高田正樹、高崎茜は異世界より召喚された【勇者】である。
正樹たちの元の世界と比べると、おおよそ中世時代に魔術が栄え、反対に、科学を悪魔が携えてきた学問として排斥した、そんな異なる並行世界。
そんな世界へ召還された正樹と茜に、神聖王国オーシェンの国王が下知するはただ一つ。
【魔王】の殲滅
文献を紐解けばそれは即ち彼らとの戦いの歴史。
不倶戴天の宿敵を打倒出来る力を持ち得るのは召喚の儀式で降臨せし【勇者】だけである。
とは言え、そんな彼らにしても男は喰われ、女は犯される運命に堕ちる事は珍しくない。
事実、【魔王】が現れた年に行ってから、十年に一度しか行使できぬ召喚の儀式。召喚に成功した勇者による打倒は直近の五人の勇者たちが失敗に終わっていたという。
半世紀。人間、亜人を含めた抵抗も空しく、【魔王】の版図は広がっていた――らしい。
殲滅など絵空事。誰しも心に浮かぶそんな思いを奥底に秘め、押し隠していた折――だったそうだ。
六度目の召喚。現れたのは飛び抜けた才の持ち主。
未だ学園を卒業していない一介の学生の身分であったにも関わらず、その戦果は召喚後一年を経ずに多くの【勇者】たちを凌ぐ勢い。
彼女ならば。彼女であればこの宿願を果たしてくれるのではないかと、希望の光を抱かせて。
希望が輝けば輝くほどに、多くの者はもう一人の勇者の事を忘れていった。
くつ、り。
――浮かれる人間たちを嘲笑う声がひそりと。
【勇者】として呼ばれた筈の、もう一人の男が静かに笑っていた。
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そこは異質な一室だった。
神聖王国オーシェンの王城、それはつまり今人間達の最後の砦と同義である。
にも関わらず、その部屋は禍々しさを伝えている。
窓は全て木板で塞がれ、隙間を粘土で神経質に潰している。一片の光すら入り込む事を厭うのは、部屋の主の意向。
異世界より転生した、元男子高校生、現【勇者の双璧】高田正樹(たかだ・まさき)の願いを、怪訝な顔をしながら王や大臣らが受け入れた物だ。
正樹の瞳は、もう一人の勇者、高崎茜たかさき・あかねと異なり、純日本人の黒い瞳である。しかし能力を発動している今、本来は、と但し書きが付く。
黒だったはずの瞳孔は深紅に変じ、焦点を結ばず虚空を見つめている。
正樹が転移させられた際に得た特性の一つ、【千里眼】のスキルだ。
彼は、そのスキルを思春期から青年期への過渡期を迎える男子として、非常に有用に用いていた。
今日のように。
見つめる先は王城の一室。
練兵場に程近い、更衣室として使われている建屋。
石造りのそこは光の精霊に祝福され、一日を通して明るいままだ。
虫がわざわざ火に飛び込むように、入り口から漏れ出でるその光に誘われ、下衆な考えを持つ男達が秘められた花園を覗こうとして、撃沈していった。
男達の敗北の記憶の中でも、強烈に覚えているのは正樹がこの世界に間もなくの物だ。他の男達のように搦め手や策を用いず、正面から入室を果たそうとした――ある意味勇者のグレゴリー――が、女性聖騎士たちの遠慮や手加減のない反撃に半死半生で医務室に運ばれていったのは記憶に鮮明に残っている。
幼少から鍛えた騎士や魔術師たちが力を合わせても届かぬ程に【聖女】であるシェーナや【勇者】である茜が様々な悪意や視線を阻む結界を多重に組み上げている。
正樹や、同好の士達の分析によれば、比喩でも何でもなく現実として更衣室は、下手な要塞や後宮よりも機密性が高いとか、何とか。
憧れの女騎士のあられもない姿を見ようとして撃沈していった男達の数は数え切れない。
しかし、そんな事情。高田正樹には関係ない。
彼に宿る最高ランクにまで鍛え上げた【千里眼】はそんな秘密のヴェールに覆われた更衣室すら見通す。
聖騎士の鍛錬の予定を調べ上げ、今日、目的の人物が訓練に参加している事を正樹は知っている。
