時間は十数分前に遡る。
「ったく!! 次から次へときりがねぇんだよ!!」
アジトへと次々押し寄せるドクタースタイリッシュの私兵を片っ端から切り捨てながら叫ぶ。 何体かは別ルートで侵入されたがあちらは皆に任せるしかない。 俺が相手にしている私兵は将棋で言うところの歩にあたるらしい。いわれ見れば確かに数は多いが1個体辺りの戦闘能力はさほど高くない。 とはいえやはり数の暴力とは恐ろしいものがある。
『スキャニングチャージ』
メダジャリバーの一閃で纏めて薙払ったところでようやく援軍が来た。
「すみませんセイジ遅れてしまいました。」
エクスタスを片手に走ってきたのはシェーレだった。エクスタスの一撃で歩兵を切り捨てながら俺と背中合わせに立つ。
頼りになる仲間に背中を任せるだけで戦闘はぐっと楽になる。 ましてやシェーレに任せるとなるともはや負ける気がしない。
更にアカメが駆けつけ歩兵が大きく減った時、戦況は一気に変わった。
「か、らだが…」
「ちか、らが…はいり…ません…」
急にアカメとシェーレが倒れ伏してしまった。 何が起こった!?
「恐らく…麻痺毒の類…だろう…」
慌てて二人のもとに駆け寄ると更に歩兵が現れる。 戦闘能力では明らかに俺の方が上回っているが二人を庇いながら倒しきる自信は 正直皆無だ。
「でも…やるしかねぇよな!!」
改めてメダジャリバーを構えなおした時、もの凄い速度で空を飛ぶ生き物が現れた。 あれはエアマンタ!?
そのエアマンタの背中からとてつもない速度で人影が飛び降りてきた。
三十代後半位のかなりイケメンな男だった。 白を基調とした服に身を包み手には身の丈程もある鎚を持っている。
そのままアカメに近付くと微妙にはねていた …寝癖だろうか?を直す。
「よし!」
一言頷くと敵に向かって駆けていく。 その戦いぶりは一言で表すなら 鬼神だった。
手にした鎚を振り近寄る敵を全て薙払っていく。
というかあの人は麻痺毒利かないのか!?
そう思った瞬間残っていた歩兵全てが爆発を起こし辺りに爆炎を撒き散らした。 慌ててシェーレとアカメを庇うもののさっきの男の人はもろに巻き込まれてしまった。
煙が晴れると左腕が吹き飛んだ姿で男は立っていた…が様子が変だ。
煙りのようなものが集まったかと思うとあろうことか左腕が復活したのだ…ってもしかしてあの人帝具か!?
辺りの麻痺毒が消えたところでついに ドクタースタイリッシュ本人が現れた。
「くっ…こうなったら仕方ないわね。 人間爆弾に続く私の奥の手よ!!」
懐から一本の注射器を取り出すと何の躊躇いもなく首もとに突き刺した。
「私自身が危険種になる私の奥の手 危険種一発よ!!!」
ボコボコッ!!!とスタイリッシュの体が大きく波打ったかと思うと一瞬にして数十倍の大きさにまで巨大化した。……いや、危険種の額部分からスタイリッシュの上半身が出ているところを見ると純粋な巨大化では無いのだろう。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
その巨体に臆することなく真っ先に攻撃を加えたのは援軍の帝具人間だった。かなりの速度で動き回りつつ繰り出される拳に的確に攻撃を加えていく。 とはいえ、腕ではあまりダメージは無いらしい。
「セイジ!……私を抱えてやつの本体に…近づけるか!?」
まだ麻痺毒が抜けきっていないらしくフラフラなアカメが聞いてくる。 確かに村雨ならいかなる生物でも一撃でしとめることが出来る。
「任せろ!!! 変身!!」
『ライオン トラ チーター!! ラタラタ ラトラータ!!』
タトバからラトラータに変身するとアカメを抱えて駆け出す。
「させるわけないでしょ!!!!!」
俺達に気がついたスタイリッシュがどこからか生やした触手で俺達の迎撃を始める。
(避けきれるか!?)
ラトラータの速度をもってしてもギリギリなスタイリッシュの触手攻撃は当たることはなかった。
「触手は俺が何とかする! 気にせず突っ込め!!!」
帝具人間の男が現れて一撃で触手を薙払う。
「行け!!!」
俺はラトラータの全力をもってスタイリッシュに近付く。
「こんな所で…」
スタイリッシュが何か叫ぶがその前にアカメの村雨がスタイリッシュの喉元を真一文字に切り裂く。
「まだ……やり残した……のに……う……不幸ね」
「五体満足で死ねただけ満足だろう」
アカメの言葉を最後に動かなくなったスタイリッシュを傍目に俺達は皆のもとへ戻る。
こうして狂人科学者の襲撃は幕を閉じたのだった