18禁で所々にエロ描写を入れていきます。
序章 託された希望
一つの時代が終わる時、彼の者現われる。
その男、人面獣心の鬼畜なれど、心技体才運全てを兼ね備える。
心は風の如く自由であり、力は火の如く苛烈であり、その智は己の欲望を満たす為だけに使われる。
その男、悪名名高き鬼畜戦士。
無限の可能性を秘めた種にして自由なる探求者、世界が求めし救世の英雄なり。
★☆★☆★
冬の寒い夜の出来事だった。
その日は朝からずっと雨が降っていた。
ただの雨ではない。雪のように冷たく、滝のように強い雨。その雨音は周囲の音を全て呑み込むほどうるさく響き続いている。
さすがにこれだけ雨が強いと外を出歩くのは危険なのか、自由都市ゴモラタウンの人々は誰もが家の中に籠もっていた。
もしこんな雨の中を出歩く者が居るだとしたらよっぽど不幸な人に違いない。
そう思いつつメイドのアクレアは窓拭きをしながら窓の外を眺めていた。
彼女が今いる場所はゴモラタウンの村長の御屋敷、村長宅の使用人の一人である彼女は
雨の日だろうと風の日であろうとも使える主人の為に働くのが仕事だ。
だから今日も掃除をしたり料理を作ったりと休み事無く真面目に働いていた。
そんな彼女に対して仕えている村長一家からの信頼も厚く、特に村長の娘である姉妹からは母の様に慕われている。
「ふ~ん、ふふんふ~ん♪」
機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら屋敷中の窓を拭く。手慣れた動作で布巾と洗剤を片手に次々と窓を綺麗にしていく働き者のアクレアの姿は村の男達にとって憧れの的でもある。
背に流れる長い銀髪に柔和そうな大きな瞳と美貌、着ているメイド服の上からでもはっきりと分かる豊満な体付き。おまけに優しくて家事万能。今年で二十歳になる彼女を妻にしようとアプローチをしてくる男も少なくない。
「二階はこれで終わりね・・・次は一階っと・・・」
二階の窓を拭き終わったアクレアは布巾を水が入ったバケツの中に入れて持ち上げると一階に向かおうとするが、窓の外に薄っすらと人影を見つけて足を止めた。
「誰かしら・・・こんな雨の中を出歩いているなんて?」
怪訝そうに目を細めて窓の外に映る小さな人影を凝視する。雨で視界が悪いおまけに二階のここからでは遠すぎてはっきりと分からない。
だけど人影がこちらに向かって来ていることは分かった。
こんな強い雨が降る寒い夜に訪れる物好きなんて一体誰だろう?
「どちらにせよ、お出迎えしなくちゃ」
訪れるのが誰であろうとこの屋敷に仕える使用人の一人である彼女のやる事に変わりはない。
仕える主人の顔に泥を塗る様な事がないようにお客様を出迎える、それだけである。
アクレアは手に持っていたバケツを掃除していた部屋の隅に置くと二階の部屋から出て一階の玄関へと向かう。
すると丁度良いタイミングで玄関のドアが強くノックされた。
「こんな時間に誰か来たのかね?」
来客を知らせるチャイムが鳴ってやって来たこの屋敷の主にしてゴモラタウン村長のヨーシフ・ゴモラが奥の部屋から現われてアクレアに聞くと、彼女は頷いて答えた。
「はい、二階の窓から人影が見えました」
「うむ、わかった。何か頼む事があるかもしれんから傍で待機していてくれ」
「かしこまりました、旦那様」
アクレアは傍で待機を命じられて礼儀正しく悠然と佇む。その姿は堂に入っており、一人のメイドとして彼女がどれだけ優秀なのか見る人が見れば人目で理解できるであろう。
村長のヨーシフは幼い頃から屋敷に使えている家族同然の彼女を見て微笑むと、真剣な面立ちに切り替えて玄関のドアを開けた。
「こんな夜分にどちらさまで―――」
玄関のドアを開けて来客を迎えたヨーシフは思わず声を失った。こんな雨の日に訊ねて来た変わり者がどんな人なのか興味を持っていたアクレアも思わず目を見開いて声を失っている。
二人の前に現れたのは雨でずぶ濡れになった一人の隻腕の騎士。
右腕が無く、全身に鎧を纏っているから顔などは窺えないがかなりの巨漢だ。左腕にはまだ幼い少年が抱えられている。身に纏っている鎧や右腰に帯びている長剣の精緻で見事な意匠からかなりの身分である事が窺える。
「夜分にこんな姿で申し訳ない・・・」
