お、俺は悪くねぇっ!俺は悪くねぇぇぇ!!
統制機構が衛士の育成を目的として設立された士官学校。
第十五階層都市"トリフネ"別名"学園都市"に様々な地域から生徒が集まり、勉学を学んでいる。
とある教室で五人の美少女が昼食を食べていた。
「ねぇねぇ、皆はさぁ、先輩のことどう思ってるの?」
彼女の名前は、マコト=ナナヤ。
リス系亜人種の少女で、明るく元気いっぱい、人見知りもせず親切、噂話の大好きな今時の女の子。制服の上からでも分かるぐらい胸は大きい。
マコトがスプーンを咥えながら目の前の友人たちに話しかけている。
「マコト、スプーンを咥えながら話さないの、はしたないわよ」
彼女の名前は、ツバキ=ヤヨイ。
十二宗家"ヤヨイ家"の女性であり、誰とでも分け隔てなく気さくに接する心優しい女性。スタイルは良い方である。
ツバキは慎みがなかったマコトに注意していた。委員長タイプのしっかり者であった。
「お兄ちゃん? 勿論、好きだよ」
彼女の名前は、ノエル=ヴァーミリオン。
寂しがり屋で、人見知りが激しく、親しい人間関係を築くのが苦手な性格である。二人に比べて胸は小さい。
あと料理が物凄い下手であり、ポイズンクッキングの使い手、デスディナーなど言われている。
先輩と呼ばれる人物には、小さな頃に出会っており、その頃から"お兄ちゃん"と呼び慕っている。
マコトの質問に当然のように答えたノエル。
「うーん、友達かな(私が男性だった時の唯一の友達だったしね)」
彼女の名前は、マイ=ナツメ。
とある事情で男から女になってしまった人物。
女性になった時に"超味覚"という、舐めたモノの想い、生きていた時の声、料理を作った人の想いが感じ取れる能力を得てしまった。この能力のせいで、ほとんどまともに食事ができていない。だが、ノエルの料理は例外であったが。
外見は巨乳美少女であるが、だが、男だ。男性であった時の名前は、マイ=ハヅキ。十二宗家のハヅキ家の跡取りであった。
「そうですわね、マイと一緒で友達ですの(先輩とは
彼女の名前は、カジュン=ファイコット。
落ち着いた佇まいで、勉強も術式も幅広くこなす才女で、特に術式の応用力が高い模様だが、自身は器用貧乏を自称している。日々の出来事などをちゃんとノートにつけている。
そして"先輩"と何かしらの秘密を共有し合っている仲でもあった。
「ふーん、ノエルにマイにカジュンは分かったけどツバキは? ちなみに私も男子の中では一番の友達かな」
マコトと先輩は身体能力も高く、一緒に鍛錬したりしている仲なので非常に仲が良かった。
「ジン兄様の次に出会った男性が先輩でしたので、私も仲が良い友達と、言ったところかしら」
ツバキも先輩とは比較的よく話すし、よく一緒にいるときも多かったので、仲の良い友達の関係であった。
ツバキの言葉に出てきた"ジン"という人物は、十二宗家「キサラギ家」の次期当主であり、この士官学校の生徒会長も務めている優秀な青年だ。
「でも先輩って物凄い顔が利くよね」
「過去が過去ですからね」
「お兄ちゃんの武勇伝凄いもんね」
マコト、ツバキ、ノエルの順で喋っていた。
「"十二宗家見学事件"、"帝様にあいさつ事件"なんて先輩曰く「自分の目で見たくなった」とか言っていましたもの」
「ははは……(私ってそれで出会ったんだよね)」
カジュンの言葉にマイは苦笑いでいた。苦笑いの理由は事件のその場に居合わせていたからであった。
「十二宗家と戦闘して生き残って、最後は十二宗家筆頭"ムツキ家"現当主のカグラ=ムツキ様と帝様との会談でどうにか収まったものの……」
頬に手を置きながらため息をもらすツバキ。それを見てノエル以外が苦笑いでいて、ノエルは「流石はお兄ちゃん」と目をキラキラさせていた。
「でもさぁ、破天荒な人なのに信頼できるし、凄い好感が持てる人だよね」
マコトの言葉に静かに頷く面々。
「そうですの、細かいことに気付きますし、気遣いもできますし、文武両道で成績優秀ですし、キサラギ先輩よりモテていますのよ」
