ゲーム未プレイですけど、八月に出るVita版を購入する予定です。
こんな駄文ですが、よろしくお願いします。
pixivで艦これのSS書いてる御方から悪役キャラを借りる予定でしたが、次回に持ち越しに。
大体の始末の方法は決まっております(笑)。
それは、人類が
大戦中の海戦で沈没した軍艦の魂が麗しき乙女の姿となって蘇り、その身体中に大砲や魚雷などの武装を身に纏い、それで深海棲艦と戦う。
人の形をした人でない存在であるが、外見は人間の女性その物であり、例としては、駆逐艦は子供の姿、戦艦や空母は大人の姿となっている。
そもそも艦娘とは何か?
異世界より門を通って人の世界に来た妖精と呼ばれる小さく者達が人類の危機に駆け付け、唯一互角にやり合え、制海権を取り戻す手段として彼女等を人類に与えたのが始まりだ。特殊な資源などで、まるで錬金術でもするように彼女等艦娘を創れてしまう。まさしく人体錬成と言えよう。
では敵である深海棲艦とはなんだ?
深海より現れ、目的も定かでもなく、人類に襲い掛かる未知なる敵である。
外見は化け物その物であるが、上位種になるにつれて艦娘に近い外見をしている。
深海から現れることから深海とねぐらを意味する棲と、軍艦のように大砲を並べているからして、深海棲艦と名付けられたそうだ。
何故人類に襲い掛かるのかは未だに判明せず、人類に艦娘を与えた妖精達でさえ理由が分からないそうだ。
深海棲艦と言う未知なる敵に対し、世界各国の海軍は駆逐作戦を試みたが、深海より湯水のように湧いて出て来る深海棲艦に迅速に対応できるはずもなく、沿岸部まで追い遣られ、制海権を盗られてしまう。
このまま上陸されると思ったが、深海棲艦が手を出したのは川や湖だけで、大地には一切手を出さなかった。
その御陰で人類は滅亡せずに済んだが、制海権は深海棲艦の手中にあり、最悪なことに艦載機といえる兵器も保有しており、人類に唯一残された空からの輸送網を脅かしている。
だから空の輸送網防衛と、人類存続の脅威である深海棲艦殲滅に艦娘が必要なのだ!
こうして人類全体が艦娘に希望を託したわけだが、彼女等は上陸作戦以外の海戦術は熟知しているようだが、海洋戦略は無いに等しい。
その為に彼女等を指揮する指揮官、つまり艦隊司令官である提督が必要だ。それも伝えた妖精でなく、なんと人間でなければ駄目だという驚愕の事実だ。何故人間なのかは、妖精でさえ分からない。
艦娘は人類の希望であるが、その艦娘を扱うのは、兵器を持たねば深海棲艦と戦えぬ人間だ。
もしも艦娘を自分の欲望の捌け口する帝国が存在したら?
それは、艦娘が人類に対し失望を抱だろう。なにせ信頼していた者に裏切られ、痛め付けられ、犯され、痛め付けられ、苦しめられるのだから。艦娘を自らの欲望を捌け口にする提督のことを、ブラック提督と呼ぶそうだ。
そうなれば、艦娘達による人類に対しての反乱や裏切りの予兆が起こるだろう。
これを防止するべく、人類はブラック提督に対する対策チームを組織した。
その名はコンスル。古典ラテン語で執行官の意味だ。
国連所属の諜報機関であり、どの国の法律に縛られずにブラック提督を取り締まれる。
創設よりまだ日は浅く、人員が少ないが、知られれば名は恐怖となり、抑止力にもなるであろう。
もちろん、名を広める必要があるが。
アメリカ合衆国ワシントン州シアトル廃工場跡。
そこに、コンスルのエージェントが一人囚われていた。
エージェントの外見は、北欧系の金髪碧眼の浮世絵離れした美女である。
背丈は高く、173㎝もある。体付きは筋肉など一切無く、グラマラス体型であり、胸も一目で分かるくらいの巨乳だ。その金髪も艶やかで腰まで届くほど長い。
そんな北欧系の美女を椅子に縛り付けて囲んでいるのは、絵に描いたようなアメリカンマフィア達と、勤務服に着込んだ初老のアメリカ海軍の上級将校だ。
将校を除く全員の手には、アメリカ製の拳銃や短機関銃、散弾銃が握られており、いつでも撃てるような姿勢で待機している。人数は海軍将校を含め八人。一人では太刀打ちでき無さそうだが、前に立って尋問している将校を睨み付けている辺り、どうと言うことは無さそうだ。
「君は何処の所属だ? 我が国のCIAかFBIか? それともドイツ? スウェーデン? それともコンスルとか言う私のような悪党を狙う正義の秘密組織か? 言わねば一生レイプされ続ける人生を送る事になるぞ? 言えば、直ぐにでも解放してやる。さぁ、吐け」
問い掛けてくる将校に対し、エージェントの女は口を固く閉ざしたままだ。
無論、尋問を開始してから一時間近く経っており、マフィアのリーダーらしき男が苛立ち、将校に「まだ終わらないか」と問い掛けてくる。
「おい、旦那。いつになったら尋問は終わるんだ?
「そう慌てるな。尋問というのは時間を掛けてやる物だ。部外者は口を閉じてろ!」
リーダーの男を黙らせた後、将校はマリに近付き、再び問い詰める。
「大人しく吐いて女の尊厳を守るか、君を見捨てた組織を守る為に、一生裏社会の性奴隷として過ごすか。私が女ならば、間違いなく前者を選ぶぞ。優秀なエージェントを見捨てるような組織など裏切ってな! さぁ言え、これは君のためでもあるんだ。正気なら、前者の方を選ぶはずだ…」
将校はエージェントに前者の選択を強要するが、椅子に縛り付けられている女は口を閉ざしたままだ。
「そうか。後者の方を選んだか。では、直ぐに彼女を…」
口を割らないエージェントに対し将校は最終手段にでようとしたが、鳴り響いてくる携帯の着信音に水を差される。
「なんだ?」
「そこの女宛です」
「寄こせ」
邪魔をするように着信音を鳴らした携帯を、将校がそれを手に取ったマフィアの一人に持ってくるように告げる。
短機関銃を握るマフィアは、携帯を将校に渡し、一歩下がる。携帯を手にした将校は、着信してきた者がどんな人物が確かめるべく、通話ボタンを押して出てみる。
「何者だ? 今は取り込み中だ」
『おぅ、あんたか。今あんたの艦隊司令部をたった今制圧したところだ。凄いな
「君宛だ」
聞こえてくる勝利宣言と、知りたかった組織の名前を名乗った陽気な男に対し、将校はエージェントに携帯を渡す。
携帯を肩と頬だけで抑えながら、エージェントは開いてからの返事を聞いた。
『流れ者の女か、あんたのアニメみたいな声が聞きたかったぜ。マリさんよ。いや、エージェントハイブリットか。まぁ、言いづらいから、こっちの方が良い』
ここで、ようやくエージェントの名前が出た。
彼女の名はマリ、姓名はヴァセレートと判明しているが、流れ者と呼ばれる辺り、差し詰め出身地不明で年齢不詳の謎の美女と言うことだろう。
コンスルの構成員達の間では、本やテレビの世界から飛び出してきたや、未来の世界から来たの等、根の葉もない噂が流れている。
「本名言ったらアウトでしょうが」
『そうだったか? まぁ良い、そいつ等はお終いだ。早いとこ終わらせて帰ってきてくれ。司令があんたを呼んでいる。次の任務だとさ』
ようやく口を開いたマリであるが、陽気な男から次の任務を知らされた彼女は驚く。
「はぁ、また任務? 訴えて良いかしら?」
『なら組合にはいるか? 弁護士も付けば、正式な抗議が出来るぜ。いや、俺達は秘密の組織から無理か』
「そっ。じゃあ直ぐに片付けるわ。ちょっと待ってて」
『おう、早くしろよ』
そんなやり取りを交わしているのを見ていた将校は、腰のホルスターに差し込んである45口径の自動拳銃であるコルトM1911A1を抜き、銃口をマリに向けて、先程のやり取りと、コンスルについての情報を問い始める。
「おい、何を話していた? それにコンスルと言うのがお前の所属する組織の名前か? 早く言え、先程のやり取りを気化されて少し苛立っている。今のをもう一ぐぅ!?」
将校が銃口で脅して吐かせようとしたが、言い終える前に両足のロープを自力で外したマリに顎を蹴られて吹き飛ばされ、余りの痛覚に右手に握っていた大型自動拳銃を手放してしまう。
宙を舞う拳銃を、両足と同じく自力で外した両手で手に取り、それを自分に向けて短機関銃の銃口を向けている男に向け、引き金を引いて発砲した。
弾数は七発。最初の一発目が、大きな銃声と反動の後に発射された。口径は45口径。米西戦争より使用され続けるアメリカの古き良き大口径の拳銃弾だ。
45ACP弾が標的に向けて回転しながら飛んでいき、胸を抉った。
大口径の拳銃弾であるため、当たった男は胸に開いた銃創から血を吹き出しながら、堅いコンクリートの床の上に倒れる。
「このアマ!!」
仲間の一人が殺されたところで、マフィア達は直ぐにでも反撃に出ようとしたが、男達が銃を撃つ前に撃ち倒されていく。数秒後、動いているのはマリと海軍将校だけであった。全員、急所部分を撃たれており、いずれ出血死で死ぬ。
「ぐ、ぐぅ…一体、何が…」
起き上がった将校は、直ぐに起き上がって外へ出ようとしたが、マリに頭を強く蹴られ、気絶して堅い床の上に倒れ込む。
相手が気絶したのを確認したマリは、携帯を手に取り、通話を再開して艦娘達が無事かどうかを問い始める。
言い忘れていたが、彼女の任務は、床に倒れている将校が属している艦隊司令施設に囚われている艦娘達の救出である。
「終わったわ。艦娘は全員無事?」
何事もなく通話を再開するマリに対し、連絡先の相手は少し驚いたようだ。
『お、終わったのか…映画みたいなことを本当に実行するなんてな、驚きだぜ。
「良かった…後のこと、頼める?」
『あぁ、大丈夫だ。しっかりと面倒見てやる。あんたは安心して、日本行きの便に乗ってくれ』
「分かったわ。直ぐに行く」
囚われていた艦娘達の無事を確認した後、マリは日本へ向かうべく、後のことは後続の隊員等に任せ、近くの空軍基地まで足を運んだ。
数日後、コンスルに属する風来坊なマリ・ヴァセレートは、日本へ来ていた。
この世界の日本は、先の大戦の敗戦後も軍を奪われずに済んでいるが、実力の方は自衛隊の方が上である。戦闘経験での方は、自衛隊より優っている部分もあるが、ハッキリ言えば、自衛隊に戦わせた方が良いと言って良いほど酷い有様だ。大半の陸軍や海軍の将兵達は、右翼思想や暴力的な者が多く、愚連隊に近い物である。新設された空軍は、そんなに多くは無いようだが、航空自衛隊の足下には及ばないであろう。
そんな日本国の空軍基地に、大型の軍用機で降り立ったマリは、外へ出るなり背筋を伸ばし始める。
