それでも自分の倍以上の文字数を書く人が本当にすごいと思いました。
龍牙 side
相手から全身に重圧がのしかかるような圧迫感を受けるが、俺は怯むどころかむしろ戦闘意欲を湧かせている。こんな相手は今までなかったからな。
グランべリア「さあ、かかって来るがいい!」
龍牙「それじゃ遠慮なく・・・行くぜ!」
相手に向かって真っすぐ走り、剣を振りかざす。大振りは命中しにくいと思い、小振りで斬りかかる。しかし・・・
<フッ>
龍牙「っ!?」
グランべリアの姿が消え、剣は空振る。空振りによってバランスを崩したのと同じタイミングで背後から殺気を感じたので俺は咄嗟に身を屈める。その一瞬後にグランべリアの剣が通り過ぎる。後一瞬遅かったらヤバかった。
龍牙「ふぅ、危なかった。」
グランべリア「ほぅ、よくよけたな。」
龍牙「一撃目でカウンター喰らって終わりじゃ、カッコ悪すぎだろ。」
距離を少し取ってどう攻めるかを考えていると、ルカがグランべリアに向かって走り出したのが見えた。
ルカ「てりゃぁ。」
ルカは剣を構え、猛然と突進した。しかし・・・
<スカッ>
ルカ「えっ!?」
次の瞬間、グランべリアがルカの足下をすくい転倒させた。
ルカ「うわっ!」
<ズテッ>
ルカ「く、くそっ。」
ルカはすぐに起き上がろうとするが、股の間にすぶりとグランべリアの巨剣が突き立った。
グランぺリア「そこの黒髪の青年と比べ、あまりに未熟。」
ルカ「う、くっ。」
龍牙「ルカ!」
ルカをグランべリアから離そうと近付くが・・・
グランべリア「そうはさせん。」
<ゴオォォッ>
龍牙「っと。」
グランべリアが炎を剣に纏わせ、なぎ払う。これじゃあ全然近づけねぇ。グランべリアは剣を再び突き刺し、ルカに言う。
グランべリア「多くの大人が屈した中、勇気を振り絞って抵抗しようとした。その点のみ評価する。
―――未熟者は斬らん、未熟ゆえ過ちもあるだろう。だが二度目はないぞ。」
ルカ「・・・。」
龍牙「・・・。」
この状況で大半の者は『助かった』、『安心だ』と思うだろう。だがルカは違う。
龍牙「おい、グランべリア。」
グランべリア「なんだ青年。」
龍牙「お前はルカの戦意を削ぐために忠告したつもりだろうけどな。」
一呼吸置いてグランべリアに言う。
龍牙「その言葉は逆効果だぞ。」
ルカはふらふらとだが立ち上がり、グランべリアの前に立つ。予想外の行動にグランべリアは驚いている。
グランべリア「私の忠告を聞いていなかったのか?一度の蛮勇も許さん程狭量ではないが、二度は見過ごさんぞ。」
ルカ「覚悟の上だ!」
ルカは強い意志を瞳に宿して立ち上がる。俺も負けてられんな。
グランべリア「やれやれ、気は進まぬが・・・悔いはないな、お前達?」
ルカ「あるもんか!」
龍牙「俺としては、悔いを残すくらいなら死んだ方がマシだ。」
グランべリア「いい覚悟だ。では、ゆくぞっ!」
グランべリアは剣を構えた瞬間、俺との距離を一瞬で詰めた。それでも速度は落としているつもりなのだろう。
ルカ「っ速い!?」
龍牙「ちっ!?」
振り下ろされる巨剣を真正面から受け止めるのは不可能だ。それなら、止めるのではなく流せばいい。
<ガギンッ>
威力を受け流すため、相手の剣に自分の剣を当て滑らせるように流す。恐らく加減されていると思うがそれでもかなり重かった。膝が思わず崩れてしまう。
龍牙「らぁっ!!」
だが、軌道を反らすことに成功した。
グランべリア「私の攻撃を受け流したか。」
龍牙「ギリギリだったけど・・・な!!」
俺は崩れた体勢のままで剣を右手から左手に持ち替えて突きを繰り出した。
グランべリア「ふっ。」
<キンッ>
