※この作品はR-18です。

おお、我が豚よ   作:江上音

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魔王は踊る4

 

 

「これを、全部お前が?」

 

 山を無理矢理切り開いた墓場に彼らを招待したら、真っ先に驚かれた。

 …なににだろう。

 墓の数で言えば、俺が根城にしていた洞窟の近くには、数倍は幅を利かせてる墓場があるし、化け物が墓を作ると言うことなら、俺以外の奴にも前例がないわけではない。

 

「そうだ。どうするんだ?」

「妹に…会わせてください…」

 

 たった一晩会わないだけで、ヒメの印象が大分変わった。少なくとも、同じ人間だとは思えない。

 泥だらけのドレス。髪はボサボサで、目には生気がなく、顔には引っ掻いたような後ができていた。

 

「…こっちだ」

 

 場所は覚えている。

 土に乗ってる石を放り投げ、両手で土を掻き出していく。掘り返したばかりの土は雨に濡れていても柔らかく、あっという間に粗方掘り進めることができた。

 あとは、力を込めないように優しく土を退かしていく。

 

 …いた。

 

「この子だ」

 

 ゆっくりと抱き抱え、顔についた土を払う。

 地面に寝せて、三人に見せた。

 

「……」

「……」

「……」

 

 三人とも、時が凍ったように動かない。

 やはり、知り合いが死んじゃうと、すげぇ悲しいよな…。

 

「………………誰?」

 

 絞り出したような剣士の声。

 

 ヒメは泥まみれのドレスをさらに土で汚すように、地面へ座り込んでしまった。

 

 …え?

 

「…とりあえず、彼女の名前はアメリアーじゃないのか?」

「…あぁ、あぁ」

 

 従者は大きく頷いた。

 

 そうか、じゃあアメリアーって子はここにいないかもな。だけどさ、待ってほしい。

 この子が死に際まで持っていた荷物がアメリアーのだとすれば、だよ?

 アメリアーって名前じゃないとすれば、だよ?

 

 彼女の名前はなんなんだ?

 

 虚脱感に襲われていると、従者に話しかけられた。

 

「お前、これを全部掘り返せるか?」

「全部って、まぁいいけどさ…」

 

 俺たち四人は、墓を掘り返すことになった。もっとも、ヒメは御者と剣士とに止められて、馬車に入っている荷物の確認をするらしい。

 

 三人で黙々と作業していれば良かったのに、御者が話しかけてきた。

 

「お前…この紋章はどういう意味だ」

「そのマーク? なんか意味あるのか?」

「知らんのか」

「知らんのよ」

「そうか…」

「そうよ」

 

 あれ? やっぱコイツ良い奴じゃね?

 俺のことに知ろうとしてくれてるかもしれん。名前なんだっけ、オニース? イール? なんかヒメが呼んでたんだよな。名乗ったら教えてもらえるかな?

 

「おおお俺はうり、うり――」

「オニール殿! これは…」

「どうした」

 

 許すまじ剣士。そして図らずも御者の名前がわかった。

 

「なんということだ…」

「まさか内部犯とは…いまから馬車を飛ばせば間に合いますか?」

「クーデターをしようというなら無理だろうな。だが、コイツが利用されただけならどうにかなる」

「オニール! イース!」

 

 二人はヒメのもとに駆け出した。

 興味本意で、二人が覗いていた人族を観察する。金髪の男だった。胸の膨らみはもちろんなく、格好からして盗賊だろう。目鼻立ちは整っているが、これといってここから読み取れる情報は少なそうだ。

 

 うーん、と唸っていると、ヒメの声がまた響いた。

 

「感謝します! アメリアは生きています! ありがとう! あなたへの感謝は忘れはしません!」

 

 ヒヒーン! ガラガラガラガラ!

 

 馬の嘶きと、車輪の音が響いたかと思ったら、三人を乗せた馬車が凄い早さで下山してく光景が目にはいる。

 

 なぜかはサッパリわからないが、俺は人間の手のひらで踊らされていたのだと、なんとなーく理解してしまった。

 

 

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