「容疑者だったよね」
「誤認逮捕だったって」
「テロリストじゃないよな」
教室の中はスザクに対する噂で持ちきりになっていた。テロリスト、の言葉にカレンが反応する。カレンも心中複雑だろうな。先日は救出を手伝ったりしたんだし。
「イレヴンなんて」
イレヴン嫌いのニーナが呟く。それをリヴァルが訂正した。
「名誉ブリタニア人」
「同じことだし」
「怖がってるだけじゃダメよ、話してみればどんな人か」
話しかけようとしたシャーリーを、リヴァルが手を引いて止めた。
「君行動力ありすぎ」
そんなクラスメイト達を見つつ、俺はスザクに襟元を触るサインを出した。「屋根裏部屋で話そう」実に七年ぶりのサインだ。
そうして学校の屋上で俺とスザクは再会した。俺からするとこの間ゼロとして接しているからそう久しぶりでもないが、スザクからしたらその前のシンジュクゲットーで自分が撃たれて以来会ってないからな。
「安心した。無事で」
「お前のおかげだよ。そっちこそ、俺をかばったりしなきゃ」
「あの娘は? カプセルの」
「どさくさで離ればなれになった。そっちの方がわかるんじゃないのか」
本当は今クラブハウスに住んでいるけどな。
「こっちも全然。親衛隊以外知らないみたいでさ……。ルルーシュって呼んでも?」
「前の俺は記録上死んでいる。今はルルーシュ・ランペルージを名乗っている……急に転入なんて驚いたぞ。軍事法廷などはどうなったんだ?」
「正しく行われるように取りはからってくれる人がいたんだ。その人が十七歳なら学校に行くべきだってね」
ユフィのことだな。ユーフェミア・リ・ブリタニア、ブリタニアの第三皇女。新しくエリア11の副総督になっているはずの。同腹の姉であるコーネリアは、今頃抵抗勢力を自ら前線に出て駆逐していることだろう。
「そう言えば話していなかったな。ナナリーは今いない。俺と同じ場所に暮らしていてはお互いに身分がバレる可能性が高くなるからな。今は親切な日本人夫婦に引き取られてそこで暮らしている。俺と違って名前も変えたんだ」
これぐらいなら話してもよかろう。
「……!! そう、か。……君があれだけ大事にしていたナナリーと離れるなんて。よっぽどの決心があったんだね」
「まあ、な。それで、お前は軍人を続けるのか? あんな目にあっておきながら」
「大丈夫だよ。技術部に配置換えしてもらったから」
嘘つきやがれ。
「そうか、技術部にね」
おっと、俺は俺でクラブハウスに秘密が一杯なんだった。目を合わせて……と。
俺の住むクラブハウスへは来るな!
「ルルーシュ、学校では他人でいよう。だって、どう説明するんだ。名誉ブリタニア人と友達だって。下手すればバレてしまう。君が皇子だってことを」
「お前! そうやって他人の都合を!」
一応怒るポーズはしておくか。しかしスザクが学園にきたことで、楽になった部分もあれば、苦労する部分もあるな。
その後、当然のようにスザクは学園で孤立した。え? お前は助けないのかって? 一応全校生徒がどこかのクラブに所属することになっているから、生徒会を推薦しておいた。生徒会にも受け入れるよう働きかけておいた。ニーナは怯えていたがな。
ニーナといえばもうフレイヤの開発、初期段階を始めているはずだな。あとで絶対催眠かけて抑制しておこう。まあ俺の想定通りなればその心配もないのだが、想定通りにいかない場合も想定しておかないとね。こうやって転ばぬ先の杖を用意しておくのが大事なんだ。
§
「まだニュースにはなっていないが、コーネリアに『侍の血』が潰された。チュウブ最大のグループだったのに一瞬で。なあゼロ、俺達このままだと」
扇からの通信に変声器を通して答える。
「あせるな、機会を待つんだ。私もどこかでコーネリアの武力を計りたいとは思っている。……次はこっちから連絡する」
窓から見える洗い場でスザクが落書きされた衣服を懸命に洗っているのが見えた。……だからさぁ、こうなるのがみえみえなのに学校に通わせるとかするなよ、ユフィ。原作では親友で幼なじみのルルーシュがいたから解決したけど、普通はこうなるよ。まったく。
さて、次に起こる原作イベントはゼロの仮面が猫に奪われるアレだ。しかしこの世界ではあの事件は起きない。クラブハウスにいる二人と通いの一人には、俺がゼロであることはバレているのだ。堂々と自分の部屋のバッグにゼロの衣装をしまっておけるのさ。部屋には鍵もかけてあるので、猫が仮面を奪える可能性は0%だ。原作のルルーシュは案外抜けているその部分で可愛らしさを出していたが、俺にはそんな可愛らしさは欠片もない。
