ルカ Side
男の子の悲鳴がした方へ駆けつけると、そこには一体のハーピーがいた。ハーピーは男の子を掴んで連れ去ろうとしていた。
男の子「助けてー。」
ルカ「やめろ!その子を離せ。」
龍牙「そういうことか。村の男がいないのはこいつらが連れ去ったからか。」
僕達は剣を抜き、魔物と対峙した。他の村人は全員屋内に逃げ込んだ。
龍牙「村人の方は大丈夫そうだな。万一でも巻き込んだら大変だ。」
ハーピー「あれ?村では見ない顔だね。旅人かな?」
ハーピーは舌なめずりしながら僕達を眺める。かと思ったら、足で掴んでいた男の子を離した。
ハーピー「そうねぇ、あんたの言う通りこの子は離してあげる。でもその代わり、あんた達を攫っちゃおうかなー♪」
龍牙「おい、早く逃げろ。」
男の子「う、うん。」
男の子が離れたのを確認し、臨戦態勢に入った。
ハーピー「さっきの子よりあんた達の方が素敵ねぇ。二人とも連れ帰ってたっぷり子作りしよ。それとも今ここでしちゃう?」
龍牙「寝言なんか言ってないでさっさとかかって来いよ。」
ルカ「行くぞ。」
僕が先に駆け出し、ハーピーに斬りかかる。
ハーピー「ふふん。」
しかし相手は空を飛んで攻撃を回避した。あんなの反則だよ。
ルカ「そんなのズルいぞ。」
ハーピー「ズルいって言われても、自分の羽で飛んでいるんだからさぁ。」
分かってるけど、このままじゃ埒が空かない。
龍牙「どうする?俺の跳躍でも絶対届かないぞ。」
ルカ「うーん。」
僕が唸っていると、今度は向こうが攻撃してきた。
ハーピー「えーい。」
真っ直ぐこちらに飛んできて鳥脚で襲い掛かって来る。
龍牙「はぁ!!」
ハーピー「おっと。」
迎撃するため龍牙は剣を振るうが、向こうのスピードが速くて躱されてしまう。そしてハーピーは僕にのしかかってきた。
ルカ「うわぁ!?」
ハーピー「そろそろ子作りしようね♪」
龍牙「ルカを離せ!!」
龍牙がハーピーに向かって駆けてくるが、ハーピーは羽を龍牙に向けて振るった。すると突風が巻き起こり龍牙の行く手を阻んだ。
龍牙「ちっ、これじゃあ進めねぇ。」
ハーピー「そんなに焦らなくても、君も後でちゃんと集落のみんなと子作りさせてあげるよ。」
ハーピーが一瞬龍牙に意識を向けた。今は腕を封じられていないからチャンスだ。
ルカ「やあっ!」
ハーピー「ひゃあ!」
不意に受けた攻撃はかなり効いたらしく、ハーピーは弱っているように見えた。
ハーピー「き、今日のところはこれで勘弁してあげる。」
とお決まり?の台詞を言って飛び去っていった。
龍牙「今回はあんまり出番がなかったな。」
ルカ「まあそういう時もあるよ。」
おばさん「ちょっと、どうなったんだい?」
若い女性「さっきのハーピー、旅の人が追い払ったの?すごい!」
建物に逃げ込んでいた村人達が次々と広場に集まって来た。
ルカ「本当に男の人はいないのか。」
やはり村人に男の姿は無い。龍牙が戦闘前に言っていたハーピーが村の男達を連れ去ったということに現実味が沸いてきた。
老婆「ハーピーを追い払うとは、なかなか腕が立つ若者達よ。」
龍牙「あんたは?」
老婆「この村の村長の妻じゃが、村長が不在の今はわしが村長の代理を務めておる。」
アリス「ふん、子供が攫われそうになっても見捨てるような輩が村長代理か。聞いて呆れる。」
龍牙「おいおい、手厳しいな。」
アリス「一人として子供を助けようとしなかった者がいなかったのだぞ。」
アリスの言葉に村の女性達は黙って目を伏せていた。
ルカ「ちょっと言い過ぎだぞアリス。女性に魔物と戦えって言っても無理だろ。」
そういう人達のために勇者がいるんだから。
老婆「力無き我らになにが出来ようか。さて、旅人よ。お主の腕を見込んで頼みがあるのじゃが・・・」
アリス「そら来たぞ勇者サマ。予想通り、村の厄介事を押し付けようとしてるぞ。」
龍牙「バッサリ言うんだな。分かってたけど。」
老婆はムッとした顔つきになるが、アリスを無視して話を続ける。
老婆「お主達もお気付きだろうか、この村には男性が居らぬ。さっき見た通り、近隣に住むハーピーの群れが・・・」
龍牙「ああ、分かったよ村長の奥さん。みなまで言わなくていい。要は俺達がハーピーの集落に行って男達を助ければいいんだろ?」
龍牙が言葉を制し、多分老婆が頼みたかったことを先に言った。
老婆「そ、その通りじゃが引き受けてくれるのか?」
龍牙「俺はいいぜ。さっきあんまり戦えてなかったし、集落に攻め込めばもっと戦えるだろ。」
好戦的な言葉を言って龍牙頼みを引き受けた。
ルカ「ぼ、僕も引き受けます。これでも勇者なので当然の義務です!」
若い女性「ああ、旅のお方ありがとうございます。」
アリス「ふん、良かったな。このニセ勇者とその連れは魔物退治でも何でも行ってくれるようだ。一人戦闘卿がいるがな。」
龍牙「戦闘卿ってルカか?」
ルカ「いや龍牙でしょ!?」
龍牙にツッコミを入れた。まったくこんな時にボケないでよ。
龍牙「集落はどこにある?」
老婆「この村から少し東に行った森の中にあるようじゃ。」
アリス「こんな風にお前達は一体何人もの旅人をハーピーの巣へ送り込んだのだ?」
ルカ「えっ!?」
何人って?、他にも退治に行った旅人がいたのか?
