ルカ side
????「ルカ・・・勇者ルカ。」
ルカ「う・・・ん。」
どこからか僕を呼ぶ声がする。これって前にも・・・と思っていると目の前に
何者かが現れた。その人は・・・
ルカ「イ、イリアス様!?」
イリアス「ルカ、あなたは洗礼を受けていない祝福されざる勇者です。しかし、恐れることはありません。」
ルカ「それは・・・どういうことですか?」
疑問を持った僕はイリアス様に尋ねる。
イリアス「あなたには覇山龍牙という心強い味方がいます。忘れないで下さい。あなたは決して一人ではないと。」
ルカ「イリアス・・・様。」
イリアス「洗礼など無くとも、あなた達ならきっとどのような困難も打ち破れると・・・私は信じてます。」
ルカ「あ、ありがとうございます。」
イリアス「ルカ、祝福されざる勇者よ。私はいつでもあなた達を見守っていますよ。」
ルカ「イ、イリアス様ぁ!」
龍牙「うわ、びっくりした。バネ細工かお前は?」
ルカ「あ、ごめん。もう起きてたんだ。」
今のは夢だったのか?いや、ただの夢であるはずがない。昨日のようにイリアス様が
語りかけて下さった。あの言葉は本当にありがたい話だ。
ルカ「よし!やるぞぉ!!」
龍牙「どうしたんだ、ルカの奴?」
アリス「なんだ、朝から騒々しい奴だ。」
木に絡みついたまま、アリスは寝ぼけ眼を擦る。
アリス「まあいい、とりあえず朝食にしてくれ。」
ルカ「・・・。」
こいつは朝から晩までメシの事ばかりだな。まあいいけど。
ルカ「ごちそうさまでした~!」
龍牙「ごっそさん。」
アリス「ふむ、ごちそうさま。」
こうして僕たちは朝食を終える。メニューはパンにサラダ、目玉焼き。これで手持ちの食材は使い切り、残るはほしにくのみ。今日の昼はほしにくで乗り切り、夕方にイリアスベルクに到着。そこで宿を取り、一晩過ごし、食材も買い入れる。問題なし。
ルカ「イリアス様、今日もお恵みありがとうございます。」
朝食後のお祈りも忘れない。今日という素晴らしい日をイリアス様に感謝だ。
アリス「いきなり何だ?辛気くさい奴だな。」
ルカ「なんだも何も、イリアス様に感謝をお伝えしてるんだよ。イリアス五戒には
『神に祈りを怠るなかれ』というのがあるんだ。」
アリス「五戒?イリアスも下らないものを押し付けるのが好きな奴だ。そのようなものをありがたがるとは、人間も人間よ。そんなに神の奴隷でいたいのか?」
龍牙「おいおい、どえらい言い方だな。魔物のお前なら嫌うのは分かるが、人間がそんなこと言ったら天罰確定だぞ。」
うん、僕もそう思う。昨日からの言動から分かったことが、アリスはイリアス様が大嫌いらしい。
アリス「そもそも、イリアスは魔物を忌み嫌っているではないか。それでは貴様が信念と矛盾せんのか?」
ルカ「それは、そうだけど・・・」
龍牙「何かイリアスなりに考えがあるのかもな。」
龍牙の言う通り、僕もそう思いたい。けど、魔物と姦淫した者をイリアス様は決して許さない。イリアス様は人間には分からない深い理由をお持ちなのだろう。
アリス「だいたい、何が魔姦の禁だ。ほとんどの魔物は人間の男と交わらないと繁殖できん。つまり魔物の数だけ魔姦の禁を破ったことになるぞ。」
ルカ・龍牙「ああ、確かに(な)。」
アリス「今頃気付いたのか?ドアホめ。」
龍牙「となると、魔姦の禁を破らないと魔物達は子孫を残せずに絶滅する。そうなるとルカの目指す魔物と人間の共存が出来なくなる。」
僕は今更知った事実を受け、思考が停止してしまう。
ルカ「・・・きっと、イリアス様には深い考えがおありなんだ。とても僕らじゃわからない考えが。」
アリス「やれやれ。ドアホにとって神はとても便利だな。」
まあ、この話は置いとくとして。
ルカ「そろそろ行こう。あまりのんびりしてたらイリアスベルクに着くのが夜になるよ。」
龍牙「そいつは御免だ。早く行こう。」
アリス「ふむ、そうだな。」
こうして僕は野営の後片付けを龍牙とし、再び旅路を行くのだった。
イリアスベルクまでは歩いて約一日。この調子なら夕方には到着するはずだ。
ルカ「イリアスベルクには数年前に一度だけ行ったことがあるんだよ。とても大きな町
だったなぁ。」
龍牙「へぇ、そうなのか。」
その時がこれまでの遠出記録でもある。あの時は馬車だったので魔物に襲われずに済んだのだ。
ルカ「大通りには人がいっぱいで、商人や冒険者で賑わってて・・・店には色んな物が売ってるんだよ。今から楽しみだなぁ。」
アリス「ああ、余も楽しみだ。くくっ。」
龍牙「ほぅ、それは意外だ。」
アリス「イリアスベルクの老舗宿『サザーランド』では、『ハピネス蜜をたっぷり使ったあまあまだんご』が名物だという。いかなるグルメも舌鼓を打つという妙味、しかと味わいたいものだ。」
アリスが楽しみと聞いて薄々予想できたが、やっぱり食べ物のことだった。しかもそれは五百年前の旅行ガイドの情報のはず。
ルカ「五百年も前のことなんだから、今もその宿があるかは分からないぞ。」
アリス「たかだか五百年前ではないか。今もあるに決まっているさ。」
