――じゃあ、産まれたときの話をして?
「この流れで、なにが「じゃあ」なのか理解はできないけど…まぁいいよ。作業しながらでいいか?
産まれたのはえっと…20年くらい前かな。
洞窟? いやいや、街だね。
俺も記憶が不確かだけど、いま思い返すと親父たちに襲われた街なんだと思う。
そ。多分その街。有名なんだ。まぁ、そこ出身だね。
お袋は…こんな話キミみたいな子に話していいのかな?
わ、わかったよ、全部話すよ。
お袋は豚の人間だったよ。豚人族? へぇ。まぁ俺は豚人族とのハーフってわけ。つっても、俺の種族の特性上、俺は親父の血を色濃く引き継いじまった。
いや、たまには母親のほうに似るときもあると思うよ。だけどみんな食われるんだろうぜ。あーやだやだ。
お袋も、俺を産んですぐ食われたって言うし。
で、俺を育ててくれたのは人族の女性人。
そー! そこなんだよ、勘違いされがちなのは。
俺たちの種族だって、年がら年中エロいことしてるわけねぇのにな。狩りは男の仕事。子育ては女の仕事。乳が出なくなったら種付けするって知識はあるんだよ。
まぁ、そういう意味では年がら年中エロかったかな。
でも、人族は人気ねぇからな。
え、だっておっぱい2つしかないじゃん?
まぁキミはおっぱい自体がないみないなぎゃ、やめろ砂はやめろ。
俺を育ててくれたお袋はな、まぁ美人だったかなー。いや、まぁ、お袋補正なのかね」
――マザコンなの?
「な、なんだその嫌な響きは…。よくわからんけど否定しておくわ。
というか、俺がこうやって普通に話せるのは、そのお袋のおかげだぞ。
こんな化け物相手に頭を撫でてな。
『強い力は、周りを巻き込む。だから、皆を守るために使いなさい』
ってな。言うんだよ、毎晩毎晩。
俺以外にももう一人、そのお袋に育てられたんだが、やっぱりちゃんとしたやつに育ったね。死んだけど」
――なぜ?
「ん…まぁ、本当になんでだろうな。そのお袋を助けに来た騎士たちにな。まぁ俺たちはほとんど殺されたよ。詳しくは知らないけど、良いところの出だったんだろうね。ヒメ!って呼ばれてたよ。
俺は怪我してて動けなかったけど、お袋が連れ去られそうになったから、兄貴は一人でお袋を助けようとした。だけど、まぁ…呆気なく殺されたね。
で、騎士が言ったんだよ。
『化け物がヒメを母親と呼ぶなどとおこげが美味しい!!』
いやいや、そんなこと言うわけないだろ。ただそう聞こえてさ、騎士の怒り狂った表情を見てさ、あぁ、俺たちは汚い存在なんだなーって始めてわかったね」
――そんなことないよ。
「おお、ありがと。
人族にそう言ってもらえると、多分兄貴も救われるよ。
兄貴が死んだとき、お袋は涙を流してくれてな。無論俺だって、泣いたさ。泣きながら、体引きずって騎士に向かったよ。
でも、お袋に斬られた。
まぁ、普通はそう思うよな。お袋だって人族だ。
でも、お袋が俺を切ったのは、演技だ。
お袋は自殺用にナイフを隠し持っててな。愛する男に贈られたとかなんとか。
これ、このナイフ。
俺の宝物。で、それ以上にお袋の宝物。
このナイフで斬られて、どこへなりとも行きなさいこの化け物め! って言われたよ。
でも、俺にはこう聞こえたね。
『どこへなりとも、生きなさい』
ってな。ナイフを投げつけられた俺は、そこに取り残されて、まぁあとは一人で生きてきた。
まぁこんな身なりだ。マトモな生活なんて出来なかったけど、力だけはあったからな。俺の群れを作ろうと思ったわけだよ。
西へ東へと向かっては、強そうな化け物を片っ端から殺し回った。
そのうち体が成長してな。…いや、まぁ種族も違くなったけどさ。とにもかくにも、俺は一国一城の主になりかけたわけ。
だけど、いつからか、化け物の中でも化け物扱いされててな。
気がつけば、知能の低いやつらはみんないなくなってた。喋れる奴も少しはいたけど、襲うことしか能のないやつでな、俺が人族を避けてたことに憤慨して、みんないなくなった。
あ、これは俺が殺しただけであって、いまでもちょっと悪いことしたかなーって思ってる」
――無頼の魔王…。
「フライパンは黒? なんだよ、遠いよ。
飯の話か?
虫が好きでな。こればっかりは誰にも理解されない。俺の嫁には虫好きのやつが相応しいな。
そりゃあたまには肉も食うけどさ。
虫はまた旨くてさぁ。
あ、もういいですか。…わかったよ…。
人族も食ったことあるけどさ、お袋がやめてって言うから、それ以降食ったことねぇなー。
あ、でも人族の飯はうめぇ。人族で虫好きで俺を愛してくれるやつが…いないか…そうか」
――ねぇ、なんでお墓を作ってくれるの?
「なんで? わからん。お袋に聞いてくれ。俺は真似をしてるだけだ。本当の意味で、俺は人族を理解してるわけじゃない。
でも、穴掘ってると考えるんだよな。
そいつが、なにしかたったのかな、土被らなきゃどうなってたのかな…とかさ。
他は? 聞きたいことあるか?
ないなら、俺から質問…していいかな?
まだ、生きてるか?
人間って、なんでそんなに脆いんだろうな…。
ごめんな、なにもしてやれなくて…。
ゆっくり、休んでくれよ…」