「クゥ~生き返った気分」
滑走路に足を付け、生き返ったように大きく手を上に翳して背筋を伸ばす。
事実、空の旅は快適ではない。軍用機なので旅客機のような旅は望めず、おまけにいつ深海棲艦の艦載機が襲ってくるか分からず、生きた心地がしなかった。
「制空権くらい取っておいてよね」
そんな緊張感からは解放されたマリは、私物が入ったトランクを手に取り、迎えの車が来るとされる場所へと足を運んだ。
だが、軍用機に揺られて日本へ来たのはマリだけでない。ヨーロッパからの便であるが、もう一人いたのだ。マリと同じ金髪碧眼で、北欧系の絶世の美女が居た。ややマリと似てしまうが、見分ける方法は、身長とバストサイズの差であろうか。
「ここが深海棲艦の最前線基地の
来て早々、前の戦場では活躍出来なかったのか、ここ太平洋で活躍すると宣言した彼女の名は、ビスマルク。1940年八月に就役した。
鉄血宰相の異名を持つオットー・フォン・ビスマルクにちなんで付けられた第二次世界大戦中のドイツ海軍最大の最大・最新鋭のビスマルク級戦艦のネームシップだ。
就役して五ヶ月後の41年三月のデンマーク海峡海戦にて、初陣で英国海軍相手に一方的な勝利を得る。だが、復讐に燃える大英帝国海軍の猛追撃を受け、やがて自沈した。救出された乗員は百十五名だけである。
しかし、英国海軍に与えた影響は大きく、ビスマルク恐怖症となり、ビスマルク級戦艦である二番艦ティルピッツを恐れたという。
身に着けているコスチュームは当時のドイツ海軍を意識しており、少し露出が多いが、デザイン性の高い物となっている。
前世で華やかな戦歴を上げた彼女は、マリと同じ方向へ向け、腰まである長い金髪を靡かせながら向かった。
迎えの車が遅かったのか、偶然にもマリと鉢合わせしてしまう。
「あら、貴方も太平洋配備?」
「(なにこの女?)」
ビスマルクはマリを見るなり、自分と同じ艦娘と思って声を掛ける。
馴れ馴れしく声を掛けてきた自分より背丈が20㎝も高い女に対し、マリは無視を決め込む。
「ちょっと、聞いてるの?」
しつこく聞いてくるビスマルクに対し、マリは口を閉ざしたままである。
自分を無視する女を振り向かせようと、肩に手を触れようとしたとき、妨害するかの如く迎えの者が現れた。
その迎えの人物とは、大日本帝国海軍の夏専用の白い制服を着て、頭には白い制帽を被っており、かなり階級の高い人物と見える。
「遅くなって済まない。少しばかり空軍の奴等に絡まれてな。”お前達”が、今日から俺の鎮守府に配属される艦娘か?」
迎えの者は、提督であるらしく、二人を見るなり挨拶もせず、軍隊における上司が部下に取るような態度で接してくる。
提督の外見はまさしく幾多もの地獄を乗り越えて来た戦士その物であり、左眼には眼帯、左腕は義手、右足は義足と言った戦争の恐ろしさと酷さが一目で分かる外見であった。
そんな歴戦錬磨の戦士を彷彿とさせた外見を持つ提督に対し、ビスマルクは歓迎されていると思い、似たような態度を取る。
「あら、
「貴官の活躍は日本でも噂になっている。なんたって北極海から深海棲艦を追い出した欧州連合艦隊の主力の戦艦がここ最前線の日本に助太刀とは、真に有り難い気持ちだ」
「良いのよ、もっと褒めても」
ヨーロッパからの助っ人に感謝する隻眼の提督に、ビスマルクは褒められた事にいい気になったのか、もっと褒めるように告げる。
このビスマルクの言葉を聞いた隻眼の提督は、即座に彼女を「傲慢なナルシスト」と判断した。
次にマリの方へ視線を向け、どの艦種の艦娘なのかを、ビスマルクに対する皮肉を交えながら問う。
「で、お前はナルシストのビスマルク級戦艦のネームシップの二番艦、ティルピッツか? それともシャルンホルストか?」
「ちょっと! 誰がナルシストよ!!」
自分を貶されたのか、ビスマルクは腹を立てて怒鳴り付ける。
そんなビスマルクにお構いなしに、マリは自分が艦娘で無いことを伝える。
「残念だけど、私は艦娘じゃないわ」
「おっと、こりゃ失敬。余りにもこの世の物とは思えない容姿をしているから、艦娘と勘違いした。済まない」
「私達と同じように美しい外見を持つ女が居るなんて…以外ね…」
艦娘と勘違いしたことを隻眼の提督が謝罪した後、艦娘に負けないほどの容姿を持つ人間が居ることを、ビスマルクは驚きの声を上げた。
「それと、”コンスル”って言えば分かるかしら?」
「コンスル? あぁ、分かった。車に乗ってくれ。ビスマルク、お前もだ」
マリが自分の所属している組織の名を口にすれば、それを理解した隻眼の提督は、自分の車まで案内する。その提督の自家用車は、アメリカ軍を初めとした多くの西側諸国で採用されている軍用車ハンヴィーであった。二人の私物だが、先に荷台へと運ばれている。
何処で購入したかの経緯は不明だが、隻眼の提督はそれなりのコネを持っていることから、恐らく個人購入であろう。
二人が後部座席に座ったのを確認すれば、隻眼の提督は運転席に座り、エンジンを掛け、ハンヴィーを走らせた。
まだ名前を名乗ってなかったのか、隻眼の提督はハンドル握りながら自己紹介を始める。
「まだ名乗ってなかったな。俺は
『(聞いてないわよ、そんなの)』
名前と何処の鎮守府の所属ならまだしも、聞いていないことも言い出し始めたので、二人ともウンザリする。それから少し黙っていたが、単に運転しているのがつまらなくなったのか、多聞は聞いていないだろう二人に日本の情勢を喋り始めた。
「今お前達が来た日本の状況は、深海棲艦との最前線基地であって余り平和とは言えん状況だ。鎮守府から脱走する艦娘が出ているそうだ。まぁ、単に沈むのが嫌で逃げ出したか、所属している鎮守府が”ブラック”だったかだ」
単なる世間話のように語る多聞だが、その表情は真剣その物である。
「政府は逃げ出した艦娘を探し出すために、愛国者達を焚き付けた。今のこの国は右翼が幅を利かせている。深海の化け物共が、会場に上がってくる前は、左翼が幅を利かせていたが、殆どの奴等は右翼に鞍替えしている。まぁ、俺から見れば、右翼も左翼も似たようなもんだがな」
片手をハンドルから離して多聞が言えば、マリが耳を傾けた。
「さて、その脱走者狩りに付いてだが、それが酷い物さ。艦娘を匿った奴等は、愛国者ぶったクソッタレ共に殴り殺される。全く酷い世の中だ、まるで第二次朝鮮戦争の頃のようだった。あの時は朝鮮人であるだけで殺していた。それも無関係な外国人まで。もちろん、血が混じっているだけでも殺された。酷い物さ、戦争ってのは。戦争を政治手段と言う奴もいるが、俺は単なる殺し間と思うね。それも原始的な」
戦争に対する持論を語れば、多聞はまだ続けた。
「兎に角その”愛国者”共は見境がない。働かないのを理由に精神病院や老人ホームを襲撃するほどの連中だ。まさに暴徒だ。全く、陸軍の奴等は何をしているんだか」
治安の悪化に対し何の対策も取らない政府に呆れつつ、多聞はカーブに差し掛かったところで、その方向へハンドルを切る。
少し進むと、遠くの方に人集りが見えた。それを先に見付けた多聞はそちらに向かおうとする。マリは面倒ごとには巻き込まれたくなかったが、人集りが囲っている物で気が変わる。
近くに車を止めた多聞は直ぐに降り、人集りを見ている野次馬の一人にどんな状態なのかを問う。
「おい、なんの騒ぎだ?」
「あ、あんた、その白い制服は海軍の偉いさんかい? あいつ等を止めてやってくれ。そいつ等が敵前逃亡者など、深海棲艦のスパイとか言って老夫婦と中学生くらいの娘っ子を囲ってんだ…もちろん、止めようとはしたさ…だけど、あいつ等棍棒とか持って、おまけにドスやら鍬、バール、とんでもねぇ事に猟銃なんかで武装しておっかなくて近付かれねぇ…」
野次馬の男の言うとおり、様々な凶器で武装した大勢の男達が老夫婦と十代前半の少女二人を囲い、罵声を浴びせていた。
「その敵前逃亡者を渡せ! 老い耄れ夫婦!!」
「そいつは鎮守府から脱走した艦娘だ! 責務を放棄して逃げた臆病者だ!! 俺達国土防衛市民軍が裁いてやる!!」
「さては深海棲艦のスパイか!? なんとか言ってみろ!! ええ!?」
抵抗も出来ない弱者相手に強気でいる男達。それに老夫婦は必死で、二人の少女が艦娘で無いことを言い張る。
「ち、違います! 私達はただの疎開しようとしただけです! それにこの二人は艦娘ではありません!!」
「この子達は私達の孫なんです! 二人とも親を失った可哀想な子達なんです! どうかお見逃し下さい!!」
必死で二人の少女が自分達の孫であることを訴える老夫婦であったが、男達は聞く耳持たず、一人の少女の腕を引っ張り上げ、無理矢理連れて行こうとする。
「煩いぞ婆! この娘は敵前逃亡者だ!! それに責務を放棄して、戦場から逃げる艦娘は国家反逆罪の罪で死刑に相当する罪だ! よって俺達がこの臆病者を裁いてやる!!」
「い、嫌!」
「お、お放しください! その子は本当に艦娘では無いのです!!」
少女の腕を掴んだのを見逃さなかった多聞は即座に場へ乱入し、腕を掴んでいる男に声を掛ける。
「おい! 何をやっている!? 貴様等!!」
海軍の軍人である多聞を見た男達は、直ぐさま海軍式の敬礼を行い、事情を説明した。
「お、これは海軍の御方! 今この敵前逃亡者二人を憲兵に差し出す所であります!」
多聞が来るなり、先程の言葉が不味かったのか、憲兵に差し出すと言い換えた。聞き逃さなかった多聞はそれをネタに、睨みを利かせて問い掛ける。
「さっき俺達が裁くとか言って無かったか? どうなんだ?」
「い、いえ…断じてそんな事は…」
図星であったのか、問われた男は直ぐに誤魔化そうとする。
相手が少し戸惑ったところで、多聞は相手が立ち直る隙を与えず、更に畳み掛けた。
「お前等が愛国者ぶって、手当たり次第に敵前逃亡者だの、敗北主義者だの、敵のスパイだのとほざいて襲ってるって事はハッキリと分かってるんだ。さぁ、大人しく吐け。そうすれば、命までは取らん」
「ぐ、ぐぅ…」
思惑がバレてしまった男は、近くの男に視線を向けた後、人数の多さに任せて多聞に襲い掛かった。
「こっちの頭数が多い! やっちまえ!!」
「おっと、そう来たか…」
様々な凶器を持って襲い掛かる男達に対し、多聞は余裕の笑みを浮かべながら、最初に襲ってきた男にカウンターを食らわせた。それを見ていた野次馬達は、自分達が殺されると思い、蜘蛛の子散らすように逃げていく。
