前半のファンタジー(笑)部分はぶっちゃけ読み飛ばしても全く問題はありません。
けど、こういう設定って考えるのめっちゃ楽しいんですよね。ついつい文字数が伸びてしまいました。
※ゲスいです
※性別に関して貶める意図は全くありません
どっかの世界のフィクションだということでひとつ。
ヤリ狂うカップルはもう記憶の彼方に。その夜私は適当なおっさんを捕まえて
「何でもできます」という誘い文句は中年の男をその気にさせるには充分すぎたようで、彼は気前よくお金を差し出してきた。最終的に有り金全部頂いたけれど。彼もヒトでは決して味わえない快楽の中に逝けたのだから、そこはWin-Winかなと断じてみる。
そして日を跨いで今は、とある喫茶店のテラスで珈琲を啜っていた。
この珈琲という飲み物はなかなかどうして旨い。まあ、世間一般で美味しいと言われているモノより、渋くて苦い失敗作の方が美味しく感じるあたり淫魔の味覚なのだけれども。あと塩を入れるともっと良いかしら。
こうしてヒトのフリをしているのは、もちろん獲物の物色のためである。このオープンテラスというのは、大手を振って喧伝はしていないけど、見目麗しいヒトしか案内されないらしい。なのでここに居るのは美男美女ばかりであって、そうと分かっている周りも目の保養と注目してくるのだ。今日は休日とあって行き交うヒトの数も多く、先ほどから多くの視線が私に注がれている。といっても中学生の制服を着た女の子を衆人環視の中ナンパできるような男は少ないので、声はかけられていないが。うーん、私服も勉強しないと選択肢が狭まるわねえ。
そう思案しながら、注がれる淫欲の視線の中でも美味しそうな男を選別していると、ふいに声がかけられた。
「よっ」
「…………?」
気軽に、馴れ馴れしく声をかけてきたのは20歳前後くらいと思われる青年。不潔さを全く感じさせない短く綺麗な金髪に青い瞳がこの国の人間では無いことを語っている。しかし顔つきは美麗かつ精悍ながらもアジアの面持ちを残していて、出身がどこかと尋ねられたら答えに窮しそうだ。まるで漫画に出てくるイケメンみたいね。身体も鍛えられているし、あの腕に抱かれたいと思う女は数多く居そうだ。その証拠に、私に注がれる視線が二倍に増えた。つまり、女性からの嫉妬の目だ。
しかし、だ。何故か
「どなたかしら。どこかで会った?」
「いや、初めましてだけど」
馴れ馴れしさに以前に会ったが名前も忘れた男かと思ったが違ったようだ。不審に思ってみょんみょんと魔力を飛ばしても、何故だか全く思考が読み取れない。なんなの、この男?
「あーやっぱ、同族に会うのは初めてか?」
「同族……?」
まさか、この男も淫魔なのかしら。男だからインキュバスね。うーん、納得はできるけども。私たち淫魔は子を
「そそ。……分かるだろ?」
男がニヤリと口の端を歪めた。やはりこの考えで間違いないようだ。笑いながら立ち昇らせたのは間違いなく私と同じ魔力だった。ふうん、これが私の対となる存在かあ。同族の存在はなんとなく理解していたけれど、探し出そうとは思っていなかった。会って何か利益があるようには思えなかったし。だからこそ、私は警戒している。何を思って、こいつは私に接触してきたのか。
「それで、何の用? もしかしてアレかしら、ここは俺の縄張りだぞ、みたいな」
「ははっ! 違う違う」
目を細めて睨みながら珈琲を啜ると、彼はかんらかんらと笑って手を振った。ふむ、どうやら害意は無さそうね。思考が読めないから断定はできないけれど、例え消し飛ばされても再生できるのだから、逃げるくらいは可能なはずだ。
「あ、お前はその身体の名前、なんてーの?」
「……美咲よ」
事もなげに名前を尋ねられる。その身体の、って言うあたり淫魔の事情を分かってると理解できる。私はヒトのマナーなんて気にもしていないので、先に名乗れと言うこともなく普通に答えた。
「美咲か。いいね、美しいに、
「その発想は無かったわね。ただ近くを通りかかった女の子から借りてるだけよ」
「なんだ、そうか。まあ俺もそのクチなんだけどな。
「フフッ、光を? あなたが? ふふふっ」
別に日光に弱いわけじゃないけれど、性を主体に存在する悪魔が闇夜のイメージなのは当然のことだろう。それなのに光司、光を司ると聞いて思わず吹き出してしまった。皮肉にも程があるわよね。
くすくすと笑う私に、光司は気を悪くすることもなく、むしろ分かってくれたのが嬉しかったのか爽やかな笑みを浮かべていた。