数多の鍛えられた女騎士、宮廷魔術師、女兵士達を覗き見てきた正樹が、狙い定める二人の内の一人。
民衆は元より、兵士や騎士達の間にも心酔する者の多い、黒髪の聖女。
今年22才を迎えるという年上の彼女に、正樹は召喚された儀式の間で出会い、一目で心を奪われた。
流れる艶めいた黒髪も、優しげな二重の瞼も、薄い唇も、華奢なくせに意外と豊かな胸も、どれもこれもが正樹のストライクゾーンど真ん中であった。隣で茜が顔を顰める程に。
彼女に励まされ、支えられたから今がある。異世界に無理矢理に転生されて混乱しきった正樹と茜は、【聖女】シェーナに救われたのだ。――その数倍、訓練と称した一方的な虐殺で殺されかけたが。
そんな相手のプライベートな時間を覗く事に、多少の遠慮は存在する。もっとも、存在はするが、多少でしかなく。高貴な女性の秘められた姿を見たい、という欲望の加速を止めるには余りにも弱く、滾る思いを募らせ、そしてついに今日、その本懐を遂げる。
何せ、こういう正樹の悪巧みに凶悪な勘を働かせて妨害を企む茜は、腕試しにと隣国にいるという【七強】が一人の【銀鬼】エイリークという人物と手合わせを行いに国内にはいない。
尚、既にその特性の殆どを把握・活用して【聖女】を相手取れる茜と違い、未だ全てが解明されておらず現状では近・中・遠と全てにおいて一般兵の域を出ない正樹は留守番という役目を仰せつかっている。
上手く行っている。そもそも茜の力が強力過ぎ、上の奴らの目を惹き付けてくれるお陰で、己はただのイレギュラーとして判断されているようだ。まったく茜様々だと。思考が脇道に逸れようとした頃、更衣室の扉が開く。
女が一人、入ってくる。目当ての【聖女】。正樹のど真ん中、オーシェンが最強の一軍、聖騎士団の団長、シェーナだ。
聖騎士らとの鍛錬を終えたのだろう泥だらけの顔にも爽やかな笑顔を浮かべ、鼻歌なんかを歌いながら更衣室の魔錠を閉める。
後に入室する者の事を考えぬその行為に、恐らく練兵場には息も絶え絶えに鍛錬に付き合わされた聖騎士たちが横たわっているのだろう事が窺える。
僥倖だ。何人も騙し通すよりは、未だ一人の方が露見の可能性は少ない、筈。多分。
正直、シェーナほどの使い手ともなれば、術の気配を見破る確率はそれなりに存在する。
気を引き締め、覗く窓へ隠蔽の陣を重ね掛けしていく。
「もうちょ、……そう、…うん……いいぞ、気付かれてない」
今回発動させる【千里眼】の窓は2つ。範囲はそれぞれそれ程広くない。
如何に鍛え極めた【千里眼】であろうと、派手に視界一杯に見通すなんて真似をすれば【聖女】らが持つスキル、【神託】が理不尽な第六感を働かせ警鐘を鳴らす可能性が高い。
事実、正樹はシェーナの死角から覗いていた時に恐らくは【神託】によって勘付かれ、殺気の塊をぶつけられた記憶がある。アノ時は部屋で一人ちびってしまい後片付けに難儀した。自業自得な為、怨んじゃいないが、流石に繰り返したい出来事でもない。
そんな時でも、「【スキル】が暴走したのでしょう? 力を手に入れた初期にはよくある事です」と優しくフォローしてくれたシェーナの、自分を心配する表情を思い出して、正樹の表情がだらしなく緩む。
発動場所は悩みに悩み、果たして二つ開いた窓から覗く視界にシェーナが映し出されるのか。それが懸念材料ではあった。
しかし、熟慮と検討の結果か、聖女はしっかりとその中央に陣取った。
泥だらけの騎士服、まずは上衣のボタンを外して行く。
ボタンを外し、左右に分かたれる布地、隙間から現れる乳房はスリップのような薄手の青い下着が覆っていた。
余談だが。この世界、本来は婦女子用の下着は存在していなかった。
それを茜が――ちっぱいのくせに――耐えられないと、妖精達を中心とした縫製ギルドを組織。更に王城御用達の商人に掛け合って、自分用に、また世話になったシェーナにと使っているのだ。