暴徒と化した男達は、多聞だけでなく、様子を確かめようと車から降りていたマリとビスマルクに襲い掛かった。
「あの白人の女共、良いから出してるぜ!」
「あいつ等も捕らえろ! 良いか! 傷付けんなよ!!」
各々が凶器を持ち、下品な笑みを浮かべながらマリとビスマルクに襲い掛かる。
「ちょっとあんた達! 私が艦娘だって事分かってんの!?」
襲い掛かる男達に対し、直ぐに止まるように告げるビスマルクであるが、ドイツ語で言ってしまっているので、通じるはずもなく、勢いに任せて向かってくる。
「はぁ…なにやってんだか…」
これにマリは、車のトランクから取り出した自分の得物である剣を、背中に背負っている鞘から抜き、迎撃態勢を取った。
そのマリが鞘から抜いた剣は洋剣であり、突きに斬ると言った双方をこなせるバスタードソードである。それを見た男達は、気にせず、数の多さに任せて突っ込む。
「女が剣を抜いたぞ!!」
「知るか! やっちまえ!!」
最初の一人がマリに向けて棍棒を振り下ろしたが、あっさりと弾き返され、腹を斬られた。
「う、うぅ…!?」
「ほ、本物だ!!」
腹を斬られた男は、傷口から内臓を垂らしながら地面に倒れた。
彼女が持っているバスタードソードが本物の刀身であることが分かったのか、男達は恐れ戦き始めたが、数は暴徒達の方が上であり、リーダー格の男が再度攻撃するよう叫ぶ。
「構うもんか! 掛かれ!!」
「ウォォォォ!!」
数の多さに任せて再び突っ込んでくるが、マリは流れるように、次から次へと来る男達を斬り捨てていく。
「脳天を吹っ飛ばしてやる!」
猟銃を持つ男がマリに向けて動物用の大粒の散弾を撃とうとした。
「いっ!?」
「遅い…」
彼女は暴徒が銃を撃つよりも早く懐に入り込み、自分の得物であるバスタードソードで男の両腕を切断した。
「この女からやれぇ!」
「舐めんじゃないわよ!」
残った三人ほどがマリよりは弱いであろうビスマルクに襲い掛かったが、彼女もそれなりの体術を身に着けており、素人の男達が敵うはずもなく、あっさりと返り討ちにされる。
「はぁぁ!!」
マリが最後の一人の首を刎ねたところで、暴徒達は恐怖に駆られ、逃げ始めた。
「ば、化け物だ!」
「敵わねぇ! 逃げろ!!」
その逃げ用は無様と言って良いほどであり、我先にと、仲間を押し退けながら逃げていく。
老夫婦と少女二人を囲んでいた男達と戦っていた多聞は、返り血塗れの軍服と頭にたんこぶを一つ作って彼女等の元へ寄ってくる。
「どうした? あいつ等尻尾が切られたトカゲみたいに逃げっていったぞ。その剣で数人の男のナニを切り落としたのか?」
「ちょ、ちょっと! ナニって…セクハラよ!」
「あぁ、済まないな。ゲルマンの乙女には、下ネタはちと荷が重すぎたか」
下品な表現を混ぜて問い掛けてくる多聞に対し、マリは鞘に剣を収め、車に戻った。一方のビスマルクは顔を真っ赤にして、多聞に怒鳴り付ける。それに多聞は謝ってから、多聞は速やかに本来の目的を果たそうと、ビスマルクに車に乗るよう告げる。
「まぁ良い。兎に角だ、派手にやりすぎた。こんな騒ぎだ、警官じゃなくて憲兵共が駆け付けてくるかもしれない。急いで鎮守府に向かうぞ」
「えぇ、こんな騒ぎに巻き込まれるのは、二度とご免だわ」
もう一度この騒ぎに巻き込まれるのはご免被るのか、ビスマルクはこの提案に乗り、ハンヴィーに乗り込む。多聞もそれに続いて、自分の鎮守府目指して車を走らせようとした。だが、お礼を告げる老夫婦に呼び止められる。
「あ、ありがたや! 娘達と妻を守っていただき感謝します! なんとお礼をしたらいいか…」
「す、少ないですが、せめてお礼を…」
老人が礼を言えば、彼の妻である老婆がなけなしのお金を多聞に手渡そうとする。
しかし、礼が欲しくて助けたわけでない多聞は、それを拒む。
「済まないが婆さん、この金は受け取れない。その金は娘さん達の為に取っておきな」
「で、ですが…それでは助けて貰った恩が…」
「みなまで言うな。あんた等も早くこの場から逃げな、次は憲兵共が来て、難癖付けて娘さん達をさらおうとするぞ。さぁ、早く行け!」
「わ、分かりました…この礼は、いつか必ずさせて貰います…」
老夫婦を説得して、この場から立ち去ったのを確認した多聞は、マリとビスマルクが乗るハンヴィーの運転席に腰を下ろし、自分の鎮守府まで車を走らせた。
車を走らせて数十分後、自分の鎮守府がある街まで到着した。
その街は元港湾都市であるらしく、それなりに栄えていたらしいが、深海棲艦の出現で今は軍港にされており、更には鎮守府がある為か、街の人々の顔色はあまり宜しくない。早く深海棲艦との戦争が終わって欲しいと願っているようだ。手荷物を纏めて街から出ようとする人々が見える辺り、そんな気持ちが伝わってくる。そんな街並みを窓から眺めつつ、彼女等が乗るハンヴィーは頑丈な壁に覆われた鎮守府正門前まで到着した。
番兵の停止命令を聞いて、多聞が車を止めれば、運転席の近くに寄ってくる小銃を肩に掛けた番兵に向け、顔を見せる。
「ただいま」
「井上閣下、お帰りなさい。鎮守府内では、艦娘達と整備兵、勤務将兵等が酒盛りをしております。駆逐艦や軽巡洋艦達は別ですが」
「おう、そうか。じゃあ、戦艦が一隻来たと、秘書艦の伊勢に伝えておいてくれ」
「了解しました! 秘書艦の伊勢に新しい戦艦が着任した事ですね。どうぞ、お通り下さい」
番兵が敬礼して指示を復唱して、門が開いたのを確認すれば、門を潜って鎮守府内まで入った。
鎮守府内には、水兵のようなコスチュームに身を包んだ少女達が屯しており、ジュースを飲んだり、カードゲームや携帯ゲームをしていたりなど、様々な娯楽を楽しんでいた。
学生服のようなコスチュームを着ている軽巡洋艦であろう眼帯の女性は、口に煙草を咥えて一服している。
「よし、ビスマルクは宿舎で自分の部屋に行き、私物をそこに置け。艦娘専用の宿舎はあっちだ。部屋はそこらでゲームなりしている駆逐艦に聞けばいい」
「分かったわ」
「それと、エージェントあぁ…お前は俺の執務室だ」
駐車場でハンヴィーを止めた後、多聞はビスマルクに宿舎に行くよう命じれば、マリに自分の執務室まで来るよう命じる。自分のコードネームを覚えてない失礼な男の指示に従い、マリは多聞の後へ続いて鎮守府本館内に入った。本館内の酒場前を通れば、重巡から空母までの艦娘達が、整備兵や所属の将兵達と混じって酒盛りをしており、かなり盛り上がっている様子であった。
「この野郎、やろうってのかぁ!?」
「うるへぇー! コンチクショウガー!!」
酔った勢いで殴り合いをする兵士もおり、酒盛りは大分前から行われている様子だ。
中でも取り分け凄いのが、
隼鷹は日本酒やワインをまるで水のように飲んでおり、周りには一番の酒豪である彼女に飲みくらべを挑み、見事玉砕した将兵達が倒れている。
「ひゃっはー! 次は誰がやるんだぃ!?」
顔を真っ赤にして雄叫びを上げながら、次なる挑戦者を待っているようだが、机に並べられた彼女が飲み干した酒瓶の量は凄まじく、誰も挑戦する者は居なかった。
「おっ、提督ぅ~飲みくらべしないかい~?」
酒盛りの様子を出入り口のドアから眺めていた多聞に気付いた隼鷹は、参加しないかと誘うが、彼はそれを断る。
「いや、遠慮しておく。この外国からのお客様を接待しなくちゃならんのでな」
「そうかい。んじゃあ、こっちは勝手に盛り上げとくわぁ! 景気よくパーッとね! ひゃっはっはっは!!」
少し残念がりながらも、隼鷹は笑いながら熱燗を飲む。
そんな酒盛りを後にした後、マリと多聞は執務室へと着いた。出入り口のドアを開けるなり、多聞の秘書艦である伊勢型戦艦のネームシップである伊勢が出迎える。
「お帰りなさい提督」
「あぁ、ただいま。留守中、何かあったか?」
「酒盛り以外は何も」
何かあったかを問うたとき、伊勢が酒盛り以外は特に変わったことがないと答えれば、多聞は苦笑いを浮かべた。
「そうか。それと済まないが、席を外してくれないか?」
「何か不味いことでも? いや、ちとこの諜報員に”例の奴”のことをな…監視カメラは切っておいてくれ」
「分かりました」
伊勢がマリのために椅子を用意してから執務室を後にし、監視カメラが切られたのを確認した後、口を開いた。
「さて、何から話そうか…」
机に座る多聞が、煙草のケースとライターを取り出しながらマリに問う。
「そうね、なんで酒盛りしてるの?」
鎮守府に着いてから閉ざしていた口をようやく開いたマリは、何故酒盛りをしているのかを聞いた。それに多聞は率直に答える。
「あぁ、三日前からの作戦が大戦果だったんだ。深海の化け物二百匹くらい喰ってやった。大漁だよ、大漁。こっちの損害は幸いにして中破が三隻だけ。その祝いで酒盛りをしている。最前線のチューク泊地の戦乙女艦隊には敵わんがな。あそこは月に四百匹は喰ってる」
酒盛りの理由を述べた後、マリは戦乙女艦隊の事が気になったのか、その艦隊について問う。
これに多聞は煙草を一本口に咥え、先に火を付けて煙を吸って吐いた後に答えた。
「戦乙女艦隊?」
「あぁ、知らないのか? 結構有名だぞ。若い女が提督の艦隊だ。海外じゃあんまり知られてないと思うが、凄いんだぞ、装備や設備が何から何まで恵まれてる。他の鎮守府の連中が嫉妬するくらいにな。まぁ、最前線だから仕方がない事だ」
「そうなの。それじゃ、そろそろ本題に入って」
戦乙女艦隊のある程度のことを多聞から聞いた後、本題に入った。
それに多聞は、煙草を一服してから口を動かし始める。
「そうだな。お前のような余所者が来るほど申告なのか? ブラック提督問題は?」
「えぇ、特に日本とイギリスは。練度が低いのに捨て駒や殴る蹴るなんかは兎も角、艦娘に売春を強制してるくらいよ。そればかりかレイプまで起きてる…性奴隷にされてるって事もあるわ」
「幾ら良い体付きと美人とはいえ、戦う存在を強制的に売春させるとはな…殴る蹴るならまだしも売春組織をおったてちまうなんて…全く、こんなクズ共を守る為に、深海のクソッタレ共と戦わされてんのか、艦娘は…」
マリからブラック提督問題の詳細を聞いた多聞は、そんな酷い提督に使える艦娘達の気持ちを察する。
次に、自分がブラック提督に仕える艦娘なら、どのようにするのか?