「だろ? ウケるよな。俺も気に入ってんだ」
「ええ、良い名前、ね……くく」
「ウケすぎだろ。あ、すんませーん俺も珈琲。ブレンドで」
未だ喉を鳴らして笑いを押し殺すのに苦労している私を一言で切って、通りかかった店員に注文をする。堂に入った所作は、生まれてすぐ知識が与えられる淫魔に置いても、生が長いことを表しているようにも思えた。
「同族には久しぶりに会ったからな、思わず声かけちまったんだ。あ、なんならケーキ奢ってやろうか?」
「結構よ、甘いモノは苦手なの。あなたは結構、その、長生きしてるの?」
「甘いの美味いのに……。そうだな、まだ20年は経ってない、はずだ。正直覚えてねえ」
ふうん、と鼻で答えた。まあ私たちにとって時間は無限にあるようなモノだしね。それを考えると、私たちはどこへ向かっているのかしら。
「私はまだ1ヵ月も経ってないわ」
「へえ、ずいぶん若いんだな。だからか、同族に初めて会って、縄張りなんて言ってたのは」
「ええ、まあ……、そんなに変なことだった?」
彼の口振りからしても、淫魔という存在はそこまで数が居るとは思えない。というかたくさん居すぎたらヒトが絶滅しそう。だから特定の縄張りでも持っているのかと思ったのだけれど、笑われるほど変な質問だったのかしら?
首を傾げていると、光司はしたり顔で頷いた。そして大げさに手を広げて語りだす。
「そりゃあそうだろ。だってこの世には60億もの餌が居るんだぜ? しかも増え続けてるときた。んなのに、縄張りもクソもねーだろ」
「……ん、そうねえ」
それもそうよね。しかも、光司はインキュバスで、私はサキュバスだ。互いに表裏一体で雌雄同体とはいえ、主軸となる性別が違うのだからメインとなるターゲットが被ることもない。それを考えれば、別にどこで何を吸っていようが知ったことじゃない。なるほど、と私も頷いた。
光司は「だろ?」と笑い、さらに続ける。
「適当に吸い殺してりゃそれなりに生きられるし、たまには手間暇かけて育て上げるのも良い。そうやって自由に生きてりゃ、いつかお迎えが来るんだ」
「お迎え?」
聞き逃せない単語に、思わず鸚鵡返しで尋ねた。
「ああ、お前はまだ分からないか。お迎えってのは――っと、どうも」
注文していた珈琲が届いて一旦話が途切れる。というかこんなヒトの居るところで話していいことなのかしら。周囲を伺ってみると、私たちを見る視線は多々あれど、特に不審な目で見てくる者はいなかった。そんな私の様子に、光司が珈琲に砂糖とミルクをどばどば入れながら説明を再開する。うへ。
「ん? ああ、周りなら気にしなくてもいいぜ。チカラを巡らせて結界張ってるんだ。話の内容は聞かれねえよ」
「へえ、そういう使い方もあるんだ」
「あとで教えてやるよ」
そう言って甘ったるそうな珈琲をすする。長く生きてるといろいろ器用になるのね。それと、私は淫魔の能力を魔力と呼んでいるけれど、光司はただ単にチカラと呼称しているみたい。ここらへんも個性なのかしら。味覚もね。
理解し難い飲み物を一口飲み下して、喉を潤した光司は先ほどの「お迎え」について話してくれた。
「淫魔ってのはある程度の力、ああこっちは精力って意味のな、それを溜めこむと別の次元に行けるらしいんだ。らしい、ってのはこれが受け売りだからなんだが。俺の先輩っつーか、師匠? そんな感じの淫魔が言っててな。あと実際に見た」
「別の、次元」
「そう。魔界とか呼ばれてるけど、まあ悪魔にとっての天国みたいなモンらしい。俺たちが本物の天国に行けないんだから、例えとして正しいのか分かんねえけど。その淫魔は、淫魔だから見た目は若いんだけど、何十年も生きてる奴で色んな事を教えてくれたんだ。で、最後に次元の狭間みたいなモノの中に消えていった」
「それはただ死んだのではなくて?」
「いや、生きてるよ。一回だけ戻ってきたんだ。すぐ帰ったけど。なんでも、魔界から過去未来問わず無限の平行世界に行けるらしいんだよ。しかもやりたい放題できるんだと。過去に行って大英雄の精気を吸ったり、未来に行ってヒトより上位の知的生命体を吸ったり。だからこんな平凡な世界に興味ねえって帰ってった。んで、そうやって集めたチカラを、魔界の王に少しずつ献上してるんだってさ。いつか神堕としをするのが目的らしい」
はあ、と思わずため息が漏れた。なにそのファンタジー。いや私たちの存在もある種ファンタジーだけどさ。話が壮大すぎてついていけないわよ。平行世界? 魔界の王に、神堕とし? はあ……。はあ?
