・この物語はZOIDSシリーズ、及びゾイドバトルストーリー等の世界観を元に作成された二次創作です。
・作中に各ゾイドシリーズに於ける登場人物の他に、作中オリジナルキャラクターやオリジナルゾイド、オリジナル改造ゾイドが多数登場します。
其れに伴い、原作に登場するゾイドであっても、細かい機体スペックや装備、能力等に差異が生じております。
また、今作はシリーズを通して上記オリジナルキャラクターやオリジナルゾイドが中心となりますので、そうした作風や展開が苦手な方は御注意下さい。
・時系列的にはゾイドバトルストーリーの年表を元に、ZAC2109年に戦争は三国の和平、併合により終結。
アニメ無印ゾイドにも登場したガーディアンフォースが設立され、
そこから更に17年が経過した設定となっています。
・今の所、各アニメキャラ(バン・フライハイト等の各アニメ主人公、及び各アニメ主要キャラクター等)の出演は予定しておりません。
時系列、物語的に矛盾が生じる可能性が大きい為、同名であっても別人、またはパラレルワールドの存在であるとご了承下さい。
・古代ゾイド人は出演予定ですが、各アニメゾイド等で語られる古代ゾイド人とは異なり、現代ゾイド人が喪ってしまった強大な能力(所謂読心術や精神没入等の超常的な能力)を持った『超人的な存在』とお考え頂いた方が良いと思います。
・今作に於いてデスザウラーはアニメゾイドの様な『破滅の魔獣』的な位置付けではなく、ガイロスやネオゼネバスの主力ゾイドの一つになっています。
・今作中に明確な義肢、義眼等の身体欠損表現あり。
・今作中女性同士の性愛を仄めかす描写あり。
・上記を踏まえた上での閲覧をお願い致します。
【ウラニクス湾:ニビルシティより東200海里沖付近】
『こちら青鮫隊!何時でも征(い)けやさぁ!!』
『黒鰐隊、配置に付きやした!!』
『ウス!赤首隊、配置完了ッス!』
『姐さん!銀翼隊、何時でも!!』
『翠鎚隊、征けやすぜェ!!』
『白鋏隊、配置完了!ケツ持ちは任せて下せェ姐さん!!』
彼方にニビルシティを臨む海中に、一国の艦隊に匹敵する程の船団が集う。
その船団の最前列、
第四警戒航行序列と呼ばれる布陣の先頭に、巨大な龍を思わせる大型ゾイドの影が泳ぎ出る。
「紅鯱隊、ヨーソロー!
クカカ!極上だぜ手前らァ!」
本来第四警戒航行序列は旗艦を陣中央に置く砲撃主体の陣形だが、大将自らが矢面に立ち、先陣を切って相手の布陣を切り崩すこの形をナギは好んだ。
更に第四警戒航行序列の両翼には五列三十艦の複横陣で別艦隊をそれぞれ控えさせ、
相手の布陣に合わせて突撃陣形、包囲陣形、防御陣形にも展開可能という、海戦に於いては極めて異質と言える陣を敷いていた。
『姐さん!紅鯱艦隊全艦、配置に付きやしたァ!!
ガーディアンフォースの舟がニビル港に近付いてやすが…
如何致しやすかい?』
まるで古代中国の騎馬民族が敷く様な陣を敷き終えたナギは、配下からの報告を受けると通信端末に向けて大きく息を吸い込んだ。
「よォォォし手前ら!!
オレが号令出すまで動くんじゃねェぞォ!!
陸(オカ)の連中がナニ考えてっか知らねェが、
オレ達の獲物はネオゼネバスの新型だけだ!!
だが!オレ達に手ェ出す早漏野郎にゃ容赦は要らねェ!!!
オレ達『紅鯱一家』の恐ろしさをタップリ叩っ込んで、
片っ端からウラニクスの漁礁にしちまいなァ!!!
解ったかァ手前ェらァァ!!!」
『『『『アイ・アイ・マム!!!!!』』』』
「クカカカカカ!!さぁて!
陸の玉無し野郎共のお手並み、
とっくりと拝見させて貰おうじゃねェか!!
全艦!!微速前進ンン!!
私掠旗(ハタ)掲げェ!!
錨を上げろォ!!
紅鯱一家、一世一代の大喧嘩だァァ!!」
『『『『アイ・アイ・マム!!!!!』』』』
布陣の主、紅鯱のナギの一喝で、布陣全体から嵐の海にも似た『うねり』が海中に響き渡った。
‡………‡………‡………‡
【海神】
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【ニビルシティ:多目的ゾイドドックベイ、超大型ゾイドドック区画】
「よし、上げろ!!」
サイレンと共に赤色灯が点され、ドック区画各所に設置された機器から反重力フィールドが展開されて行く。
反重力フィールドの出力が上昇すると、9000tを優に超えるバハムートの機体がゆるゆると浮かび上がり、四方から照射される重力アンカーによって宙空に固定された。
「…固定完了を確認!
