ルカ Side
ルカ「不思議な村だったな。」
エンリカを出た僕達は次の目的地であるイリアスポートに向かっている。エンリカについて気になることはあるが、僕のことを知っていたミカエラという女性・・・あの人から話を聞くことが出来るまで待とう。
アリス「どういう事だ?あの村は一体・・・」
龍牙「アリス、今はあまり深く考えても分からないぞ。今は目先のことだけ考えた方がいい。」
アリス「それも、そうだな。何にしてもあの村では御馳走も期待できんだろう。結局は無駄足だったな。」」
結局こいつは食べ物の事か。ともかくこの一件はここまでだ。さて、イリアスポートへ向かおう。
龍牙 Side
ルカの話ではイリアス大陸にはイリアスの加護が満ちているらしいから魔物は多くないらしい。だが、北に向かうに連れて出現する魔物も強力になるようだ。俺としては手応えのある魔物と戦えるならむしろ大歓迎だ。
龍牙「おっと、早速ご登場か。」
前方に上半身裸で下半身にヒルみたいな触手が口についた体をした魔物が現れた。
ヒル娘「旅人?洗礼を受けていないのね。おいしそう。」
龍牙「またにゅるにゅるした奴かよ。」
あんな口に咥えられたら一溜りもない。やるなら速攻でいくぞ。
龍牙「ルカ、大技で一気にあいつを削るぞ。」
ルカ「分かった。」
ルカと二人で駆け出し、それぞれ技の体勢に入る。ルカが魔剣・首狩りを当てて怯んだところを一気に叩く。
ルカ「魔剣・首狩り!!」
ヒル娘「くっ。」
思った通り、相手は怯んで大きな隙が出来た。後は俺が打ち込んで終わらせる。
龍牙「斬首!!」
横薙ぎでアダマンソードを相手の首に当てる。本来は普通の剣で相手の頸動脈を斬り裂く技だが、魔物を殺せない以上あまり使う機会が無かった。だがアダマンソードを入手してからは使う機会が出来、こうして打ち込むことができるようになった。
といっても、首の骨を破壊しないように配慮は多少いるが。
龍牙「ルカ、トドメを刺せ。」
ルカ「うおぉぉぉ!!」
全速力で駆け出し、ヒル娘に近づいていく。ヒル娘はただではやられまいと口をルカに向けて捕食しようとする。
ルカ「遅い!!」
横に飛んで回避し、突きを繰り出した。ルカの攻撃は見事命中し、撃破に成功した。
ヒル娘「そ、そんな。」
ヒル娘は小さなヒルの姿にされ、一目散に逃げて行った。
アリス「やれやれ、片付いたようだな。」
いつの間にかアリスが側で立っていた。今ではアリスが消えることがデフォルトになってきてるな。
ルカ「僕も少しはやるようになったかな?」
アリス「どこかだ、ドアホめ。何なのだ、あのヒョロヒョロな突きは?」
ルカ「えっ?自分では疾風のような突きだと思ってたけど。龍牙どう思う?」
龍牙「別に普通の突きに感じたが?」
アリス「やれやれ。」
ルカ「ところで僕達が戦ってる間に何してるんだ?」
それは確かに気になるな。
アリス「んっ?辺りをうろついたり、おやつを食べたり、虫を捕まえたり、色々だな。」
それって結局のところ暇ってことだよな。というよりいつの間におやつなんか買ったんだよ、俺にもよこせ。
辺りが暗くなってきたところで俺達は野営に入る。ルカは500年前の勇者ハインリヒの物語を俺とアリスに聞かせている。アリスはくだらなそうにしながら肉をかじっている。まあ魔族に昔の魔王を退治された話なんか聞いて面白いはずがない。
アリス「まあハインリヒに倒された当時の魔王は決して褒められるべき者ではなかったがな。支配欲のままに力を振るい、多大な破壊と混乱をもたらした。人間の勇者に倒されたとて、自業自得かもしれん。」
龍牙「以外と厳しいな。同じ魔族だろ?」
アリス「力で他者を支配しようなど、野蛮な行為だろうが。蛮行には相応の報いがある。」
ルカ「確かにそうだね。だとしたら、今の魔王はどうなんだろう?」