「そう……、うん、そうなの?」
「いや俺も初めて聞いた時はそんな反応だったけどさ」
光司は苦笑する。当時のことを思い出しているのだろうか。まあこんな突飛な話を聞いて、うんなるほど分かった! と素直に頷けるやつは少ないでしょうね。
「まあ詰まるところ、俺たちは下級も下級、使いっぱしりにすらなれてない悪魔なんだよ」
その結論を、私は割かし素直に呑み込めたと思う。神堕としとやらには興味は無いけれど、大英雄の精気なんて、是非とも吸ってみたいわよね。何十年先のことかは分からないけど、夢がある、と思えば壮大なファンタジーもまあ、夢見ていいんじゃないかしら。それまでは、ちまちまとヒトの精を吸ってお勉強してなさいってコトよね。
「なんとなくだけど、理解はしたわ」
「お、こんなに早く信じるなんてな。俺なんてゲラゲラ笑っちゃって、師匠にタコ殴りにされたぜ」
「それはお気の毒様。でも夢があって良いじゃない? 英雄の精気とか、どんな味がするのかしら」
うっとりと物思いに耽る。ただの健康な童貞でさえあんなに濃厚な旨味を持っているのだ。それが歴史を変えるような因果を持った男なら、私はどうなってしまうのか。光司もうんうんと頷いている。
「だよなあ。正直未来の上位生命体とか見たこともないから想像もできないけど、過去ならさ。俺はジャンヌ・ダルクとか食ってみてえよ」
じゅるりと涎を垂らして妄想に浸っている光司。聖処女ねえ。悪魔のあなたは、消し飛ばされなければいいけれどね。
しかし別のことに対してもなるほどと頷ける。それは光司が私よりもヒトを軽く考えていることについてだった。私はターゲットしたヒトに対して、一人一人理想を叶えて吸精するのが普通だと思っていたし、事実そうしていた。けれど光司はどう見ても軽く見ている。それは60億という飽食に過ぎるこの世界のヒトの数によるものかと思っていたけど、こんな未来(過去にも行けるけど)を知っていればそう考えるのもおかしくはない。
つまり、この世界のヒトは前菜なのだ。
メインディッシュは遠い未来の話だけども、それが早く近づくのならば、食事の質を考えずに吸精するのも悪くない。しかしまあ、前菜とは言え不味いモノなんて食べたくないのが道理よね。私は私のペースで美味しく楽しく、この世界でのせいを謳歌しよう。あ、これトリプルミーニングね。そのために遠慮することをやめれば、もっと楽にごちそうにありつけるのかもしれない。
そうと決まれば、光司には先輩として色々聞かせてもらおうかしら。
「ねえ光司、もっといろいろ聞かせてよ」
「おお良いぜ、なんでも聞いてくれよ」
二つ返事で了承してくれた。これならもっと早く出会いたかったかもね。私は気のいいお仲間に笑みを浮かべて、楽しくお喋りに興じた。
* * *
「この世界は前座、ヒトは前菜と言っていいけど、どうせなら美味しく
「そうだなー、やっぱ、いかに相手を自分に惚れさせるかだな。依存させると言い換えてもいい」
お互いにお代わりをした珈琲をすすりながら、なんとも凶悪な話題を微笑ましげに交わす。相変わらず周囲からは好奇や嫉妬の視線が飛んでくるが、今はどうでもいい。
「美咲はアレだろ、愛だの恋だのよく分からん感情で精気の質が変わるってことを言いたいんだろ?」
「うん、そうそう」
やはり同族だからか説明しなくても分かってくれて話が早い。光司は人差指を立てて説明してくれた。
「ぶっちゃけ出会ってすぐは無理だな。たまに依存性の高い奴はいるけど、援交みたいなのは一定のラインから上がりにくい。特に男は」
「はーん、やっぱそういうものなのね」
「その点女は結構楽だぞ。理想の姿と性格を見せて、あとは金持ちだってのを証明すれば身を捧げてでも、ってのが割と食いついてくる」
「なにそれずるい」
むうと膨れた私に、光司はけらけらと笑った。
「ま、その分デキる女ってのが落とすのムズいんだけどよ、それがまた美味いんだよな」
「なるほどねえ……」
