スピードだ。何のことかというと、これから行う一連の作業全てに大事なことだ。なによりもスピードが大事なのだ。
まずはブリタニア本国に特使を出す。俺の手紙を皇帝に届けてもらう。
次に建国した合衆国日本の体制について。選挙と選ばれる立候補者が必要だ。公示しなくては。作業はキョウトの連中にもやってもらおう。
合衆国日本内部の治安も大事だ。まず、ブリタニアの民間人は、希望する者は全てブリタニア本国へ返す。かなりの人数になるだろうが大半のブリタニア人は解放されたエリアになんて居座りたくないだろうから素直に帰ってくれるだろう。
そして、まだ制圧していない四つの軍管区については、LIVEとして流したあの映像に乗せられた絶対催眠が効くはずだ。
「この映像を見て絶望した者は大人しく頭を垂れ黒の騎士団に投降せよ! もし諦めずに反抗するのであればトウキョウに軍を進めるがいい。」
これにより、コーネリアが殺され政庁が乗っ取られたことで少しでも弱気になった軍関係者は黒の騎士団に投降してくるはずだ。あくまで抵抗することをやめない心の持ち主だけ、反抗してくることだろう。この微妙なバランスが大事なのだ。全ての軍管区に反抗されたら数で負ける黒の騎士団は勝つことができない。作ったばかりの合衆国日本は潰されてしまうだろう。だが逆に全ての軍管区が投降してきても不自然だ。それは俺の絶対催眠の存在を疑われることになってしまう。できれば三対二の割合くらいで反抗してもらうのが一番よい。この言葉は政庁を占拠したテロリストのものとしては自然な文言だから、この言葉で投降する者が出てきてもそこまで不自然には思われまい。
その次は……中華連邦との関係だな。まだまだやる事は多い。
あ、アッシュフォード学園の皆やミレイに連絡しておかないとな。俺(ルルーシュ・ランペルージ)は合衆国日本に残るって。
§
「初めましてロイド・アスプルンド伯爵、セシル・クルーミーチーフ。知っているだろうが改めて名乗ろう、私がゼロだ」
「あは~☆ こ~んに~ちわ~☆」
「…………」
あいっかわらずだな、このプリン伯爵は。
「ラクシャータさん、やっぱり……」
「…………」
セシルは俺より背後にいるラクシャータが気になるようだ。ラクシャータはラクシャータで不機嫌にしている。
「さて、時間もないのだし単刀直入に言おう。私の仲間にならないかね?」
「あは~☆ それってつまりブリタニアを裏切れってコト? 僕これでも一応ブリタニアの貴族なんだけどね」
「知っているよ。その上で交渉しているのだ」
それじゃあ説得を始めよう。
「お二人が民間人なら希望すればブリタニア本国へ帰ることもできた。しかし残念ながら君達は軍人だ。黒の騎士団としては、軍人は、お二人は捕虜にせざるをえない。そして捕虜になるということは、神聖ブリタニア帝国から捕虜解放の提案がなければ解放することは出来ない。金銭による解放か、お互いが捕虜を持った状態で行われる捕虜交換か……ということだが、ブリタニアは……」
「……なぁ~るほど~。それは確かにね。ブリタニア帝国はそんなことしないだろうねぇ~」
そう、ブリタニアはテロリストにより解放されたエリアなんてものも認めたくないのだ。その上テロリストと対等の立場に立った捕虜解放などしないだろう。基本あの国は温情とかそういうものから縁遠いものだからな。
「そこで私からの提案だ。我が黒の騎士団では総責任者は私、ゼロが担当する。次に技術開発担当主任にラクシャータ君がいる。君達が承諾してくれれば、ロイド伯爵はラクシャータ君と同じ技術開発担当主任に抜擢しよう」
「……へぇ~☆ それはまた格別の待遇だねぇ~」
「そして私が下す命令は唯一つ、我が黒の騎士団が誇る紅蓮弐式と、鹵獲したランスロットのラクシャータ君と君による共同研究、そしてその先にある新世代ナイトメア・フレームの開発だ」
「!?」