各員作業開始!」
技術士長の号令と共に赤色灯が消える。
其れを合図にメンテナンスリフトの防護フェンスが開くと、まるで宇宙飛行士の様な姿の技術士達がわらわらとバハムートに集り、無重力状態となったフィールド内を修復資材と共に飛び交った。
「では准将閣下、
後は自分達にお任せ下さい。」
「…准将閣下は止せ、
今では国家反逆者…
只のお尋ね者だ。」
「いえ、准将閣下と皆様は、
自分達の命をお救い下さった生涯の恩人であります。
どうか、准将閣下と呼ばせて下さい。」
「なら好きにしろ、セラーネ『元』技術少尉。
…礼を云う。」
「ハッ!勿体無き御言葉を賜り、光栄の至りであります!」
四肢が全て義肢にも関わらず、技術士長が器用にネオゼネバス式の敬礼をレディに向ける。
如何なる偶然の巡り合わせか、此処ニビルシティのドックを預かる技術士長は、元ネオゼネバス帝国の技術士官であった。
この技術士長、
セラーネ=アルバコアと言う女性は、4年前に新型ゾイドの実弾試験の最中、テロリストの引き起こした爆破テロによって四肢を全て失っていた。
その被害規模の大きさから、ネオゼネバス帝国軍上層が生存者救助を絶望視。
救助隊の撤退が決定したにも関わらず、当時テロ鎮圧任務に参加していたレディ達が独断で出動。
テロリストと自軍の激しい戦闘が続く直中から、奇跡的に生存していた彼女とその部下達十数名を救助したのである。
しかし、セラーネは体質的な問題で四肢の再生手術が全く効果を発揮せず、四肢全てが義手、義足という生活を余儀無くされてしまった。
セラーネ本人からの強い要望があった事も有るが、当時の義肢の性能の劣悪さからセラーネは技術士官への復帰は困難と判断し、軍を依願退役していたのである。
「しかし、あの時『泣きモルガ』だった貴様が、
今ではいちドックベイを預かる技術士長とはな…
見違えたぞ、セラーネ。」
「光栄であります、准将閣下。
…あの時の自分は、どうかしておりました…
あの時の准将閣下の御言葉が無ければ、
今の自分は生きてすらいなかったでしょう。」
「買い被り過ぎだ、セラーネ。
詳細な価格交渉はこのアルゥに一任してある。
…身内の私が云うのも何だが、
奇抜な見た目は兎も角、良く舌の回る『勘の良い』奴だ。」
「ウェヒヒヒ!ドーモドーモ。
財務担当のアルゥでェっす。
ドゾヨロシクゥ。
…ってかレディさん!
こんな美少女取っ捕まえて
『奇抜な見た目は兎も角』と
『良く舌の回る』ってのは無くない!?」
紹介内容に一部悪意を感じたアルゥから、直ぐ様抗議の声が上がる。
「事実だろうが。
それと美少女を自称するな。
…ではな、セラーネ。
私は新規入手したゾイドを看て来る。
…私達の『リック』を、宜しく頼む。」
「イエス、マム!!
ニビルシティドックベイ技術士長の銘に賭けて、必ずや!!」
「ちょ…ボク納得いかないんですけどぉー?!
交渉手数料割増ししちゃうぞぉーー!?」
レディは踵を返し、セラーネの敬礼とアルゥの憤慨を背に受けながら、その場を後にした。
‡………‡………‡………‡
「ふう…」
アルゥ達と別れて暫しの後。
バハムートの修復作業が進むゾイドドックの程近くに位置する大型ゾイドドック区画で、レディは落胆を隠さぬ溜め息を一つ吐いた。
その眼前には、今まさに各武装の装着を終えようとする三体の大型ゾイドが並んでいる。
数日中に修復を終えると見込んでいたバハムートの左前足の緩衝機構には、
あらかじめ問題が発生する様『何者かによって意図的に』設計図と異なる構成変更が為されていた事が発覚したのである。
幸い、左前足その物の構成に問題は無かったのだが、
緩衝機構の不良によって発生した左前足の破損により、左前足の全換装という大手術に発展。
『早くとも二週間』という長期の間、ニビルシティに足止めを喰う事となってしまったのだ。
バハムートが動かせぬとなれば、自衛手段の確保が必然となる。
已む無く三人は自衛用のゾイドを調達しなければならず、その結果手に入れたのが、レディの眼前に立つ三体の大型ゾイドという訳である。
「自由都市とは言え、今の我々に入手出来るのはこの程度が限界、か…
最低でもデスザウラークラスは欲しかったのだが…」
「おいおい…無茶を言わないでくれるかな、レディ。
型落ちとは言え、此れでも入手交渉にかなり手を焼いたんだ。
君のゾイドは特にね。
文句を云う前に、自分のゾイドの調整でもやったらどうだい?」
自身の乗機となる『シャドーフォックス』の改造ゾイド
『ナハトイェーガー』のコックピットから、ジークはあからさまな不満を示すレディの言葉に反論した。
「バハムートが動けぬ以上、一国に等しい自由都市内とは申せど、
此処まで追跡部隊の襲撃があるとも限らぬ。
