※この作品はR-18です。

淫魔ちゃんと逝くBADEND   作:ぴよぴよひよこ

5 / 10
番(つがい)と読みます。

※エグいです。


番の味

 極上のごちそうを平らげてから丸一日が過ぎ、ついに私は誕生して一週間を迎えたのだ、イェーイ。そんなどうでもいいことでさえ祝ってしまうほどに機嫌が良い。それ程にあの濃厚精液は美味しかった。

 味を占めた私はまた中年童貞を狙うべく、人々の行き交う街でじっと獲物を待ち構えていた。とはいえ、アレ程の存在はなかなか稀有なものだろうと認識もしている。自発的に声を掛けてくるのはヤリ慣れた男がほとんどだし、宝くじが当たるような確率でしか出会えないのでしょうね。ま、今はそこそこ満たされているし、凡夫を引き当てても不機嫌になるようなことはないと思う。

 

 ――こっちのみーずはあーまいぞ♡

 

 世に知れ渡る童謡を口ずさみながら男たちの視線を受ける。私ほどの可愛らしさともなれば、道行く人々は振り返り、見惚れてしまう。意味は違えど、女性でさえ私に目を奪われる。ふふふ、嫉妬しちゃうのかしら。

 しかし、あまりにレベルの高い容姿をしているからか、なかなか声を掛けてくるヒトが現れない。人気(ひとけ)が多すぎて躊躇してるのかしらね。基本的に私はお断りはしないけれど、この衆人環視の中でフられるのを嫌がっているのかもしれない。でもまあ、そんな空気の中で声を掛けてくるのならば、その度胸は評価できるし、質も高そうだ。私はじっくりと待つことを選択した。

 

「キミ、ちょっといいかな」

 

 はい来たー! 顔を上げると、二十代後半と言った感じの精悍な男が私を見下ろしていた。おお、かなり身体は鍛えられているし、とっても美味しそうだわ。

 

「なんですか?」

 

 耳が溶けるような甘い声で返事をする。しかし男はさして気にしない風で話を続けた。むう、おかしいわね。

 

「もう二十二時をすぎるけど、その制服は中学生ってことだよね、親御さんはいるのかな?」

「え、えっと、あの……」

 

 うっ、まさか、この男……!

 

「ああ、ごめん怖がらせる気はなかったんだ。ほら、僕は警察の者だよ。今日はオフだけどね」

「け、警察……」

 

 うわあ、やっぱりだー。ああ面倒くさい。この国の治安維持の組織は真面目すぎるのよ。この男が休日だったのが唯一の救いかしら。制服を着た奴らは逃げようとすると即行で無線で連絡回すし厄介なのよね。

 いざとなれば姿形を変えられるのだから逃げること自体は可能だけれど、まだ「美咲」には使い道があるし。さて、どうしたものかしら。

 

「えーっと、そのぅ……」

「うーん、何か言いにくい事情でもあるのかな」

 

 私に見せた警察手帳から、この男の名前がサクラバ ケンゴという事が分かった。ケンゴ……さん、はベンチに座る私の隣に腰を下ろすと、優しそうな笑みで話を促す。

 もーう、本当に面倒なんだから。いつもの家出設定か何かでいいわよね。

 

「あの、私、家出……しちゃって」

「そうなのか、うーん、それは親御さんも心配してるだろうし、おうちに帰った方がいいんじゃないかな? なんなら、僕もついていってあげるよ」

 

 やめてよぉ! うーん、うーんと、そうだ!

 

「いやっ! あの家に帰りたくない!」

「いったいどうして……、これは……!」

 

 袖をめくって、今作り上げたあざを見せつける。クックック、警察官が虐待の疑いのある家にいたいけな少女を連れ戻すなんてできないでしょう。私ナイスプレー!

 ケンゴさんは難しい顔で私を見つめている。しかしまあ、これで見逃すはずもないでしょうね。みょんみょんと魔力を飛ばして思考を読んでみた。

 

『うーん、どうするべきか……。放置はありえないとしても、いきなり通報したらこの子が親に責められるかもしれないし。デリケートな問題だ。まず必要なのは時間だろう。それから――』

 

 あー。もう、本当に真面目だわ。もうめっちゃくちゃ悩んでるじゃない。なんか適当言ったこっちが申し訳なくなってくるわよ。うーん、逃げ道としてこっちから助け船出しますか。

 

