5000文字オーバー。つ、疲れた。
龍牙 Side
戦いの準備を整えた俺は他の皆が準備が出来たかを確認しに行く。リーダーみたいに仕切った以上、その責任はあるしな。
龍牙「準備は出来たか?」
おばさん「ああ、皆出来てるよ。」
若い女性「戦いは初めてですが、頑張ります。」
龍牙「くれぐれも無茶だけはしないでくれ。危なくなったら後は俺達に任せろ。」
ルカ「じゃあ東の森に行こう。」
俺とルカとアリス、そしてハピネス村の女性達は東の森に向かった。
若い女性「この奥です。少し先に行けばハーピーの集落があります。」
ルカ「はい、分かりました。」
龍牙「よし、行くぜ。作戦通りに頼むぞ。」
集落である以上、当然多くのハーピーがいるはず。ボスのみを撃破は厳しいだろうがやるしかない。
おばさん「ああ、気をつけなよ!危なくなったらすぐに引き返してくるんだよ。」
ルカ「もし僕達が乗り込んでる間に何かあったら、その時は各自で逃げて下さい。じゃあ行ってきます。」
アリス「おいルカ、龍牙。」
乗り込もうとした直前に、アリスに呼び止められる。
ルカ「えっ?」
アリス「戻って来いよ。こんな下らんところで魔物の餌食にはなるな。」
ルカ「・・・ああ!」
龍牙「俺がそう簡単に負けるとでも?」
アリスにはそんな軽口を言っておく。ルカも気合が入ったことだし、改めて行くか!
ルカ「ふう、何とかここまでは見つからずに来れたな。」
龍牙「アリスによれば、この時間帯はハーピー達はぐっすり眠っているらしいな。」
ハーピーの朝は早く、午前は元気に活動、昼はウトウト、夕方はぐっすり。そういう毎日らしい。なんか羨ましい気がするぞ。
ルカ「確かボスのハーピーは一番高いところにいるんだっけ?」
龍牙「そう言ってたな。おっ、あそこか?」
前方に如何にもリーダーがいそうな一番大きな樹木に立派な家があった。
ルカ「よし、行くか。」
おもむろに一歩を踏み出した時だった。
????「おねえちゃん、あそこにだれかいるよ?」
????「本当だ・・・人間みたいだね。」
・・・んっ!?
龍牙「もしかしなくても、見つかったのか?」
ルカ「・・・そうみたい。」
まだ集落に潜入して一分も経ってないぞ。だが見つかった以上騒がれる前に無力化させるしかない。
????「あー!昼間の旅人だ。」
背後からは昼間に男の子を連れ去ろうとしたハーピーがいた。
龍牙「ルカ、前方のハーピー姉妹を頼む。俺はこっちを片付ける。」
ルカ「分かった。気を付けて。」
????「えへへ、わざわざ交尾されにここまで来たのかな?」
ハーピーが舌なめずりしながらこちらに近づいてくる。
龍牙「そんな訳ないだろ。ここのリーダーにようがあって来たんだ。村の男達を助けるためにな。」
ハーピー「二人だけで?あはは、そんなの無理に決まってるよ。」
龍牙「それは、やってみないと分からないぜ。」
アダマンソードを抜き、ハーピーに突撃した。
龍牙「はぁ!!」
横薙ぎの攻撃でハーピーを攻撃するが、ハーピーは前と同じように空を飛んで回避した。
ハーピー「ははっ、おしい。それじゃあ次はこっちからいくよ。」
ハーピーは羽を何度も羽ばたかせた。何か仕掛けてきそうだったので、警戒を最大に引き上げた。
ハーピー「それぇ!!」
羽をこちらに向けて薙ぎ払った。
龍牙「っ!!」
それが攻撃であることに数瞬気付くのが遅れ、サイドステップで回避するも完全に躱し切れず、腕と胴に鋭い痛みが走る。
龍牙「ぐっ、これは・・・風の刃か?」
ハーピー「そう、私達が得意な攻撃の一つなんだよ。でもあまり傷つけるようなことはしたくないから、もう大人しく捕まってよ。」
龍牙「そういう訳にはいかないんだよな。」
とはいえあまり時間もかけていられない。出血は軽いが放置はマズイ。あいつに攻撃できるようなものがないかあたりを探した。
龍牙「やっぱりこの方法しかないか。」
近くの木に目を付け、今考えついた攻撃をするしか思いつかなかった。
龍牙「ふっ。」
一息つき覚悟を決め、全力で走り出した。
ハーピー「もう、大人しく・・・してよ!」
再び風の刃を放ってきたが、こっちはにジグザグに走っているので何とか当たらずに済んでいる。
ハーピー「アンタは空も飛べない弱い人間なんだから、抵抗なんかしないで私達のものになりなさいよ。」
三度放たれた風の刃が頬を掠り冷汗を掻いたが、目的の木まで辿り着けた。
龍牙「よっと。」
跳躍して木の枝に足を掛けて登っていく。ハーピーはすぐにこちらの意図に気づき距離を取ったが、それも当然想定済みだ。
龍牙「はぁっ!!」
思い切りハーピーに向かって跳躍し、どんどん距離を詰める。俺の攻撃手段は計算出来たみたいだが、俺の跳躍力までは流石に
計算外だったか。
ハーピー「う、嘘っ!?」
龍牙「人間は空が飛べない弱い生物だと認識しているなら・・・」