バハムートに比べ劣るとも、手早く自衛手段が確保出来ただけマシであろう。」
ジークと同じく、自身の乗機となる『シュツルムティラン』の改造ゾイド
『ザンバードラグーン』を調整するベルセルクからも、至極真っ当な意見が飛ぶ。
「…はぁ…」
レディは再び溜め息を吐き、改めて自身の乗機となるゾイドを見上げる。
『ジェノサイドタイガー』
『虐殺の虎』の名を冠したこの漆黒のゾイドは『紅の古代虎コア』を組み込まれたゾイド
『ブラストルタイガー』を元に造られ、更に発展させた『古代虎の系譜』と呼べるゾイドである。
ブラストルタイガーの性質と設計思想をそのままに、各種性能の更なる底上げと出力強化、それに耐え得る耐久性能を追求し、実現させた傑作機。
其れがこの『ジェノサイドタイガー』というゾイドである。
しかし、それは実に10年も昔の話。
現状では既に後継機の開発、生産が行われており、当然ジェノサイドタイガーよりも高性能。
ジェノサイドタイガーのみならず、他の二人の乗るゾイドの何れもが
『既に第一線を退いた型落ち機体』という扱いなのである。
ニビルシティ到着前にレディ達が闘ったダークスパイナー、ストームソーダー、レドラー等、前大戦や惑星Zi大異変以前から存在するゾイド群も、改造や近代化改修を繰り返し、開発当初には存在しなかった機能を備えているゾイドも少なくない。
傍目の姿こそ旧式ゾイドと同じだが、最早その中身や性能はコアを除いて、
『ロールアウト当初とは全く別物のゾイド』と言っても過言では無いのである。
「レディ准将閣下、差し支え無ければ『私(わたくし)』が調整を行いますが…」
眉間に皺を寄せるレディに、つい先程聞いた声がその背にかかる。
振り返れば何時の間に来ていたのだろうか、
バハムートの修復作業の指揮を行っている筈のセラーネが、レディの後に立っていた。
「セラーネ、貴様バハムートの修復指揮はどうし…
そうか!貴様『セレーネ』か!!」
「はい!お久し振りです!レディ准将閣下!
姉共々、宜しく御願い致します!」
「フハハハハハ!!
全く!相も変わらず紛らわしいな!貴様ら双子は!
…その後『眼』の調子はどうだ?」
セラーネと瓜二つの女性、セレーネ=アルバコア。
彼女とセラーネは双子の姉妹であり、セラーネと同様かつてはネオゼネバス帝国軍の技術士官であった。
「はい、お陰様で息災です…
その節は本当に有り難うございました、レディ准将閣下…」
「准将閣下は…否、止そう。
貴様もセラーネ同様、命の恩人だからと、
そう呼ぶのを止めはすまい。
全く…義理堅いな、貴様らは。」
「ふふっ…御明察です、レディ准将閣下。
如何なる事があろうとも、レディ准将閣下は私達の生涯の恩人ですわ。」
軍属時、セレーネは姉のセラーネと共に、テロリストの攻撃によって両眼を失っている。
体質まで似てしまった双子故か、姉と同様に眼球の再生手術が成果を成さず、人間の眼球を模した半生体カメラアイを義眼としてその両眼に埋め込み、残された視神経に直結している。
彼女達が軍を去ったのは、姉は四肢を、妹は眼を失い、軍属時から既に身寄りすら無かった為に、互いが互いを支え合わなければ生きて行けなかったからである。
「気持ちは有り難いが、自分のゾイドの調整は自分でやらねばな。
…しかして、偶然とは斯くも恐ろしい物だ。
状況はどうあれ、貴様ら姉妹とこうしてまた出逢えるとはな。」
「私も驚きました。
まさかレディ准将閣下やジーク准将閣下が、この街にいらっしゃるとは思いもしませんでしたから…
所でレディ准将閣下、『此方の書類を少し』…」
「うむ。」
そう言い終えたセレーネは密かに辺りを見回すと声を潜め、レディに耳打ちを始めた。
端から見れば、手元の書類を二人で確認している様にしか見えない。
「(…反乱を起こされたという件ですが…『矢張り』ゼネバス城の爆発消滅事件や表向きの皇帝陛下の崩御、延いては今大戦の開戦に関係が…?)」
そうレディの耳元で囁くセレーネの声は、半ば確信を宿していた。
「(…ああ、貴様の推測の通りだ。
…結局、クーデターも開戦も止められなかったが…
バハムートが今回の中央大陸戦争に投入される事だけは防げた。
其れだけでも、この馬鹿げた戦争の戦線拡大を遅らせる位にはなった筈だ…)」
事実、バハムートという最新旗艦を欠いたネオゼネバス帝国は、既に攻略法を看破されている旧旗艦のセイスモサウルスを戦線に駆り出す他無く、共和国軍の繰り出す量産可能となったゴジュラスギガ、凱龍輝のコンビネーションに加え、
荷電粒子シールド強化型マッドサンダーによる三位一体の連携の前に苦戦。
更に両軍へのガーディアンフォースによる停戦介入が本格化した事も相俟ってか、両軍は中央大陸を二分したまま、三竦みの如く睨み合いを続ける膠着状態に陥っていた。