「カジュンが言ってること凄い分かる(私も思わずドキッとしたことあるしなぁー)」
「さすがはお兄ちゃんです! さすおに!」
「カジュンの言っていることは確かね」
カジュン、マイ、ノエル、ツバキは賛同の声が上がっていた。
「そういえば、最近よくツバキと先輩が一緒にいるのが多いっていう噂を聞くんだけど、どうなのツバキ?」
マコトの言葉に全員の視線がツバキに集中した。本人のツバキは手に持っていた箸の動きが急に止まっていた。
「え、べ、別に一緒の仕事をしているのが多いから、一緒にいるのも長いのよ」
一時的に動きが止まっていたツバキであったが、すぐに動き出し、箸でおかずを取ろうとするも取れていなかった。
明らかに動揺しているのが窺える。
「ほんとうー?、実は一緒に居たいんじゃないの?」
全員がツバキは動揺しているのを分かっていたが、マコトがそれをすぐに指摘してみせた。上手く言葉を使い。
「そ、そんなわけないでしょう……ただ――」
「ただ?」
言葉を詰まらせるツバキにノエルが聞いた。
「――少しでも長く一緒に仕事ができて、少しでも長く話せていれば、私はそれでいいの」
四人のことを見ながらツバキは本心を言っていた。
頬を薄く赤く染め、優しい笑みを浮かべて、ツバキの発した言葉から甘く感じる何かを感じ取っていたツバキ以外の四人。
そして四人の内心は一緒のことを思っていた。
"恋している表情"だと。
四人がこのことを言うべきか、言わないべきか悩んでいる中で一人だけ例外がいた。
「やっぱりツバキもお兄ちゃんのこと好きなんだね!」
ツバキの手を握りながら目をキラキラさせながらノエルが言ってきた。よくやったノエル、と見守っていた三人は親指を立てていた。
「ななな、何言ってるのよノエル!?」
「えー、じゃあ、やっぱりキサラギ先輩?」
「ジン兄様は、尊敬する方であって、決してそんな……」
ノエルの発言で戸惑いながら答えるツバキにマコトがさらに追撃を掛けた。
「じゃあ、先輩は?」
先輩、という言葉が出てきた瞬間に動かなくなってしまったツバキ。だが、すぐに立ち直り、戸惑いながらも言った。
「先輩は、その――」
ツバキが述べようとした時であった。
「おう、呼んだか、後輩たちよ」
ツバキの背後から現れた人物こそ話題になっていた先輩であった。
カジュン、マイ、マコトの三人は何てタイミングに、と驚愕し、ノエルはお兄ちゃんだ、と喜んでいた。そして――
「あ、あ、あ、あ」
急な奇襲にツバキは驚いて反応できていなかった。
「おい、ツバキ顔真っ赤だぞ、大丈夫かよ――」
ツバキの事情など知らず先輩は額と額を合わせて、熱を測ろうと行動していた。カジュンが馬鹿ぁー、と突っ込もうとした時には既に遅かった。
お互いの肌と肌が触れ合って、熱を感じている。そしてツバキの目の前には先程まで思い悩ませていた当の本人が間近にいるのだ。
この状況に耐えられるツバキではなかった。
「熱はないな、まぁー、今日はゆっくり休むんだな、っておい、ツバキ?」
離れた先輩がツバキを心配そうに覗き込んでみると、ぷしゅーー、と頭から湯気のような音をたてながら先輩に倒れてきた。
顔は真っ赤で目を回しながら気絶してしまったツバキであった。
「おーい、ツバキさんー」
「先輩、ツバキ完全にのびちゃってますよ」
「お、俺、何か悪いことしたのかよ!?」
「いえ、タイミングが悪かったのですの」
「うん、タイミングが悪かった」
「流石はお兄ちゃんです」
「おい、ノエル、俺が空気を読めない奴だと、けなしているのか」
マコト、カジュン、マイの言葉に訳が分からんと表情を曇らし、ノエルの言葉に怒る。ノエルの額にデコピンをかました。
気絶してしまったツバキを横抱きにしながらツバキが座っていた席に座った。
「あの先輩?」
「ん? なんだいマコト」
四人の前で堂々としている先輩に流石にツッコミを入れてきたマコト。
「なんで横抱きなんですか?」
