神子様は指導者でありながら、少しマゾっけがあって欲しい
-あらすじ-
青娥にとってかけがえのない存在となりつつある数人
同じく数人も甘えられる唯一の相手になりつつありました
ごめんなさい今回めちゃめちゃ短いです
初めて数人を出迎えたあの広間に、神子と布都だけが向かい合っていた。
「まさか喋るとは、思っていませんでした。青娥の指導を受けても尚、抜け切らない幼さに不安を感じていましたが…、彼なりに、頑張ってくれたのでしょう」
ポツリポツリと喋る神子の表情は暗い。
「思えば私は数人君に酷い態度を取り続けてきました。彼は連れて来られた理由を知らないまま、不安を胸に私たちと向かい合ってくれたはずなのに…。申し訳ないことをしてしまった。これでは指導者として…」
あの口煩い爺に対して数人が見せた凛然とした態度は、神子を大きく驚かせた。元々スルーのつもりで、このまま無難に終わればいいと考えていた彼女にとって、この出来事は数人への認識を改めさせたと共に、自分の行いを省みる切っ掛けとなった。
「神子様、そう気落ちすることはないのじゃ。どんな人物であれ過ちは犯すもの。転んでしまってから、どのように動くのか、そして何を学ぶのかが大事なのじゃ」
目に見えて気落ちしている神子に、布都は優しく声を掛ける。
布都も今回の出来事には大きく驚かされた。そして数人に対して辛辣な態度を取ってしまったという部分でも神子と同じなのだが、布都は既に数人に謝っていた。謝罪の仕方は多少変わってはいたものの、彼と向き合い、彼との間に出来てしまった溝を埋めたのだ。
謝れば、その気持ちは必ず通じる。謝罪を逆手にゴネるような輩も多くいるが、数人は決してそのような人間ではない。素直に一言言えば、数人はきっと許すだろう。
(素直に非を認め、そして謝罪する。これがどれだけ重要で、どれだけ難しいことか)
己の肩書、立場、矜持が大きくなればなるほど謝りにくくなる。神子が摂政という立場を置いて自らの非を認めることが出来るようにれば、民を導く指導者としてより大きな存在になれるはずだ。
この出来事は器を磨く良い機会なのではないかと布都は考えた。
「神子様、我はもう数人に気持ちを伝えました」
神子はハッと面を上げて、布都を見る。
その視線には、どうして私をその時一緒に連れてくれなかったのか、という恨みがましさが少しだけ込められていた。
「…数人君は、何と?」
「こっちこそごめんなさい、と言われてしまったのじゃ」
神子は呆気にとられた。“ごめんなさい”の意味が分からなかった。あれだけ責め立てられるような扱いを受けて、どうして謝ったのか。
布都はあの夜のことを思い出して、クスリと笑う。
「ごめんなさい、と彼は言ったのですか」
「神子様、数人は優しい子です。あ奴は自分の部屋に置かれた調度品を見て、自分に期待が寄せられていたことに気付いた。その上で、私たちの期待を裏切るような姿を晒してしまったことに謝り返してきおったのじゃ」
「…そう、なのですか」
「あれから少し時間が経ってしまったとは言え、まだまだ余裕で間に合うのじゃ。気持ちを素直に伝えられさえすれば、それで良いのです」
布都の言葉を確かめるように、神子は頷きながら聞いていた。
神子は数人を肩書越しにしか見ていなかった。ただ使える存在かどうかの判断しかしていなかったのだ。青娥の指導を受けて、見違える程の変化を見た時も結局として使えるようになったという安堵感しか感じなかったのは、彼女の心に余裕が無かったからだ。数人がどうして頑張ったのかを何故あの時気付くことが出来なかったのか。その自責の気持ちは、先に数人に謝られてしまったことで一層大きくなった。
彼女の持つ笏が微かに震えているのは、自己嫌悪に苛まれている証左だった。
(我々は気を張りすぎたのじゃろうな。鬱陶しいあ奴らに負けまいと頑張ったものの、徐々に徐々に精神的に余裕が無くなっていったのじゃ。…だから今回の出来事は起きてしまったのだが、数人に会えたからこそ今一度自分らの身を振り返ることが出来た。数人のお陰で凝り固まってしまった心を解すことが出来たのじゃな)
布都は黙ったまま、神子を見守っている。
広間に静寂が訪れた。
「……そう、いえば、屠自古は何処に行ったのでしょう。布都、知りませんか」
元々余裕のなかった心が自己嫌悪によって追い立てられるのは、神子でも堪えきれなかったらしい。彼女は思考が囚われる前に屠自古の行方に意識を向ける。
「確か青娥を呼びに行ったはずですが……、遅いのう」
元々お披露目の後に、4人で反省会をする予定を立てていた。しかし数人が計画に反したことをしてしまったため、これから先の予定が大幅に変わるだろうと判断した布都は、数人も交えようと青娥に呼びに行かせたのだ。にも関わらず肝心の青娥すら戻ってくる気配が無い。その事に腹を立てた屠自古が、布都の呼び止めを振り切ってズンズンと歩いていったのだが、彼女もまた帰ってこなくなった。
(まさか青娥の奴…)
直感が警鐘を鳴らしている。
青娥は、屠自古に見られてしまったのではないか。そしてそれをその場で追求されているのでは…。
布都の頭の中で、叱られている青娥とその隣で恥ずかしそうに縮こまっている数人が容易に想像出来てしまった。このままではマズイ。そう思って立ち上がろうとした時だった。
トン、トトン、トトンという足音がこちらに向かってくるのが聞こえた。不規則なリズムを奏でているのは複数人が歩いているからだ。
「神子様、遅れてしまって申し訳ありません。青娥と数人を連れてきました」
布都が後ろを振り返ると、ムスッとした顔の屠自古を先頭に不満げな顔をした青娥と顔が赤い数人がのっそりと入ってきたのが目に映った。
一目瞭然だった。
(青娥も数人も何をやっておるのじゃ、全く…)
布都の口から溜息が漏れ出した。本人はただ呆れたつもりだったが、彼女の心の片隅には小さな嫉妬心が芽生えつつあった。
本人ですら気付け無い程の小さな感情は、この後青娥の言動で大きく揺れ動くことになる。
聖白蓮と頼光って似ていると思いませんか
グラマーで母性に満ち溢れていて、それぞれ愛する対象がいますからね
ただちょっと違うと思うのは、頼光は息子から言い寄られれば断らないような気がしますが、聖はダメなものはダメときっぱり断りそうなキャラという部分でしょうか