もしバハムートが開戦当初から投入されていたならば、
例え一体だけとは言え、戦局は更なる熾烈を極め、
現状の膠着状態すら許さぬ泥沼の様相を呈していたかも知れないのだ。
「(…矢張り祖国内部の不穏な噂は事実だったのですね…
…本当に御無事で何よりです、レディ准将閣下…
現在、ニビル港にガーディアンフォース一個大隊相当の部隊が入港を求めております。
まだその意図は未確認ですが、念の為ガーディアンフォースの動向にも御注意下さい。)」
「(うむ、情報の提供に感謝する。)」
「…確かに確認致しました。
有り難うございます。」
「うむ。」
「………レディ准将閣下、
もし御時間が出来ましたら、是非セラーネと共に御相談したい事がございまして…
御同行の皆様と御一緒に、再度御目通りを願えますでしょうか?」
耳打ちを終えると暫しの思案の後、セレーネはレディに再会を申し出る。
その眼には人工の眼でありながら、ある覚悟と決意を見て取れた。
「フム…昔話…という訳でも無さそうだな…
良かろう。取り急ぎ調整を済ませるとしよう。」
「有り難うございます、レディ准将閣下。
御引き留め大変失礼致しました。
では、後程ドック管理事務所にて御待ちしております。」
「うむ。」
セレーネはレディ達に敬礼し、再びドック内に戻って行く。
成り行きを見守っていたジークとベルセルクの二人は、セレーネの姿が見えなくなった事を確認し、レディの下に集まった。
「…レディ、何事だい?
後の方が何やら妙に重い雰囲気だったが…」
「…かの女人の様相をして、尋常ならざる覚悟をしていると見受けるが…
…如何する心算だ、レディ。
今や我等は追われる身の上、
修復を終えるまでは兎も角、此処にそう長居は出来ぬぞ。」
「…今はまだ何とも言えん状況だ。
だが、港にガーディアンフォースの部隊が入港予定だという情報が入っている。」
「ぶぁっ!きっとしれぇの第七機甲師団と、グレゴリオ少将閣下の人喰い師団でありますよ!
流石しれぇと少将閣下の行軍指揮でありますなぁ…
正に電光石火であります!」
キティから、喜びに上ずった声が上がる。
キティの関係者となれば、少なくともネオゼネバスの追跡部隊である可能性は無い。
しかし、ネオゼネバス帝国が関連している以上、ガーディアンフォースを通じてネオゼネバス帝国がバハムートを接収するという危険性も否めない。
「フム…キティの所属部隊も同行しているとなれば敵ではなさそうだが…
万が一という事も有る、早急に偵察し、探りを入れねばなるまい。
各機体の調整作業を急ぐぞ。」
「了解だ。」
「御意。」
「りょおかいであります!」
「…………
(妙だ…この胸騒ぎは一体何だ…?)」
急ピッチで調整作業が進む最中、レディは胸中に渦巻く『漠然とした不安』を拭い切れずに居た。
‡………‡………‡………‡
【ニビル港:保安局入港管理事務所】
港を見下ろす入港管理事務所の窓からは、ニビル港に次々と入港するガーディアンフォースの艦艇が一望出来る。
その様子を、保安局局長であるアントニオと、アーデルハイド、グレゴリオの三名が並び見ていた。
「早急な入港許可に感謝致します、アントニオ保安局長殿。
改めて御礼申し上げる。」
「ウフン、中々のゼントルマンなのネ、グレゴリオ少将閣下。
正規の入港手続きを踏んで頂けるなら、この自由都市は来る者を拒む事は無いワ。
ようこそ、自由都市ニビルへ。
ガーディアンフォースの皆様を歓迎致しますワ。」
「う…うむ…御協力頂き光栄だ…アントニオ保安局長殿…」
流石のアーデルハイドも、アントニオの言動には戸惑いを隠せずに居た。
しかし、アーデルハイドには別の意味で、アントニオを避ける理由があった。
「アラ、アーデルハイド中将閣下でしたカシラ。
何だが顔色、とっても悪くってヨ?」
「…ぉぐぅ…す…済まん、アントニオ保安局長殿…グレゴリオ少将殿…
後を頼む…もう…うっぷ…げ…限界だ…!」
そう言い終えるや否や、ハンカチを口に当てた青い顔のアーデルハイドが、事務所のトイレに向かい猛然と駆け込んだ。
「…あーあ…やっぱ無理だったかよ…」
「アラ、体調が優れなかったのカシラ…
アテシったら気が付かなくって御免なさいネ。」
「あぁいえ…大変失礼な理由で申し訳無いのですが…
実はアーデルハイド中将閣下は香水、
それも女性用の香水の匂いが大変苦手なものでして…」
そう、アーデルハイドの唯一と言える弱点。
それは『女物の香水の匂い』なのである。
男物のオーデコロンや制汗剤の類の匂いなら何の問題無いのだが、
何故か女物の香水にだけは身体が拒否反応を起こし、最悪吐き戻してしまうのだ。
「ンマッ!そうだったのォ!?