「あの……一晩だけ、泊めてくれないでしょうか。明日になったら、きっとお父さんも落ち着いてるでしょうし……」

「うーん……」

 

 ごめんなさい顔も知らない美咲ちゃんのお父さん。と言っても本物の奏多美咲とは顔が違うからバレないと思うけど。

 ケンゴさんはうんうん唸ってから、ちょっと待ってねと言って携帯電話を取り出した。

 

「もしもし、ハルカさん? ああうん、今帰りなんだけどさ。うん、……お見通しか。いや、女の子を保護したんだけどさ、事情があるみたいで。連れて帰っても大丈夫かな。……そうか、ありがとう。すぐ帰るよ」

 

 電話越しに優しそうな声が「また厄介事に首突っ込んだんでしょ」と言っているのが聞こえた。奥さんかしらね。あなたの旦那様、本当に面倒ですよ。

 まあ、これで通報とかいうもっと面倒なことにはならないでしょう。明日にはおさらばだ。……このヒトたちがこの世からも、ね。

 それじゃあ行こうか、とケンゴさんが私を呼ぼうとして、まだ名乗っていない事に気が付いた。美咲の名を伝えて、横に並んで歩き出す。

 街灯が照らす薄暗い道を歩きながら、私はどう対応しようか迷っていた。どうせこの男は生真面目が服を着て歩いているような性格だ。どんなに誘惑しても自ら襲って来る事はないだろう。この時点で私は強制的に吸精するのも視野に入れ、これから向かう家での過ごし方を考えた。

 んー、人懐っこい性格で行きますか。腫物を扱うように接されてもダルいでしょうし。

 

「あの、ケンゴ、さん……?」

「どうしたのかな」

「手、手を繋いでも、いいですか?」

「……。ほら、いいよ」

 

 軽いジャブ代わりにボディタッチ。効果は如何なものかとみょんみょん魔力を飛ばす。

 

『優しい男の人に憧れているのかな。今日は安心して寝てくれるといいんだけど』

 

 超お真面目さんだわー。もうこれは理想とか言わずに吸い上げることになりそうね。本意じゃないけれど、運が悪かったと思って諦めましょうね、あなたも、私も。

 しばし歩いて到着したのはホテルみたいな大きさのマンションだった。いいとこ住んでるわね。防音もしっかりしてそうだし、派手にヤってもバレないかしら。

 エレベーターで8階まで上がり(25階まであった)、部屋まで歩く。チャイムを押下すると、軽快なベルの音が鳴り響き、中からパタパタとスリッパの足音が聞こえてきた。

 

「おかえりなさい、あなた。と、その子が?」

「ただいま、ハルカさん。そうなんだ、急にすまないね」

 

 ドアが開き、お出迎えしてくれたのはケンゴさんと同じくらいの年齢の優しそうな女性。私を見る目にも、街で感じた妬みのような厭らしさを感じない。そうね、私ほどとは言わないけれど、美女という括りに入るのだろうし、そういった余裕があるのかもしれない。根本から茶色い髪は艶やかに背中まで伸び、柔和な笑みと同じように柔らかそうな身体は肉付きも良さそうだ。私ほどとは言わないけれど! と強がってみても、年齢が違うのだから比べる意味はない。私の肉体年齢を引き上げて作り変えれば、ハルカさんよりも魅力的な姿にもできるだろうし。

 

「急にすみません……無理を言ってしまって」

「いいのよ、どうせこの人はあなたみたいな子を放っておけないんだから」

「返す言葉もないよ……」

「それに、ずいぶんと仲良くなったみたいだしね?」

「え、あっ」

 

 語調も、表情も柔らかいまま私たちの手を見やる。繋いだままだったそれをケンゴさんが焦りながら放した。これはハルカさんの悪戯心のようだ。夫が年頃の女の子と手を繋いでいて憎悪の欠片も持たないなんて、できたお嫁さんね。

 ハルカさんが私の前に立ち、じーっと目を見つめてきた。何かしら……。読心術でも持ってるのかしらん。逆にみょんみょんしてみようっと。

 

『こんなに可愛い子を虐待するなんて、ご両親を張り倒したいわ。私たちには子供を授からせてくれないのに、神様も意地悪よね』

 

 どうやら道中でケンゴさんがメールか何かで私の事情を説明していたようだ。こちらを見つめる瞳は見定めではなく心配に揺れていたらしい。良い人だわ。そして、ふむ。結婚もして準備も万全なのに子供ができないのか。ふーむふむ。