§
……ただいま葬儀の中継中。クロヴィスの葬儀だ。俺の父親、シャルル・ジ・ブリタニアの演説が行われている。不平等は悪ではない、平等こそが悪である、ねえ。俺の意見はまた別だ。
世界は不平等だ。それは仕方ない。しかし不平等であろうとする世界と、頑張って平等にしようとする社会とが均衡しているのが健全な状態だと思う。だから社会の心優しき人達による、平等たろうとする努力がなくなれば世界は不健全な状態になる。社会は平等であろうと努力し続けなければならない。それが俺の考えだ。
舞台はうって変わってサイタマゲットー。レジスタンスの「大和同盟」が居る場所だ。コーネリアが大々的に喧伝したのだ。サイタマゲットーで包囲戦を行うと。時間まで指定してゼロをおびき寄せるとはね。
出発前のC.C.との会話を思い出す。
「乗るつもりか? 敵の挑発に?」
「わざわざ招待してくれたんだ。それに最後まで付き合うつもりもない。適当な所で引いて帰って来るつもりだよ。自分の命は惜しいからな。……心配するな。今の俺ではコーネリアには勝てない。それは充分わかっているつもりだよ。だから失敗はしないし死にもしない」
「…………」
そう、今の俺ではコーネリアには勝てないし、エリア11も解放できない。原作のナリタ戦やブラックリベリオンで勘違いしている奴らも多いが、ルルーシュと黒の騎士団はエリア11を解放する力など本当は持ち合わせていないのだ。
エリア11は五つの軍管区に分割されている。トウブ方面A管区、チュウブ方面B管区、セイブ方面C管区、ホッカイドウ方面D管区、トウホク方面E管区の五区だ。それぞれの管区には約十万ほどの兵士が居る。それに対しレジスタンスの戦闘員など多くても一千人いれば良い方だ。勝てる訳がないのだ。局地戦でなければ。まあ今回その局地戦を行おうという訳だが、それでもなお分が悪いことは大元の兵士数を見ればわかるだろう。
俺はシンジュク事変で手に入れた名誉ブリタニア人の歩兵服をまといサイタマ来ていた。そこではゲットーの住人が皆殺しにあっていた。民間人虐殺。お前もかコーネリア・リ・ブリタニアめ。待っていろよ。いつかその膣を貫いてやるからな。俺はそんな場違いな決意を胸に歩いていた。と。
「どこの所属だ。部隊名とIDを示せ」
「催眠状態になれ」
今回はしょっぱなから絶対催眠を使ってゆく。そうしてヴィレッタの時と同じようにナイトメアを頂いた。そしてテロリストとおぼしき人物を捕らえたらまた催眠をかけて通信機を貰う。そしてレジスタンスの本部と連絡をとる。またシンジュクの時と同じく戦術とアニメの台詞を基に立てた作戦で敵兵を追い込んでいく。
一定数の敵機を撃破したところで自分の機体を後退させる。レジスタンスを見捨てて一人逃げ道を確保しておく。
「見えるか? 扇、紅月」
「あ、ああ」
別の通信機で扇に連絡をとる。二人には無理を言って来てもらった。といっても望遠鏡を使ってギリギリ見えるくらいの外縁部外側だけどな。
「ゼロ、このままなら勝てるんじゃ……」
「いや、無理だ。ここまではコーネリアが遊んでいるから局地的に『勝てているように見える』だけだ」
俺はその後もレジスタンスに指示を出し続けた。だが指示を受けたメンバーはそれぞれ勝手な行動をとったり、コーネリアの圧倒的な親衛隊に敗れたりした。やはりコーネリアには勝てない、か。まあ今回はそれを確認できただけで良しとしよう。
「そんな……」
「見た通りだ。私の戦術をもってしてもコーネリアには勝てん。奴に勝つには条件を同じくする必要がある。――つまり、『軍』が必要だ。勝つ為の、私の軍がな!」
「軍……」
この敗北は決定されていたものだ。だから二人に見せた。コーネリアの実力を。
「近々私は自らの軍を立ち上げるつもりだ。その時には是非お前たちのグループに中核をなして欲しい。そう思ったから今回二人には戦闘を見てもらった」
「最初から負けるつもりだったの?」
「少し違うな、最初から勝てない戦いだった、が正しい。コーネリアに勝つには軍、組織、そして人! それらが必要だ。その時が来たら力になってくれ」
そうして俺は敗走した。今回は貴方の勝ちだ姉上。だが見ていろ。コーネリア、そしてスザク! 俺は宣言通り一年でこの差を覆してみせる。必ずだ!
今週の禁句:外縁部外側から望遠鏡を使って戦闘の現場を見る? 無茶じゃないその設定?