嫌だわアテシったら…
本当に御免なさいネ。」
「いえ、此方こそ大変申し訳無い…」
『…おぶぅっ…オボロロロロロ……』
とうとう臨界点を突破してしまったらしく、アーデルハイドの駆け込んだトイレからは、
扉越しにも盛大に吐き戻しているであろう事が判る程の、悲痛な咆哮が断続的に響いていた。
「…流石にこれ以上アテシと居ると、アーデルハイド中将閣下が可哀想だワ…
調査許可証の発行手続きやゾイド搬入手続きに関しては、日を改めた方が良さそうだワネ…」
「…私事で手続きを遅らせてしまい、大変申し訳ありません。
一両日中には必ず…」
『…オゴッ…オボロロロロ…』
「…アテシも明日はハニーに頼んで、微香か無香の制汗剤にして来るワネ…」
「……不快且つお見苦しい所をお見せしてしまいまして…
大っ変申し訳ありません…」
結局、この日はアントニオが退室し、事務所内の充分な換気が行われるまで、アーデルハイドはトイレから出る事が出来なかった。
‡………‡………‡………‡
【ウラニクス湾:ニビル港より東50海里付近の海底】
『姐さぁーん、まぁだ動かねンすかぁ?
ガーディアンフォースの連中、もう港に入っちまいやしたぜぇ?』
「バカヤロウ!!!
オレがまだだっつったらまだだァ!!!
オレらのエモノはじきに来る!!
ちったぁ堪えな!!」
『す…すいやせん、姐さん…』
ガーディアンフォースが入港してから、既に三時間以上が経過している。
しかし、肝心の獲物である筈の新型がその姿を現す気配が見えないのだ。
「セシル!!『上』からの様子ァどうだァ!!」
『…超大型…ゾイ…ド…ドック…で…修復…作業…中…』
「はぁ!?修理中だぁ!?話ンなんねぇじゃねえか!!」
セシルから意外な結果がもたらされる。
追い求めていた獲物は、街の中で優雅に修復中だと言うのである。
『構う事ァ無ェぜ姐さん!
街ごとアイツらFxxkしちまやァ良いじゃねェか!!』
『…今…回は…マクヴィー…に…賛成…
…姐さ…ん…ヤッちまおうぜェェ…』
当然の如く、武闘派筆頭であるセシルとマクヴィーという『紅鯱一家の起爆剤』に火が点く。
一旦この火が一家という弾薬に伝播してしまえば、最早止める手立ては皆無だ。
次々に家族がニビル港に雪崩れ込み、手当たり次第に攻撃を始めるだろう。
そして、ニビル港にはガーディアンフォースの一個大隊。
街一つを襲う事になれば、当然ガーディアンフォースが出張って来る。
まがりなりにも相手は本物の『軍隊』である。
まともにぶつかり合えば、先ずお互い無事では済むまい。
今回のナギの目的は、あくまで新型旗艦と、其れを駆るネオゼネバスの人間のみ。
家族から無駄な血が流れる事は、目的からもナギの信条からも外れた結果である。
「…よゥし、解った手前ら。
オレに考えがある。
乗るか反るか、先ず決めな。」
『ちょ…いきなり何スか姐さ…』
「乗るか、反るか、だ。
乗るなら残れ、
反るなら黙って『お行儀良く』寝床に帰れ。
三度目は無ェ。」
『『………』』
今までいきり立ち、興奮の渦にあった紅鯱艦隊が、一斉に静寂に包まれる。
紅鯱一家といういち私掠船団は血の気が多く、所謂武闘派と呼ばれる人種が多い。
その性質上、統率の規範は『力』に依る所が大きい。
其れが身体能力的な物であれ、ゾイド乗りとしての資質であれ、その単純かつ明確な『力量差』を以て、一家内の位置付けを決めている。
今回のナギの思惑は、正にこの『力量差』を測る為の行軍であった。
対象は勿論、ネオゼネバス旗艦を奪った者。
レディ当人に他ならない。
しかし、此処に来て『獲物が修理中である』という問題が発生した。
ナギという人物をして、手負いを仕留める事は元より、万全でない相手と闘う事すら、私掠船団長の意地と矜持が赦さないのである。
其れは武闘派集団である紅鯱一家全体を納得させる為の絶対条件でもあるのだ。
『…ウチ…は…姐さ…んに…従…う…』
暫しの後、船団に重苦しく立ち込めた沈黙を破ったのは、セシルであった。
『アタシもセシルに同じ、姐さんに従うぜ。
ヘヘヘ、姐さんと行きゃ良いFxxkが出来ンなァ確かだしよ。』
セシルに続き、マクヴィーが其れに倣う。
そして、
『…姐さんがそう言うなら…乗るぜ。』
『アタイは姐さんに付いて行くよ。』
『自分は姐さんに付いてくだけス…』
『もう、姐さんたら判ってる癖に…乗るわ。』
その流れに一家が同調して行く。
気が付けば、紅鯱一家総てがナギの提案に乗っていた。
「よォォォし!!