しかし、相手は咄嗟の動きで剣を盾にガードされてしまった。そして、ガードされたことで一瞬の硬直が生まれてしまう。
<ガンッ>
龍牙「ぐっ!」
剣の柄で額を打たれる。脳を揺さぶられてクラクラするが、すぐに離れたので追撃を喰らうことはなかった。額からは血が流れてきて、地面に数滴落ちる。
ルカ「やあっ。」
ルカはグランべリアに踏み込むが、ルカの接近にすぐ気づき迎撃体勢に入る。
グランぺリア「遅いな。」
<ガッ>
ルカ「うっ。」
ルカは再び足払いをかけられた。だがルカの攻撃は終わってはいなかった。
ルカ「せいっ。」
<ビュンッ>
グランべリア「むっ。」
ルカは地面に落ちる一瞬前にグランべリアの足を狙って剣を振る。この行動にグランべリアは少々驚くもバックステップで回避される。
グランべリア「あの体勢から攻撃を仕掛けるとは、面白い攻め方だ。」
グランべリアの前では中途半端は攻撃など通用しないだろう。たぶんルカも気付いているはずだ。俺は次の行動を伝えるため、ルカに近づく。
ルカ「龍牙。額は大丈夫?」
龍牙「ああ、これくらい日常茶飯事だ。それよりあいつに攻撃を加えるならあの技しかないだろ。」
ルカ「うん、僕もそう思った。」
龍牙「よし、それじゃあ行くぜ!!」
俺とルカは足に力を溜め、鋭く踏み込んだ。ルカは左、俺は右から攻める形だ。相手の懐に入りながらルカは突き上げ、俺は斬り抜く。本来は足のバネを用いて喉元に滑り込ませる技だが、俺の場合は相手の首元を斬り抜いて攻撃する技だ。
グランべリア「何だと?この技は!」
グランべリアはルカの攻撃をかわし、俺の攻撃を剣で受け止める。
ルカ「そんな。」
龍牙「これでもダメか。どうする・・・」
俺は再び攻め方を考えていると、グランべリアが突如動きを止める。
グランべリア「なぜお前達が魔族の技を知っている?」
ルカ「えっ?」
突然の質問に俺達は驚く。
グランべリア「踏み込みも稚拙ならば、突きも未熟。だがその技を知っている事が気に掛かる。黒髪の青年も狙い場所は違えど、途中までの動きが完全に魔剣・首狩りそのものだ。」
剣の達人であり、魔族であるなら知っていて当然か。
グランべリア「その技が偶然編み出されたものとは思えん。その技を誰に教わったか教えてもらおうか。」
龍牙「そんな事を聞いてどうする?」
グランぺリア「知れた事よ。その技を知っている以上はかなりの使い手に違いない。ぜひ、その者と手合わせ願いたいと思ってな。」
グランべリアは口を笑みの形にしてそう言った。強者と戦いたいというところは俺と似ているな。
グランべリア「さあ教えるがいい。その者はお前の師匠か何かか?」
ルカ「それは、言えない。」
グランべリア「そうか、ならば。」
龍牙「っ、ヤバい!!」
<ドゴンッ>
ルカ「あぐっ!!」
グランべリアはルカに巨剣を喰らわせる。手加減されていたのかまだ意識はある。
グランべリア「一撃で命を奪わんように加減した。さあ、喋ってもらおうか。」
ルカ「う、ぐ。」
ルカは先の一撃で体が全く動かない様子だ。
ルカ「それでも、言うもんか。」
グランべリア「そうか、弱者に剣を振るうことは好かんが、仕方ない。」
龍牙「させるか。」
グランぺリアが剣を振り下ろしたその時・・・俺は割り込む形で剣を受け止める。流す余裕がなく正面から受けてしまい、剣と一緒に弾かれた。
龍牙「ぐはっ!!」
地面を何度も転がって止まる。あの攻撃をルカが受けていたら確実にやられていた。だが無慈悲にも三度目の振り下ろしがされようとしていた・・・その時だった。
アリス「やれやれ、いつまで下らんことをやっている気だ?」
ルカ「ア、アリス。」
