「葬る」
呟くと低く刀を構えてアカメは駆け出す。 速度が武器の相手ならば足さえ止めてしまえばどうにでもなる、と考えたのだ。
「無駄 女 鈍足 俺 神速 回避 不可能」
バルシーはクラウチングスタートのような態勢をとると一気に飛び出す。弾丸のような速度で飛び出した彼はそのまま壁にぶつかると土煙の中こら姿を表す。
「何故 回避 可能!? 速度 俺 神速」
アカメに回避されたことが信じられないように驚きの表情を浮かべるバルシー。
「悪いが似たような能力のやつが昔仲間にいた。 そのレベルの速さなら見切れる。」
革命軍に入る前帝国の暗部にいた頃の仲間の顔が浮かぶ。 しかし一瞬で意識を切り替えバルシーの足元を見る。
(ただ単なる超加速ならヨクトボトムスと同じだ…帝具と呼ばれるだけの他の能力があるはずだ…)
アカメが初撃をかわすことが出来たのはひとえにヨクトボトムス相手の鍛錬をしたことがあるからだ。 故にそれ以上の何か に注意しながら戦わなくてはいけない。
「次」
再び突進の態勢をとるバルシー。 しかし次の瞬間アカメは全力で横に飛び退くことになった。
「!!?」
最初の突進よりも段違いに速度があがっているのだ。
それを見たアカメの脳内には暗部時代に師匠であり親のような存在であったゴズキの言葉をおもいだしていた。
「ポニィの持ってるヨクトボトムスとコルネリアの持ってる粉砕王にはほとんど同じような帝具が存在するんだぜ。 神速脚行ヘルメス つってなほとんどヨクトボトムスと同じなんだが一つ違う点がある。 ヘルメスはな速度の累積ができるんだよ。 直前に使用した速度の半分が次に加算されるんだ。 つまるところ使えば使うほど異常な速度になっていくってわけだ。 まあ、一歩間違えれば壁に激突して即死だけどな。 そんでもってコルネリアの粉砕王ー
そこまで思い出し意識を慌てて目の前のバルシーに戻す。 先ほど壁に盛大に激突していたが全くダメージの無いところを見るとドクターの人体改造によって対策はとられているのだろう。
となると早めに決着をつけなければ際限なく相手は加速していく。
アカメの額を一筋の汗が伝う。 しかし解決策など一つも無いのが現状だった。
「行くぞ!」
ドルゴーの爆砕拳王ギガンテスの一撃をかわすたびに風圧だけで壁が壊れていく。
「あんたのそれ エグい威力だね。 でも獣の反射速度を捕らえられないよ!?」
ライオネルで極限まであげた反射神経でギガンテスの攻撃をかわしながらしなやかな四肢で打撃を浴びせていく。
「さすがにタフだね。 私の打撃受けて生きてて奴は久しぶりだよ。」
ゴキリと腕を鳴らしながら再び構える。
「悪いが獣女、これで決めさせてもらう。 奥の手 圧礫槍!!」
「うわっ!!」
慌てて飛び退くとレオーネのいた場所を不可視の物体が通り過ぎていく。
「奥の手 圧礫槍はその場にあるいかなるものも投擲用の槍にする事ができる。例えそれが空気であれ爆砕拳王ギガンテスの力をもってすれば強靭な槍にする事ができる。 それを爆砕拳王の腕力で打ち出せばどうなるか分かるよな」
「遠近両刀とは厄介だね…」
しかしレオーネに焦りの色は見えない。
その場にいる彼女の野生のみならず耳は確かに捉えていた。
こちらに向かってくる援軍の足音を。