何か最低なこと言ってるけど、それはヒトの目線で言えばの話。私たちにはその程度のことだ。とにかく、やっぱり一朝一夕じゃ極旨精液は味わえないのね……。あの名も知らぬおじ様は特例か。ユウトはユウトで数日かかったわけだし。んー、何かいい手はないのかしら。
「あれだなー、やっぱ少し時間をかけて育てて、片手間にどっかでつまみ食いってのが一番効率がいいんじゃねえの?」
「それしかないかあ」
光司の提案にとりあえず頷いておく。育てるというのは、ターゲットに近づいて恋愛ごっこでもしていればいいのだろう。その間にお腹が空いたら、会わない時間に手頃な男でもひっかければいい。うーん悪女。悪魔だけど。
ついでに単純な好奇心でもうひとつ聞いてみた。
「ねえねえ、光司が
「ん? んー……、そう言われてみると……」
この問いに、むむむと唸っている光司。まあ十何年か生きていれば印象に残ったヒトの味も埋もれてしまうのだろう、塵の山の中に。ひとしきり唸ったあと、彼はひとつ頷いて話しはじめた。
「やっぱ全部の中で一番は思い出せねえけど、最近のだと傷心中の女が美味かったな」
「わーお、ゲスーい」
「くははっ、そう言うなって。簡単に落とせて味も良いからオススメだぜ」
「覚えておくわ。それで、どんな感じだったの?」
「そうだな――――」
――――――
――――
――
そいつと出会ったのは偶然だ。ホントだぜ、だって満腹だったからな。そのおかげで時間かけて食えたんだし。
ともあれ、その女は夜にヒトが少ないとはいえ人目も憚らずに泣いてたんだよ。あ、これはイケるな、って本能がビンビンに反応してた。物理的には何も入ってないけど、心情的には膨れた腹をさすりながら、俺はその女に近づいて行った。
「こんばんは、どうかしたのか?」
「ひぐ……ぐす……」
もう丸無視。眼中無し。ちょっと傷ついたね。んまあめんどくさいんでチカラを使って心を読んだんだけどよ、なんでも10年来の幼馴染に浮気されて別れたんだとさ。カカ、そりゃあ泣きもするわな。まあ傷がデカけりゃデカい程、付け入る隙も大きいわけだし、まずは慰めてやろうと思ったわけよ。
「ほら、お姉さん。こんな夜中に危ないですよ」
「っ、? ど、どうも……」
顔を上げたそいつはけっこうな美人さんだった。20代の物静かそうな感じ。こんな女でも浮気されるんだなーって思わなくもないくらいにはな。あちこちで女に手を出してる俺が言うのもなんだけど。けどまあ、長く一人の男と居たからか、あまり洒落っ気は無さそうだ。
そいつ――あー、名前なんだっけな……思い出せねえ。そこの店員がアヤだからとりあえずアヤにしとくわ。アヤは俺の差し出したハンカチで目を拭ってぱちくりと瞬きをした。今更になって俺の存在に気付いたみたいに気まずそうにしてたから、無視されたのは許しておいたわ。
「何かあったんですか? 良かったら相談に乗りますよ」
「いえ、そんな、人に聞かせるような話じゃないですし……」
ふるふると小さくかぶりを振るアヤだが、ハンカチを握りしめているあたりどこか期待しているようにも見える。ま、俺くらいになると意図的に振り払うのが困難なくらいイケメンだし? 文字通り女殺しだからな。
「ふふ、何かあったのは隠さないんですね」
「え、あ、その……」
まああそこまで大泣きしといて何もありませんなんて言えねえだろうがな。アヤは割と乙女チックな女だったから、芝居じみたセリフで責めてみることにしたんだ。
「どこか落ち着けるところで話しませんか。そのハンカチが乾くくらいの時間なら、構わないでしょう?」
「あ、す、すみません」
「いえいえ、俺は速水光司と言います」
「えっと、私は、□□です」
ここまで話しといてあれだけど、名前さっぱり思い出せないからアヤのままでいくわ。ハンカチを返そうとする彼女を押しとどめて(どうせタダだし)歩き出すと、戸惑いながらもついてきた。ヤるだけならここでチカラ使って発情させればOKだが、腹は満ちてる。今回はじっくり調理するかとそこで決めた。