龍牙「俺個人としてはあってほしいな。アリスのいう『あまあまだんご』を食ってみたいしな。」
・・・僕は人と魔物が共存できると信じているが、この時間間隔の差を埋めるのは難しそうだ。
ルカ「んっ?」
道の真ん中に・・・何か妙なものがある。
龍牙「なんだこれ?葉っぱ・・・にしてはデカいな。」
植物のようだが、よく見るとぴこぴこ動いて得体が知れない。
ルカ「これって何だと思うアリス・・・あれ?」
龍牙「どうした?」
ルカ「アリスがまたどこかに行っちゃったんだ。」
龍牙「またか。たぶんその辺で食えそうな木の実でも探してるんじゃないか?」
まああれでも上級の妖魔。迷子になどなるはずだろう。それより、目の前のヘンテコな物の方が気になってしまう。
ルカ「どうしよう、抜いてみる?」
龍牙「そうだな。俺は正直気になる。」
ルカ「僕もどうしても気になるから引っこ抜こう。」
僕はその葉っぱを掴み、思い切り引き抜いた。
????「い や ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ・・・」
ルカ「えっ?」
龍牙「なっ!?」
悲鳴のような変な声が周囲に響き渡る。それを聞いた瞬間、突然体が麻痺してしまった。近くにいた龍牙も麻痺している。僕が引っこ抜いたのはなんと・・・
マンドラゴラ娘「もう、何すんのよ~!せっかくのんぶり寝てたのに~!」
ルカ「ごめんなさい・・・って、体が動かない。なに・・・これ」
龍牙「さっきの悲鳴のせいか。体が・・・思うよう・・・動かん。」
妙なことに、尻餅を着いた体勢のまま動けなくなってしまった。龍牙も立ってはいるが体が動かない様子だ。
マンドラゴラ娘「そりゃ、私の悲鳴を聞いちゃったからね。心臓の弱い人間なら死ぬこともあるのよ?そこのお兄さんも立っていられるだけでもすごいものよ。」
そう言って、マンドラゴラ娘は僕たちをまじまじと眺めた。
マンドラゴラ娘「じゃあ・・・また暫く寝るとするわ。長く眠れるだけの養分補給を済ませてからね。」
ルカ「補給って・・・まさか!?」
マンドラゴラ娘「もちろん、あなた達の精液よ。たっぷり吸い取ってあげるから、覚悟しなさ・・・」
龍牙「ま、待って・・・くれ。」
有無を言わさず、マンドラゴラ娘は襲い掛かってくる前に、何と龍牙がフラフラとだがマンドラゴラ娘の近くまで歩いていた。
マンドラゴラ娘「えっ!?うそっ!?なんで私の悲鳴を聞いて動けるのよ!!」
龍牙「はぁはぁ、まさか魔物だったとは・・・知らなかったんだ。ホントにすまん。」
龍牙から多量の汗が流れている。きっと無茶をしているんだ。
ルカ「僕からも・・・本当・・・ごめんなさい。」
マンドラゴラ娘「じ、じゃあ何で私を起こしたのよ。」
龍牙「それは・・・」
龍牙は言いよどむが、僕は今思った事だが、正直な気持ちを言う。
ルカ「道の真ん中・・・にいたら、もしかしたら・・・気付かず誰かが踏んづけちゃうかもと・・・思って。今思うと声をかけてみるなり・・・普通に起こせば良かったのに。」
マンドラゴラ娘「それって。」
龍牙「ルカはお前の事を心配したんだよ。」
マンドラゴラ娘「そ、そうなんだ。」
マンドラゴラ娘の顔が少し赤くなったように見えたのは気のせいかな。
マンドラゴラ娘「まあ今回は許してあげるけど、次やったら本当に精液吸い取るからね。」
龍牙「ああ、肝に銘じるよ。」
マンドラゴラ娘「それじゃあ私は別の場所で寝るわ。」
ルカ「あっ、ちょっと待って。」
体の痺れが切れてきたので、何とか立ち上がり鞄から飲み水を出す。
ルカ「栄養の足しになるか分からないけど。せめてものお詫びで。」
マンドラゴラ娘「あら、ありがと。でも水よりもあなたの精液の方が嬉しいかな。」
ルカ「ええっ!?」
マンドラゴラ娘「ふふっ、冗談よ。水は葉っぱにかけてくれればいいから。」
僕は水筒の蓋を開けて水をかけた。マンドラゴラ娘は「ん~♪」と気持ちよさそうにしていた。
マンドラゴラ娘「それじゃあね。」
そう言ってマンドラゴラ娘は地面の中へ潜っていった。
龍牙「ああ驚いた。まさか魔物だとは。」
ルカ「うん、不審なものには今後注意が必要だね。」
アリス「全く、無茶をするものだ。」
またいつの間にかアリスが現れた。
ルカ「アリス、どこに行ってたんだ?」
アリス「もし戦闘が起きる可能性があれば、姿を隠す事にしている。余は貴様等の手助けはせんと言っただろう。」
龍牙「ああそうか。立場の問題もあるって言ってたな。」
アリス「しかし、大人しく眠っていたマンドラゴラ娘を起こすとは。敵意がない魔物にまでちょっかいをかけるやつなのか貴様は?」
ルカ「うっ、今回は僕の失態だよ。次からは気を付けるさ。」
龍牙「まあ和解はできたし、もういいだろ。」
大人しく暮らしている魔物なら、下手に刺激しないようにしないと。当座の目的地のイリアスベルクまであと少し。僕たちは北へと進んだのだった。
マンドラゴラ娘のところは、葉っぱを引っこ抜くが戦闘にはならないという感じで
書いてみました。