「女子はコレに憧れるものなんだろう?」
「それは、そうですが」
確かに間違っていなかった答えを先輩は述べていた。
何より教室の中に居た女子生徒の視線が先輩に集中しているのが何よりの証言になっている。
「うぅ、ずるい、ツバキだけ!私もお姫様抱っこ!」
「ノエル、毎回やってあげてるんだから我慢しろ」
「え、えっと、私ツッコミ入れた方がいいのかな……?」
ノエルと先輩の会話にマイが反応していた。
「先輩、何かしら用があったのじゃありませんの?」
「そ、そうだよ、流石カジュン気付かせてくれてありがとうな」
カジュンと会話している時もツバキを横抱きにしている先輩。
「ツバキに明日のことを伝えようと思ってきたんだけどね、全くこのお姫様は」
直接ツバキに言いに来たのはいいのだが、まさかこんな状況になるとは思っていなかったようだ。
はぁ、とため息を溢しながらツバキの顔をじっくりと見ている先輩であった。
すると、彼の身体の何処からか、音が鳴り始めた。
ツバキを上手く抱えつつ、ポケットの中から連絡用の端末を取り出して、対応していた。
すぐに連絡からの会話も終わり、先輩はその場に立った。
「マコト、すまないけどツバキを頼むわ、ジンに呼ばれちゃってな」
「全然いいですよ」
ツバキをマコトに渡して、その場を後にしようとして何かを思い出した様子であった。
「危ない危ない、忘れるところだった。カジュン、紙一枚くれないか」
「はいですの」
メモ帳から一枚切り、先輩に渡したカジュン。
先輩は紙を受け取るとスラスラと何かを書いて、半分に折り、カジュンに渡した。
「これを後でツバキに渡しておいてくれ」
「何か術式をしなくてよろしいのですの?」
「別に見られて困るようなものでもないしな、読んでもいいぞ」
カジュンは了承を得て、半分に折られた紙を見た。カジュンに続いて、ノエル、マコト、マイも続いて見た。
――明日の昼過ぎに学生寮前に待ち合せ
これだけの文で女子達が思うのは一つだった。デートだということ。
「お兄ちゃんずるいよ、ツバキとだけデートなんて!」
「おいこら、勘違いするなよ、先生に頼まれている仕事だよ。毎回ツバキと一緒にこなしているからだよ」
こんな文章を書かれれば誤解するわ、とマイ、カジュン、マコトの三人は思った。
シュン、と寂しがってしまったノエルに先輩は近づいて、頭を撫でながら言う。
「分かったから、そんなに寂しそうな顔をするなよ」
「うん、じゃあ今度全員とデートしてくれる?」
「あぁ、いいぞ――ちょい待て、全員だ?」
「私、ツバキ、マコト、マイ、カジュンだよ」
『おい!?』
まさかの自分たちの意見など無視してノエルがデートの約束をしていることにツッコミを入れるマコト、マイ、カジュンであった。
「そうだな、皆可愛いし、俺は全然いいぞ」
「私は私は?」
「勿論、ノエルも可愛いぞ」
「やったぁ!」
可愛いと言われて思わず赤面してしまっていた四人がいる。
「じゃあ、ジンが待ってるから行くわ、ちゃんとその紙見せておいてくれよ」
そういうと先輩は教室から出て行ったのであった。
「えへへ、今日もお兄ちゃんに可愛いって言われた」
思いっきりデレまくっているノエルに三人が飛びかかった。
「ちょっとノエル、何を勝手にデートの約束しちゃってるの!?」
「そうですの、ワタクシたちにも事情というものがありますのよ!?」
「そうだよ、デートなんて、えぇぇ!?」
マコト、カジュン、マイの三人は珍しくテンパっていた。
急な出来事に内心で整理もつかずただただ戸惑うだけであった。
「でも可愛いって言われて嬉しかったでしょ?」
ノエルの言葉に静かに首だけ動かして頷いてみせた三人。
(えぇぇー、だって、先輩だよ……そうだよ、こう意識しちゃってるからいけないんだよ。意識しなきゃいいんだよ……でもでもよくよく考えてみると家族以外の男の子と出掛けるのって初めてじゃんっ!! あぁぁ、ますます意識しちゃうじゃん!!)
