快楽主義者《ヘドニスト》の輪舞曲《ロンド》 作:ポップマン
金曜日の朝、俺は急いで教室へ向かっていた。
頭の中で「明日の朝、第2回作戦会議よ!」という園羅の声がグルグル回っている。
ここまでの流れを整理しよう。
(月)入学式。園羅にビンタでイかされ、最上さんにケツを掘られる。
(火)学級委員になる。女子は来週に延期。
(水)有栖川さんが田宮のケツを玩ぶ。偶然有栖川さんは爆乳に。
(木)最上さんが暗躍し、浄明寺さんと箕輪さんを樋川にけしかける。2人は返り討ちにされ、樋川はオイシイ目にあう。
(金)←今ココ
さて、今朝は園羅が日直のため日直日誌を取りに行くついでに作戦会議!という流れになったわけだが、俺が教室に急いで向かっているのはそのためではない。
作戦会議に出ないためだ!
俺は園羅グループではないということを他の皆に知ってもらわないと、いらない恨みをかうことになる。
さっさと荷物を置いて授業開始まで隠れていなくては!
「…………。」
ん?教室の中から話し声がする。どうやら片方は園羅らしいが…?
「いったいどういうつもり、最上?」
「こんな朝早くに呼び出したと思ったらそんなことですか?」
「そんなこと…ね。香川を勝手に剣道部やら陸上部やらに入らせようとしたこと、説明してもらうわよ!」
な…!園羅…そんなに俺のことを…!
「あらあら。そんなに香川さんのことを?」
「アイツはわたしの下僕1号よ。所有権はわたしにあるわ」
俺の基本的人権は!?
「わたしは彼女たちが樋川くんに負けるのを読んでましたよ?」
「本当かしら?だいたいアイツらが香川を使ってなにしようとしてたかぐらい…」
「
戸の陰に隠れて話を盗み聞く俺の耳に知らない単語が入ってきた。
リヴァース…?
「…やっぱりアンタもそれが目的だったのね」
「あれは噂に過ぎないでしょう?それとも………信じてるんですか?」
「……一つ言っておくわ!わたしはあなたを信用してはいないわよ、最上!」
「わたしもあなたの手下になったつもりはありませんよ。覚えていますか?勝負に勝ったのはわたしだということを」
足音が近づいてくる。
ヤバい!!!
ガラッ。
「あら、香川さん。今来たんですか?」
最上さんの目に、廊下を曲がって現れた俺がうつる。
いや~、焦った。
「あ、おはよう最上さん。もう園羅は来てる?」
「ええ。園羅さん、香川さんが来ましたよ」
「あら、遅いわね」
待ち合わせより早いけどな、と思う俺に最上さんが囁く。
「…今の話、聞いてましたよね?」
一瞬冷や汗が流れる。
「え?なんのこと?」
「いえ、聞いてないならいいんです」
バレてる…まず確実に。
最上さんの狙いはなんなんだ?
――――――――――――――――――
作戦会議の結論としては男女ともに能力が分からない者が多い今、不用意に動くのは禁物だということ。
そして、他人の能力をできるだけ知らなければいけないということ。
急務なのは、リーダーの能力が割れてる園羅グループと有栖川グループに対し、未だ能力の知れない若王子さんの能力を探ること。
しかし、投票は来週の火曜。それまでにどれだけ人望を集められるか。
ぶっちゃけ俺は園羅じゃ勝てないと思うが。
――――――――――――――――――
そして今は昼休み。
3日間の拘束を解かれた園羅が意気揚々と日直の業務をこなしているのを見ながら、俺はできるだけ彼女の意に逆らわないようにしていた。
彼女は3日間の鬱憤が溜まりに溜まっているはずだ。君子危うきに近寄らず。
もっとも予告されていた報復は行われず、少しホッとしているが。
「ちょっと下僕1号。数学科行って、次の授業のプリント取ってきて」
黒板を消している園羅が言ってくる。
こんな時代になっても黒板にチョーク、プリントとはシンプルイズベストということか。
一時期隆盛を誇ったホワイトボードも結局古来からの伝統には打ち勝てなかった。
それはともかくとして、今日の俺は従順だ。
「仕方ないなぁ」
ヨッコラセっと。
園羅がおもむろに黒板消しを置く。
「喜んで行かせて頂きます」
――――――――――――――――――
数学科からプリントを持って帰る途中。
「あれ?