数分歩いて雰囲気の良いバーに彼女を案内した。こういう時ヒトの多い場所とか、勘ぐるような目を向けてくる阿呆のいるところは下策だからな。その店は薄暗かったが、隅々まで綺麗に掃除されていて内装も華美すぎず、静かにジャズが流れる落ち着いた良い店だった。
カウンターの一番端にアヤを座らせて、バーテンダーに「落ち着けるようなのを」と頼んだ。こういう時曖昧な注文でも伝わるのが便利だよな。しっかりした店なら目を腫らした女を連れても何も言わねえし。
「いいお店ですね……」
「そうだね、初めて入ったけど当たりだったかも」
「初めてなんですか? なんだか手馴れてそうでしたけど」
キョロキョロと周りを見渡すアヤは、こういう店には初めて入ったらしい。俺は何度か経験があるが、この店自体が初めてなのは本当だ。当たりだと思ったのもな。
遊び慣れた男はアヤの好みでは無いのか、そこで少し警戒の色が見えた。そのくせこういう店に憧れがあるのが、ヒトの不思議なところだよな。俺は適当に誤魔化しつつ、アヤの傷ついた心に少しずつにじり寄る。
「そんなに経験は無いですよ、特に泣いてる
「うっ」
「はは、気にしないで。それで、どうして泣いていたの?」
少しずつ言葉じりを砕いて心に近づいていく。恥ずかしそうにしていたアヤも、ぽつりぽつりと語りだしていった。
幼馴染と別れたこと、どれだけ好きだったか、どれだけ傷ついたか。最後の方にはカクテルを一気に煽りながら盛大に愚痴をぶちまけてたな。俺は何百何千と女を相手にしてたから、こういう話を聞くのは大得意だぜ。相槌に同意、傷ついた心に寄り添い、そして相手の理想を見抜いて唆す。
アヤは少し酔っているのか、頬に赤みが差した顔で俺をぽけーっと見つめていた。ひとしきり喚いて気が済んだらしく、話が途切れて互いに見つめ合う。
「だいぶ落ち着けたみたいだね。良かったら家まで送るよ」
「あ、ま、待って!」
「ん?」
腰を浮かせると慌てたように呼び止められた。ハンカチでもう乾き始めた目の端を拭って、俺に庇護欲をそそらせる女の目をして。
「は、ハンカチが乾くまでは、一緒にいてくれるんですよね?」
「……もちろん」
内心でニヤリと口の端を歪める。こういう時、自分が悪魔だって自覚できるよな。あ、分かる?
それからは愚痴ではなく、日を跨ぐまで歓談に興じていた。生まれてからの年数じゃ向こうが上だが、経験の量で言ったら俺が上だからな。アヤ好みの話をチョイスしながら、色んなことを話した。だいたい嘘話だけど。その中の一つに、こっそりと金持ちであることを匂わせる。やらしく誇示しないのがコツだ。アヤも幼馴染が居た頃から将来に不安を持っていたらしいから、あからさまに食いついては来なかったが俺を強い雄として意識し始めたようだ。
「――と、そろそろ良い時間だね。さすがにこれ以上は不味いかな?」
「あ、もうこんな時間……。すみません、遅くまで」
「いいよ、綺麗なヒトと話すのは楽しかったしね」
「もう……」
会話の中で散々誉めそやしたおかげで、すっかり上機嫌だ。今日はこのまま帰らせて、また後日攻略を再開するとしよう。先に店を出てもらい会計を済ませて、タクシーが通りかかるのを道端で待つ。その間に、連絡先の交換を申し出た。
「良かったら、また会えないかな。今日はとても楽しかったから」
「私も、楽しかったです……。これ、あ、赤外線ありますか?」
互いのスマートフォンを向け合い、連絡先を登録する。ん? ああ携帯な。偽造だけどちゃんと住所持ってるし。良かったらお前のも買ってやろうか。
んで、その日はそれでオシマイ。満腹だったのもあるけど、ここでがっつかないのが良い男を演じるポイントだな。
* * *
それから、1ヵ月くらいか。何度かと言うには頻繁すぎる逢瀬を経て、俺はついにアヤの部屋に上がった。女の部屋と言うには寂しい感じのする内装だったが、別れた男の物を処分したらこうなったらしい。出された茶をすすりながら、これまでのように楽しいお喋りを演じる。