その考えをマリは口に出す。
「えぇ。私が艦娘ならそんな提督、直ぐに深海棲艦の餌にするか、艦装だっけ? それ付けて肉塊にしてるわ」
「同感だな。俺が艦娘ならそうする。捨て駒やら殴ったり、レイプしたり、売春させるなんてよ、提督失格だぜ。戦力保持のために軍艦と同じように、出来るだけ沈めさせないのがモットーな筈だ。全く、代えが効く戦車や戦闘機、魚雷艇、コルベットじゃないんだぞ、艦娘は」
多聞は艦娘を消耗品扱いするブラック提督に怒りを覚えていた。
戦闘車両や航空機、小型戦闘艇は随時工場で生産され、兵站がしっかり整えば随時補充が可能だが、中型戦闘艦であるフリゲートや駆逐艦からは、作るのに時間が掛かり、それに建造費も掛かる。ましてや軽巡洋艦や戦艦、空母などの大型戦闘艦は建造に時間が掛かり、その建造費も膨大だ。それに建造に成功しても、訓練やテスト航行で時間を浪費し、前線に到着するまで時間が掛かる。
現在は空母だけは防空や制空権確保、地上支援の為に、やもえず残されたが、時代遅れで、無駄に建造費と維持費が掛かる艦隊戦を重視した戦艦は建造されなくなった。巡洋艦などはミサイルを搭載して生き残っているが、消えるのは時間の問題であろう。
艦娘も中型艦クラスの軍艦と同様に建造費が掛かるので、戦車や戦闘機のように消耗品として扱うなど、貴重な戦力と金を無駄に消失している他ない。
ましてや対抗手段である艦娘を性奴隷にするなど、言語道断である。
それをマリに向けて語った多聞は、任務に取り掛かって貰うべく、任務の詳細を語り始めた。
「コンスルとか言う、余所者に来て貰ったのは他でもない。単なる実力を確かめるための物だ。標的は
標的の居場所と名前を言った後、机から写真を数枚ほど机の上に出し、続ける。
「始末しようと我が国の仕事人部隊が動こうとしたが、最悪なことにこのクズ野郎は大物の政治家の息子だ。しかも仕事人部隊の情報を掴んでいてな、動きを封じられた。それに、奴の居城は俺の生まれ育ちの静岡だ! 東京の富裕層生まれのクズ野郎が、俺の故郷で艦娘達をレイプして捨て艦にしている…これほど胸糞悪いことは無い」
私情を挟んで自分達では対処できないことを語ったあと、多聞は煙草を一服してから、この事態を解決できるのが外国からの助っ人であるマリしか居ないことを告げた。
「それで外国からの助っ人であるお前が頼りなんだ。作戦は志都美鎮守府への潜入。そこで証拠を押さえろ。安心しろ、何名か信用できるのを用意した。警備府の司令長官がお前の潜入を支援する。現地で落ち合え」
丁度良い辺りで区切ったところで煙草を一服し、協力者について説明する。
「その司令官は在日朝鮮人だが、生粋の日本生まれだ。日本人であることは変わりない。作戦は明日だ、詳しいミーティングは明日行う。それまでに旅の疲れを休んでおけ。厳しい任務になるぞ」
「分かったわ。簡単に終わらせる」
「期待してるぞ」
マリの任務が潜入作戦であることを伝えた後、多聞は作戦に備えて休息を取るように命じた。
その言葉に従い、マリは休息を取るために、来客用の宿舎へと足を運んだ。
翌朝、ミーティングを終えたマリは、静岡の志都美鎮守府の近くにある街に居た。
一番大きい広場で協力者と合流する予定だが、まだその協力者は来ていないようだ。
「まぁ、時間が時間だし」
マリは煙草を吸いながら、中央にある時計台の針を確認する。
それもその筈、相手が来ないのは、約束の五分前に来ているのだから。
五分後には、約束の時間通りに協力者が合流地点に現れる。
協力者はマリに目を合わせれば、合い言葉を知っているか問い掛け、乗艦である多聞から聞いたエージェントであるかを確かめる。
「失礼、合い言葉は?」
「”ニイタカヤマノボレ”」
「例のエージェントか…こっちへ来てくれ。ここでは目立ちすぎる」
合い言葉で件の人物であることが分かれば、人気のない場所へマリを手招きする。
これにマリは警戒するが、協力者は敵でないと告げる。
「そんなに警戒するな。私は朝鮮人だが、国籍は日本だ。それに北朝鮮の工作員でも韓国のスパイでも無い。どっちの国とも既に存在しないがな。今は統一国家である。朝鮮連邦になっている」
協力者の口振りから、この世界の大韓民国と朝鮮民主主義共和国は、深海棲艦が現れる前から存在せず、今は統一されて朝鮮連邦になっているようだ。
世界情勢の話はさておき、マリは協力者の案内で開店前のバーに辿り着いた。
裏口から店内に入れば、サングラスを掛けた背丈が180㎝程の男と、年配の女性に、艦娘らしき少女の三人がマリを出迎える。
「年配の女性が私の妻で、少女は私の秘書艦。そこの男が、君をサポートする男だ」
それから名を名乗っていなかったのを思い出したのか、他の三名を含めて自己紹介を行う。
「失礼した。私は
「よろしくね。エージェントさん」
圭一の妻である里美がマリに礼儀正しく挨拶する。
その容姿は平凡的だが、圭一も平凡的なので、お似合いの夫婦と言って良いだろう。
「あちらの少女は、艦娘で私の秘書艦である軽巡洋艦の
「名取です。よろしくお願いします」
軽巡洋艦である名取が、里美と同じく礼儀正しく挨拶した。
「で、こちらが…」
「マイク・スギタだ。あんたと同じ、コンスルの所属だ。主にサポートを担当する。カズでもスギ、マックでも何でも呼んでくれ」
最後に圭一が男の方へ手を翳したところで、マイクがマリと同じ組織に属する者であると告げる。日本に派遣されたのが、自分だけでないことを知ったマリは、早速本題に入った。状況説明を行うのは圭一だ。
「井上閣下から詳細は聞いているかと思うが、手短にお復習いしよう。あの鎮守府からターゲットは一歩たりとも出ていない。更に好都合なことに、奴の親が来ている。理由は胸糞悪いから話さないが、一石二鳥だ。政府と海軍は大喜びだろう。だが、任務は決定的な証拠を掴むことだ」
机の上に二枚のターゲットの写真を置き、親子諸共社会的に始末できることが、日本政府や海軍、コンスルの三方にとって好都合だとマリに説明する。
「だが油断するな。東城に飼い慣らされた陸軍の部隊が居る。それに懲罰部隊も一緒だ、奴等は前の戦争で大虐殺を行った殺人狂の集まりだ。交戦は絶対に避けるように…それに見付からないようにな」
マリに派手に暴れないよう釘を刺した後、任務で絶対にやってはいけない事を告げる。
「良いか? 井上閣下にも言われたと思うが、絶対に見付からない事。ドイツ海軍の中佐として潜入するが、立ち入り禁止地区がある。そこに潜入するなら、絶対に見付かるな。もう一つは、何があっても暴れない事だ。例えどんなに胸糞悪い場面に遭遇しても、絶対に手を出すな。分かったな?」
「善処するわ」
もう一度釘を刺し、マリが首を縦に降って答えれば、次にマイクが口を動かす。
「何か嫌な予感がするがな。主任務は証拠の採取、これ以外のことはやらんでくれよ? それ以外のことをすれば俺達の立場がやばくなり、コンスルの日本支部は取り止めだ。任務に当たる際は、細心の注意を払ってくれ」
「えぇ、もちろんそのつもりよ」
いい加減な返事をするマリに対し、マイクは呆れた表情を浮かべながら、任務失敗に対しての条件の説明に入る。
「はぁ、どうなる事やら…任務失敗に関しての際は、どうなるか分かっているな? 俺達が支部を開く条件として、幾つか日本政府が注文してきた。例えば殺すなや暴れるなやだ」
「えぇ、存在を無かったことにするんでしょ? まぁ、私的にはどうなっても良いけど」
「いい加減だな。ボスがどうしてこんな自己中心的な女を入れたのか理解できない。もちろんだ、任務以外のことをすれば、コンスルは何の前触れもなく、アンタをメンバーリストから外し、そんな諜報員は居ないとシラを切るだろう。アンタは無国籍だから消したところでどんな国も俺達コンスルにも何のデメリットもない。有事の際はもう誰も助けてくれないぞ。その辺は分かってるだろうな?」
机に両手を載せ、威圧を込めた口調でデメリットの事を話せば、マリに任務に対してのタブーを犯さないよう釘を刺す。
「はいはい。どうせ私は流れ者だから、使い捨てるも救うのも自由よ」
それに生返事をしてからマリは任務に当たるべく、装備の確認を行った。
数分後、装備確認を終えてドイツ海軍の視察官である中佐に変装したマリは、圭一の部下と共に、件の鎮守府へと車で向かった。
運転手は日本海軍の将校であるが、圭一が厳選して選んだ人材なので、ある程度のことは信用できる。
もし裏切るような素振りを見せれば、首の骨など折るなどして始末すればいい。