目の前に立っていた女子は古賀
髪は多少縮れ毛のロング。落ち着いた雰囲気で俺は嫌いじゃない。
「そのプリント多くて重そうだけど持ってあげようか?」
少し俯き加減で聞いてくる。
プリントは多いといっても、男なら1人で充分持てる程度。
こ、これは……!
ついに俺にも春が来たのか!?
入学後1週間で女子からアプローチが!?
「あ、ありがと。じゃあちょっと持ってもらおうかな…」
全部の1/10くらいを渡す。
「もっと持てるよ」
1/2くらいを奪われる。
「あ、ありがと…」
仕方ないので歩き出す。相手にペースを合わせつつ。
「香川くんってさ…」
く、くるか。
「園羅さんみたいなのがタイプなの?」
ちょっとずっこける。
た、確かにあんなのタイプの男子いたら俺ならそいつは敬遠するね。うん、その質問は正しい!
「い、いや~。違うよ、初日から妙に絡まれてさ、こっちは大変だよ」
「そうだよね…あたしならもっと…」
ヤバい、心臓が破裂しそう!これがリア充に足を踏み入れる感覚か!いや~、思えば今まで長かったな~。
ドサッバサバサッ。
へ?
いきなり、古賀さんがプリントの束を床に落としてしまう。いや、故意に手を離した…?
「拾え」
古賀さんは笑顔で言う。
「ハ、ハイ…」
なんだかよく分からないけど、とりあえず従って俺はしゃがんでプリントを集める。
「上を向いて」
ん?
ホガッ!!
急に上から黒いなにかが降りてきたかと思うと視界と呼吸が塞がれる。
微妙にすえた汗の香り、布地の肌触り、これは…古賀さんのニーソックスを履いた足だ!
ってちげえよ!
なんでそんなシチュエイションになってるんだよ!
さすがに払いのけるのは躊躇われ、俺はそろそろと足の下から抜け出そうとする。
そして気づく。
動かない!?
いや、足と手が縛られてる!?
「園羅なんかに香川くんは渡さない」
呟く古賀さん。
「あたしなら、もっとうまく香川君を躾られる」
あっやっぱそっちの趣味の方でしたか。
「あ、あの~。足をどかして欲し…」
「舐めろ」
え?
「何度も言わない。舐めろ」
「いや、それはちょっと」
ヒュッピシッ!!
「ヒグッ」
風をきる音とともにシャツの上から加わる衝撃。息が詰まる。これは…鞭か!?
くっそマニアックなプレイしやがって!
「これがあたしの
そ、それで動けないのか。
「さあ、早く舐めろ」
ヒュッピシッ!ピシッ!ピシッ!
背中に加わる連打。俺は否応なしに足の底を舌でペロ、と舐める。ちょっとすえた味。ナイロンの舌触り。
「フフフ、ゾクゾクするな。この感覚は。さあもっとネットリと舐めろ」
背中に当たる衝撃が加速する。体勢もキツく、首と顔に汗が浮かぶ。仕方なしに古賀さんの足をちょっとずつ舐める。
ペロ…ペロ…ペロ…。
その間も鞭の打撃は収まらない。いや、打撃そのものは弱くなっている…?回数が増えているのか?
ピシリッピシリッピシリッピシリッ!
すえた味…強制的に足を舐めさせられて…屈辱的な…鞭による…攻め…。
ん?んん?んんん!?
ヤバい!シチュエイションのせいだかなんだか知らないが、少し興奮してきちゃったぞ!
「フフフ、気持ちいいだろう?屈伏させられるのは。あの園羅なんかの
ヤバいヤバい、ちょっと勃ってきちゃった!
「さあ、もっと念入りに舐めろ」
そう言って足の指を俺の口に当てる。
俺は足指をくわえて、舌で入念に舐めあげる。
チュパペロレロペロ…。
ピシリッ!ピシリッ!ピシリッ!
気のせいか鞭も心地よくなってきた…。
ここで古賀さんに屈伏させられるのもそれはそれでリア充の一形式なのかも……。
「なあぁぁに、やってんのおぉぉ!!」
ウッワ!!!
少しボーっとしてあらぬ夢を見ていた俺の前に怒りをあらわにした園羅が現れる。
大地は音をたてて裂け、園羅の周囲の空間は怒りの熱気で歪んでいる!!