いきなりの訪問という非礼を騎士は詫びる。その声は若々しく張りがあり、まだ青年と呼べる位の年齢を思わせる。
「あなた方にお願いがあって参りました」
「お願いとは・・・?」
いきなり現われた初対面の怪しい騎士から『お願い』と聞かされてヨーシフは怪訝な顔をする。
基本的に人の好い男として知られている彼だが、いきなり初対面で、いきなり何処の誰かも分からない怪しい男の頼みを聞くほどのお人好しではない。
それにヨーシフはゴモラタウン村長としての責任もある。村にもしも災いをもたらす可能性のある事ならすぐに断るつもりだ。
すると騎士は左腕に抱えた少年を差し出して頭を下げた。
「この子が自立するその日まで預かって欲しいのです・・・」
「この子をかね?」
ヨーシフと傍で控えるアクレアは差し出された少年を見る。まだ四、五歳位と幼い茶髪の少年だ。外の雨でかなり濡れたのかずぶ濡れで眠っている。
外はかなり気温が低く寒い。このままでは命に関わりかねない。
(見たところ人に化けた魔物の類では無さそうだし、ウチで預かったところで害はないだろう)
そう思ってヨーシフは少年を引き取る事を心の中で決める。後にこの時の選択を後悔するとも知らずに。
「よかろう。その子をウチで預かろう」
「ありがとう、恩に着ます」
ヨーシフは騎士から少年を受け取る。ずぶ濡れの少年は冷え切っていてまるで氷みたいに冷たかった。
「アクレア、この子を風呂に入れて温めてやりなさい」
「はい、旦那様」
少年を受け取ったアクレアは言われた通りに風呂場に向かおうとすると、
「その子の事を頼みます。その子はいずれ世界に必要とされる我らの希望なのです・・・・・・」
騎士は懇願するように優しく言うと緊張の糸が切れたのか膝を付いて息を荒げる。
騎士の言葉を聞いたアクレアは無言で頷くと少年を抱きかかえて風呂場に向かった。
「大丈夫かね!?」
ヨーシフが騎士の容態を気遣うが、騎士は気にしないでくれと言わんばかりに首を横に大きく振った。
「私の事は気にしないで下さい、どうせもう長くない・・・。やんちゃな奴ですのでご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします・・・」
そう言うと騎士はゆっくりと立ち上がって右腰に帯びた長剣を村長に差し出した。
「これを受け取ってください・・・自慢の名剣です・・・。売ってGOLDにするなり好きにしてください・・・」
差し出された長剣をヨーシフは受け取る。受け取った長剣は予想以上にズシリと重く、大人のヨーシフでも両手で抱えなければ持てないほど重い。
また大切な物を受け取ってしまったな、とヨーシフは苦笑を浮かべた。
「・・・・・・わかった。・・・それであなたはどうするのだ?」
ヨーシフの目から見ても騎士の容態は弱々しく悪そうに見える。それこそ突っつけば今にも倒れそうなくらいに。
「目的は達したのですぐに村を去ります。もう二度とあの子―――ランスと会うこともないでしょう。ご温情感謝いたします」
「礼を言われるほどのことではないさ」
ヨーシフの温情に感謝して深々と騎士は頭を下げるが、当のヨーシフからすれば子供を預かるくらいでここまで感謝される事では無い。
だがヨーシフは騎士がどれだけあの子供を大切に思っているのかはしっかりと伝わった。
「あの子の事は任せなさい。決して悪い様にはしないと約束しよう」
「・・・・・・ありがとう・・・」
心の底から感謝を込めて礼を言うと騎士は雨が降る夜の闇の中へと去って行く。
雨に打たれながら堂々とした足取りで去って行く彼の騎士の後ろ姿をヨーシフは見えなくなるまで見届けてドアを閉めた。
★☆★☆★
騎士が屋敷から去った頃―――風呂の湯を温め直したメイドのアクレアは、お湯の温度を確認すると自身が着ているメイド服を脱ぐ。衣服を着たまま少年と一緒に風呂に入るわけにはいかないからだ。
雨で冷えた少年の体を早く温めるべく脱いだメイド服は畳まれずに放りっ放しだが、今はそんな事を気にしている暇はない。
メイド服を脱いで白いブラとショーツの半裸姿になると、すぐにショーツを脱ぎ捨てて
陰部をさらし、ブラのフロントホックを外すと押さえつけられた美乳がプルンと揺れて露になる。
文字通り生まれたままの姿になったアクレアは次に少年の衣服に手を掛けると丁寧に脱がし始める。