大きく振りかぶり、アダマンソードを振り下ろした。
龍牙「例外もあると付け加えとけ。」
<ガンッ>
ハーピー「うわあぁぁぁ。」
アダマンソードをまともに受けたハーピーは飛ぶ力を失い墜落していった。
龍牙「っと。」
地面に着地し、墜落したハーピーを見に行く。気を失っているだけで、特に大きな怪我は無い。
龍牙「ルカの方も終わってるだろうな。」
様子を見にさっきの場所に戻る。するとハーピー姉妹の妹の方か?姉のハーピーがやられて泣き喚いていた。あっ、ルカが逃げてきた。
龍牙「あれ放置していいのか?」
ルカ「あんな状態の姉妹にトドメなんかさせないよ。」
ルカの性格では出来ないだろうな。追いかけてくる様子はないからいいか。
ルカ「今度は見つからないようにしないと。」
龍牙「あまりゆっくりもしていられないな。」
さっきのハーピー姉妹が侵入者のことを仲間に伝える前にケリをつけないと・・・
????「私の家に何か御用でしょうか?」
背後からバサッという音と共に尋常ではない気配が感じられた。
龍牙「とうとうお出ましか。探す手間が省けた。」
ルカ「ま、まさか。」
振り返るとそこには・・・いかにもリーダーらしい立派なハーピーが立っていた。
ルカ「あんたが、ハーピーのボスなのか?」
クィーンハーピー「すべてのハーピーを束ねる長、クィーンハーピーとは私のこと。私にどのような御用でしょう?まあ、察しはついておりますが。」
龍牙「じゃあ単刀直入に言う。攫った村の男達を返して、もうこんなことはやめろ。」
ルカ「こんな事を続けたら、人と魔物の関係が壊れる一方だよ。」
ルカは剣を抜く前にまず口を開いた。交渉で事が済めばそれはそれで構わないが、これだけ強引な手段を使ってきた相手が聞く耳を持ってくれるかどうか。
クィーンハーピー「人の子よ、それは因果が逆というもの。人と魔物の関係が壊れてしまったがゆえに、我々はこのような事をせねばならないのです。」
龍牙「それはあれか・・・イリアス五戒の一つ、『魔と交わるなかれ』の事か。」
クィーンハーピー「説明する義理もなければ、あなた方の要求に応じる必要もありません。」
龍牙「交渉決裂か。」
ルカ「仕方ないよ。」
微かな希望は消え、俺達は力づくで解決するしか無くなった。命までは奪わず、ルカの剣で封印するだけだ。
クィーンハーピー「実力行使というわけですね。ならばハーピーの女王の力、その身に教えて差し上げましょう!」
クィーンハーピーは臨戦態勢に入った。相手が放つ気迫だけで分かる、これはかなりの強敵だ。けどこれは・・・
ルカ「龍牙、行くよ。」
龍牙「あ、ああ。」
クィーンハーピー「女王に剣を向けるのは大いなる罪。懲罰としての性的陵辱は免れません。この私が直々に、あなた方の精液を搾り取って差し上げましょう。」
ルカが少々ビクつきながらも、果敢に斬り込んでいった。躱されたら空に逃げる前に叩き落としてやる。
ルカ「でやっ!!」
ルカの攻撃はクィーンハーピーに当たった。ダメージがあまり見られないが、それよりも驚くことがあった。
龍牙「飛んで避けなかったのか?」
ハーピーには羽があるので空中で戦うのが当たり前だと思っていたが、どうやら女王は違うらしい。
クィーンハーピー「ハーピーの女王たる者が、そんな姑息な戦い振りを見せるとでも?」
じゃあさっき俺が倒したハーピーのは『姑息な戦い』になるな。
クィーンハーピー「まずは・・・あなたと交わりましょうか。」
龍牙「なっ!?ぐっ。」
クィーンハーピーの高速接近に反応出来ず、そのままのしかかられた。下半身は全く身動きが取れないが、腕はまだ動かせる。
クィーンハーピー「さあ、いきますよ。」
龍牙「・・・そこだ!!」
一瞬の隙を突き、アダマンソードを振るった。不意を突かれたクィーンハーピーは俺から離れた。
クィーンハーピー「成る程、一瞬の隙に攻撃を加えるとは・・・凡庸ではないようですね。では、これはどうでしょう。」
クィーンハーピーの尾羽がふわふわと舞う!そのまま微動だにせず、まるで待ち構えているようだ。
ルカ「・・・攻撃しない方がいいよね。」
龍牙「ああ、明らかに罠だろ。」
俺達は向こうの攻撃を警戒したが、尾羽が舞うのみで何かが飛んでくるという様子はない。
クィーンハーピー「なかなか慎重なのですね。」
龍牙「下手に攻撃して自滅は勘弁なんで。」
とはいえ、このまま攻撃出来ずにいたらヤバイな。さっきの傷の止血もしてない。戦闘前に布でも巻いておけばよかった。
クィーンハーピー「この手はあなた方には通用しませんね。」
尾羽を降ろし普通の状態に戻った。
クィーンハーピー「仕方がありません。この手の攻撃はあまり使いたくなかったのですが。」
そう言ったクィーンハーピーは自身の羽を何度も羽ばたかせる。・・・これは!?