 

「えと……あの……」

「あら、ごめんなさい。美咲ちゃん、よね? いらっしゃい、さあ上がって」

「お、お邪魔します」

 

 見つめられ続けてどうしたものかと思っていると、ハルカさんがにこりと笑って招き入れてくれた。ローファーを脱いで誂えられたスリッパに履きかえる。ケンゴさんも手を繋いでいたのを咎められなかったことに安堵しつつ靴を揃えて玄関に上がった。

 

「美咲ちゃんはちゃんとご飯は食べた?」

「あ、はい」

 

 無一文だけど肯定しておいた。というか鞄すら持ってないと逆に怪しまれるかしら、もう遅いからどうしようもないんだけどさ。

 

「そう、じゃあお着替えを用意しておくからお風呂入っちゃいなさい」

「……いいんですか?」

「遠慮しないで。今日はここがあなたのおうちだと思ってくれていいからね」

「あ、ありがとう、ございます……っ」

 

 暖かいもてなしに感極まって涙、のフリ。私自身はこういうのに感動とかしないけれど、ヒトがどういった時にどう思うのかくらいは分かる。というか心を読めるからタイミングも空気もばっちりだし。

 

「なんなら私のこともお母さんって呼んでいいからね」

 

 私の頭を撫でながらハルカさんが笑う。お母さんかあ……ヒトの色欲から生まれた私はこの世全ての人間が母であり父でもある、と考えることもできなくもない。その観点に照らし合わせればハルカさんも母であるけれど、この人あんまり性欲とか無さそうよね。子供は欲しいみたいだけど。まあ、せっかくだし甘えておきましょうか。

 

「おかあ、さん……」

「うふふ、よしよし」

 

 抱き付くと柔らかな体温に包まれた。いい匂いもするし、女性を食べる(すう)のは初めてになるけど、ハルカさんも美味しそうだわ。

 

 淫魔とは。サキュバスである私は普段はヒトの雌の姿を形取ってはいるが、対となるインキュバス、男の姿をした淫魔と表裏一体の存在である。形態変化の能力はそもそもな話、男にもなれるという能力の応用でしかない。とはいえ、「サキュバス」として生まれた私は基本的に女としての因子を主体とした存在なので、意識上では雌の目線で物事を考える。男に惹かれ、犯されることに情欲、もとい性欲、いや食欲をそそられることの方が多い。まあ目の前に据えられたごちそうがヒトの雌ならば、それを犯(しょく)すことを迷わず選択できる程度には食指が働くのだ。ヒトの言葉を借りるならばバイ。両刀と言ったところかしら。

 

 だからハルカさんのおっぱいに包まれて涎を垂らしていても全く問題は無い。ちょっと語弊があった。バレたらちょっと不味い。如何ないたいけな中学生の姿をしていても、両刀などと思われたらこれからの計画に支障が出てしまいますからね。うふふ。

 

「ほら、今日はお湯も沸かしてあるからゆっくりしてきなさい」

「ありがとう……ございます、おかあさん。えへへ……」

 

『美咲ちゃん良い子ねえ。もし彼女が良かったら、ウチの子になっちゃえばいいのに、なんてね』

 

 第一印象は最高値を記録したらしい。ハルカさんの心の声を聞きながら、私は案内された脱衣所で服を脱ぐと、高級マンションのイメージを壊さない綺麗な浴室へと足を踏み入れた。

 身体を変化させる能力を応用すれば、汚れなんかも一か所に集めて手を振るだけで入浴が必要ないくらいに清潔さを維持することができる。体臭も自分で操作することができるし、はっきりいって淫魔にはシャワーや湯に浸かると言った行為は無意味なものだ。しかし無意味と無価値は等式にはなりえない。湯に浸かれば性交とはまた違う気持ちよさを感じる事ができるし。ヒトが栄養を度外視して調味料を凝らし料理を極めたように、淫魔だって食事(セックス)以外に楽しみを見つけることだってできるのだ。それでもやっぱり性交以上に甘美なことは無いけれど。そこはやっぱり、種族の違いかしらね。

 泡立てたソープをふうっと吹いて、このマンションの一画に張り巡らせた魔力を通じてリビングに居る二人の会話を盗み聴く。どうやら二人とも私のことについて話し合っているようだ。

 

『ケンちゃん、あの子のこと、どうするの?』

『……その呼び方は二人っきりの時だけじゃないのかい』

『お風呂場までは聞こえないでしょ、ふふ』

『そうだけどさ。ハルカはどうしたらいいと思う?』

 

