「らぁぁっ!!」
「甘ぇよセイジ!」
ガキンッと木刀同士がぶつかる鈍い音が響く。
「おっ! 朝からやってるな」
一晩寝て体力が回復した俺は朝からタツミと稽古をしていた。木刀のぶつかる音を聞いてか兄貴もやってくる。
「だが熱いだけじゃぁ生き残れないぜ。 周囲にも気を配らないとな。 丁度良い二人纏めて稽古をつけてやる。遠慮せずかかってきな!!」
壁に立てかけてあった木製の槍を掴むと片手で軽々と振るう。 流石ナイトレイド最強とも言われるだけはある。皆とは一線をかす威圧感だ。
半身に構えて兄貴の出方を窺う。 本の世界で俺が好きだった言葉は 『先手必勝 後手必殺』。
先手を取ることも大事だが相手を見極めて対処することも大事だと教えられた。
俺が兄貴の動きを探っている横で、タツミが兄貴に向かって飛び出す。
「行くぜ兄貴!」
「来いタツミ! 俺の槍はそんなに甘くねぇぞ!!!」
あの、兄貴?それって狙って言ってるのか? 一見普通の会話だが、兄貴が俺の槍などというとどうしてもあっち方向へ行ってしまう。
話が逸れたが俺は必死にタツミと兄貴の動きを観察する。 タツミは俺と同じ年ながらも凄まじい戦闘力を持っている。 流石にナイトレイドのメンバーに比べれば劣るが並の兵士と比べても確実に強いだろう。
それに比べ俺は転生特典で能力値の上限を無くして鍛えれば鍛えた分だけ強くなる事もあり、こっちの世界に来たときよりも遥かに強くなったとはいえ今だに生身ではタツミ及ばない。 その上タツミは自身の力を過信せず鍛練を続けるのだから恐れ入る。
俺も強くならないとシェーレを守れない。 せめてコンボを使いこなせるようにならなければ!
なら特訓あるまでだ。
「俺も行くぜ兄貴!!!」
木刀を構えて兄貴へと向かって行った。
一時間後 裏の特訓場に来たレオーネとマインが汗だくで倒れていたタツミとセイジを見たとか見てないとか。
翌日
「タツミ、セイジ二時間後フェイクマウンテンに行くぞ。 飯の準備をしておけよ」
会議室で本を呼んでいた俺と同じく本を呼んでいたタツミのもとに兄貴がやってきた。
「フェイクマウンテン?」
「あぁ、あそこの危険種は擬態が巧くて観察眼を養うにはもってこいなんだぜ。 って二人とも何読んでんだ?」
ギクッ!!
俺とタツミが揃って固まる。 いや、同じく部屋にいたラバも固まる。
実は俺とタツミは帝都で貸本屋をやっているラバに、その、エロ本的な物を借りていたわけだ。
だから皆が風呂に行っているこの時間を選んで借りていたのだ。
兄貴が入ってきた瞬間に隠したはずだがなんでばれた!?
「ら、ラバに借りてた本だよな、タツミ!!」
「そ、そうだよ兄貴…」
「へぇ~タツミとセイジはこんなのが好みなのか~」
「「!?」」
いつの間にかライオネルで獣と化した姉さんが俺達の隠した本を見ていた。 いつのまに!?
「な、なんで姉さんが!?」
「いや~さっき貸本屋から帰ってきたラバが妙にこそこそしててね~ 皆で問い詰めようということになったんだ」
後ろ、と姉さんが指差すを見るといつの間にかラバがボスやマイン、にボコボコにされていた。 てか、片手でボコるとかマイン器用だな。
「で、タツミは黒髪ロングの娘が好きなのかな~?」
あ、逃げた。 タツミは目にも留まらぬ速さで部屋を脱出していった。 なら、俺も……
ガシッ
「何処に行くんだセイジ。お姉~さんとお話しようよ。」
俺の首根っこを掴みながら、ペラペラとさっきまで俺が見ていた本を捲る。
「へぇ~ なんかシェーレに似てる娘だね」
「レオーネ呼びましたか?」
ひょっこり顔を出したのはアカメと一緒にお皿に一杯の団子を持ったシェーレだった。
「あ、良いところに来た。 これ見てみなよ。」
机に皿を置くと トテトテと近づいてくる。
「さっきセイジが見てた。本なんだけど、シェーレに似てるんだよ」
「そうてすね~」
そこまで言うとおもむろに自分の胸を掬うように持ち上げる。
「私、ここまで大きく無いですよ?」
たゆんたゆん~ とシェーレの豊満な胸が揺れる。 やべ、鼻血出そう。
そして少し悲しそうな顔をした後、
「セイジはこの娘が好きなのですか?」
上目使いに聞いてくる。
「そんなわけ無い!!! 俺が好きなのはシェーレだけだよ!!」
大声で叫んでからやらかした事に気付いた。
もぐもぐと我関せずと団子を食べていたアカメも 格ゲーで言うなら99hitと出そうなぐらいのコンボを決めていたマインも決められていたラバも、俺の首根っこを掴んでいた姉さんも、事の顛末を黙って傍観していた兄貴も皆が一様に俺とシェーレを見る。
しかし天然が入っているシェーレは気付いていないらしい。
あの、ボス? なんでニヤニヤしているんですかね?
その後皆に(タツミを除く) に質問責めというなの公開処刑を食らうことになった。
まあ、シェーレが嬉しそうにニコニコしていたのでまあ、よしとしようか…