿をよく見る。
(凄いキレイな人…)
まず目に入ったのはとても美しい金色のロングヘアーだった。それはまるで金糸で編まれた極上の織物のようだった。
しかし、頭にふわりと乗せられた純白のナイトキャップと、それにあしらわれた赤いちょうちょ結びされたリボンが、その金髪の高貴さとミスマッチを起こし、そのギャップが何処か幼気な印象を感じさせる。
大人びた振る舞いをする少女。
鈴仙は紫の姿からそういう印象を感じ取った。
「紫色のドレスを着ているから八雲紫なのかなー」
「それは流石に安直過ぎるし、そうだったら“ゆかり”じゃなくて“むらさき”になるでしょ」
「隣の赤い人は誰なの鈴瑚」
カメラが紫を中心に旋回し終えると、そのまま彼女の隣に座る人物を映し出す。
「角が生えてる…」
「あれは
「真っ赤なお角だねー」
八雲紫に比べて、紅赫は背が非常に低い。永琳たちの中で最も背が低いのは鈴瑚で、その身長は140センチだが、紅赫はそれよりも小さいのだ。
一見してただの童女に見える彼女は、名前の通り全体的に赤い。ボブヘアーに揃えられた髪も、纏っている僧衣も、そして鬼を象徴する小さく生えた角も、赤い。
唯一色が違うのは肌なのだが、カメラが写す彼女の肌は病的なほどに真っ白で、髪とうなじと服の色のサンドイッチが、不思議なエロスを醸し出していた。
「それで最後が、えーっと……、大魔天狗を自称する、
「うわせくしー」
「この人諏訪神の前にいるはずなのに凄いね…」
紅赫からカメラが天嵐へ移る。
色々と小さかった彼女に比べて、天嵐は色々と大きかった。
紫、紅赫、天嵐と並んでいるのだが、その中で背がまずダントツに高い。反対側にいる神奈子よりも大きいのだ。
また胸も規格外に大きい。正しく西瓜乳と読んで良いほどの爆乳の持ち主だ。
それだけでも目立つのだが、それを更に際立たせているのが彼女の服装と髪だった。
上半身は結袈裟という黒いポンポンが6つ付いた装飾品のみをまるでスリングショットのように身に纏い、下半身は柿色の股引と足袋を履いている。
そしてその上に羽織っているかのような長さの髪が床にまで垂れていた。その髪もまた濡れた黒色で奇妙な美しさがある。
八雲紫や紅赫に比べて非常にラフな格好に鈴仙一同は、この妖怪の肝の太さに驚いた。
「ただどの妖怪も凄い強そうだよー…」
「私たちじゃぁ絶対勝てないねぇ」
突如として出現した八雲紫。
海を渡ってきた鬼の祖、紅赫。
そして大魔天狗を称する天嵐。
その3妖怪が一体諏訪子と何を話しているのか。それを予想出来ない3人では無かった。
「数人ピンチじゃないー?」
「…そうだね」
ぼそっと青蘭が零す。
その呟きに鈴瑚は応えようとはしないが、何かを見据えるようにモニターを見ている。
鈴仙は自分の実力をしっかりと認識し、一体どの部分が彼女たちに劣るのか分析しながら、一言頷いた。
月兎たちは数人の危機に手助けしてやれないことに歯がゆさを感じていた。
そんな彼女たちに声が掛かる。
「何気落ちしてるのよ」
「輝夜様」
鈴仙が視線をモニターから落とすと、輝夜が笑っていた。
「だいたいあいつがこういう運命にあるって知っているでしょ?」
「…でも、流石に可哀想ではありませんか?」
「可哀想?、そんなことないわよ鈴仙。逆よ逆」
「逆?」
鈴仙は首を傾げた。
「神に好かれ、私たち月人に好かれ、人間に好かれ、そして妖怪に好かれ。桁違いなハーレムを築こうとしている男に可哀想はおかしいわ」
「でも数人さんはいつも、ああいうプレイ…、の時には嫌がったり泣いたりしています」
「……うふふ、そうねぇ。泣いてるわねぇ。…まぁ、そういう意味では可哀想ではあるかもね」
鈴仙の反論に輝夜はくすくすと笑う。
隣りにいる豊姫も同じように笑っている。