龍牙「ルカ!!あの技はマズい。技が来る前に止めるぞ。」
ルカ「えっ?う、うん。」
あの羽の羽ばたかせ方は風の刃の予備動作だ。女王クラスだとその威力は想像が出来ない。
龍牙「うおぉぉぉ!!」
クィーンハーピーの胸元目掛け突きを繰り出した。
クィーンハーピー「この技をご存知のようですね。すぐに止めようとする動きまではなかなかよかったです。ですが・・・」
俺の放った突きはクィーンハーピーのバックステップで躱され、そのままつんのめってしまう。
クィーンハーピー「技の防止に焦るあまり攻撃が単調になりがちになります。」
龍牙「しまっ・・・」
つんのめった体勢からだと回避行動など出来るはずがない。そして、クィーンハーピーが羽を振り下ろした。
クィーンハーピー「・・・ごめんなさい。」
攻撃の数瞬前にクィーンハーピーからそんな謝罪の言葉を聞いた。直後風の刃が放たれ、俺とルカに襲い掛かった。
龍牙「ぐああっ!!」
ルカ「うわぁぁ!!」
鮮血が舞い、俺達は地面に倒れた。胴を中心に斬り裂かれたが、内臓までには及ばない。それでも傷の深さはさっきのハーピーよりも酷く、両腕両脚にも切り傷があった。
ルカ「う、くっ。龍牙・・・平気?」
ルカは足を俺よりも深く斬り裂かれ、立つことも出来ない様子だ。人の心配なんかしてる場合かよ。
クィーンハーピー「安心なさい。あなた方と交わった後に治療を行いますから。」
クィーンハーピーがゆっくりと俺達に近づいてきた。その瞳には何故か涙が窺えた。
龍牙「ぐっ。」
痛む体に鞭を打って立ち上がる。体に血がベトついて気持ち悪かったが、気にしている余裕はない。
クィーンハーピー「っ!!」
俺が立ち上がったことにクィーンハーピーは驚いている。だがすぐに顔を引き締め、再び羽を羽ばたかせた。
クィーンハーピー「もう降参なさい。これ以上はあなたの命に関わります。」
龍牙「生憎だが、往生際が死ぬほど悪いからよ。」
正直立っているのも辛いが、強がりは昔からしてるから癖になってしまっている。
龍牙「・・・ハーピーの女王、何をためらっている。」
クィーンハーピー「えっ?」
俺は戦いが始まってからずっと感じていた違和感について話した。
龍牙「戦いが始まってから今まで、あんたには何か迷いがあるように感じた。」
ルカ「迷い。」
龍牙「それが何かまでは分からないが、そのせいで攻撃が鈍っている感じする。ハーピーの女王クラスならさっきの風の刃で俺達を粉微塵に切り刻めたはず。だが実際受けたダメージは内臓にも及ばない切り傷程度のものだった。その前にも、あんたは攻撃をする一瞬前に謝罪の言葉を口にした。」
クィーンハーピー「・・・。」
クィーンハーピーはただ黙っていた。風の刃の予備動作も止めている。
龍牙「話をさせてくれクィーンハーピー。もし応じる気が無いなら、俺達を切り刻んで殺せ。」
クィーンハーピーは静かに羽を降ろし、臨戦態勢を解いた。
クィーンハーピー「私はもう・・・あなた方を傷つけることなど出来ません。」
相手の降参により、俺達は何とか勝利することが出来た。正直喜べないズルい勝利だけどな。