其れでこそオレの可愛い仔猫共だぜ!!
セェェシル!!マァァクヴィー!!
オレに付いて来な!!
残りの手前らは此処で待機だ!!
手前ら!陸の野郎共がちっとでもフザけた真似しやァがったら構う事ァ無ェ!!
焼いて魚の餌にしてやンなァ!!!」
『『『『アイ・アイ・マム!!!』』』』
蒼い海原の下から紅い眼が4つ、ぎらりと輝いた。
‡………‡………‡………‡
【ニビルシティゾイドドック:ドック港湾間管理区画】
ガーディアンフォースの厳重な警護の下、レディ達はゲシュタール帝と、ガーディアンフォース側の指揮官であるグレゴリオ、アーデルハイド両名との面会を果たしていた。
既に此方に向かっているであろうルドルフ帝の保護と、未だ行方の知れぬルイーズ大統領の探索の為、
そして、バハムートをネオゼネバスに引き渡さぬ様、ガーディアンフォースとの交渉を行う為の会談である。
しかし、グレゴリオとアーデルハイドによってもたらされた現状に、レディ達は愕然とする。
「…既に事の黒幕は、我が祖国までも…」
『…済まない、私が不甲斐ないばかりに…』
「ネオゼネバス帝国だけではない。
共和国も、我が祖国ガイロス帝国も、指揮系統の中枢部まで黒幕の手が及んでいると見て間違いあるまい。
…各国同志諸君の名誉に飽き足らず、我が祖国の誇りまで汚すとはな…実に不愉快だ…」
ゲシュタールの隣に座るアーデルハイドが、忌々しげに吐き捨てる。
「現状はガーディアンフォースの介入で、一時的に中央大陸の戦火拡大は止められちゃぁいるが…
そう長くは保つめぇ…」
そう言い終えたグレゴリオの眉間にも、深い皺が刻まれる。
事の発端であるゼネバス城爆破消滅事件、
ルイーズ大統領とゲシュタール派議会員誘拐事件、
第三次中央大陸戦争勃発の原因となった共和国ムーロア派のネオゼネバス帝都襲撃事件、
そして…
『今回の緊急会談と云う名のルドルフ陛下の誘い出し…か。』
国と云う蛇を暴れさせたいならば、その頭を捕らえ、押さえれば良い。
蛇は逃れようと足掻きのたうつ。
後は蛇が勝手にのたうち、
己が身を勝手に傷付け、疲弊してくれる。
そして、弱った所で頭を潰す。
凡庸な手。
が、理には叶っている。
凡庸であるが故に、愚策と侮り、軽んじる。
結果、全てが後手に回り、相手の思う様に事が運んでいる。
だが、唯一相手の思惑を外れた要素が一つだけ存在している。
「バハムート…ネオゼネバス主体で開発されたあの新型か。」
しかし、肝心のバハムートは修復の真っ最中。
現状では固定砲台にするならば兎も角、機動兵器であるゾイドとしては、とてもではないが使い物にならない。
「では、バハムートの修復が完了したらだが…」
「断る。
ガーディアンフォースの依頼と言えど、我々のバハムートを渡す訳にはいかん。」
提案を出そうとしたアーデルハイドの言葉を遮り、レディがぴしゃりと拒否する。
「…レディ准将殿、此処は協力態勢を…」
「不要だ、バハムートの修復が完了し次第、ニビルシティを去る。」
取り付く島を見せず、あくまでスタンドプレーを貫く姿勢を崩さない。
『では問おう、レディ准将。
何故其処まで他国やガーディアンフォースの介入を拒む?』
「信用ならんからだ、『元』皇帝。
国を乗っ取られる様な元首と軍隊の協力なぞ、御免被る。」
元とは言え、自国の皇帝の言葉すら、レディはバッサリと切り捨てる。
本来なら協力態勢を取り、戦闘物資や食糧の補給線を確保する必要がある。
しかし、現状では事の黒幕によって敵味方すら判らぬ状態である。
そんな状態では、補給所か此方の行動が敵方に筒抜けになる可能性が高い。
それだけ国への不信感が強くなっていたのである。
「しかし、このままでは…」
そう言いかけた刹那、港に火の手が上がった。
閃光、暫し後に轟音。
そして
〔アー、アー、テス、テス…
オレ達ゃ紅鯱一家!!ここらの海をシメてるモンだァ!!
この街にネオゼネバスの新型に乗った奴等が来ている筈だァ!!
悪ィ事ァ言わねェ!!たったか出しな!!
さもなきゃァ紅鯱一家が総出で街の『模様替え』をする事になるぜェッ!?〕
「…僕らは知らない間に、随分と有名人になったものだね、レディ?」
「海賊崩れに喧嘩を売られる程、落ちぶれては居ない心算なのだがな…」
不機嫌そうに葉巻を吹かし、握り込んだレディの拳がゴキリと小気味の良い音を発てた。
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【ニビル港:内湾部】
「ぃよォ大将ォ、逢いたかったぜェ?