 あらあら、私が居る時とは態度も話し方も違うのね。魔力を集中させて遠距離から深めに読み取ってみると、二人が幼馴染だということが分かった。へえ、小学校から続いた仲だなんて、素敵ね。

 

『まずは児童相談所かな。少し見せてもらっただけだけど、父親に暴力を振るわれているらしいし』

『そんな、あの子はまだ中学生なんでしょ? これからまだ成長していくのに、もし変な気でも起こされたら……』

『うん、この件は慎重にだけど迅速に済ませないといけないかもしれない』

 

 あー、なんだか深刻なことになってるわね。全部嘘だから気にしないで欲しいのだけども。そんな無意味なことに頭を悩ませないで、もっと気持ちいいコトを愉しみましょう。

 シャワーで泡を洗い流し、ふかふかのバスタオルで身体を拭く。この家の洗濯乾燥機は高性能なのか、私の下着が畳まれて寝間着と一緒に並べられていた。それを履いてリビングへ向かうと二人に暖かく迎えられた。

 

「お風呂ありがとうございました」

「おかえりなさい、美咲ちゃん今日は私と一緒に寝ましょう?」

「えっ? あの……はいっ」

「僕はリビングでいいかな。そろそろ客人用の布団やら調度品も揃えないとなあ」

 

 どうやらこの家にはベッドが一つしか無いらしい。女性組でベッドを使う提案に取りあえず肯定した。でも、愛の巣にお邪魔するなんて気が引け……ないけど、どうせなら二人まとめて頂きたいんだけどなあ。頭の中でシミュレーションする。夫婦をターゲットにするのは初めてのことだし、趣向を凝らして美味しく頂きたいのだ。

 

「良かったらその、三人で寝ませんか?」

「え、でも美咲ちゃん……、大丈夫なの?」

「はいっ! 私、川の字ってやつ、やってみたいです」

 

 適当な理由をでっち上げて全員で寝室へ行くことを提案してみた。ハルカさんは私を心配して渋っていたが、川の字という家族的なイベントに彼女も惹かれたようだ。ケンゴさんは自戒に自信があるのか、年頃の少女と寝ることにも大した抵抗感をもたないらしい。そういえば出会った時も誘惑を丸っきり無視してくれたわよね。私の存在自体無視しておけば、これからも幸せな家庭を築けていたかもしれないのに。

 私にとって吸精は食事であり、そこに善悪も好悪もない。犯罪者を吸い殺すのも、幸せな夫婦を吸い殺すのも大して変りはないのだ。もちろんヒトにとって、唾棄すべき行為であることだとも認識している。けれど種族が違うのだから考え方だって違うのだ。ヒトを殺すことに、私は微塵も罪悪感など覚えない。

 

「うーん、美咲ちゃんが良いなら私は……。ケンちゃ――、あなたはどう?」

「僕も構わないよ」

「えへへ、嬉しいですっ」

 

 小悪魔みたいなぶりっ子を演じる悪魔。本物です、どうも。私が「保護」されたのが既に夜も遅い時間だったこともあって、もう日付も変わりかけている。警察という組織は規律に厳しそうだし、明日も早いと言ったケンゴさんは若干休息モードに入りかけていた。眠そうに目を瞬(しばた)かせる彼に、ハルカさんが微かに笑って、私たちは揃って寝室へと向かった。

 

 

* * *

 

 

 ――そして、淫靡で凄惨な宴が始まる。

 

 なーんて大仰に言ってみたり。まあ彼らにとっては悪夢でしょうけれど。知ってる? 淫魔って大本は夢魔と呼ばれて、夢の中でエッチなことをして吸精していたらしいわよ。確かに実際に身体を動かすよりは楽なんだろうけど、味気なさそうよね。私は今のスタイルの方が好みだわ。ま、夢の中だろうと現実であろうと、見せるのが悪夢なのだから変わらないわよね。

 ベッドに入った途端、ストンと眠りに落ちたケンゴさんを尻目に、私はハルカさんに向き直った。というかケンゴさん寝つき良すぎでしょ。私が無意識に眠らせちゃったのかと思ったくらいだわ。

 

「おかーさん♪」

「なあに、みさきちゃ――んむっ!?」

 