(た、確かに可愛いって言われて、不覚にもドキッとしてしまいましたわ。でもそれとこれとは話が違いますの、もしもこれが
(えぇーー、だって私男だよ! でも今は女の子だけど……それにさっき可愛いって言われて、胸の鼓動が早くなっちゃって……ってダメダメ、私は男、私は男、私は男、私は男、私は男、私は男……でも一回ぐらいなら……)
マコト、カジュン、マイが内心で悶々している中、ノエルは嬉しそうに笑みを浮かべており、ツバキは絶賛気絶中であった。
・
・
・
翌日、待ち合せ通りにツバキと先輩は一緒に仕事に取りかかっていた。
遠出して二人は行動していた。
「で、最後は授業で使う薬草の採取か」
「はい、これで最後ですね」
箱一杯に採取した薬草を詰めて帰ろうとした時であった。
空から水滴が降ってきた。
「雨か」
雨だと確認しているうちにいつの間にか突然強い雨になり、豪雨になっていた。
薬草を採取した場所から士官学校まではかなりの距離があるので、先輩が知っていた場所で雨宿りすることになった。
「先輩この場所は?」
「取り壊しが決まった民宿だよ。最近まで使われていたんだけど、老朽化が進んで壊すことになったんだよ」
運良く鍵が開いていたので二人はそこに入り、一時落ち着くことにした。
玄関から入ると、六畳一間の和室が目に映った。大きな窓、古いキッチン、クローゼットなど至ってシンプルな家であった。
「ここら辺を管理していた人が一人で住んでいたみたいだから、色々とある筈だけど……」
ずぶ濡れになってしまった二人はとりあえず上がることにした。先輩はクローゼットの中を物色し始めた。ツバキは窓から外の様子を見ていた。
「ほら、これ使ってちゃんと髪乾かせよ」
先輩がツバキに小さめのタオルと大きめのタオル渡した。流石にこのまま濡れたままだと風邪を引くだろうと思ったのだろう。
「俺もツバキもずぶ濡れだな、うーん」
「……先輩?」
お互い髪を拭いている最中、先輩は一人だけ悶々と悩んでいたのをツバキは不思議そうに見ていた。そして先輩は髪を拭き終わるとツバキに向かって言った。
「よしっ、ツバキ脱げ」
「は、はいぃぃ!?」
「だから服を脱げ」
「え、えぇぇぇー!?」
突然の言葉に大声で叫んでしまっていたツバキであった。
・
・
・
「そういうわけだから、先生達に言っておいてくれよジン」
先輩が連絡用の端末で今の状況を生徒会長であるジンに説明している。
「――」
先輩から少し離れたところでツバキが大きなタオルに包まりながら顔を真っ赤にしていた。
服を乾かそうとした先輩の親切な発言を物凄い勘違いしてしまったツバキ。先輩も先輩で言葉が悪過ぎた気もするが。
キッチンの火でどうにか服は乾かすことはできるが、火の範囲が狭いので自分たちまでは温まれずにいた。
「事情は通しておくから雨が上がったら帰ってこい、だって」
「でも雨止めそうにないですね」
ツバキは先輩から見えないように顔も体も背けて話を聞いていた。ツバキの今の状態はタオルが無ければ全裸であった。
「トリフネの空調系統の術式の調子が悪いみたいだって」
背後で話をしてくれている先輩に無意識に意識してしまっていたツバキ。先輩の方は流石に下着をつけている以外は裸であった。大きなタオルが一枚しかなかったのでツバキに使わせて、先輩は小さめのタオルを首に巻いているだけであった。
二人っきりの部屋で、裸の男女が二人、嫌でも変なことを思ってしまうツバキであった。勿論、先輩の方も。
話すこともなくなってしまって、雨の音と火の音だけが聞こえる部屋にくしゅん、と小さなくしゃみの音が響いた。発した人物は先輩であった。流石に服を脱いで、温まるものがなければ風邪も引きそうになるだろう。
