<龍牙 side>
ルカ「ごちそうさま~!」
龍牙「ごっそさん。」
アリス「ふむ、塩無しでも意外と美味かったな。大したものだ。」
今日の夕食は、パン、味付けの薄い卵焼き、野草サラダだ。アリスの言う通り塩無し
でも美味かった。ルカは嬉しがっていた。
アリス「剣の腕も良ければ良いのだがな・・・」
そこで評価を落とすのかよ。
アリス「ところで・・・そのへっぽこ剣技はどこで教わったのだ?あまりにも酷くて見ていられないのだが。」
アリスが容赦無い事をルカに聞いてきた。
ルカ「何を言うんだよ、アリス。僕はもう五年以上も剣の特訓をしたんだぞ。」
アリス「五年も剣の修行をしながら、あのへっぽこぶりか。一体どんな修行をしていたのだ?」
ルカ「イリアス神殿を訪れる冒険者の人達から剣技を教わったんだ。それを自分流にミックスやアレンジして・・・」
アリス「雑魚同然の連中に教わった雑魚技など、ミックスしようがアレンジしようが結局は雑魚技にしかならんぞ。」
ルカ、言っちゃ悪いが五年でアレは酷いぞ。大丈夫なのかその冒険者?
アリス「ちなみに龍牙。貴様は何時くらいから剣術を始めた?」
今度は俺か。ここは素直に言うか。
龍牙「大体一年前くらいかな。と言っても誰かに教えて貰ったわけじゃないから、完全に我流だが。」
ルカ「えっ!?」
アリス「まあ一年なら多少下手でも可笑しくはないだろう。」
やはり下手に見えたか。自分でもそれは分かっているので落胆など特に無い。これから強くなる予定だし。
アリス「少しばかり余が稽古をつけてやる。」
ルカ「いいよ、稽古なんて・・・それに魔族に剣を教わるなんてのも。」
アリス「それは、魔族に対する差別か?人と魔物の共存を口にする貴様が魔族の剣を使いたくないと。」
ルカ「いや、そんなことは・・・じゃあお願いしようかな。旅に差し支えない程度に、夕食後の数時間くらいだけど。」
アリス「よし、いいだろう。余は貴様等の味方ではないが、簡単にモンスターの餌食にされたは面白くない。せいぜい、モノになるよう鍛えてやろう。」
どうやら決まったようだな。さてと、俺もそろそろ鍛錬するか。
ルカ「あれ、龍牙はアリスに教わらないの?」
龍牙「ちょっと自分の鍛錬がしたいからな。一時間くらい経ったらそっちに行く。」
アリス「分かった。」
ルカとアリスと別れ、俺は森の中に入っていった。
龍牙「この辺でいいか。」
少し離れた場所まで来て、剣を地面に置き自分が欠かさずやっている筋トレをする。
龍牙「1、2、3、4・・・」
腕立て伏せ10×10回、腹筋10×10回、木を利用して片手懸垂右10×5回、左10×5回、スクワット10×10をやる。
龍牙「せいっ!はっ!」
そのあと剣を持ち、素振りを300回程やった。
龍牙「はぁ、疲れた。」
剣を持ったまま草むらに寝っ転がり休憩する。やっぱりもう少し体力が欲しいな。
龍牙「久々に技の練習でもするか。」
数分休んだ後立ち上がり、高さが低くて細い木を見つけた。この技を練習するにはこれくらいが一番だ。
龍牙「よしっ。」
木から離れた後、全力で走り出し、思い切りジャンプする。
龍牙「兜割り!」
落下と同時に剣を全力で振り下ろした。木は真上から地面まで一気に斬られ真っ二つになる。途中で勢いが死にそうになったが、力を更に加えることで斬ることができた。
龍牙「いい時間だな。そろそろルカの所に戻るか。」
剣を鞘に戻し、野営地まで戻った。
龍牙「おっ、やってるな。どうだ調子は?」
ルカ達に鍛錬の様子を聞いてみた。
ルカ「あっ、おかえり龍牙。稽古はまずまずかな。」
まずまずか。ダメという訳ではなさそうなので安心した。
アリス「それでは貴様も稽古に加われ。」
龍牙「よし、よろしく頼むぜアリス。」
俺達はその後1、2時間程アリスから稽古を受けた。
アリス「そう、そこを足のバネを用いて斬り上げるのだ。剣は決して腕力のみで
扱うものではない。」
ルカ「こ、こうかな?」
龍牙「はぁっ!!」
アリス「ふむ、なかなか形になっているようだな。」
アリスの言われた通りにやると、確かにこの技は腕力をそこまで必要としない。
アリス「魔剣・首狩り。その技はルカのような小さな体格の剣士に最適な剣技だ。
敵の懐に潜り込んで喉元を掻き斬る秘技。ダークエルフの妖剣士ザックスは、その
技で人間百人の首を斬り落としたという話だ。」
龍牙「へぇ、そうなのか。」
ルカ「いやいや、もう少し勇者らしい技を教えて欲しいんだけど。ていうか龍牙は
そんな簡単に流したらダメだよ。」
アリス「贅沢言うな。選り好みできる立場か貴様は。」
ルカ「そ、そうだけど・・・勇者としてのイメージが」
まあ、仮に勇者が「喰らえ、魔王剣!!」みたいなことを言ってたら、お前本当に勇者か?と疑いたくなるような感じなんだろう。
アリス「うるさい、ではさっそく実技だ!」
ルカ「ええっ!?」
アリスは強引に実技を始めてしまう。これって俺も参加だよな。
龍牙「順番回ってくるまで休むか。」
