※この作品はR-18です。

おお、我が豚よ   作:江上音

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第1章 魔王は踊る
魔王は踊る


 

 

 小柄な少女を、墓(のつもりで作った穴)へ置いて、土を被せていく。

 少女の名前すら聞いてなかったことに、落胆を覚えた。

 

『俺はウリーク。キミの名前は?』

 

 さっき少女の質問に答えてた量からすれば、その程度の言葉を加えても良かったろうに…。

 

 俺は名前に無頓着だ。お袋の名前もわからない。もしかしたら、お袋はヒメという名前なのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

 お袋は俺に名前を付けてくれた。

 なのに、彼女の名前を、俺は知らない。

 

「ごめんな…」

 

 彼女について思い出せるのは、質問をいっぱいされたこと。長い髪。馬車できてたこと。他にもいっぱい人間が死んでいたこと。

 全員の墓を作り終わったら、彼女が死んでいたこと。

 

「俺にも、魔法が使えたらな」

 

 歌に聞こえた魔法使い。傷を癒して、死人を蘇らせるなんて、簡単にやってくれそうだ。

 

 力しか能がない化け物。

 くやしいなぁ。

 

 立ち上がり、彼女にもう一度土を被せていく。

 

 最後は石を割って、綺麗になった表面にマークを刻む。

 なんの印なのかはわからないけど、お袋が使っていたから俺も使う。それだけだ。

 

 文字も少しはかけるけど、やっぱり彼女の名前がわからない。

 

 最後の手段だな…。

 

 俺は少女や騎士や盗賊の荷物をもって、人間の里に向かうことにした。

 

 

 

 

 ここから人族の町は遠い。

 俺が走ったって半日はかかる。ということは、馬車では3日ほどだろう。

 

 のんびり歩くことにした。急いだって誰が得するわけでもない。それに俺の速度で走ったら、人間が作った馬車なんてすぐ壊れてしまう。

 

 馬車の中には、荷物を積めるだけ積んでいる。

 

 久しぶりに食った馬はまぁまぁ旨かった。うまぁうまぁだった。

 

「ふっ…」

 

 おもしろーい。

 

 しかたないだろ。馬は俺の威圧に耐えられなくて怯えてしまう。馬車を引かないなら引く俺の糧になってもらわねばな。うん。しかたないのだ。

 

 大草原の、星の綺麗なこと…。

 空を見上げれば、満天の星空。お袋はよく言っていた。夜空が好きだと。

 だから俺も大好きになった。まぁ一番気に入ってるのは、曇り空の夜だけどな。

 あれは凄い。フードを深く被っていると、肌が触れそうな距離に人間がいても、俺が化け物だと気づかれないのだ。

 あれはいいものだった。

 

 多分俺は、人族が、亞人が、人間が好きなんだろう。

 俺を知ろうとしてくれるヤツがもっと好きで、俺を知ろうとしてくれるヤツをもっともっとしりたいんだ。

 だから彼女の名前を、俺は聞くべきだった。

 本当に、ダメだなぁ俺は。

 

 

 次の日は雨だった。

 幸いだった。

 大草原を抜けてしまうと街道に出てしまう。そうなると、昼間はまともに進めなくなる。

 

 だがこの雨のおかげで馬を休ませる人間が多くて助かった。まぁ馬車を引くフード男の俺が、目立たないわけないんだけどさ。

 泥に足を取られながら、ノシノシと進んでいく。人間は靴を履く。あれは濡れたらどうしているのか、興味が尽きない。

 

 と、日も傾いてきたところで、始めて人間の馬車とスレ違っちまった。

 大丈夫かなと不安になりながら、慌てて立ち止まって馬車を壁にするようにしゃがみこむ。

 そりゃあ普通に立って隠れたら頭から上が丸見えだ。

 

 馬車の窓ガラス越しに、人間の馬車を見て…ぎゃ、停まりやがった!

 しかも御者が、馬車の中の人と話している。

 やばい。

 

 

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