王女も王妃すら持っていない薄い下着に包まれるシェーナの姿はただ上衣をはだけただけに関わらず、扇情的で。唾液が湧き出て、飲み込む。
軍団規模の相手を前にして、一人で打倒できる究極の存在だというのに、シェーナのスタイルは曲線が豊かだ。その癖、腰は折れてしまうんじゃないかという程に細く、スリップ越しにも辛うじて不健康にならない程度にまで白い、雪のような肌が確認出来る。
淡々と、スリップに覆われた窮屈そうな乳房を揺らしながら、シャツを畳み、着替えを用意していた籐籠の端へと置いていくシェーナの姿。
着替えを引き出す動きの度に揺れ、弾む胸。更に、ズボンタイプの下に手を掛けると、かちゃかちゃとベルトを外す音が耳に届く。
その下から現れる、張り詰めた太腿、スリップを透かして秘部を覆う妖精達の遊び心のレースに縁取られた純白のショーツ。
普段、軍服姿か、ローブ姿で肌を見る事の極端に少ない相手の下着姿や生肌を実際に目にして、唾液が止まらない。歓楽街に赴くには【勇者】という肩書きは余りに邪魔で。正樹が目にする性的な娯楽と言えば、もっぱらこの【千里眼】である。
もう一度溜まった生唾を飲み込み、そそ、と勃ち挙がり始めた息子を外に出してやる。
自らの行為を覗かれ、肢体のいちいちをつぶさに観察されているとも知らぬシェーナは更にスリップを肩から落とし、ショーツを脱ぎ落とす。
引き締まった体躯と、ご都合主義の権化のように胸も尻も男を誘う曲線を描くスタイルが映り出される。柔くもきめ細かい肌の上、そっと黒のアクセントが映える下腹部を眺める正樹の楔は既に先走りを滲ませていた。
そうして裸体を心行くまで鑑賞しようとした矢先、悲劇が起こる。
「あぁ……ッ!?」
【千里眼】が覗く視界、彼女が脱衣した騎士服を畳み移動させた籐籠が邪魔をし、妨げられて子細が分からなくなってしまった。
歯噛みしながら、発動させていた【千里眼】、もう一つに切り替えるけれど、そちらはそちらで彼女の姿自体が捉えられない。
其処に、生まれたままのシェーナの姿があるのに、眼に出来ない。その事に、歯がきしむほどに噛み締めながら、正樹は逡巡する。
新たに【千里眼】を発動するか否か。しかし、一つ、開く度に気付かれる可能性は段違いに跳ね上がる。二つを発動させて気付かれていない時点で、なかなかに幸運なのだ。気を張り巡らせていれば、彼女程度の使い手になれば、己の視線に気付く可能性は高い。
「しくったなぁ……」
結局、正樹は、待ちの選択をする。
大丈夫と自分に言い聞かせる。
今まで、幾度かの下見で、彼女が更衣室の奥まった場所で、茜から教えられた魔法を用いてシャワーを浴びる事は聞き知っている。
彼女と、茜専用の区画と化した其処へ作った【千里眼】の窓に意識を集中させる。
そうして、正樹の目論見通りにシェーナはやってくる。
片腕で軽く躰を隠すようにタオルを提げ、歩む姿。左右に僅かに振られる腰が、躰のラインに沿うタオル越しに覗け、楔がいよいよ膨張する。
やがて目的の位置にまで到達したシェーナは、着替えとタオルを側に置き、高所から温められた雨を呼び出す。
瞳を細め、茜が教授した――水と炎の複合魔法の産物――シャワーを浴びるシェーナは心地よさそうに表情を弛め、降り掛かる雫を豊満でありながら、胸と尻以外には無駄な肉の薄い全身にて受け止める。
瑞々しさを失わぬ肌は雫を弾き、女らしい曲線描く肢体を伝い落ちる。
そんな艶姿を遠く、室内に引きこもる正樹は興奮と共に見つめる。
鼻息荒く見つめる先、聖女の魔力に祝福された湯の雨をいよいよ完熟に近付く肢体が受け止める。
眼を瞑り、口を仄かに開いて湯を受け止める姿も、それで薄紅色の唇を濡らす水滴も。