それじゃ魔神かなにかか。
「あんた、古賀とかいったわよね。人の下僕に手ぇ出して覚悟はできてるんでしょうね!」
古賀さんは俺の顔から足を下ろして、靴に足を入れる。
俺の唾液靴につくけどいいのかな、と変な心配をする。
「園羅…
「あたしのぉ?」
う~ん。言い訳したいけど、現場を見られてるからなぁ。
「香川くんはあたしが躾る。あなたはお役御免よ、園羅」
「さあて、それはどうかな…」
ヒュッ!
風を斬る音。園羅の制服の前ボタンがすべて弾け飛ぶ。
しかし、園羅はどこ吹く風といった顔だ。
「へえ…それだけ?」
「気の強いあなたにプレゼントよ!」
バシィッ!
古賀さんが手を振ると、音が鳴り園羅がすっ飛ぶ。
「あたしの
ヒュウッ、バシィッ!
「さあっ、
バシィッ!バシィッ!バシィッ!
俺は当然縛られていて動けない。
「安心してね、香川くん。あの子を屈伏させたら、すぐにでも続きをしてあげるわ」
いや、ニッコリ言われても怖いです。
だが、状況は園羅の圧倒的不利。スカさないところを見ると古賀さんは鞭の手練れ。対する園羅は超近接でないと効果を発しない
「くっくくく…」
突然の笑い声。両手で顔を庇い、膝をついた園羅からだ。
「この程度か?もっと本気を出せよ」
「ッ!お望み通りィッ!!」
古賀さんは腕を大きく振り上げる!
バッシィィィィイイイン!!
2人とも動かない。
園羅は宙を掴み、古賀さんは腕を差し出したまま。
先に口を開いたのは…古賀さんだった。
「な…どうやってあたしの
「あんた…腕がよすぎたわね。視線でどこ攻撃するか丸わかりよ」
「なッ!?」
古賀さんが驚愕する。じゃあ、園羅が今掴んでるのは古賀さんの鞭!?
「くっ!」
いきなり、縛られていた感覚がなくなる。古賀さんは左の鞭を使うつもりだ。
古賀さんが腕を振り上げる。
園羅が床を蹴って飛び出す。
「ちょ、ちょい待ち!」
俺は立ち上がる。
勢いあまって飛び出してしまう。目の前には古賀さんの頭。
「え?」
ゴッ!
「「痛うぅぅ」」
その隙をついて園羅が古賀さんに飛びかかる。馬乗りになり、両腕を足の下にしき拘束する。
にこやかな笑顔で笑いかける。
「古賀さん、短い時間でたくさん拍手する方法ってご存じ?」
古賀さんは自分の顔の両側に差し出された手のひらで、顔が青ざめる。
「え…」
園羅は容赦なく両手で目にも止まらぬ往復ビンタを繰り出した。
「アバッ!アバババッ!ヒグッヒグイグイグイグイグイグイグイグウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!」
古賀さんはあまりに急速な快楽に耐えきれず白目を剥いて気絶してしまった。
園羅は立ち上がり、俺にキレる。
「あんまり遅いんで仕方ないから来てみたら、なにやってんのよ!」
いや、俺むしろ被害者では!?
「ったく。わたしプリント集めてるから、そいつ保健室に連れてっといて」
俺はボタンが無くなり前をはだけた園羅から目を背け、尋ねた。
「なにか着るもん持ってこようか?」
「いい…」
しばらくして追加の返事が返ってきた。
「あんたのシャツ、貸しなさいよ」
俺はビックリして振り向く。
と、途端に罵声を浴びせられた。
「こっち見んな!」
急いで上を脱ぐと、園羅の方に差し出す。
手の上から重さが無くなり、代わりにズタボロのシャツが渡される。
着るとちょっと小さくて、だいぶ前が開いてしまう。
俺は傷だらけの園羅に一応聞いた。
「なんで…助けてくれたの?」
「決まってるじゃない。あんたがわたしの下僕1号だからよ」
俺は古賀さんを背負って保健室に行く間考えた。
園羅は確かに性格に難はあるかもしれない。でも、今ここに1人、その面倒見の良さの支持者を得たな、と。
ちなみに古賀さんは外見より重かった。
いや、たまにいい話が書きたくなる病気のせいです。