セシルが息を飲む。ランスロットが、スザクが黒の騎士団に投降したことにショックを受けているようだったからな。俺は傍らの研究員から紙面を受け取るとテーブルに広げた。
「これは今私が考えている紅蓮弐式の改修案だ。フロートユニットの開発、輻射波動の遠距離攻撃可、更にワイドレンジでの輻射波動発動。そして開発できるのはだいぶ先になるだろうが、ランスロットと紅蓮弐式のエナジーウィング開発だ。私が目指すのは現在の第七世代ナイトメア・フレーム、ランスロットの第九世代への革新だ。お二人にはこちらの作業を手伝っていただきたい。」
「これは!?」
「あはぁ~☆」
取り出した設計図に二人の研究者の目の色が変わる。これらは研究者にとって無視できない禁断の果実のようなものだ。研究者であれば求めざるをえまい。俺が原作知識からこの世界の技術を頑張って勉強して、騎士団の研究者達と作り上げたものだ。自信はある。
「ここで更に交渉させていただこう。ブリタニアで求められるのは基本的には量産型ナイトメア・フレームだ。一機のランスロットより百機のグロースター。それがブリタニアの基本姿勢だ。お二人がランスロットを開発できたのは皇子であるシュナイゼルの肝いりだったからだ。だが黒の騎士団は違う。百機の無頼より一機の紅蓮弐式だ。ブリタニアで求められるのは、自分達より国力が下の者達を圧倒できる物量だ。しかし反抗勢力である、『弱小』な黒の騎士団が目指すものは自分達より国力が上のブリタニアと戦って勝てる機体……エースパイロット機だ」
黒の騎士団はブリタニアに挑む「弱き者」だからこそ強力な機体が求められる。しかしブリタニアに居ては、研究者に求められるのは基本的に物量作戦を仕掛けられる安定した量産機だ。この違いは大きい。黒の騎士団に入れば、おおっぴらにエース機の開発ができる。
「開発資金のこともある。さすがに騎士団とブリタニア全体ではとても比較にならないが、『第二皇子直属の機関』と『黒の騎士団全体』を比べればそこまで開発資金に差はでないはずだ。今の黒の騎士団はキョウト、NACと呼ばれた者達を配下に加えた。資金のことは心配せず開発を行って頂けるだろう……更に!」
ここでだめ押しだ!
「お二人は今捕虜になっている。そしてブリタニアによって解放される未来はありえない。この状況下で君達二人に起こることを分析してみよう。……それは、君達二人が牢に繋がれたまま、世界で、黒の騎士団でナイトメアの研究が進んでいくのをただ黙って、指をくわえて見ていることしかできない生殺しの状況になるということ! どれだけナイトメアの研究や開発がしたくとも、君達はそれを行うことができない立場になったのだ! このまま虜囚としてすごせば、待っているのは他の研究者達が現在トップを走っている自分達第七世代の開発者という立場を、ドンドン追い越していくのをただ見ていることしかできないという状況だ」
「……」
「……」
ロイドが神妙な顔をして黙った。ブリタニアが二人の解放を特別に取り計らってくれるのでなければ、状況は俺の言った通りになるだろう。それは、研究者としては死んだも同然だ。このまま虜囚で居続ければ、目の前で紅蓮とランスロットが他の研究者(ラクシャータ)によってチューンされていくのを見続けることしかできないという蛇の生殺しのような状況だ。だが……。
「お二人が黒の騎士団に入るのであれば、君達を取り巻く状況は大きく変わる。与えられた資金で、強大な国を倒す為の強力なナイトメアが求められ、気に入らない相手かもしれないが、最高のパートナーと一緒に研究開発できるという状況だ! 私はお二人にその立場を用意しよう」
俺の目はロイドを見据えている。セシルはロイドが裏切るのであればなんだかんだと言いつつもこっちに来てくれるだろう。要はロイドを落とせるかどうかにかかっているということだ。さあ、どうだ!?