確かにルカとしては気になるよな。けど、当代の魔王の正体を知ってる俺としてはこのことを伝えるべきか迷っている。下手に話して今までの関係を壊してしまうのは嫌だ。
ルカ「『レミナの虐殺』もその魔王の指示って話だろうし。やっぱり酷い奴なのかな?アリスはどう思う?」
ここで本人にそれを聞くか。知らないとはいえ、そんなことを言われると辛いんじゃないか。
アリス「さあな。ただ、魔王は迷っているのだ。人間を滅ぼすべき存在なのかどうか。」
ルカ「アリス、魔王を知っているのか?」
アリス「ああ、魔王なら知っているぞ。案外貴様の近くにいてな。」
ルカ「?」
本気で分かっていない様子のルカに苦笑いしつつ、そろそろ鍛錬をするため立ち上がる。
龍牙「じゃあ俺はその辺で鍛錬してくる。終わったらそっちに行く。アリス、また剣の稽古頼むわ。」
アリス「分かった。」
一旦別れ、俺はいつもしている筋トレと剣の素振りを行った。
自分の鍛錬を終えて二人の元へ戻った俺は、アリスから突きの剣技を教えて貰う。アリス曰くルカの突きがあまりになってなかったらしい。
アリス「そうだ、上半身を安定させろ。踏み込みは深く、体の上下動は控えるのだ。」
ルカ「こ、こうかな?」
龍牙「はぁ!!」
駿足で踏み込み、素早く突きを繰り出した。これなら使えそうだ。
アリス「ふむ、一応形は覚えたようだな。後は実戦でモノにするといい。」
ルカ「ありがとう。凄い技だよ、これ。」
アリス「疾風の魔剣を使いこなしたという『血塗れのフェルナンデス』が得意とした血裂雷鳴突き。この技によって大地に撒かれた敵達の血は、大きな湖となるほどだったらしい。」
龍牙「うわぁ、泳ぎたくねぇ。」
ルカ「いや、感想そこじゃないでしょ!?」
ルカのツッコミをスルーしつつ、俺はこの技に応用を掛けれないか考えてみる。
アリス「どうだ龍牙。何かオリジナルの技を思いつきそうか?」
龍牙「今考えてるが、どうもこれだけじゃ難しいな。」
アリス「ふむ、それでは少し早いが魔力制御の鍛錬も行うか?」
ルカ「魔力制御?」
龍牙「それって俺達みたいな普通の人間でも使えるのか?」
アリス「ああ、魔力は何も魔族だけが使えるというものではない。ただの人間にも宿っているから使い方を知らないだけだ。魔力を使いこなせることが出来れば簡単な魔法くらいなら打ち出したりすることも出来る。」
龍牙「面白そうだな。じゃあよろしく頼む。」
ルカ「お、お願いします。」
急遽行われた魔力制御の鍛錬をアリスに教えて貰うことになった。
アリス「まずは魔力がどういうものなのかを体で感じ取るところからだ。まず余の掌に魔力を集める。そのあとお前達の体に纏わせて、魔力を感じてもらう。」
ルカ「わ、分かった。」
龍牙「了解。」
そう言うとアリスは掌に力を込めた。するとアリスの掌の周りだけ景色が歪んで見えた。
アリス「いくぞ。」
アリスは俺とルカにそれぞれ触れた。その時、体全体に違和感が感じる。
ルカ「うっ、なに・・・これ。」
龍牙「これが・・・魔力か。」
アリス「個人に差が出ると思うが、体が重い感じがするだろう。」
アリスの言う通り、体がすごく重い感じがする。言葉ではうまく言えないが、とにかく辛い。
アリス「余が与えた魔力はまだ微弱なものだが、魔力耐性が無いものはこれだけで気絶してしまう者もいるらしい。つまり貴様らは多少は耐性があり、魔力を制御する見込みもある。」
光栄な話だが、そろそろ本当にヤバイ。と思っていたら、急に体が楽になった。
ルカ「はぁはぁ。あ、あれ?急に体が・・・」
アリス「余が与えた魔力が切れたのだ。どうする、もうやめておくか?」
龍牙「・・・少しだけさっきよりも弱めてくれ。」
ルカ「僕は・・・少し休憩してからで。」
その後鍛錬は続けたが、あまり結果は得られず、疲れた俺達は深い眠りについた。