着ている上のシャツを脱がし、次にベルトを外してズボンを脱がそうとしたところでアクレアはベルトの金具に刻まれた文字を見つけた。
「ランス・クリア・・・。それがこの子の名前なのかしら?」
思えばまだ預かった少年の名前も年齢も何も知らない事に気づいた。
だがアクレアは少年が目覚めてから改めて聞けばいいと思って、少年の衣服を脱がし終えると抱き上げて温かな湯船へと浸かった。
少年を後ろから抱きかかえる形で湯船に浸かったアクレアはお湯を少年の頭に掛けたりして身体全体を温める。
しっかりと温められた少年の体は血行が良くなり、アクレアはもう大丈夫そうだと判断して少年を抱きかかえて湯船から出ようとしたときだった。
「あんっ・・・!」
いきなり感じた快感にアクレアは嬌声を漏らす。気を失っている筈の少年の体がピクリと動いて、その左手がアクレアの陰部の最も敏感な場所に触れたのだ。
思わずはしたない声を挙げて赤面するアクレアだが、気を失っている筈の少年の奇行は終わらない。
身体をアクレアと向かい合わせ、左手で彼女の秘部を弄繰り回し、右手で湯船に浮かぶ彼女の豊かな乳房を揉み始め、顔は彼女の胸の谷間へと埋める。
「ちょっ・・・この子ったら・・・ああんっ!」
予想外な少年のエロい奇行にアクレアは甘い声を漏らしそうになるのをこらえながら少年の奇行をやめさせようと自由な両手で少年の両手を離させようとするが、まるで子供とは思えない力でびくともしない。
引っ叩いて起こす手もあるが、気を失っていて無意識にやっているであろう彼を叩く気は起きなかった。
しょうがなく好きにさせるアクレアだが、少年の攻めては更にエスカレートしていく。
快感が痛みに変わる直前の絶妙な力加減で左の巨乳が少年の右手によって揉まれていやらしく形を変えられ、彼女の豊かな谷間に埋めていた顔が右の乳房の頂を目指して移動し、桜色の小さな果実の辺りまで来ると優しくしゃぶり始める。
「・・・ああん・・・ダメ、そんなに・・・強く吸っちゃ・・・ダメッ!」
今年で二十歳になったアクレアだが、今までずっと使用人生活で男性経験は皆無だった。
初めて感じる性の快感に身をよじりながら彼女はダメだと分かっていても少年を抱き締めて身を任せた。
★☆★☆★
場所は変わってゴモラタウンからかなり離れた森の中、村長に少年を託し終えた隻腕の騎士は木にもたれかかって座っていた。
フルフェイスの兜を被っているせいで表情は窺えないが、どこか穏やかな雰囲気で空を見上げていた。
そのまましばらく空を見上げていると雨が止み、雲が流れて綺麗な月と星空が見えた。
「いい夜だ・・・こんな星空の下で逝けるなら悪くない」
騎士は安らかに一人呟きながら星空を見上げる。
思うのは彼の家に預けた少年の事だ。元々型破りで破天荒な彼が目覚めて少しは真人間になっている事を願うが、それを確かめる事を自分は出来ない。
自分の体の事は自分がよく分かっている。
今夜、自分はこの世を去って最も憎悪している奴の下へと還る。
そう思うとやるせない気持ちになるが、既にやるべき事は全てやった。
後は世界のバグたる彼の少年に期待するとしよう。
「そういうわけだ。殺るならさっさと殺れ」
騎士は敵意を込めて正面の森の中にいる者へと声を掛けると、森の中で何かが蠢いた。
「随分な言い草だな。それが嘗ての上司に向かって言う言葉か?」
森の中に若い男の声が響く。口調はどこか軽さを感じさせるが、声の質そのものは大気を振るわせるほど強い威圧感が込もっている。
「己の強さに自惚れて部下に暗殺されるような無能な上司なんかに敬う価値など無い」
騎士のその言葉を聞いて男は懐かしそうに笑った。
「クククク、お前には感謝している。貴重な体験のおかげでクズだった俺は確かに強くなった・・・いずれこの世界を支配できるであろうところまでな。もうじきガイの時代は終わり、大陸は新たな争乱の時代を迎える。俺はお前の力を欲している。どうだ、俺に今一度仕える気はないか?」
「クジラの玩具になった奴に仕える気など一切無い」
騎士は侮蔑するように断言した。それに対して男は残念そうに呟いた。
「それは残念だ・・・最後に何か言い残す事はあるか?」
「未練はある。だからこそ未練は無い」
ぶち殺したい奴ぶっちぎりナンバーワンを独走する奴に一矢報いる為にやる事は全てやった。その結果を見届けたいが、必ずあの少年は最高の結果を叩き出してくれるだろう。