グランべリア「そんな―――貴方様は!?」
グランべリアの顔は驚愕に染まり、数秒程立ち竦む。そして、おもむろにその場に片膝を着いた。
ルカ「え、えっ?」
龍牙「どうなってるんだ?」
四天王のグランべリアがアリスにひれ伏すとは。アリスは・・・まさか。
アリス「グランべリア・・・貴様は何をやっている?一体誰がこのようなことを命じたというのだ?」
グランべリア「これは、私の独断でございます。羽虫のようにうるさい勇者共を絶滅させんがため、イリアス神殿を―――」
確かに魔族側からみたら勇者は邪魔な存在に見えるだろう。敵の根元から潰すのは確かに効果的だ。人間側の俺が言うのはなんだが。
アリス「退け、邪魔だ。」
グランべリア「し、しかし!これ以上勇者なる連中を放置しておくのも・・・」
アリス「いいから退けと言っている。貴様が暴れるから、ここの名物の『あまあまだんご』が食べられんではないか。」
グランべリア「そのようなものがお望みならば、この町を制圧した後にいくらでも作らせましょう。ですので―――」
アリス「そんな趣のない観光があるかドアホめ。ともかく・・・三度も同じ事を言わせるのが貴様の忠義なのか?余は退けと言っている。」
少し苛立ちを見せるアリスにグランべリアは反論をやめた。
グランべリア「・・・御意。それが貴方様のご意志ならばただちに。それでは、失礼致します。」
そう言ってグランべリアは姿を消した。なんらかの転移術を使ったのか。
ルカ「や、やったね龍牙。」
龍牙「ああ、何とかなって良かった。」
俺達はほとんど何もしていないが、脅威は去ったのでよしとしよう。
ルカ「ふぅ・・・」
緊張の糸が切れたのか、ルカはその場でへなへなとへばってしまう。
龍牙「いてて・・・」
俺も額の傷が今更痛みだし、その場にしゃがむ。出血がさっきより酷くなっており、意識が少し揺らぐ。戦闘中だとどうも痛みを忘れがちだ。
ルカ「アリス、お前。」
アリス「・・・。」
なぜか切なげに視線を逸らすアリス。あの場面を目撃してしまった以上、隠し通せるわけがない。
ルカ「お前・・・結構偉かったんだな。」
龍牙「はぁ!?」
アリス「それだけか!?それで終わりなのか!?貴様は本当にアホなのか?」
ルカ「えっ、なんで?」
ルカは本気で分からないらしい。普通に考えて、四天王クラスの者に命令ができるのは魔族の中で現時点一人しかいないだろ。と、呆れていると・・・
青年「ど、どうなったんだ?あの魔族は逃げていったのか?」」
おばさん「ほら、あの少年達と女性だ!あの三人が追い払ってくれたんだよ。」
龍牙「は?追い払った?」
屋内からわいわいと住民達が出てきて俺らを取り囲んだ。
ルカ「いや、僕たちは、その・・・」
青年「いやぁ、ありがとう!もう少しでこの町は魔物のものになるところだったよ!」
おばさん「若いのに凄いんだねぇ。あらやだ、この子怪我してる。」
龍牙「あー、大丈夫だ。大した傷じゃない。」
アリス達の細かいやり取りまでは分からなかったらしいので、安堵する。住民達はひとしきり礼を言うと、それぞれの日常に戻っていった。叩きのめされた戦士達も命に別状はなかった。
アリス「ところで住民A、ひとつ聞きたいことがある。」
住民A「住民Aって俺のこと?」
すごい名前で呼ぶな、アリスのやつ。アリスはサザーランドの場所を聞き、俺達はその場所まで移動する。その途中、アリスに一つ質問をする。
龍牙「ルカにお前のことを教えなくていいのか?」
アリス「正直どうすべきか悩んでおる。あのドアホっぷりにはお手上げだ。」
龍牙「それには同意する。」
ルカがこの事を知ったらどんな反応をするのだろうか。俺は少しだけ気になった。