 優しい顔を向けていた彼女に容赦のないディープなキス。絡めた舌に乗せて、淫魔の媚薬たる唾液を飲み込ませていく。片手で頭を押さえて逃がさないように抱え、空いた方の手でなかなかに豊満な胸を揉みしだいた。

 数十秒かけてじっくりと媚薬を浸透させると、ハルカさんの頬は真っ赤に染まり、軽く胸を刺激してやると身体が跳ねるような感度に仕上がった。下世話な言い方をしてしまえば、エロエロに発情した若奥様だ。うふふ。

 ハルカさんは最初、もがくように抵抗していたが、数秒もすればそれは収まった。とはいえ同じベッドに寝ているのだから、すぐ近くの夫に気付かれることも考慮していたのだが、彼はまだ隣で繰り広げられる猥褻な行為にも気付かずにぐっすりと眠っていた。鈍感さんなのかしら。

 

「はあ、んっ……、美咲ちゃん、何を……」

「ふふふ、ハルカさん、とってもオイシソウだわ……♡」

「っ!?」

 

 女性であるハルカさんに対して、女の武器を使っても効果は無い。私はヒトのフリをやめて彼女に跨り、寝間着を脱いで翼を見せつけてみた。それだけで、ハルカさんの目が驚愕に見開かれる。甘い痺れが脳まで侵しているだろうに、危機感は募ったのだろう、隣で眠る夫の手を掴んで助けを求めだした。

 

「ひっ、あなた、あなたぁ!」

「ん……、どうしたんだい、急に……。美咲ちゃん?」

「おーっと♪」

「!? な、身体が……!」

 

 揺すりながら呼びかけられ、私もそれを止めることをせずに眺めていると、流石のケンゴさんも目を覚まして胡乱気な目でこちらを見る。状況が呑み込めていない内に、魔力を通して強制的に身体の自由を奪って、見せつけるようにハルカさんの胸を揉み、喘がせた。

 

「や、やあっ、やめてっ!」

「けっこう大きいわねー。ふふ、もう感度も充分だし」

「何をしているんだ……、ハルカを放せ!」

 

 厭らしい笑みを浮かべてハルカさんを可愛がっていると、怒気を含んだ声が隣から上がった。首から上は動けるようにしてあるので、これから始まる私たちの情事を逃さず見れるし、聞けるのだ。あなたの相手はまだ先だから、精々興奮しているといいわ。

 

「やめ、おねがい、もうやめて……」

「まだ何にも始まってないですよぉ♡」

「ひゃうぅっ!?」

 

 ハルカさんの寝間着も脱がしていき、露わになった桃色の突起を優しく捻る。全身に回りまわった媚薬が、性感を何倍にもして電撃のような快感を脳髄にまで届けるのだ。恐らく生まれて初めて味わったであろう感覚に、ハルカさんは髪を振り乱して耐えるような声を漏らす。

 

「どれどれ、下の方は~?」

「だめっ、だめぇ!」

 

 下着ごと寝間着を下ろしてやると、とろとろに潤った秘部が現れた。濃い目の茂みに隠れていてなお、濡れそぼっているのが確認できるくらいに妖しく輝いている。割れ目に指を当てないようにわざと焦らしながら撫でさすると、ハルカさんの口からついに嬌声が零れ出た。

 

「ひっ、んんぅぅ!」

「あは♡ 気持ちいいですか?」

「ちが、ちがうぅ……」

「やめろ、やめるんだ!」

 

 大声で喚くケンゴさんを無視して、ハルカさんの秘所に指を侵入させていく。適度以上に涎を垂らすソコは、男を迎える準備万端を言ったところか。まあ、お迎えされるのは男じゃなくて私だけどね。指を離して、自らの股間に魔力を集中させる。

 

「よし、良さそうね。じゃあ……」

「ヒッ!? な、なに……それ……」

「コレですかぁ? コレはですねえ、ハルカさんの膣内(なか)をスキャンして、あなたを一番気持ちよくできる形に成ったおちんちんですよ♡」

「うそ……うそ、そんなの、入らな……」

 

 うっとりと手を組んで頬に合わせ、ソレを見せつける。

 呆然とするハルカさんだが、まあ彼女はきっと、ケンゴさん以外のおちんちんすら見たことがないのでしょうね。そんな彼女の目には、コレ(・・)はちょっと凶悪に映りすぎるのかもしれない。