俺は地面に腰を下ろし、ルカの実技が終わるのを待った。
龍牙「・・・。」
数分後にルカが戻ってきて、俺は立ち上がり、アリスのところへ行った。
アリス「よし、では余が教えた魔剣・首狩りを打ってみろ。」
龍牙「分かった。」
稽古通りの動きでアリスに技を繰り出す。しかし、いとも簡単に避けられてしまう。
アリス「動きはいいが、まだ遅いな。」
龍牙「厳しいことで。」
避けられつつも、俺は技をアリスに何度か繰り出す。
アリス「もういい時間だな。では今晩の特訓はこれで終わりに・・・」
龍牙「あっと、悪いちょっと待ってくれ。」
アリス「どうした?」
龍牙「最後に一つだけ技を見て欲しいんだが。今日の特訓で教わった魔剣・首狩りがベースの技だ。」
アリス「ほう、では見せてみろ。」
剣を構え、踏み込んで懐へ潜り込む。魔剣・首狩りはここで剣を喉元に突くところだ。
龍牙「はっ!」
アリス「むっ!?」
だが、剣を突きではなく真横に振った。これもアリスに避けられてしまうが、魔剣。首狩りとは違う動きだったためか、さっきよりは余裕はなかった。
アリス「なるほど、狙う場所の違いか。なかなかえげつない技を編み出したものだ。」
龍牙「まあな。腕力をあまり使わないところや懐に飛び込むところは同じだが、違う点は狙いが喉元ではなく頸動脈を切り裂く点だ。まともに喰らったら即失血多量、最悪首が吹っ飛んで死んじまうから、自分の命が危ない時以外は使わないつもりだし。」
ルカの魔物との共存計画で魔物をそう易々殺すわけにはいかないしな。
ルカ「随分怖い技を思いつくね。」
アリス「ふっ、面白いやつだな。貴様は魔族に向いているかもな。」
龍牙「人間だ俺は。」
ルカ「技の名前とかはあるの?」
龍牙「そうだな。シンプルに『斬首』とつけるか。」
そんな会話をしながら、今日の特訓は終了した。
ルカ「アリス、寝袋は使わないのか?」
アリス「余はそんな窮屈なものなどいらん。これでいい。」
アリスは側の木にぎちぎちと巻き付いた。あの体制は寝にくそうだな。俺とルカは
自分の寝袋に潜り込んだ。
アリス「ところで、ルカ。その指輪はどういう由来のものなのだ?」
ふと、アリスはルカの指輪について聞いてきた。確かに少し気になるな。
ルカ「アリス、これは食べちゃいけないよ。」
アリス「貴様、余を何だと思っているのだ?」
龍牙「腹ペコ妖魔とか?」
アリス「ドアホめ。その指輪から微かな思念を感じるのだ。それと、龍牙からも同じ
ような思念が感じるのだが。」
龍牙「これのことか?」
胸ポケットからルカから渡された宝玉を取り出す。
ルカ「微かな思念?何なのかは知らないけど、この指輪と宝玉は母さんの形見だよ。
母さんは十年前に流行り病で死んだんだ。」
アリス「そうか、それは辛かったな。」
ルカ「えっ?ああ、うん。」
ルカは意外そう顔をしてアリスを見ていた。俺も正直少し驚いている。アイツがそんな
言葉を言うなんてな。
アリス「父親はどうしたのだ?まだ健在なのか?」
ルカ「いや、母さんより前に死んだよ。」
アリス「ふっ、分かったぞ。貴様の妙な使命感は父の背を追っているものだ。貴様の
父は勇者で魔王討伐に旅立ったが帰って来なかった。だから父の遺志を継いで勇者に
なろうとした・・・というところか?
ルカ「悪いけどまるで見当外れだよ。」
ルカの言葉に俺は驚く。何だか穏やかではない雰囲気だな。
ルカ「あいつは、自業自得の死に方をしたんだ。」
龍牙「自業自得?」
アリス「なにやら尋常ではないな。お花畑のような思考を持つ貴様にしては随分な
言い方だな。」
ルカ「僕のことはもういいだろ。それよりもアリスはどうなんだ?僕につきまとって
何がしたいんだ?」
アリス「余は、その・・・魔族の中でも由緒正しいフェイタルベルン家の一人娘。しかし、少々世の中というものが見たくなってな。つい先日旅にでた次第だ。」
アリスの目が一瞬泳いだのは気のせいか?
ルカ「本当に?まさかお前は魔王の腹心で人間の町村を下調べして、いずれは一気に
攻め滅ぼすために・・・」
アリス「そういう考えも面白いな。」
龍牙「おいおい、やめとけよ。」
アリス「見よ、この書物を!これは貴様たち人間の町や村、地理や環境を調べ尽くした禁断の書!我々魔族は貴様等のことをここまで把握しているのだ!」
ルカ「あ、これ旅行ギルド『ワールドトラベラー』の観光ガイドだ。」
龍牙「魔族なんもやってねぇじゃん!?」
ルカ「しかもヨハネス暦867年版!?500年も前のものじゃないか。」
アリス「む、少々古かったか。」
少々なんてレベルじゃないだろ。このガイドに載ってる町村の半分はないかもしれないんだぞ。
アリス「先に言っておくが、売らんぞ。」
ルカ「分かってるよ。ふぁぁ・・・今日は疲れたから寝るよ。おやすみ、アリス、龍牙。」
アリス「ああ。」
龍牙「ああ、おやすみ。羊が・・・ぐー。」
ルカ「寝るの早っ!?」
魔族の技からオリジナルの技を入れてみました。
他にも増やそうかなと思っています。
ではまた。