へへへ…何だよ、良い女じゃねェか…
どうだ?オレの女になンねェか?」
「貴様の趣味に合わせる心算は無い。
そも、私には貴様らに売られた喧嘩を買っている暇も無い。
失せろ。」
ナギは先ずレディらバハムート乗員達への面会を求めた。
曰く『陸の玉無しにしては根性のある奴のツラを見てみたい。』という物だった。
確かに『玉無し』だが、まさか女であるとは思っていなかったのだろう。
ナギ元来の性質が災いし、レディに喧嘩を売る所か口説きに掛かっているという始末である。
尚もナギとレディの問答が続くが、沖の艦隊が居る以上、下手に動く事は出来ない。
下手を踏めば、沖に停泊しているゾイド艦隊からの総攻撃が始まってしまう。
当然、そんな状態でガーディアンフォースが動く事が出来る筈も無く、沖の紅鯱艦隊との睨み合いが続いている。
「厳しいねェ…フフフ…
…惚れたぜ…ますますオレの好みじゃねェか…」
「抜かせ『海賊』風情が。」
「ばっ…てめっ…!」
レディの『海賊』の一言に、傍らに居たマクヴィーの顔から血の気が引き、ナギの顔と頭に一気に血が昇る。
「テメェ…今何つったァ…!」
「『海賊風情』と言ったのだ。
気に入ったか?」
「オレ達ゃ由緒正しい私掠船団の一族だ!
惚れた女でも、その言葉だけは許せねェ!!
今すぐ取り消せェ!!!」
「断る。私掠船団だろうが海賊船団だろうが与太者に変わりはあるまい。
それこそ、貴様らお得意の『海賊の流儀』とやらで挑んだらどうだ?」
ナギは己が私掠船団長である事を誇りに思っている。
其れはナギが祖父の代から続く私掠船団を継いだ事もあるが、何より私掠船団の全員を『家族』として見ている所が大きい。
しかし、ナギにとって我慢のならない事がある。
其れが『海賊と同業に扱われる事』である。
「上等だぜ仔猫ちゃんよォ…
誰に喧嘩を売ってンのか理解させてやンぜ!
オレとサシで勝負しやがれェ!!
タイマンだコラァ!!」
「面白い。海賊崩れが何処まで出来るか、試してやろうではないか。
だが、貴様もいち船団を束ねる首領格、
貴様が敗けた時は、貴様の船団総ての生殺与奪、一切をこの私が決める。
異存無いな。」
「クソが…上等じゃねェか!!やってやらぁ!!
この紅鯱のナギ様を舐めンなよ!?」
このナギの言葉に『かかった』と、レディは不敵な笑みを浮かべる。
ナギの人的性質を見抜いたレディは、不遜な態度と安易な挑発によってナギをわざと怒らせ、あからさまに不釣り合いな条件を呈示。
其れが既にレディの策略であるとも知らず、怒りで冷静さを欠いたナギは二つ返事で条件を飲んでしまったのである。
「…君達も苦労してる様だね…」
「…姐…さん…の…無茶…は…もう…慣れ…た…」
「…心中、御察し申し上げる…」
「アタシらにとっちゃぁ何時ものこった…
毎度気にしてらんねぇよ。」
策謀に嗤うレディと、怒り猛るナギを他所に、
二人の部下達には奇妙な親近感と、友情が芽生え始めていた。
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【ニビル港:マリーナエリア】
港に急遽誂えられた簡易バトルフィールドに、二体のゾイドが対峙する。
片方はレディの乗るジェノサイドタイガー。
もう一方は紅鯱の名を示すかの様な紅色をした海龍型の超大型BLOXゾイド
『リヴァイアサン』
本来であればバハムート専用のBLOXゾイドである。
「貴様がそのゾイドを何故持っているか、
後でじっくりと聴かせて貰おうか。」
『勝つつもりかよ、仔猫ちゃん?』
「無論、勝つ心算だ。」
『クカカカカ!!極上だぜ…
やっぱり良い女だ!惚れ甲斐がある!』
ぎらりとリヴァイアサンのカメラアイが光り、リヴァイアサンの全身に装備されたイオンベクターノズルがその巨体を宙空に浮かび上がらせる。
砲撃戦を主眼に置いて開発され、巨体に似合わぬ機動性能と、全身の火器を駆使した戦艦クラスの火力を有している、超火力特化型BLOXゾイドである。
その最もたる能力が、グラビティコントロールシステムを攻撃に転用した大口径超重力砲。
『ブラックホールリボルバーキャノン』
その名が示す通り、胴体部に装着された『グラビティチャンバー』を射撃毎に回転させ、長時間のチャージを必要とする超重力砲の連続射撃を可能とした兵器である。
『さあて仔猫ちゃん、始めるかよ!!
オレと仔猫ちゃんとのサシの勝負だ!