ツバキは風邪を引くのでは、と心配して、顔を真っ赤にさせながらも大胆な発言をした。
「せ、先輩、あ、あの、で、ですね」
「お、おう、顔真っ赤だぞ、大丈夫か?」
「い、一緒に入りませんかッ!?」
「ちょ、おま」
ツバキの動揺から何かしら来る、と感じ取っていた先輩であったが、まさかのツバキからその発言が来るとは思っていなかったようだ。
・
・
・
最初は動揺していた先輩もツバキが顔を真っ赤にして頑張って言ってくれたのだから、ということで一緒にタオルに包まることになった。
肩と肩が触れ合うぐらい接近することになっており、密着状態であった。
(わ、わたしったら、何で、こんな恥ずかしいことしちゃってるのかしら)
顔を真っ赤にさせながら内心で落ち着かない様子であった。昨日の話が原因でやけに先輩を意識してしまっているツバキであった。
「ごめんな、ジンじゃなくて」
「え、な、何でそこでジン兄様が出てくるのですか!?」
先輩が述べた言葉に思わず大きく反応してしまったツバキ。
「え、だってツバキはジンのこと好きだろ?」
「は、はいぃぃっ!? な、何でそんなことになってるのですか!?」
「ん、ノエルがそう言ってたけど」
「ノエルゥゥゥーー!」
てへぺろってなっているノエルの顔が思わず頭に浮かんで怒り心頭になりそうになったが、状況が状況なだけにすぐに落ち着いたツバキであった。
「ジン兄様は、あ……憧れの方です!」
「憧れか」
ツバキの返答になるほど、と納得して、また静かな時間が続いたが、それもすぐに終わった。
「じゃあさぁ、俺は?」
「え」
唐突に聞かれたのに対してツバキは完全に思考が凍結してしまっていた。
(な、なんて答えればいいの、わ、分からない)
内心でまるで整理がつかずにいるツバキ。
(……先輩と一緒に仕事をするのが当たり前のようになっている、先輩を見かけるだけで目で追ってしまっていたりもする、連絡を貰うだけで嬉しくなったりしている、話しているだけで胸が暖かな気持ちになる……あ)
ツバキは、頬を赤く染めて、改めて先輩について落ち着いて気持ちの整理をしていた。
親友たちと過ごしているのもいい思い出である。だが、先輩の存在もツバキの中では日に日に大きくなっていていたのだ。さりげなく過ごしていた日常に先輩がいることが当たり前になっていたのにようやく気付いたツバキであった。
「―――っ――す」
心の内に秘めていた思いが気持ちではなく言葉となって出てきていた。
「好きです」
静かな部屋にツバキの声はハッキリと響いた。そして先輩の耳にもちゃんと届いていた。
静かな空間が支配するこの場に先輩は動いた。
「ツバキィィー!」
「きゃあ、ちょ、ちょっと先輩ッ!?」
感極まって先輩はツバキを押し倒すように抱きついた。タオルが飛び、ツバキの裸体が露わになってしまった。
「俺もツバキのこと好きだぞ」
「え、本当ですか?」
「うん、両想いだったみたいだな」
お互いに笑みを浮かべて幸せそうにしていた。ツバキの目元からは涙が流れ、先輩は照れ臭そうに頬をかいていた。
お互いの気持ちがちゃんと伝わって、叶ったのだから幸せな気持ちで胸が一杯だろう。
「ツバキ」
「先輩」
笑みを浮かべながらお互いの顔を見合い、自然な流れで顔が近づいていく。押し倒した時点で近かった顔がすぐに距離もなくなった。ツバキは目を閉じ、先輩のことを受け入れた。
「ん、ぅ……」
合わせた唇と唇の間からわずかに漏れたお互いの吐息が、やけに色気づいていて恥ずかしくなっていたツバキ。
初めてのキスが好きな人なんて幸せだ、と感じつつ唇から暖かさが消えたのをツバキは感じ取り目を開けた。