そう彼の部下が、敵の間者である場合を想定しつつ、マリは車に揺られながら、件の鎮守府まで着くのを待った。
車に揺られること数分、車は鎮守府の正門前までたどり着いた。
「身分証明書を」
その検問のやり方は多聞の鎮守府と似ていたが、警備兵達のやる気は無かった。
警備兵の一人がマリに気付き、運転手に軍服を着た女について問う。
「あの、後部座席に座ってる軍服を着た金髪の女。新しいコールガールですか?」
それを聞いた運転手は、下心丸出しで問うた警備兵を怒鳴り付ける。
「馬鹿者! 彼女はドイツ連邦海軍のエリカ・フォン・クロイツ中佐殿だぞ!!」
「し、失礼しました!!」
「上等兵、貴様は上官侮辱罪を犯した! 幾ら他国の軍人でも将校は将校だ。直ぐに貴様の上官に報告し、その腐った態度を直して貰え!!」
「了解!!」
圭一の部下は上等兵である警備兵を然り、直ぐに担当の士官にそれなりの刑罰を与えて貰うよう指示を出した。
それから代わりの警備兵に後部座席に座る外国海軍の女将校が視察に来た者と説明し、正門を開けさせ、車を鎮守府内に入れさせた。
駐車場で一度停車した車から降りたマリは、担当将校が来るまでに証拠となりそうな物を探そうとした。
「おっと…」
「ご、ごめんなさい!」
一人の駆逐艦らしき艦娘がマリにぶつかり謝ってから何処かに去っていった。
それから担当の将校が現れ、外国からの視察官であるマリに、ついてくるよう告げる。
担当の将校の顔付きは、何か見られたくない物を急いで片付けたような後であり、額の汗を必死で拭っていた。
「こちらへどうぞ…」
口調こそ落ち着いているようだが、緊張ぶりは隠せては居なかった。
三十分もしないうちに視察は終わり、自由に見回ることを許される。
「自由に見回る許可を出します。ですが、立ち入り禁止区画には入らないでください。幾ら将校と言っても貴方は他国の軍人、我が国の軍事機密はお見せできません。ご了承下さい」
ようやく落ち着きは取り戻したようだが、士官を呼び出し、彼女が何かしでかさないよう監視するよう小声で告げる。
「あの女将校を監視しろ。絶対に入れるなよ」
「分かりました。もし見られた時は、始末の用意は出来ております」
それを聞き逃さなかったマリは、臨戦態勢を整える。
徐にポケットに手を入れて見れば、何かメモのような物が入っていた。
「(メモ? あの駆逐艦の子が? ここで開くのは不味い。あの監視をどうにか…)」
メモの存在を確認したマリは、立ち入り禁止地区前まで来れば、監視の腹へ向けて強烈な拳を食らわせた。
「グフッ!?」
強烈なパンチを受け、気絶はしなかったが、痛みで悶絶しているようだ。
トドメに首へ向け、上方で組んだ両手を振り下ろし、完全に気絶させた。気絶した将校は、立ち入り禁止区画に入ってから、人気のない場所へ隠す。
「動きづらいわね」
そう無駄に動きを制限する制服を脱ぎ捨てた彼女は、下に着込んでいた潜入用スーツの姿となった。身体のラインが見えているが、十分に動きやすい物である。
制服を捨てる前に、ポケットの中に入っていたメモを確認した。折り畳まれたメモを開き、その内容を確認する。
『私達をこの地獄から解放して』
そう殴りかかれた文字で、外国から来たマリに助けを求めていた。
それを受け取ったマリは、メモを懐に仕舞い、脱いだ制服はゴミ箱へ捨て、立ち入り禁止区画の奥へと進む。
ここから先は敵地であり、絶対に見付かってはいけない。それに敵は殺さず、麻酔銃で眠らせること。派手に殺し回るな。
この三つのルールを嫌々と守りつつ、マリは警備の目をかいくぐり、決定的な証拠があるとされる艦娘の移住区へと向かう。
「あっ?」
途中、一人の警備兵がマリの存在に気付いたが、彼女の姿を見ることなく、頭を麻酔銃で撃たれ、眠らされた。
それからはマリにとっては全く楽な潜入任務であった。
警備兵達はやる気無く、巡回する歩哨ですら途中で煙草を一服してさぼっている始末だ。厳格な軍人が見れば、血管を浮き彫りにして激怒することだろう。そう思いつつ、マリは目的名場所を目指す。
「見付けた…!」
目標まで後少しとなったところで、マリはそこへ入る二人の標的を見付けた。直ぐに収音声マイクを搭載した双眼鏡を二人に合わせ、親子の会話を盗み聞きする。高価な制服を着ているのが件の提督の父であり、白い軍服の男が、標的の東城秀正だ。
この会話も重要な証拠となり得るので、録音する必要がある。
『父さん、今日はとても肉付きの良い子が出来たんだ。処女は是非、父さんに…』
『ほぅ、生娘をワシにくれるのか。今夜は朝まで楽しめそうだ』
『父さんのために作った艦娘だ。これからも、よろしく頼むよ?』
『分かっておる。可愛い息子のためだ。所詮、艦娘など消耗品だ。人間ではない。資源があれば幾らでも代えが効く。それにどう扱おうがお前の自由だ。捨て駒にするも奴隷にするも良いぞ』
『あぁ、自由にするさ。売春宿で儲けた金は、父さんの懐に送金しておくよ』
『助かるな。これで、ワシの椅子も安泰だ。これからも頼むぞ、秀正』
『父さんのためなら何でもするさ』
この会話の後、秀正は父と共に艦娘達が監禁されて居るとされる目的の建造物内に入る。
録音した音声をマイク達が居る本部に送り込めば、左耳に付けてある超小型無線機から通信が入ってくる。相手はマイクである。その口調はとても苛立っている様子だった。
『録音した音声を確認した。胸糞が悪い…あいつ等、良心が痛まないのか?』
「痛まないでしょうね。ダッチワイフと思ってるんだから。鬼畜が建物内に入った。これから証拠写真を撮るわ」
『ダッチワイフか…いつも胸糞悪い場面に遭遇する…あぁ、こいつ等を社会的に抹殺しよう』
マイクからの通信が終われば、マリは標的が居る建物まで接近した。
「人間の女より艦娘の方が”名器”だよな?」
「お前、艦娘とやり過ぎなんじゃねぇか?」
「ウッセーな、質問を質問で返すな。お前はどの艦娘が好みだって事だよ」
「そりゃあ、強気の女を無理矢理手籠めにするのがな…」
途中、この二人の警備兵の会話がマリの耳に入った。
これを聞いたマリは少し激怒したのか、目にも止まらぬ速さで接近し、二人の股間を粉砕してから、悶絶した二人の警備兵を何処かへ隠す。
『おい、余計なことをするなよ? 別に股間を潰すのは良いが…』
再びマイクからの通信があったが、マリは無視して建物内の窓から侵入した。
そこにも警備兵が巡回していたが、自分に与えられた責務を全うして居らず、酒瓶を片手に酔っぱらっている始末であった。
酔っぱらった警備兵はマリに気付いたが、侵入者と思わず、高雄型重巡洋艦である愛宕と勘違いした。
「んぁ? 愛宕か…? 俺達の鎮守府に居たっけな…?」
「バカ目と言って差し上げますわ」
高雄型重巡洋艦のネームシップである高雄の決め台詞を吐いた後、侵入者の存在を通報しない酔っぱらいに向け、麻酔銃を放った。
それから微かに聞こえてくる女性の悲鳴を頼りにその場所へと進む。無論、足並みは忍び足であり、専用のスーツの御陰で足音一つすら鳴らない。警備兵や監視カメラを避けつつ、地下へと続く階段に足を踏み入れた。
階段を一段一段と降りる中、マリが怒りに任せて行動に歯止めを掛けるためか、マイクからの通信が入ってくる。
『ハイブリット、何度も言うようだが何を見ても冷静を保てよ? 例え何があってもだ』
「善処するわ」
『善処ではなく絶対だ。この証拠を押さえれば、奴等は社会的に抹殺できる。その後は殺すなり嬲るなり好きにしろ。分かったな? 俺達はスポンサーの言う条件を絶対に守らないといけない。コンスルの支部を日本に置くためにな。だからその感情は捨てろ。例えどんなに胸糞悪い場面に出会しても…それが諜報員と言う職業だ』
歯止めを掛けた後、通信を切った。それからマリは地下に降りれば、聞こえてくる悲鳴を頼りに、麻酔銃に改造されたウィルディ・ピストルを握り、一歩一歩と床を踏みしめる。麻酔銃を握る手は強くなっており、女性を犯している場面に出会せば、先程のマイクの歯止めが無意味になりそうなほどの勢いだ。
啜り泣く声、泣き叫ぶ声、必死に助けを呼ぶ声、愛する者に対しての謝罪の声、殺してくれと泣き叫ぶ声が耳に入り、彼女の怒りを掻き立てていく。
やがて決定的な証拠な転がる場所へと到着する。それを目にした彼女の脳内では、フラッシュバックが巻き起こった。
『嫌、イヤ…!』
『暴れるな!』
『や、やだ! 離して!!』
『暴れるんじゃねぇ!!』
『来ないで! いや、いやぁぁぁ!!』
そのフラッシュバックは望まなかった”初体験”であるらしく、暴力的な大柄の男に当時の幼い自分が犯されている記憶であった。