短い付き合いだが、あの少年の規格外差は自分が誰よりも分かっている。
「クククク、なんだそれは? まあいい、消えろ」
騎士の言葉の意味が解らなかった男は馬鹿にするように笑うと右手に魔力を集める。
夜の森の中に禍々しい黒い魔力の球体が出来上がり、それが騎士に向かって投げつけられると、バレーボールサイズの魔力球は騎士と接触すると同時に爆ぜた。
★☆★☆★
隻腕の騎士が少年を連れてゴモラタウンに訪れた雨の日から半年後―――
季節は夏に変わり、ゴモラタウンはいつもと変わりなく平和であった。しかし平和というものは必ず終わりを告げるものである。人間に出来るのは平和を延長させるくらいだ。
「よし、情報通り平和ボケした村みたいだな・・・」
ゴモラタウンを一望できる丘の上から粗野な顔立ちの巨漢が双眼鏡を片手に村の様子を見ていた。
そのすぐ傍らには手下らしき柄の悪い男達が五人いる。
彼らは巷で有名なオツカレ山賊団の一員である。
自由都市各地にある小さな田舎村を私欲を満たす為に襲っては金品や女を奪う悪党で、運が悪い事に彼らの次のターゲットにゴモラタウンが狙われていた。
「ほう・・・中々の上玉がいるじゃねぇか」
双眼鏡を使ってゴモラタウンを見ていた巨漢の視線は、村で一番大きな屋敷の庭で洗濯物を干す長い銀髪のメイドに向けられていた。
遠目であるが、かなり豊満な体を持った美女で、優しげで清楚そうなところがグッと来る。
今日捕らえた暁には自分専用のメイドとして朝晩好きな時にたっぷりとベッドで可愛がってやる。その時の事を思い浮かべながら男は股間の一物を勃起させる。
「よし。野郎共行く―――」
部下達に振り返って、行くぞ、と言おうとした所で巨漢は信じられないものを見た。
獲物を前に下品な笑みを浮かべる部下達の背後に長剣を構えた小さな死神がいた。
「後ろだ!!」
巨漢は咄嗟に叫ぶが既に遅い。小さな死神は身の丈よりも長い長剣を横に一閃、巨漢の部下である山賊達の上半身と下半身を一振りで両断して別けた。
噴水みたいに血を噴出する下半身を見ながら五人の山賊達は自分達を殺した者の姿を見る事無く死骸と化した。
「がははは。飛んで火にいる夏の虫とはよく言ったものだ。まさか俺様の縄張りに賊がいるとはな・・・成敗してやる!」
小さな死神は大きな口で豪快に笑いながら長剣を小枝みたいに振り回して血を払う。
巨漢は自身が使っている剣よりも長く.精巧な意匠で出来た長剣を軽々と振り回す少年を悪夢でも見ているかのように見つめる。
ストレートの茶髪に鋭い琥珀の瞳、幼くも整った顔立ちをしており、その口は大きく不敵な笑みを浮かべている。何歳なのか分からないが背も高くがっちりとしたガタイをしているのが緑色の衣服の上に身に着けた皮鎧の上からでも窺える。
「誰だ小僧!?」
巨漢は剣を抜いて少年に向かって構える。一見して平然と装っているが、剣を持つ手は震え、身体中から嫌な汗が止まらない。
それに対して少年の方は年不相応に堂々としており、自身に満ち溢れている。
長剣を肩に担ぐと少年は不敵な笑みを浮かべながら男の質問に答えた。
「俺様か? いいだろう、冥土の土産によく聞いとけよクズ野郎。―――ある時は今世紀最強の天才戦士。またある時は、女達のハートを射止める絶世の美男子。そしてまたある時は、数々の謎を解き明かす知的な冒険家。そしてその実態は、スーパーヒーローランス・クリアだああっ!!」
名乗ると同時にランスは長剣を振り上げて巨漢に襲い掛かる。
所詮は子供の剣術だと自分に言い聞かせながら巨漢はランスの凶刃を自身の得物で受け止めようとするが、男は見る。
ランスが振り上げた剣に纏わせた天才のみが扱える蒼い闘気を。
「ランスアタックっ!!」
勢いよく振り下ろした剛剣は、唐竹割りに男の剣諸共真っ二つに切り裂き、必殺技の余波で男の背後にあった大木さえも衝撃波で粉砕した。
「うむ、まあまあだな」
自身の必殺技の出来に合格点を付けつつランスは長剣に付いた血糊を布で拭き取って背負った鞘へと収めた。
その後、ランスは死んだ男達から金目の物を奪い取ると機嫌良さそうにゴモラタウンへと歩いて行った。
どちらが悪党なのか判断しかけるが、ランスのおかげで今日もゴモラタウンの平和は守られた事に変わりは無かった。