視界にかかる髪を後ろにかき上げれば、豊かに膨らむ乳房が揺れ、正樹の視界に皺を探し出す事すら難しい腋下を晒し――ちなみに、腋下や陰部の恥毛の処理を茜が教えていた。風の魔法を変容させ用いるらしい――腋下の様子を心配するように見つめる。そんな、乙女であれば恋人にも見せる事を厭うだろう光景も、正樹は見届ける。
その度にシェーナ自身の腕の動きで撓み、拉げる乳房。湯の温度でか先端を淡く屹立させた姿を見て、覗き魔と化す異世界より呼ばれた【勇者】。楔を取り出し、皮が突っ張るほどに張り詰めた楔を扱いて行く。
【千里眼】の向こう、この世界の詩に抑揚を付けて、名も知らぬ英雄の詩を詠うシェーナの姿。
スポンジできめ細かくふわふわに泡立てた泡が肌を滑り、曲線豊かな姿態を覆っていく。其の度にたっぷりとした質量の双丘や腰を捻った事によって視界に現れる肉付きの良い臀部が揺れる。
騎士団の礼装や鎧越しに想像していた肉体よりも余程、男の劣情を煽る肢体。
湯を浴びて桜色に色づく肌を見て、唾液を飲み込む覗き魔の存在など知る筈もなく、無防備に若き騎士団の長が身を清めていく。足先までを洗い終えるとスポンジから大量の泡をその手に絞り出す。
掌に掬う泡が這う先は脇や胸などの弱い部分。撫でるように手を滑らせれば、彼女の手が、彼女の肉体を清めていく。ラインを崩さぬように為すその洗い方は、これも多分茜の仕業らしい。
胸が彼女自身の手で揉まれ、その形を変えていく様子に正樹は彼女が自慰に耽っている妄想に駆られる。訓練や公務では怜悧とした表情を宿し、プライベートでは柔らかに自分たちのケアに努めてくれた聖女と崇められる彼女が、胸を揉み、自らを慰める。そんな妄想に、共に世界を超えてしまった幼馴染みへ欲にまみれた感謝を心の中で紡ぎ、扱き立てる楔の先端からは雫がぷくりと浮かび始める。
血走り、瞳を赤く発光させる正樹。
何も知らず、英雄譚を詠うシェーナ。
薄布の一枚すら身に纏わぬ彼女は、泡だらけの手を伸ばす。未だ清めていない部位、脚の付け根へと。
息を呑み、唾液を飲んだ。
楚々と、或いは泰然とした佇まいは聖女として、聖騎士としての役割で変わるとは言え、そのどちらもがある種の聖域をシェーナという存在に抱かせる。
それは正樹にしても例外でなく、触れる事を躊躇うような神性を彼女に抱いていた。
そんな彼女が。脚を僅かに開き、翳りに隠れた裂に指を這わせ、上下に擦る。
下方から見上げる視点、食い入るように見入る先、シェーナの翳りは薄く、淡かった。下腹部を僅かに守るだけの其れが、陰唇の周囲には殆ど生えていない事も確認できる位置。
誰も、恐らくはシェーナ自身も知らないだろう躰の特徴を知る。乳首の色も、乳輪の大きさも、陰唇の色も、陰唇が殆ど線のようにぴちりと閉じている事も、正樹は知った。その優越感に浸りながら、限界を迎えそうになる自身を果てに導こうとして、正樹は見た。
だらしなく脚を左右に開き、僅かに腰を落としたシェーナが裂よりも更に後ろ、菊花を洗う様を――。
秘められた後孔自体は正樹には見えなかったが、正樹にとり、劣情を抱く事を躊躇わせていた最後の鎖は、そんな人間らしいと言えば人間らしい姿を見て、壊れて散った。
【千里眼】で見通す先、僅かに頬を赤らめているように見えるシェーナが陰部から呼び出したシャワーで身を流していくのを見て、洗い落とされた泡から見える秘裂を見て、喉奥から獣の如き唸り声と共に、正樹は部屋に白濁を撒き散らす。灼熱を思わせる滾る熱が楔の中を、尿道を焼く感覚にぞくぞくと背筋を震わせながら痴れた表情を晒して、白濁を二度、三度と撃ち出して行く。ねっとりとしたゲル状の白濁が撒かれる中、正樹は達成感と共に、スリップを再び着込み、柔らかな丘陵を微かに揺らしながら髪を拭うシェーナの姿を見ていた。
細く、括れた腰も、着痩せする臀部を覆っていく下着も。
更に、騎士団の軍服を纏うと、怜悧とした表情をその相貌に宿す姿も。
その課程も全て、見ていた。
多分。高田正樹が引き返せた、最後の分岐点。