鈴仙は2人の笑みが、弱った獲物に対して見せる嗜虐的な笑みだということに気付いて身体を震わせた。
輝夜も豊姫も今まで誰にも見せたことのない残酷な微笑を浮かべている。もしかしたら永琳や依姫に同じことを聞いても、同じように反応するかもしれない。
「八意様や綿月様だけじゃないと思うなー」
鈴仙の考えを読んだのか、青蘭が言う。
「多分八坂神も白蛇も、因幡や二ッ岩たちも、数人と関係を持った女性は皆同じことを言うんだと思うよ」
「そんな…」
鈴仙は自分が数人と関係を結んだ時、同じことを思ってしまうのではないかと不安に思った。
確かに彼が拘束されて嬲られているのを見た時には嗜虐心に駆られ、とてつもなく興奮したのを覚えている。それに4人から彼を嬲った話を聞かされると、内心で何かが疼くような感覚を感じたことが何度もあった。
しかしそれ以上に、嬲られることの辛さ、周囲からイジられ続けることの疲れは自分が一番理解しているのだから、その理解をもってして数人を周りと同じように苛めるのは矛盾するのだ。
月の生活では一緒に食事を作ったり、食べたりとごく普通のことしかしていない。その時に見る彼はまたごく普通の青年で、時折優しさを見せて、それを指摘されると恥ずかしそうに頬を染める、そんな人だった。
彼の普通の部分のみを見続けてきたからこそ、周りの反応にどうにも納得出来ない。
腑に落ちない表情が表に出ていたのだろう。
輝夜が鈴仙を見据える。
露骨な態度を取ってしまったと鈴仙は頭を下げようとして、輝夜に止められた。
「いいのよ別に」
「え…?」
鈴仙だけでなく、青蘭や鈴瑚も戸惑いの表情を浮かべた。
「そういう純な心で彼を見てあげられる存在っていうのも大切よ。私たちはこんなんだから、彼が疲れた時には癒やしてあげられる存在になりなさいな。……ねぇ、豊姫」
「まぁ輝夜様ったら非道い。さも私では癒やすことが出来ないような物言いではないですか」
「私より大概なくせしてよく言うわよ」
2人は再びくすくすと笑いあった。
ふいに永琳が椅子から立ち上がる。
依姫も少し疲れたのか大きく両手を上げて背中を伸ばしていた。
「さ、ようやく準備が出来たわよ」
「準備も何も要らないんだけど」
「駄目です。何かあったのでは遅いのだから、準備するに越したことはないでしょう?」
丁度道具の選別が終わったらしい。
依姫は不必要とされた道具を箱に戻し、倉庫へと運んでいく為にモニター室から出ていく。
永琳は残った2つのアイテムの説明をし始めた。
1つは透明の六角柱のクリスタルにチェーンを付けた物。もう1つはみみずがのたくったような字が書いてある御札だ。
「これは障壁を発生させる装置で、私の弓矢でも5発は耐える障壁を30秒輝夜の周りに出現させるネックレスよ。輝夜の意志とリンクさせてあるから好きな時にラグ無しで発動できるわ」
「凄い…」
とんでも性能のペンダントに鈴仙が思わず零す。
「そして次はこの御札。一回限りだけど、どの方向から攻撃を受けてもこれが身代わりになる優れものよ」
「これまた凄いアイテム…、流石は八意様」
規格外の性能を持つ2品に月兎たちは若干引きつった笑みを見せた。
天才の思い付きで開発された品は、やはり性能も常識から大きく外れた物になっている。
しかし輝夜はその2つをつまらなさそうに指で転がし、もて遊んだ。
「あのねぇ、永琳。私は今から何しに地上に下りると思ってるのよ。謝罪しに行くのよ?、数人を奪われてしまいましたゴメンナサイって言いに行くのに、何でそんな武装してかなきゃいけないの」
ここに来てようやく月兎たちは呼ばれた意味を知った。
永琳と輝夜が考えていた作戦の最終段階が、今日なのだ。