ツバキ自身も顔を真っ赤にしているに違いないが、目の前にいる先輩も顔を真っ赤にしていて自然と笑みが出てきていた。
お互いに自然と声がもれる。とても幸せだと。
もう一度と先輩がまた近づいてくるのをツバキは止めてしまっていた。
「ダメですよ、これ以上は……」
近づいてきた先輩の顔を優しく頬に触れながら制止させたツバキ。
「今は二人だけだからいいだろ」
「ですが、風紀が乱れてしまいます」
「バレなきゃいいんだよ」
「で、でも、ジン兄様にお見せする顔がありません」
ツバキの口からジンという名前が出た瞬間に先輩は無理矢理ツバキの唇を奪っていた。触れるだけのキスにツバキは抵抗しなかったが驚いていた。
「俺の目の前でジンっていうの禁止ね」
「え、な、何でですか」
「好きな女の子から他の男子の名前が出るのが、ちょっと嫌かな」
「あ」
「だからツバキが俺の前で男子の名前を言ったらオシオキね」
「ふぇ、オシオキですか!?」
「そう、一回ごとに一回のキスね」
「……」
先輩のオシオキ内容に一瞬で赤面してあわあわ、して悶えてしまっているツバキ。
「で、で、でもジン兄様は――」
「はい、オシオキ」
ツバキの口からまたジンの名前が出た瞬間に先輩はキスをしていた。口を塞ぐようにして――
「んっ……んんっ!?」
触れるだけのキスから先輩の舌がツバキの口内に入ってきた。ツバキは当然驚いて目を見開いていた。
「ん……しぇん、ぱい……」
ぬるりとした生暖かいものがツバキの口に入ってきていた。無抵抗なツバキに先輩はツバキの口内をゆっくり、ねっとりと蹂躙していく。
先輩を剥がそうとしたツバキであったが、徐々に力が抜けていき、好きなようにされていった。触れるだけのキスとは比べものにならないぐらいの深く濃厚なキスに幸福感を感じながら先輩の舌が私を蹂躙していく感覚に力が抜けていったのだ。
そして先輩の舌がツバキの舌を捉えた。
ツバキの舌は驚いて、奥の方へと逃げて行こうとするがそれを逃がさないとばかりに先輩の舌が絡まっていく。先輩が舌の表面をゆっくりと丁寧に舐めていくのをツバキは背筋に走る感覚を味わいながら徐々に受け入れてしまっていった。今までの人生で味わったことのない感覚に自分の中で何かが目覚めそうになっているツバキ。
(なんでなんで、抵抗したいのにできない、私を先輩が求めてくれてる)
トクントクントクン、心臓よい感覚にツバキは囚われていた。頭ではダメだと分かっているのに、身体が求めてしまっている、先輩をと。
「ふっ……んんっ!……」
ツバキはいつの間にか彼の全てのことを受け入れていた。優しく舌を吸い寄せられたかと思えば、逆に強く吸い付けられたり、ゆっくりだったり急だったり、優しかったり激しかったり……そんな先輩の行為をいつしかツバキは身を委ねていた。
「んっ……ん! はぁん!」
どれぐらい舌を絡め合わせていたか、二人には分からないぐらいの時間をかけていた。
先輩の舌から解放されたツバキは思わず甘い声を出してしまっていた。
そして鈍くなっている理性を目の前にいる先輩に向けたツバキ。
離れていく先輩の唇と舌の間に、キラリと光る糸が伝う。いつの間にか口内に溜まっていた先輩か私か分からない唾液がわずかに先輩の唇の端から顎を伝って零れ落ちた。ツバキは無意識に舐め取っていた。
急にツバキが扇情的な行為をしたのに先輩は内心で燻っていた何かが昂っていくのを感じていた。
「――え、わ、わたしったら、なんて淫らなことを」
自分のやったことに遅れて気付いたツバキは頬を真っ赤にさせて手で顔を隠して悶えていた。
「ツバキ」
「ふぇ」
「もっとさぁ、素直になれよ、俺には何も隠すなよ」
「……」
「好きな女に甘えて欲しいって思うのは男なら誰でも思うことだし、それに本懐だしな」