 なんと言ったって全長は20cm近く、亀頭はちょっと大きめ程度に収まっているものの、竿の太さが平均サイズの1.5倍はありそうだ。そして最も異常なのが、竿の上側に付いているオプションだ。直径1cm、高さ2cmくらいの柔らかいトゲのようなものが群れて連なっている。これは恐らく、ハルカさんの性感帯が膣の天井部分にあることに由来しているのだろう。

 そう、言った通り、コレはハルカさんに合わせて(・・・・)創ったのだ。いくら彼女が否定しても、この奇怪な肉棒は彼女にぴったりとハマり、一番気持ちいい部分を抉る。こんなサイズを欲しがる辺り、普段のセックスじゃ満足できていなかったりするのかしらね。

 

「うふふ、たっぷり可愛がってあげますね♡」

「ひ、や、やだぁ……助けてっ、ケンちゃ――」

「やめろ! ハルカに手を出すな!!」

「聞こえません♪」

「やっ、あああああっああ!」

 

 血を吐きそうな剣幕で叫ぶケンゴさんに底意地の悪い笑みを浮かべてから、巨大な肉棒で一気にハルカさんを抉った。その圧迫感に、彼女は艶めかしい唇から涎が滴るのも気にせずに髪を振り乱している。異常な大きさと形状なはずのソレは、やはり膣の精査に違わず、ぴたりと根本まで侵入したのだった。

 

「おな、かが……ッ、くるひ……!」

「大丈夫ですかぁ? でもハルカさん専用のコレ(・・)は、引き抜く時の方が凄そうですよ♡」

「な、やめ、や、っああああ!」

 

 竿の上部に連なった、肉の芽のような柔らかなトゲトゲがハルカさんの弱い部分を削っていく。逆鱗のように逆立つソレは、これまた逆鱗のように弱いそこを容赦なく責め立てた。挿入時には圧迫感を、引き抜く時には強烈な快感を。休む間もなく与え続けられる刺激に、ついにハルカさんはなりふり構わず悶え始めた。

 

「んぉっ♡ お゛♡ まっへ、だめ、あ゛っ♡」

「ハ、ハルカ……!」

 

 ここまで淫らに乱れる妻を、夫は信じられないような目で見ていた。それもそうだろう、男から見ても化け物級の肉棒だ。おそらくケンゴさんにだって、男としてのプライドがあるはずだし、これまでの夫婦の営みで妻を満足させていたと自負していたはずだ。それを、化け物が、化け物級のモノで見たことない程に悶えさせている。とはいえ彼には分からないだろうけど、媚薬でズルしているのだけどね。

 ちなみに、私は私でこの性交を愉しんではいるが、それは快感を与えるという悦に浸っているというだけで、男程には気持ちよさを感じてはいない。対となるインキュバスと表裏一体と言うが、やはり私は女としての面が強く出るらしい。楽しいは楽しいけれど、ね。

 

「ひい゛っ、ひいぃ、おかしぐ、なるっ!」

「んふ♡ ハルカさんもやっぱり美味しい……」

 

 ぐぽ、と音を立てて肉棒を引き抜く。激しく与えられた快感に、分泌された粘度の高い愛液がソレに大量に纏わりついている。コレが、女性を吸う時のメインディッシュだ。私の魔力を貸与し、かき混ぜて、にじみ出た精力を吸収する。もちろん男女問わず、さながら吸血鬼のごとく吸い上げることもできるが、例によってそんな味気ない行為はしない。

 精力を吸われたハルカさんは息も絶え絶えにベッドに沈み込み、指一本動かせない様子だ。しかし、食事はまだ始まったばかり。抵抗もできない彼女を起こして、ケンゴさんに向けて膝立ちにさせてから、視線だけでヒトを殺せそうな彼に向けて笑みを浮かべる。

 

「ちゃんと奥さんを満足させないと、ダメですよ」

「お前、お前は、絶対に許さない……!」

 

 ぎりりと歯が軋む程に歯噛みして、私を睨んでいる。ヒトに害せるような存在でない私は、気にも留めずに次のひとくちを愉しもうと、まだまだ物欲しげに涎を垂らすハルカさんの割れ目に肉棒をあてがった。力の入らない身体でびくりと震えるも、やはり抵抗まではできないようだ。

 

「も……やめ……ゆるし……」

「今度は感じてるところ、いっぱい見てもらいましょうね♡」

「た、たすけ、ケンちゃ――っああああ!」

「っぐ、……くそ!」

 