背景は自分が今居る場所と同じ地下室であるが、流石に檻はなかった。だが、トラウマを呼び起こす装置にしては、十分過ぎる物である。
フラッシュバックで自分のトラウマを思い出し、頭を抱えたマリは、目の前で嫌がる艦娘達を犯している男達に対して、強烈な殺意を抱き始める。
「殺す…殺す殺す殺す…コロス、コロスコロス…!」
感情を剥き出しにして殺意を放つ彼女の怒りは頂点に達しており、いつ爆発してもおかしくない状況であった。
そんなマリに歯止めを掛けるべく、マイクは通信でカメラのシャッターを押すよう指示を出す。
『感情を抑えろ! カメラを取り出し、レンズに決定的な証拠を押さえ、シャッターを切れ。このスキャンダルが世間に流れれば、奴等もお終いだ。任務を全うしてくれ』
言われたとおりマリは、少し落ち着いてから証拠を押さえるためのカメラを取り出し、レンズ越しに行為に浸っている秀正とその父を収め、シャッターを切った。フラッシュは消しており、シャッター音も微かに聞こえるくらい改造されているため、二人は他の高級将校等と共に嫌がる艦娘との行為に夢中だ。これを見せられ、黙っている彼女ではなかったが、今は任務中であり自分の目的のために感情を圧し殺さなければならない。
黙々とシャッターを切る中、ロングストレートの黒髪の艦娘との行為を終えた秀正が、不安な表情を浮かべ、黒髪のショートヘアーの艦娘を行為に浸っている父親に問い掛ける。
ここに入る前、建造したばかりの艦娘の処女を犯すと言っていたようだが、もう飽きてしまったようで、虚ろな表情を浮かべながら堅い床の上で全裸に転がっている。又には血の跡が残っており、第三者であるマリの視点からは、現実逃避でもしているかに見えた。
「父さん。僕は不安なんだ…こんな事がいつかバレるんじゃないかってね」
そう不安を打ち明ける息子に対し、東城は腰を肉付きの良い艦娘に打ち付けながら答える。
「心配するな…はぁ! 全部ワシが根回しした。陸軍の連中は暗殺部隊も出せやせんさ! なんたって弱みを握っているのだからな!」
「弱み…?」
「そうだ。外国の組織か国連からから助っ人を呼んだらしいが、どうせ無駄じゃ! このワシの情報網に引っ掛からん訳がない! だから安心せい、お前は、ずっと安心だとな!! うぅ…! 凄い名器じゃ!! 山城とか言ったか? 俺のを流し込んだら後でお前の姉にも流し込んでやる!」
「やっぱり父さんは凄いや…父さんは敵無しだね!」
「そうだ! 例え証拠を撮られようともそんな物、ワシの権限で潰せばいい! それにこいつ等が乱れる様の映像も撮って保管してある。何かあれば、ネットにでも流してしまえばいい。ワシ等が社会から抹殺されるようなことがあれば、艦娘共も道連れだ」
不都合な物は、自分の権力で消してしまえばいい。
そんな言葉を聞いたマリの怒りは爆発した。
行動に移る前に、写真を本部に送り届け、通信でコンスルの日本入りが敵に漏れていることをマイクに告げる。
「写真は送ったわ。もうバレてるけど」
『なに! それは本当か!? だとしたら、最初から泳がされている事になるぞ!』
「それは心配ない。警備の様子からして私が潜入していることすら気付いてないようだわ」
『そうか。だが、気付いているようなら証拠を潰しに掛かるだろう。例え証拠をネットに流しても、あの男の事だ。ハッカーやらなんでも権力を使って証拠を握り潰すはずだ…完全に黙らせるには、この世からおさらばさせんといけない』
マイクからの通信が終われば、今度は圭一が通信に入ってくる。
『そうなると、あの二人の抹殺か…だが、皆殺しは反対だ。彼らにも家族が居る。出来るだけ命を奪うな』
釘を刺す圭一に対し、マリはふざけた態度で接する。
「え、なに? 出来るだけ奴等を奴等の命を奪え? あっ、それよりも通信が! ぷしゅー、プシュー」
『おい、絶対にやらかすな! 待て! 通信を切るな!!』
怒りが爆発したマリは静止の声を伝えてくる無線のスイッチを切り、もしもの時のように備えていたMK23ソーコムピストルを取り出した。
「おい、お前! 止まグェ…!?」
物陰から出て来たマリに気付いた一人の兵士が止めようとしたが、彼女が投げたナイフが喉元に突き刺さり、首を抑えながら息絶えた。
それから行為に夢中の高級将校の背後から迫り、無理矢理引き離して喉元をナイフで掻き切る。
「ひっ!?」
「静かにして。みんなを集めて何処か安全な場所へ隠れてて」
「は、はい…!」
悲鳴を上げようとした艦娘の口を塞ぎ、何処か安全な場所へ隠れるよう指示した後、艦娘を犯す”獣”の始末を始めた。大型の自動拳銃には消音器を付け、正確な射撃で頭部を撃ち抜き、静かに獣の人生を終わらせていく。その手際は流れ作業のようであり、食用の家畜でも殺すように進める。だが、十人目の所で気付かれてしまう。
「な、なんだおまぁ!?」
叫ぶ前に消音器を口に突っ込み、引き金を引いて始末した。
犯されていた艦娘は、次は自分の出番だと思っているようだが、マリは犯されていた女も一緒に殺すほど鬼畜ではない。
怯えている艦娘に優しく隠れているよう告げた後、東城親子の始末へ向かおうとする。
向かう前に、始末した高級将校が自費で購入した大口径の回転式拳銃S&W M29を取り、それを懐にしまってから、条件にはない標的の始末に向かった。
「誰だ!?」
件の人物が二人いる場へ侵入すれば、まず東城秀正の股間にぶら下がっている男性器に向け、先程入手したばかりのM29を撃った。凄まじい反動とマズルフラッシュ、途轍もない銃声が地下中に鳴り響き、秀正の股間を木っ端微塵に吹き飛ばす。自分の性器を吹き飛ばされた秀正は大きな悲鳴を上げ、その場に倒れ込んだ。
「ギヤァァァァ!!?」
「う、うわぁ!? な、何者だ貴様!?」
息子の悲鳴で侵入者の存在に気付いた東城は、直ぐに逃げようとしたが、マリが逃すはずもなく、Mk23に持ち替えたマリに両足を撃たれ、立てなくなる。
「や、やめろ!」
這いずりながらも逃げようとしたが、弾倉を素早く取り替えたマリに、両手を銃撃され、身動きが取れない状態になる。
「な、なな何が望みだ!? 金か!? それとも…」
喋っている途中でマリは東城の顎を思い切りに蹴り付け、出張ったビール腹を踏みながら録画した映像とリストの隠し場所を問う。
「この娘達のハメ撮りした映像と、アンタが弱みを握ってる奴のリスト、何処にあんの?」
「そ、そんな物はしらべっ!?」
「言え、クソ爺。言わなければこのドライバーで目玉を抉り取る」
そうドライバーを見える位置に翳しながら問えば、東城はジワジワと来る恐怖感に負けて喋り出す。その言葉をマイク達に伝えるためか、音声が聞こえるよう無線機のスイッチを入れる。
「ひ、ヒィィィィ!? わ、わ分かった!! 息子の執務室の金庫だ! 盗撮した映像が入ったメモリはそこにある!! リストに関しては私の自宅だ!! た、頼むから命だけは!!」
答えを聞いたマリは無線のスイッチを切り、ドライバーを捨てた。
「ふ、ふぅ…」
マリが自分の腹から足を話した事で「命拾いをした」と東城は思っていたが、彼女は何処から徒もなく取り出した短剣を見て恐怖し、身体をジタバタさせながら逃げようとする。
「ひ、ヒィィィ!! しゃ、喋っただろ!? なんで!?」
「私がいつ解放するっていつ言ったの?」
「そ、そう言う意味じゃないのか…!?」
「残念、どっちみちあんた殺すから。だって、あんたみたいなのを生かしたら、まだ同じ事の繰り返しじゃん。それにただじゃ殺さない」
「や、やめろぉぉぉ!! ワシは大物政治家で、総理大臣の側近だぞぉぉぉぉ!!」
そう軽い口調で短剣を持つマリに、必死で命乞いをする東城であったが、彼女は狂気じみた笑みを浮かべながら、首に向けてナイフを振り下ろし、生きたまま首を切断しようとした。普通は骨切り包丁を使うところだが、彼女は敢えて相手を苦しませる方を選択した。出来るだけ長く苦しませて殺すように。
流石に相手は途中で死んでしまったが、首は切断できた。もっとも、切り口は素人のように滅茶苦茶だが。
切断した頭部の口にC4爆薬を無理矢理詰め込めば、何処か適当な袋に入れて携帯する。
この時、秀正の死体がないことに気付いたマリは、彼が生きていることを察し、迎撃部隊が来る前に二人の保護を行う。
「ひっ、ひぃぃ…」
「あ、あぁぁ…」
解放された二人の艦娘は、先程のマリの凶行を見て恐怖し、今度は自分達の出番だと思っていたが、彼女は血塗れの手袋を外し、彼女等に接近する。
「姉様…」
「山城、私達はもう…」