そう考えると今数人はもうあの人間のところに移り住んでいるのだろう。鈴仙はそこで平和に暮らす数人を想像した。
「輝夜、さっきも言ったでしょう。何かあってからでは遅いと。相手はてゐのような妖怪とは訳が違うのよ。宝物を持ってこなかっただけかなり妥協したのだから、この2つくらいは持っていきなさい」
「宝物って…?」
この話の流れで“宝物”というワードが出てきたことに鈴瑚は疑問に感じた。
武器でもなく、防具でもなく、“宝物”。
情報を管轄する兵役に付く身として思わず聞いてしまった彼女に対して、輝夜は大した事でもないという風に適当に答えた。
「蓬莱の玉の枝とかね、私専用の宝物があるのよ。一応ね。………はいはい、分かりました。持っていけばいいんでしょう。全く永琳は過保護なんだから」
「あの3妖怪をしっかり分析した上なら、この程度過保護のかの字にも当たらないと私は思うわね」
蓬莱の玉の枝。
そんな眉唾物の存在をこのタイミングで、しかもぞんざいな物言いで知ってしまったことに鈴瑚は表情を動かさないようにするのが限界だった。
硬直してしまった彼女に青蘭たちは気付かず、乱雑に道具を懐にしまい込む輝夜だけを見ていた。
輝夜が神と大妖怪たち相手にどう立ち回るのか。
作戦によれば最後は諏訪子に謝って終わり、とだけあるのだ。そこから先は輝夜のアドリブで話は進行する手筈になっている。
鈴仙も青蘭もこの先の展開に気に取られ、“宝物”というワードも、蓬莱の玉の枝という存在も意識から外れていた。
「さて、そろそろ時間ね」
輝夜はゆっくりと立ち上がる。
その緩慢さは逸る気持ちを抑えたいという表れなのだろうか。
「もう地上に行かれるのですか?」
「そうよー、本当に楽しみだわぁ。この私が諏訪子に頭を下げるってだけでもう楽しいもの。そこから先を想像したらもう踊ってしまいそうよ」
「…くれぐれも変な気を起こさないで頂戴ね」
「はーい。じゃぁ、豊姫、宜しく」
永琳の忠告を聞き流した輝夜はモニターしか見ていなかった。
彼女は画面に今も映る3妖怪と諏訪子、そして神奈子の姿をじっと見つめている。
「畏まりました。……それでは、輝夜様。いってらっしゃいませ」
本当ならこのラストフェーズは永琳と輝夜がセットで諏訪子に謝ることになっていた。
しかし輝夜が永琳のやらかしを盾に迫って、1人で行くように変更したのだ。
輝夜がまたやらかさないか気が気でない永琳を背に、輝夜はこれから始まる長い劇の主演の1人を務められることをとても幸せに感じていた。
数人を中心に、諏訪子、神奈子、紅赫、天嵐、因幡、そして私が踊るのだ。まだまだ役者は増えるだろう。現に役者候補が4人いる。
もっともっと役者が増えて、どうなるか永琳でも予想できない程にカオスな舞台となれば、フィナーレへの道は遠のき、もっと踊ることが出来る。
その為に私は今宵、蓬来山輝夜という役を持ってして掻き回す。
数人の為に、私の為に。
「ええ、楽しんでくるわね」
輝夜の姿は眩い白光と共に消え去った。
新キャラはもう出さないと言ったな、あれは…
色んな東方二次創作に大天狗や鬼四天王を纏め上げる頭領が出ますが、やはりそういうオリキャラというのはシンプルな名前が良いですよね
そもそもオリジナルキャラだから慣れないのに、そこに凝った名前にしちゃうともっと原作の雰囲気から浮いてしまう気がするのです
とある作品では大天狗が操、鬼が藤千代とありましたが私はこの名前が一番ティンと来ています
それに習ってシンプルにしたつもりでしたが………、超難産でした
鬼はインドで鬼子母神で訶梨帝母でハーリティーで三摩耶形が吉祥果で、吉祥果は言い換えると石榴で石榴は赤色で…
天狗は鴉、烏、天つ風、あらまし風、凪、黒、どうしても風という字は入れたいから…
そんな感じでした