手前らァ!!手ェ出すんじゃねェぞォォ!!』
『『『『アイ・アイ・マム!!』』』』
先制を仕掛けたのはリヴァイアサンの六連装30mmリニアガトリング砲と、三連装リニアレールキャノン砲の砲火であった。
しかし。
『なっ?!当たらねェだァ?!』
弾幕を張り、逃げ道を塞いだ筈が、レディのジェノサイドタイガーはするりとその網目を抜けて行く。
リニアレールキャノンの弾体は、既に失せたジェノサイドタイガーの居場所を虚しく焼くばかりであった。
「莫迦奴(ばかめ)、弾をばら蒔くだけでは私を捕らえる事は出来んぞ!」
ジェノサイドタイガーの装甲が開き、その主砲であるプロミネンスレーザーが次々に発射される。
レディの放った攻撃は吸い込まれる様にコックピット目掛けて降り注ぎ、紅いリヴァイアサンのコックピットを更に赤く染め上げる。
海洋に対応したBLOXゾイドだけあり、装甲もかなり分厚く頑丈な様だ。
『クカカカカ!!!極上の射撃センスだなァ!上手ェ上手ェ!!
だが、その程度でこの海神の装甲がァ……』
が、其れが仇となった。
『ぅおあああああああっ!!?
ぅ熱っちぃぃいいいい?!!』
溶解せぬまでも、赤熱化する程の熱量をコックピットとその近辺に喰らったのだ。
幾ら断熱処理されている装甲であろうと所詮は金属。
その熱の幾らかは容赦無く内部に伝達されて行く。
ともなれば、コックピット内は最早蒸し風呂も斯くやである。
「(や…ヤベェ!早く海に潜らねェと…!
このままじゃ蒸し焼きにされちまう!!)」
急激に上昇するコックピット内の温度に危機感を覚えたナギは、堪らず海中を目指す。
が、其れをレディが赦す筈も無い。
轟、という凄まじい爆音と共に、リヴァイアサンの頭部が足場の一つに引き倒され、その動きを封じられる。
サイズ差を物ともせず、ジェノサイドタイガーがリヴァイアサンの頭を押さえ込んだのだ。
「さて、海賊崩れの御嬢さん。
蒸し焼きか、ミンチか、挟み焼きか。
好きな調理法を選ぶが良い。
その通りに貴様を調理してやろう。」
リヴァイアサンの赤熱化した装甲がメキメキと音を立てて歪み、コックピット内に焼けたハッチの金属壁が迫って来る。
『ぶぁっちゃちゃちゃちゃっ!!
クソがッ!!いっそ一思いに殺りやがれェ!!』
「其れは出来ん。
そいつは『私の作った』バハムート専用のBLOXゾイドでな。
コックピットブロック以外は特注品なんだ。
そう壊す訳にはいかんのでな。
こうやって…」
ジェノサイドタイガーの溶断破砕爪、プロミネンスクローが再び熱を発し、リヴァイアサンのコックピットを圧迫し始める。
『ぎゃっちぃぃぃいいいああああ!!
手前ェ其れでも人間かァバカヤロウ!!』
「はっはっはっ!!私は警察程優しくはないからな!
さぁ!降伏か丸焼けか!」
『ブガァァァッ!!クソがァァァッ!!
判った!オレの敗けだ!畜生!!』
とうとう上がり続ける温度に負けたか、ナギから悲鳴にも似た降参の声が上がる。
其れを合図に、リヴァイアサンの頭が海に蹴落とされる。
もうもうと水蒸気が上がり、赤熱化して焼け焦げたリヴァイアサンのコックピットハッチが見る間に黒く変色して行く。
「べはっ!!畜生っ!!
なんつう女だよ手前ェは!!
いきなり焼き殺しに掛かるたぁどういう了見だコラァ!!」
漸く熱を失ったコックピットハッチを蹴破り、軽い火傷を負ったナギが飛び出す。
「ふぅん…多少なりと根性はある様だな。
頭が此れなら、下も期待出来そうだ。
ジーク!ベル!受け入れの準備だ!
バハムートの新たなクルー達だ!
丁重に『お迎え』して差し上げろ!」
『御意。』
「まぁ、賭けは賭けだけど…
君達、納得出来るかい?」
「…これ…も…何時…もの…パ…ター…ン…」
「姐さん怒ると、後先も何も見えなくなっからなぁ…
キレさせられて、良い様にFxxkされて、あの通り。
アタシはマクヴィー、ソッチはセシル。
姐さんの女で、家族で、右腕。
つーワケでヨロシクな、色男と…厳ついオッサン。」
「ジーク・フリードだ。」
「ベルセルク・ジオと申す。」
当初の状態と異なり、随分と賑やかな旅になりそうである。
「…で、ボクの出番は?
まさかアレだけ!?
無くね?!それ無くね?!」
「あの…突然どうしました?」
「うん、ちょっとメタフィクション的な不満がね、ちょっとね」
「は…はぁ……。」
突然奇声を発するアルゥに、アルバコア姉妹は終始疑問符を点灯させる他無かった。
一気に登場人物が増えたので、今回は少々喧しい回となってしまいましたが、如何でしたでしょうか。
さて、本投稿をもちまして、一時休筆となってしまいます。
更新まで一月以上掛かってしまいますが、御待ち頂ける方がいらっしゃいましたら幸い至極。
では、何れまた。