死を覚悟して抱き合う二人であったが、マリは彼女等に危害を加えることなく、ロングストレートの艦娘にキスをした。
「え…?」
これには山城と呼ばれる艦娘と、マリに唇を奪われた艦娘も驚きを隠せない。
直ぐに口から唇を離せば、マリは二人とも他の艦娘達が隠れている場所へ隠れるよう指示する。
「他の艦娘達が隠れてる場所へ行って。もうじき奴等の増援が来る」
『は、はい…!』
二人は驚きながらも指示に応じたのを確認したマリは、これから来る増援の排除に向かったが、先程キスをした艦娘に呼び止められる。
「あ、あの…貴方のお名前は? 私は扶桑型戦艦の一番艦、|扶桑《ふそう)と申します。こちらは二番艦で私の妹である
「山城と言います…」
扶桑、山城と名乗った二人の艦娘に対し、マリは敢えて自己紹介などしなかった。
「忘れて。どうせ直ぐに居なくなる…」
「居なくなるって…」
マリの突き放すような答えに、次の言葉を出そうとした途端、侵入者の発見を知らせる警報が鳴り響き、拡声器から秀正の声が聞こえてきた。
『侵入者だ! 奴は地下にいる!! 金髪の女だ! 一人残らず地下に言って奴を始末しろ!!』
「急いで!」
放送を聞いたマリは、二人に隠れるように叫び、地下に突入してくる敵部隊を迎え撃つべく、階段まで向かった。
やはりアーマーやライオットシールドを装備した警備部隊が突入してくるだろう。
そう思ったマリは、強力な44マグナム弾を使用するM29に持ち替え、階段を下ってくる散弾銃を持ったポイントマンに向け、発砲した。
「グアァ!」
「散会しろ!!」
一人目が撃ち殺されたのを確認した兵士等は、直ぐに遮蔽物に身を隠す。
隠れてから一秒後に反撃に出て来たが、マリが何処からともなく取り出した剣で斬られ、先行部隊は相手に手傷を負わせることなく全滅した。
それから死んだ敵兵から武器と弾薬を調達、最初に手にしたのは89式小銃だ。
西暦の1989年に自衛隊で採用されたから、89式と呼ばれる自動小銃だが、この世界でも同年に採用されたようだ。
その性能はただ命中率の高い64式とは比較にならない物だが、値段はスイス軍が採用しているSG550自動小銃並とされている。高価な物であり、訓練にはモデルガンが使用されている。その分、信用できる小銃であることには変わりない。それを手にしたマリは、向かってくる敵に向けて単発で撃ち込んだ。
「凄い命中率…!」
命中率の良さと日本人向けの設計を気に入ったマリは、即座にお気に入りの銃とした。
次々と湧いて出て来る敵兵を排除しつつ、マリは提督の執務室まで目指す。数人ほど撃ち殺したところで執務室までたどり着いた。ドアを蹴破って中へ突入すれば、一人の将校がマリにメモ帳を渡した駆逐艦娘を人質に取り、左右にいる二人の兵士に撃つよう命じる。
その時、マリは時間がゆっくりと過ぎるという感覚を味わった。目の前の三人の敵兵の動きがスローになっている。
「撃ち殺せ!」
嫌がる艦娘を抑え付けながら二人の兵士に射撃を命じたが、兵士達が撃つよりも早くマリは瞬時に二人の兵士を撃ち殺した。撃ち殺した兵士が倒れる前に、艦娘を人質に取って縦にしている将校の頭へ向け、撃ち込んだ。がら空きの頭を撃たれた敵将校は、二人の兵士と共に床へ倒れた。その瞬間に時間の感覚が元に戻る。
「ひ、ひぃぃ…」
「大丈夫、何処か安全な場所へ隠れてて。ここ爆破するから」
「は、はい…」
怯える駆逐艦娘を抱き締めて安心させてから、何処か安全な場所へ隠れるよう告げた。
これに艦娘はやや混乱しながらも承諾し、彼女が離れてから何処か安全な場所へ身を隠すためにこの部屋を後にした。
それからマリは金庫を見付け、その上に東城の首を置いて部屋を出る。十分な距離まで離れた後、起爆装置を押して爆破させた。執務室の出入り口から煙が吹き出し、金庫の中にあった映像を記録したメモリは全て灰となって消えた。
「さて、資料室も爆破しないと」
艦娘達の屈辱的な映像を収めたメモリが金庫だけでは無いと限らないので、資料室も爆破する事にする。地図をポケットから取り出し、資料室の位置を把握してからそこへ向かう。
任務の中に証拠資料回収があったが、地下で性的暴行を繰り返していた連中が保管している筈もないので、一緒に爆破してしまっても構わない。
「見付けたぞ!」
「
資料室へと向かっている最中、短機関銃や散弾銃を持った敵兵等に見付かった。
直ぐに遮蔽物へ身を隠し、支援を受けながら突っ込んでくる敵兵等に向けて銃撃を行う。
「手榴弾!」
数名ほどの突入してきた兵士を排除した後、一人の兵士が手榴弾を投げ込んでくる。
だが投げるのが速過ぎたのか、直ぐに爆発せず、マリに投げ返され、自分で投げた手榴弾の破片を受けて自滅した。それから出て来る敵兵を撃ち殺しながら廊下を進み、弾倉を四つほど消費した所で資料室に到達することが出来た。
「早くしろ!!」
資料室のドアを蹴破ったときに、近くで資料の始末をしていた敵兵が気付き、他の兵士等と共に資料の処分を止めて小銃や短機関銃、散弾銃を撃ってきた。
直ぐにドアから離れて途中で手に入れた手榴弾を取り出し、安全ピンを抜いて数秒間ほど経ってから投げ込む。
「散会しろ!」
中から叫び声が聞こえた途端、数名ほどの悲鳴が聞こえ、呻き声が聞こえてくる。
残弾を確認した後、部屋へ突入してまだ戦闘力を持っている兵士達を撃ち殺す。制圧を完了すれば、幾つか無事だった重要そうな資料を手土産のために回収したら、証拠を処分しようとしていた兵士達が残したジェリカンに向けて手榴弾を投げ込み、資料室中に妃を広げさせた。これで資料室に保管してある映像の処分は出来た。
燃え盛る資料室を出た後、しつこいほど来ていた敵兵等が来ないことを不思議に思った。
「退却したのかしら?」
たった一人相手にこれ以上の損耗を防ぐため、包囲に切り替えたと思う。取り敢えずの所、屋内の安全を確保したマリは、地下室に隠れている艦娘達の保護へ向かった。敵と遭遇することは無かったが、地下に入れば数人ほどの敵兵が艦娘を探しており、マリを見るなり直ぐに手に持った銃を撃ってきた。
「撃て!」
自動小銃、短機関銃、散弾銃を撃ってくる敵兵達であったが、僅か四秒ほどで全員が堅い床の上に倒れた。
それから安全を確保したことを隠れている艦娘達に聞こえるよう大きな声で伝える。
「大丈夫よ! みんなやっつけたから!」
その声に答えてか、様々な場所へ隠れていた艦娘達が姿を現し、マリの目の前まで集まってくる。最初は所々破れた衣服や裸であったが、何処からか調達した衣服を着込み、自分の肌を隠している。扶桑姉妹の存在も確認すれば、マリは皆についてくるよう告げた。
「ついてきて」
誰も断ることなく、マリの後へ続いて地上へと繋がる階段を上がり始める。
マリが先に地上へ上がったところで、不安そうな表情を浮かべて彼女のことを待っていた艦娘が、本館が包囲されていることを知らせる。
「あ、あの…この建物、完全に包囲されてます」
「分かってるわ」
包囲されていることは既知しており、拡声器を使って降伏勧告を行う秀正の声が聞こえる方へ向かう。
「あの、私達も…」
「貴方達は銃弾が来ない場所へ隠れていて。みんな私が処分してくるから」
艦装して共に戦おうとする扶桑と山城に、他の艦娘達と共に隠れることを告げれば、何処からともなく取り出した謎の球体を左手に持ち、わざわざ秀正が居る正面出入り口から出て来た。
「ひ、ひっひっ! わざわざ犯されに来たかぁ!?」
指揮車の上から多数の銃口と数門の砲身の前に現れたマリに対し、奇妙な笑い声を上げながら下劣な言葉を口にする。それを言い終えれば、今度はマリに奪われた自分の”大切な物”と、殺された父の怨みを吐き捨てる。
「僕の”物”を吹っ飛ばした挙げ句、父さんを殺しやがって! もう許さないぞ! 公開レイプだ!! 数台のカメラを用意した! お前が集団で
「了解!」
銃を構えながら兵士達が下品の笑みを浮かべながら向かってくる。
これにマリは敢えて逃げようとせず、一定の距離まで兵士達が近付いてくるのを待つ。
今左手に持っている球体の射程距離に収めるためなのか、その距離まで来るのを待っているようだ。兵士達が射程距離内に入ったところで、マリは左手の物を作動させた。
「Sマイン!?」
その球体はSマインと呼ばれる大粒の玉を周囲に撒き散らす対物用兵器であったらしく、其れを見た兵士達は、急いで地面に伏せようとする。ある者は銃を撃とうとしていた。
これに対しマリの対応は、右手の指を鳴らすだけであった。
一見、何の意味も無さそうな行動であったが、周囲がまるで時間が止まったかのように静止した。
一体何が起こっているか?