 涙を流し助けを請うも、太い肉棒を挿入すればまともに言葉を発することもできないハルカさん。快楽に溺れ絶望に歪む彼女の顔は、女目線を持つサキュバスの私にも魅力的に映っていた。とっても美味しそうに仕上がって……最後はどうやって食べてしまいましょう。そうね、もうひと手間加えてから……。

 

「やん♡ そんなに締め付けたら出ちゃいますっ」

「あえっ、まひゃか……っ! やらぁああ! ケンちゃん! ケンちゃ、あっああぁあ!」

「ハルカぁあ!」

 

 ハルカさんの膣奥に亀頭をぐりぐりと押し付けて、疑似的な射精をする。もちろん精液など出ないので、私の体液を作り変えて似せたものだ。つまりは、特濃媚薬。

 膝立ちだった彼女は私に軽く押され、ケンゴさんに倒れ込む。与えられる快感に痙攣のような動きしかできないハルカさんだが、夫に縋りつくように叫び声をあげている。しかし、もうすぐまともな思考もできなくなるだろう。彼女に注入し、擦り付けるように塗布したモノは私がこれまでに精製した媚薬の中でも特に濃いのだから。夫の前で妻を凌辱するというシチュエーションに酔っていた私は、少し調子に乗ってそんなえげつないモノを作り出してしまっていたのだった。てへ。

 

「あ゛、ああ、なんれ、きもひいぃ♡ ケンひゃん、ケンちゃ……――あ」

「ハル、カ……? おい、おいっ!?」

 

 媚薬に狂ったハルカさんの脳は絶頂を絶頂として認識していないのか、絶え間なく続くオーガズムに膣は痙攣し収縮を繰り返し、彼女のまともな思考はついに途絶えてしまった。それでもなお彼女の身体は快楽に震えている。

 少しやりすぎたかしら。……まあいいか、これが最後のひとくち(・・・・・・・)だし。

 私の媚薬で体液が垂れ流されているハルカさんだが、それだけではない。淫魔の媚薬は精力を増強させると共に生命力、魂を漏れ出やすくしてしまうのだ。中身を溶かして吸い取る、まるで昆虫みたいね。

 目の前で妻が干からびていくのを見て、ケンゴさんは慌てて声をかける。が、もう夫の声など聞こえないくらいにトロけてしまっている。頭も、中身も。ハルカさんは思考などできないはずの意識の中で、最後まで夫の名を呼びながら逝った。

 

「んん~、初めてにしてはまあまあかしら」

 

 崩れ落ち、その衝撃で塵となっていくハルカさんを見ながら感想を漏らす。女性を頂くのは初めてだったけれど、方法についてはまあ及第点? 質に関しては、やはりサキュバスだからか男の方が美味しいと感じるものの、身体を変化させれば犯されるだけでなく犯すこともまた吸精の仕方としてアリだと、本能から知識、経験として身に付いたので良しとしよう。

 

「お、おっおお、お前ぇぇぇえ!」

「あら?」

 

 目の前で文字通り崩れ落ちた妻を見て、ケンゴさんは私の魔力による拘束を振り切って殴りかかってきた。おおっ? 魔力とは吸った生命力を変換して蓄えられたモノ。それによる支配を振り切るのに必要なのはやはり、本人の精力に他ならない。

 つまり彼はナニの如く魂を怒張させ、ヤる気ならぬ殺る気で私の魔力を振り払ったのだろう。怒り狂う男の前で下ネタを混ぜすぎな私である。

 しかし燃え滾る彼は、怒りや殺気を生命力にブーストしていて、とても美味しそうだ。これは今後シチュエーションを愉しむ上で参考になるかもしれない。

 

「ぎッ、が、ぁぶ!」

「うあああ! あああああ!」

 

 猛るケンゴさんの拳を甘んじて受ける。顔の頑丈さをヒトと同等にするサービス付きだ。それでも頭蓋骨の硬さというのはなかなかのもののはずだが、ケンゴさんは警察という身体の強さが求められる組織に身を置いているからか、常人ならば既に死んでいるくらいに顔面が陥没した。

 痛みは感じないが眼孔ごと目を潰されたので彼の様子は気配でしか分からないが、未だ怒りは収まらないようだ。やっぱりオイシソウ。収まらないのならば、もっと燃料を与えればどうなるのかしら。

 

「痛いよ……ケンちゃん」

「その名で、……っ!?」

 