恥ずかしそうにしていたツバキに額と額をくっつけながら先輩は言った。悶えているツバキは勿論可愛いがな、と内心で思いながら。
「だからさぁ、俺だけでもさらけ出せよ、なぁ」
「……先輩」
二人とも見つめ合いながらまた自然な流れでキスをした。
お互いを確かめ合うようにキスをする。ツバキの手が先輩の首に回り、逃がさないといわんばかりに拘束していた。
イチャイチャしながらキスを何度もして過ごしていく。
先輩はキスをしながらツバキの胸を手で揉んでいた。優しく確かめるように揉んでいる。
「ん、んぁ……」
可もなく不可もない美乳を先輩は揉む。そしてキスをしていた唇を離し、そしてゆっくりと下へ下へと顔を移動させていく。ツバキの耳に甘噛みしながら、首筋、鎖骨などにキスをし、そして胸を揉みながら舐めた。
「ふぁぁ……」
少し胸を舐めただけでツバキから甘い声がもれた。
さらに揉みながら舐め、乳首を優しく吸ってみせると。
「ひぁぁぁん……」
ビクッとツバキの身体が震えたのを先輩は感じた。ツバキは軽くだがイッてしまったのだ。
息も荒く、何が起きたのか分からずにいるツバキ。
「胸の感度すごいな、ツバキ」
「ふぇへ、な、なんですか」
「敏感だねってこと、ほら」
「ひゃん」
乳首を優しくつまんだだけでツバキは甘い声を出していた。
ツバキの反応を見ながら先輩は次の行動に移っていた。胸より下に、お腹より下に手を持っていき、ツバキの秘部に触れた。
「ちょっと胸や乳首をいじられただけなのに、こんなに濡れてるぞ。ツバキってもしかして淫乱?」
「ち……違います!」
先輩がツバキの秘部を触った瞬間に秘部が物凄い濡れ濡れであった。
ツバキ自身も分かっていた。女性の大切な場所が濡れ濡れであるのを。
そして先輩は濡れ濡れの秘部を弄り始めた。
「あん、んんっ……あぁ、あん」
先輩が指で弄り始めると既に濡れていた秘部がさらに濡れ濡れになり、和室の床を汚していく。指で弄りながら先輩は胸を吸っていた。
グチョグチョ、といやらしい音が部屋に響き、ツバキの耳にも入ってきている。私がこの音を出しているんだ、と思いながら快感を感じていた。そしてツバキは自分の中で増大していく感覚に、もっともっと、と求めていた。
そんなことをツバキが思っていると、先輩が動かす指を急に止めたのだ。
(にゃんで、にゃんで……止めるの)
ツバキの内心では動かしていてほしかったようだ。
「いきそう?」
先輩はまるで分かっていたようにツバキに聞いてきた。先輩は指とツバキの表情で分かっていたのだ、ツバキがイくということを。
「イッちゃうぅぅ、イッちゃいますっ!」
正直に答えたツバキに先輩は満足し、指を動かした。さらに動きを激激しくして。
「あん、背筋から、下半身に何かくる、き、き、キちゃいます!」
「ほら、イッちゃいな」
「イクイク、イキます! ひゃあぁぁぁー……」
ツバキは最後の言葉とともに盛大に絶頂した。
先輩の手にはツバキの愛液がベットリと、そして秘部から水みたいな液体が勢いよく出てきた。いわゆる潮吹きであった。
荒い息を整えようとしているツバキであったが、身体がビクンビクン、と麻痺状態のような状況になっていた。思ったように身体も動かないし、息も落ち着かない。こんなことは初めてだと、初めての感覚に酔いしれていた。
「ごめん、ツバキ……我慢できないわ」
「はひ、な、なんですか」
ツバキは秘部に突如感じた熱に驚いた。そして首だけ動かして確認してみると、先輩の男性器が大きくなっていたのだ。
そう、それはこれから性行為をやるということにも繋がる。
「ツバキを求める気持ちが抑えられない」
「先輩……」