信じられないことに、彼女は世界の時間を止めてしまったのだ。それもただ指を鳴らしただけで。この世界で動けるのは、マリ一人だけである。
「これ疲れるからあんまり使いたくないのよね」
彼女の口振りから、どうやら世界の時を止める能力は相当な負担が掛かるようだ。
早く済ませるために、マリは早速止まったときの中を動いた。
Sマインの射程距離に入っている兵士達は直ぐに始末できるので、無視して範囲外の動けぬ兵士達をソーコムピストルで頭を撃ち、殺していく。
時が動いたとき、彼らはいつの間にか死んでいることに驚くだろう。
そう思いながらマリは目に見える脅威を排除した。
後方で顔を歪めたまま静止している将校達の前まで、周りの兵を殺しながら近付けば、逃げる際に利き足を踏み入れる位置に、獣用の罠であるトラバサミを置いた。トラバサミを設置するのに飽きれば、殺した兵士達から抜き取った銃剣を両足に刺して固定し、動けないようにする。装甲車両に関しては、エンジン部に爆弾などを付けて置くことにする。
そして、驚いた表情をしている秀正が乗る装甲車に入り、砲手と操縦士を殺し、標的である秀正の両手両足の神経部にナイフを突き刺して動きを封じる。
「もう良いわね」
その作業を終えたマリは、指を鳴らして止まっている時計の針、つまり時間を動かした。
時が動いた瞬間に、Sマインの犠牲者以外のマリを拘束しようと向かっていた下士官や兵士達は、何が起こったかも分からずに死んでいき、将校達は後退った直後に仕掛けられていたトラバサミに引っ掛かり、その場から動けなくなってしまう。
装甲車両に関しては、殆どと味方が一瞬で死ぬか行動不能になるかで混乱している合間にマリが設置した爆弾のスイッチを押され、全て黒煙を上げるスクラップと化した。
「うがぁ!? な、なんだこれは!?」
いつの間にか自分の手足にナイフが突き刺さって動けなくなった秀正は何が起きたのか混乱していた。
突然、神経部に向けてナイフが突き刺さり、配下の将兵等は動けなくなるか、一斉に頭を撃ち抜かれて死んだ。自分が乗る装甲車以外の装甲車両は数秒ほどで全滅。そればかりか自分の背後には、先程自分の配下の兵に囲まれていたはずのマリが居ない。
時を止める能力を持つマリや、それを理解出来る者達以外、理解できない状況であろう。
「ど、どうなってんだこりゃぁ!?」
「私が時を止めた。一分くらい」
「ひ、ヒィィィ! な、なんでここにぃ!?」
後ろからマリの声が聞こえたので、秀正は驚いて逃げようとするが、手足は言うことを聞かない。そのままマリに首根っこを掴まれ、地面に叩き付けられた。数秒後、中に建造物内に避難していた艦娘達が安全を確認したのか、建物から出て来る。無論、目の前に広がっている光景を見て、驚かぬ者は居なかった。
「く、クソ…! ぼ、僕をどうする気だ!? 父さんを殺しても、父さんの息の掛かった者達がお前等を許さないぞ!! 絶対にだからな! 後で泣き付いて謝ったって許さないぞ!!」
艦娘達が出て来たのを見た秀正は、恐怖で震えながらもマリに向けて脅しを掛けるが、彼女は無表情のまま、この鎮守府の実態を外部に漏らしたことを告げる。
「あぁ、それ無理だから。ここで行われるあんた等親子の変態ぶり、全部ネットに流しちゃったから。もう終わりだわ。今頃世界中であんた等の変態ぶりが拡散してる頃だわ」
「そ、そんな物、権力さえ使えば…!」
これだけの情報が一度にネットに流されてしまえば、その広がりを止める手立てはない。
だが、未だに秀正はこれを自分が受け継いだ権力でどうにか出来ると思っている。
「バーカ、あんたみたいな汚点塗れな奴。政府が残しておく筈無いでしょ。今すぐここで殺したいけど、アンタみたいなゴミ、私的には殺す価値無いわ。荷担した変態軍人共も一緒にね。ただし私的にだけど」
まるで自分の代わりに誰かが秀正達を殺すかのような事を言い残し、マリは立ち去った。
これに秀正は命拾いしたと思ったが、突然鼓膜を打ち破るかのような砲声が響いた。それも何度も。
「な、なんだ!?」
怯えながら砲声する方向を見れば、艦装を身に着けた艦娘達が主砲を動けぬ将校等へ向けて撃ち込んでいる様子であった。
「や、やめろ! やめてくれ!! ブァ!」
「お、お前等艦娘だろ!? こんなこと…」
必死に命乞いをする将校等であったが、自分達を散々慰み者にした怨みを許せるはずもなく、容赦なく動けぬ将校等に砲身を向け、躊躇いも無しに撃ち込んだ。
撃たれた将校達は木っ端微塵に吹き飛ぶ。
艦娘は人間に近いサイズで艦装の主砲はライフルの口径のように小さいが、その威力は軍艦並みの防御力を誇る深海棲艦にダメージを与えられる程高い物であり、それを人に撃てば、木っ端微塵になるのは確実だ。
「ひっ、ひぃぃぃ…た、助けて…! だ、誰か…?!」
部下の誰かに助けを求める秀正であったが、部下全員はマリに両足をナイフで刺されるかトラバサミで拘束されているので、誰も助ける者は居ない。
ある者は自分の足を銃弾で引き千切ってまで逃げようとする者が居たが、艦娘達が逃がすはずもなく、その主砲で吹き飛ばした。
物の数分後、動いている男は自分一人だとなり、秀正は恐怖の余り失禁し始める。
そればかりか瞳から涙が滝のように流れ、顔が歪み始めた。
周りを囲むように近付いてきた艦娘達に向けて、秀正は必死に命乞いをする。
「や、やめろ…! い、今までの事は謝る…! 何でもするから、許してくれよ…なぁ…?」
泣きじゃくった顔で命乞いをする秀正であったが、扶桑や山城を初めとしたこの鎮守府に属する艦娘達は、無慈悲に自分等を辱めて苦しめてきた根源に向けて容赦なく艦砲射撃を行った。
あれから数日…
志都美鎮守におけるコンスルのエージェントの暴走により、日本におけるコンスルの支部設立は白紙となった。
だが、コンスルをモデルとしたブラック鎮守に対する対応組織が日本陸軍や海軍内で創設される事が決定した。存在自体は政府の干渉を避けるために、一部の者しか知らない極秘部隊となるが、その噂でも十分な抑止力になりえる。
設立には失敗した物の、似た組織が創設されることは変わりなく、目的は少なくとも達成された。
コンスルとしては世界中に支部が置けない不満があるが、人員を世界中に回せるほど余裕がない人事部にとっては有り難いことである。
日本政府の中核である東城家に関してだが、秘密裏に処分された。
志都美鎮守府壊滅の事後処理については、深海棲艦を世界の救世主だと信じているテロ組織による襲撃として処理された。
生き残りの将兵達の件に関しては、比較的治安の悪い地区への配属と言う処分に決定。志都美鎮守府の所属であった扶桑と山城を初めとした艦娘達の処罰に関してだが、最前線であるチューク泊地への戦乙女艦隊の配備とされる。この処罰は外部への艦娘による告発を恐れた海軍上層部の口封じのための物であるが、かの有名な戦乙女艦隊の女提督は、艦娘達を兵器としてではなく、人として扱うので幸運な処罰であろう。解体されるか、また酷い扱いを受けるよりはマシだ。
して、事の張本人であるマリはと言えば、コンスルから除名された後、消息を絶った。
幾ら国の汚点であるとはいえ、そこの鎮守府に属する将兵達は列記とした海軍の正規兵であり、陸軍の懲罰部隊も将兵であることには変わりない。彼女がやった行為は、犯罪行為よりも度が過ぎたテロに相当する物だ。当然ながら、日本国に対するテロリストとして絶賛指名手配中である。
しかし、マリは妖精と同様に異世界から来た存在であり、異世界にでも逃げれば問題ないはずであるが、彼女は目的のために敢えてそうしなかった。
一体その目的とは一体何か?
それは、太平洋側の海岸にて、海を双眼鏡で眺めているマリの行動を見れば分かる。
「居た…」
彼女が双眼鏡で覗いている方向には、一人の艦装を身に着けた駆逐艦クラスとされる艦娘が、一隻の日本海軍のコルベット艦に追われていた。他にも哨戒艇が三隻ほど逃げ道を塞ごうと、前に出て来る。これは相手が発砲しないことを前提にした拿捕用の戦法であるが、相手が艦船よりも更に小型な艦娘である所為か、簡単に擦り抜けられてしまう。
その艦娘の容姿は、ピンク色が混じったブロンドの髪と小柄な体型に整った顔立ちという他の駆逐艦娘と同様に愛らしい物である。
だが、艦装はどの駆逐艦娘と違い、主砲である艦砲はアメリカ海軍のMk 45 インチ砲であり、他には対艦ミサイルや対潜ミサイル、対空ミサイルを収めたミサイル発射機、Mk 32魚雷発射管、20㎜バルカン砲であるファランクスを搭載している。
兵装が第二次世界大戦までだった艦娘達からすれば、極めて異端な存在である。まるでイージス艦をそのまま艦娘にしたようだ。
『止まれ!』
空かさずコルベットが艦娘の進行方向へ向けて艦砲型後装式ライフル砲の主砲で威嚇射撃を行うが、艦娘はそれに応じず、四隻の日本海軍の艦船を撒こうと速度を上げる。
これにコルベットの艦長は腹を立てたのか、今度は当てるつもりで艦砲射撃を行おうとしたが、撃つ前に艦娘が放った艦砲で主砲を駄目にされてしまう。
幾ら追っている艦娘が最下級の駆逐艦とは言え、三隻の哨戒艇は対艦装備を持っていないので、射程距離から離れようとする。
『腰抜けが!!』
コルベットの拡声器から艦長の三隻の哨戒艇に対する怒りの声が聞こえてくる。
だが、対艦ミサイルの発射を許可されていなかったのか、コルベットは追撃を行わずに大人しく引き上げた。
フリゲートが一隻ほど遠くの方でその艦娘を追撃していたようだが、近くの鎮守府より増援として派遣された四人の駆逐艦娘が来れば、追撃を止めて巻き込まれないように元来た港へと引き返した。
周囲から戦闘の邪魔になる哨戒艇が居なくなれば、四人の駆逐艦娘達は同級の駆逐艦娘に艦砲射撃を浴びせ始める。
「各艦、一斉射撃、
この艦砲射撃を、追撃を受ける艦娘はイージス艦の機動力で避け、空かさず兵装が第二次世界大戦以下の艦娘等に向けて反撃を行う。
対艦ミサイルや魚雷を使ってしまえば、直ぐに片が付くようだが、追われている彼女は敢えてそうしなかった。
狙った物は艦娘達の兵装のみであり、イージス艦の十八番であるレーダーを使った精密射撃で兵装だけを破壊し、戦闘不能に追い遣る。
一人目の艦娘を戦闘不能に追い遣れば、二人、三人目と戦闘不能に追い遣っていく。
「これなら!」
まだ戦闘力を奪われていない駆逐艦娘が魚雷で動きを止めようとしたが、あっさりと避けられ、他の三人と同様に兵装を破壊され、戦闘力を奪われる。
脅威が去ったところで、イージス艦のような艦娘は、何処かへと去っていった。
「あの娘だわ…!」
一部始終を双眼鏡で見ていたマリは、その艦娘を追おうと双眼鏡を仕舞い、港がある方向へ向かう。
彼女の目的とは、あのイージス艦のような艦娘を見付けることだったのだ。
お目当ての人物を見付けたマリは、彼女が見失う前に追い付くべく、追い付けるボートがある港へ向け、茂みをかき分けながら走った。
艦隊戦最後くらいしかやってねぇ…
それにこれ大丈夫かな…?
こんなに長々と書いて済みません!