 壊れた顔面をハルカさんのものに作り替える。続けて、身体も。吸精し、魂まで己の物にしたからか、かなり精緻に作り上げることができた。もしかしたら生前のクセまで再現できるかもしれない。そんな私の姿に、ケンゴさんは怒気は収まらないものの私を殴るのを躊躇していた。不思議ね、私がハルカさんじゃないことなんて分かり切っているはずなのに。

 

「うふふ、どうしたの、――ケンちゃん?」

「やめろ! ハルカの姿で、ハルカの声で僕を、呼ぶな……!」

「あは♡ 優しいんだ? えいっ」

 

 悲痛な面持ちで拳を振り上げるも、やはり今の私は殴れないらしい。色んな感情がない交ぜになった彼を押し倒し馬乗りになる。跨ったまま尻に敷いた下半身から衣服を奪い去ると、はっきりと見えはしないが怒気と同様膨れたモノが現れた。

 

「うーん、状況に興奮しているのかしら。私を殴って興奮した? それともハルカさんの裸に、かしら?」

「ち、違う、これは!」

 

 私はまだ彼に精力を貸し与えてはいない。もちろんフェロモンは部屋中に充満してはいるが、ケンゴさんの肉体を強制的に操って勃起はさせていない。つまり、この怒張は彼自身の肉体の反応だ。感情がごちゃ混ぜになっていて思考が読み取れないから原因は分からないけど、この異常に過ぎる状況の何かに反応したのかしらね。まあ、好都合だけど。

 

「私の艶姿はそんなに良かった? あ・な・た♡」

「やめ、うぐぅぅ……」

 

 ケンゴさんの平均サイズな肉棒を膣に挿入する。私も馬鹿にはしないけれど、大きさは重要なファクターだと思っているので、ハルカさんはこれで満足できていたのか少し気になってしまう。私はヒトではないから結婚なんて分からないけど、身体の相性は大切だと思うのよね。それでも今考えることでもないか。

 

「あははっ、おっきくしちゃって、いつもより気持ちいいの?」

「……っ、くそ……」

 

 ケンゴさんの怒りを煽るために嘲笑ってみせる。男の理想を遂げるのが私の本質ではあるけれど、今回は実験的な要素が大きい。これからの食事をもっと美味しく頂けるようになるかもしれないのだから。気分はさながら調理師と言ったところかしら。

 しかし、そんな私の思惑とは裏腹に彼の怒りはどんどんと萎んでいき、生命力さえ見る影もなくなっていってしまった。おちんちんすらも萎え始め、魔力で強制的に勃起状態を維持させる。

 

「ちょっと、どうしたの? 途中で萎えるなんて」

「ハルカ……すまない……ハルカ……」

 

 ケンゴさんはもはや私など見てもいなかった。私とシテいるのに、私を見ていなかったのだ。彼は塵の山になったハルカさんを手に取り、静かに涙を流している。

 先ほどまで漲っていたはずの精力が、美味しそうだと思っていたはずの精気が喪われていく。怒りによるブーストは一過性のものであると理解はしていたものの、反動がここまで大きいとは思わなかったな。全てを諦め絶望した彼の精気は、スカスカのスポンジのような味気なさだ。

 

「はあ、もういいわよ」

「――――ア、ヵ……」

 

 彼の精気と同様に、興味が急速に失われていく。あまりやりたくないことだったが、強制的に射精と絶頂を促して吸精した。彼に残った全てを吸い上げても、味気なさは変わらなかった。まあ、二人合わせてそこそこかしら。前日のが良かったから満腹には近づけたけれど。

 彼もまた塵となり、ハルカさんだったモノと混ざりあう。その姿、いやすでにヒトの姿などはしていないのだが、その有様は妻に寄り添う夫のように見えなくもない。

 

 むう、お腹は満たされたのに釈然としない。もっと濃くて美味しいのが欲しいな。

 しかし得るものはあった。これからに活かせそうな何かだ。

 

 私は彼らの愛の巣を後にして、姿を美咲に戻すと夜の闇に飛び立った。満腹感には浸れたものの、どうにも物足りない。その不満を埋める何かを探して。






強制NTR?
NTRものの話は割と好きなんですけど、書いててどうにも興が乗らなかった。筆も進まず……。文章も投げやり感がにじみ出ているかもしれません。申し訳ないです。

当初二人まとめてきっちり美味しく頂くはずだったんですけど、何故かBADどころかWORST ENDになってしまいました。
次に用意していた話が先に完成していたので、繋がりが妙な感じになるかもしれません。
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