「僕は……」
§
一ヶ月が過ぎた。その間起きたことを列挙していこう。
まず、ブリタニアへの特使は無事その役目を終えた。最悪ブリタニアの土を踏んだその時に殺されるかもとも思っていたが、非武装で、「国家として」派遣された特使に危害は加えられなかった。俺が出した文面はこうだ。
ブリタニア皇帝、シャルル・ジ・ブリタニア様へ
神聖ブリタニア帝国のエリア11を解放し、合衆国日本を建国したことをここに報告させて頂きます。
日本の建国に色々と思うところはあるでしょうが簡潔に用件だけお伝えします。
わが合衆国日本でのブリタニア人は希望する者は全て本国へ帰国させることにします。合衆国日本ではブリタニア人への差別、虐待、虐殺などは認めておりません。ブリタニア人の来日も制限するつもりはありませんのでご安心を。ただし、軍による侵略、領海や領空の侵犯は許しません。
日本にある「神根島」への研究者の派遣も自由にして下さって構いません。また、私の傍についている緑色の髪の人物についても、そちらからの要望があればどこへなりとも連れて行って構いません。
以上、簡素ではありますが合衆国日本からの初の書状となりますのでお受け取り下さい。
合衆国日本臨時代表・黒の騎士団リーダー ゼロより
ブリタニア人を差別するつもりはないということと、皇帝の一番の関心事である神根島への研究者の立ち入り、C.C.の自由・保護について伝えた。それだけ保証してやれば「シャルルは」合衆国日本には何もしてこないだろう。というのが俺の読みだ。そしてその予想は今のところ当たっている。この一ヶ月、合衆国日本への軍事侵略などについては主に皇子や大臣、貴族などが考えていて、皇帝は特段何も発表などしてこない。原作通りなら後一年足らずで全ての研究とその結果がわかるのだ。今更再度日本侵略なんて面倒臭いことはしたくないのだろう。
次に、合衆国日本の官僚や選挙などについては、希望する日本人を募って作業をしてもらっている。元々官僚になるのが夢だった玉城などは、黒の騎士団よりそちらの作業に熱心だったりする。このままいけばあと二・三ヶ月の内に選挙が執り行われるだろう。俺の予想では当選するのは
治安維持と軍事について。この一ヶ月、絶えず俺が合衆国日本の臨時代表としてTVに出続けて、「ブリタニアの民間人への差別・虐殺などは許さない」と絶対催眠を使って発言しているので治安は驚くほどいい。日本人への「建物・家屋などの破壊」や「店などを襲って食料等物資の確保」も許さないと伝えてある。
軍管区については、表だって反抗したのはチュウブ方面B管区だけだった。それ以外の管区は兵士に投降する人間が多く、それを押しとどめようとする反抗心の残った兵士達との間で激しいやりとりが行われ、まとまった戦力として反抗できなかったのだ。俺達黒の騎士団は、ブラックリベリオンと呼ばれたあの政庁陥落の事件でほとんどのレジスタンスを吸収し、トウブ方面A管区の中核を抑えたのだ。更には全国各地から投降してきたブリタニア兵士達がいる。チュウブ方面との戦争は二週間前に決着がつき、降伏させることに成功していた。……実は結構危なかったんだけどね。一つだけとはいえ軍管区の兵士は約十万だ。それがブリタニア本国からの援護――主にシュナイゼルが指揮をとっていたらしい――で黒の騎士団に襲いかかってきたのだ。だが途中でシュナイゼルが死亡したことにより反乱は収まった。シュナイゼルは建物の屋上から身を投げたらしい。今をもってしてもこのブリタニア第二皇子の自殺の真相はわかっていない。まあ俺が絶対催眠をかけたんだけどね。
中華連邦との連絡も特段問題なく行えている。反ブリタニアなのは彼らも同じなので、表面上は友好的な付き合いができている。しかし俺は知っている。国の中枢にいる宦官達は天子をブリタニアに売ってブリタニアの爵位を得ようとしていることを。いずれ何かの名目で中華連邦を訪れ、大半の奴らに絶対催眠を使用せねばなるまい。
アッシュフォード学園の皆、生徒会だけでなくその生徒達の大多数はブリタニア本国に帰った。ミレイからは「ルルーシュが本国に戻れないのは仕方ないけれど、充分気をつけてね」と言われた。それと、イレヴン嫌いのニーナはブラックリベリオン以降行方不明らしい。ミレイはアッシュフォードの力を使って捜索したらしいが、見つからなかった。さ~てどこに行ってしまったのかね~と。
そして、ロイドはめでたく二人目の技術開発担当主任になった。ラクシャータはぶつくさ言っていたが、彼女も研究者、相性は悪くとも最高のパートナーたり得る二人との共同作業は得るものが大きいだろう。セシルはやはり予想通りロイドについて来た。これでランスロットの第九世代への革新も保証された。
この一ヶ月で起きたことは大体こんな感じだ。軍管区の反乱を収めたこと。それとシャルルへの特使が成功したことで俺の想定の80%はクリアした。もうすぐだ。もうすぐ俺はこの戦いに勝利できるだろう。
「その時」はもう間もなくだ。
ご都合主義? そうですが何か? (開き直り)