先輩の言葉にお腹の少し下からキュン、となるのを感じたツバキ。そうしてツバキは思った、私も先輩を欲しているのだと、そして抑えられない気持ちがキュンキュンさせているのだと。
「わ、私も先輩を感じたいです、だ、だから抱いて下さい」
「ツバキ……」
ツバキの言葉に笑みを浮かべてキスして先輩はツバキの秘部に挿入した。
「痛かったら言えよ」
「はい」
ゆっくりとツバキの秘部に先輩の肉棒が入っていく。
入れた時に血が出たが彼はゆっくりと刺し込んでいく。
「センパイセンパイ、わたし、私の中で何か変わっていきそうで怖いです」
目尻に涙がたまっているツバキは先輩にキスを求めた。首の後ろに手を回して絶対に離さないと力強くお互いを抱きしめあう。
(私の中にセンパイが、センパイが)
嬉しくもあり、怖くもあったツバキ。全てを受け入れてしまったら何もかもが変わってしまうのではないかという怖さに。
「大丈夫だ。何があろうとツバキの隣に居るから、離さないからな」
「うぅ、うん、大好きですセンパイ!」
涙を流しながらキスをする二人。
ツバキはいつの間にか引いていた痛みの次に幸福感で胸が張り裂けそうであった。幸せすぎて死ぬというのはこういうことなのか、と身をもって感じていた。
そして次に快感という波に襲われていた。
キスをしている間に先輩の肉棒が全てツバキの膣内に入っていたのだ。
「センパイ、好きなように動いていて下さい、センパイも気持ちよくなって下さい」
抱き合いながらツバキは先輩の耳元で優しく甘ったるい声を発した。普段のツバキからは考えられないぐらい甘い声であった。
言葉を言った直後にセンパイの肉棒がビクッと動くのを感じて、私で感じていてくれているんだと喜びながら、先輩が腰を動かし始めて、感じる快感にツバキは我慢せずに声を出していた。
「先輩のっ……スゴイ…ぃぃ、あんっ」
お互い息も絶え絶えになりながらも求め合っている。先輩に気持ちよくなって貰おうと先輩にキスをするツバキ。ツバキに感じてもらおうと一生懸命、膣内を蹂躙していく先輩。
「あっあっ、先輩ぃ、それダメぇ……」
先輩はツバキの子宮手前の上部を攻めていた。
「ツバキの弱点みっけ」
「あああっ……あんっあんっあんっあんっあんっ」
ツバキの弱点を重点的に攻めて彼女を気持ちよくさせていく先輩。
「その顔かわいいな」
ツバキの頬に手を置き、彼女の顔を見て先輩が言った。快感を感じている彼女の顔は先輩の中では可愛く、愛おしかった。
そしてツバキは先輩の言葉に無意識に子宮がキュンとなり、膣の締めつけを強くして応えていた。好きな人に可愛い、と言われたら嬉しいに決まっている。
(き…っきちゃう、きちゃう……イッちゃっっ、イッちゃう)
お互い快感を感じ、絶頂寸前であった。
「ツバキ一緒にイクぞ」
「ひゃい、せんぱいせんぱい、イクイクイクゥゥー」
ドビュドビュドビュドビュドビュドビュ
二人は同時に果てた。
「せんぱいせんぱいっ! でてる、せんぱいの――」
絶頂の快感とお腹の中に感じる先輩の精液の熱でツバキの理性は既に崩壊していた。本能で彼を求め、本能で彼を感じ取っていた。先輩の背中に爪をたて血が出るのもおかまいなしに強く強く抱きついていた。
ツバキが強く自分を求めていると感じると同じく強く優しく抱き返す先輩。
しばらく抱き合った状態でいたが、荒かった息も落ち着いて先輩はツバキの頬に手を当てながら一言。
「かわいいな」
酷く耳に残る言葉であり、頭の中で何度も再生され、忘れることのできない思い出になったツバキであった。
結局、雨が上がったのは翌朝であった。
二人は強く抱きしめ合いながら温め合い、互いを強く確認し合いながら眠りについていた。