若い女性「これまで七人の方がハーピー退治に向かいましたが・・・誰も帰っては来ませんでした。」
龍牙「七人か・・・」
ルカ「そんな。」
アリス「それ見ろ。龍牙が話を制したせいもあるが、この連中はそのことをすぐに言わなかった。魔物を退治してくれたらもうけもの。ダメならまた別の旅人を差し向ける。それを繰り返したせいで七人もの生贄を出してきた。」
アリスは少々イラつきながら村の女性達に言う。
アリス「余が保証しよう。ハーピーの振る舞いも目に余るものだが、貴様達も相当の悪党だ。」
村人達は反論も無く、足元に視線を向けるのみだ。
龍牙「・・・。」
龍牙が前に進み出た。
龍牙「みんな聞いてくれ。」
村の女性達に聞こえるように大きな声で言い、視線を龍牙に集める。
龍牙「確かに今の話が本当なら、ここにいる全員がアリスの言う通りの悪党ってことになる。けど・・・」
一旦言葉を区切る。
龍牙「少しでもハーピー達に立ち向かおうと思ってくれる人がいるなら・・・頼む、俺達と一緒に戦ってくれ。」
ルカ「龍牙!?まさか本当にここの人達に戦わせるの?そんなの危ないよ。」
龍牙「分かってる。」
そう言うが、龍牙は再び話し出す。
龍牙「負けるつもりは毛頭ないが、一緒に戦ってくれるだけでもとても心強い。」
龍牙の言葉の聞いた村人達は暫く沈黙していたが、やがて顔を伏せていたおばさんが不意に言った。
おばさん「あ、あたしも戦うよ!旦那は早くに病気で先立ったけど、可愛い一人息子が攫われてるんだ。もしかしたら今も生きて、
助けを求めてるかもしれない。」
老婆「しかしマーサ、それは危険じゃ!」
若い村娘「わ、私も行きます!銀髪の方のおっしゃる通りです。村が危機だというのに、私達は我が身の惜しさに旅人に押し続けてきました。黒髪の方が頼み事にも答えずにいたら私達は本当の卑怯者になってしまいます。」
若い女性「そうね・・私達の村は私達で守らないといけないのよ。」
中年女性「うん、今ようやく目が覚めたよ。これは私達の村の問題だ。」
いつの間にか村人達の意見がまとまっていく。ハーピーの集落に乗り込もういう女性は数を増し、ほぼ全員が名乗り挙げた。
老婆「しかし村の者・・・」
中年女性「村長代理。もうこんな事はやめにしましょう。」
若い女性「私達の力を合わせればきっと。」
ルカ「ちょ、ちょっと待って下さい!いくら団結したとはいえ、魔物の巣窟に突っ込んで行くのは危険ですよ!」
龍牙「ハーピーが群れで行動を起こしているなら、そいつらに命令してる司令塔がいるはずだ。そいつを倒せば混乱が起きるだろ。」
アリス「それならば、か弱い人間でも追い払うことが可能かもしれん。」
ルカ「そうか。じゃあ僕がそのボスを倒してみせる!」
僕は決意表明をすると、村人達に振り返る。
ルカ「皆さんは安全な場所で待機してて下さい。僕がボスを倒したら合図するので、一斉に突っ込むんです。」
仮に失敗しても犠牲は僕だけで済む。
龍牙「失敗したら犠牲に自分だけで・・・って考えてただろ。」
ルカ「うぇえ!?何で分かったの?」
龍牙「顔に書いてあるぞ。ったく、戦う前から負けること考えてどうすんだよ。」
龍牙が僕の頭に軽く小突いた。そうだよな、負けるだなんて考えちゃダメだ。
龍牙「よし、決まったようだな。全員で村の男達を連れ戻すぞ!」
全員「おおー!!」
龍牙の掛け声に村人全員が気合を込めた声で返した。決行は夕方にして、僕達は戦いの準備を始めた。