「あはは、本当に色んなことを知ってるんだねー、光司さん」
「まあ、浅く広く、ね。それより、さん付けはもう要らないって言ったろ? アヤの方が年上なんだしさ」
「うう、そうなん、だけど。光司……はなんか年下とは思えないっていうかさ」
照れて頬を掻く仕草に、優しい笑みを浮かべて見せる。女に歳の話は厳禁だと言うが、ここまで親密になってしまえば構わない。むしろ全てさらけ出してなお隣に居ることこそが大事なんだ。味的な意味でも。
俺はすっかり砕けた口調になっているが、アヤにもそれを求める。あと一歩で甘美で淫靡な世界に引きずり込める、そんなラインにまで俺たちの関係は達していた。この1ヵ月、余所でつまみ食いはすれども、美味と言える吸精はできていない。極上の獲物を前に涎が溢れるが、それを決して悟らせずに柔らかい表情を張り付けた。
「それでも、もうそんな他人行儀な関係じゃないだろ?」
「ひゃあっ!」
腰に手を回して優しく抱き寄せると、特に抵抗もなくすっぽりと俺の胸の中に納まった。約1ヵ月、触れる機会なんてのは手を繋ぐ、頭を撫でる、少しタイミングを計っても肩を抱く程度だった。プラトニックだろ?
座ったまましな垂れかかるような体勢の彼女を静かに撫でる。アヤは気持ちよさそうに目を細めるが、今日はこの程度じゃ終わらせない。男を部屋に上げるという意味を身体の一番奥に刻み込んでやる。まあ、向こうも分かってはいるみたいだが。何せこれまで余り色気のあるファッションをしてこなかった彼女が、今日はやたらと露出が多い恰好をしているのだから。淡いブルーのシフォンシャツは胸元が広げられ、下にワンピース型のフレアスカートが覗いている。今まで、酷い時ではジーパンで来た時さえあるアヤには、結構な勝負服であると思われた。
「ほら、アヤ」
「あ……光司……」
そっと顔を近づけると陶酔するかのように目を瞑る。ここまで来れば身体を許すだろう。チェックメイトを確信しつつ、リップでしっかりとめかしこんだ唇に吸い付いた。まずは触れるだけで、次に唇同士こすり合わせるように、そして次第に開いていった口の中に舌を侵入させる。アヤの鼻からくぐもった声が漏れるも無視して貪った。
ざらざらぬるぬるとした舌の感触が心地良い。どうして女はこうも甘くて美味いのか。だから甘いモノが好きなんだけど、お前は逆みたいだな?
アヤの口内を味わいつくしてから離れると、彼女はくたりと倒れ込んだ。淫魔の唾液を飲ませられながら愛撫しまくったからな、そうなるだろ。
力の入らない彼女をベッドに寝かせて、俺も隣で横になる。軽く頭を持ち上げて腕を入れて腕枕にすると、アヤは甘えて擦りついてきた。すでに目はとろんと潤い、ぼやけている。
空いた方の手で頬をさすり、少しずつ下へ下へと進行させる。チカラを込めた愛撫が通った肌に蛞蝓の這ったような跡が残る。俺にしか見えないけど。強制的に敏感にさせたその首筋にキスをしてアヤを喘がせながら、するする手を下げていく。
「あ、あ、まって……」
「待たない」
「ひゃうぅっ♡」
口だけで抵抗するアヤの胸をひと揉みだけしてさらに進行。彼女の目じりは困ったように垂れさがっているくせに、期待にうるうると輝いていた。
ついに到着したスカートの上から下腹部を優しく撫でる。もう少し手を下げれば熱気さえ感じられそうなほど、彼女の身体は男を迎える準備ができていそうだった。だが、さらにひと手間加えて情欲の炎を燃え上がらせることにした。手のひらに弱めにチカラを巡らせてじっくりと浸透させていく。甘い毒がアヤの
「ん、あ、はあぁ……はああぁ……♡」
恐らくはかつてないほどに肉欲に飢えているのだろう、漏れる吐息には過分に熱が含まれていて見ただけで発情していると分かってしまうくらいだ。そんな彼女のスカートの中に手を侵入させて、ゆっくりと、内股の柔らかな感触を楽しむ。アヤも俺の手の感触を味わっているのか、少し動く度に小さく震えていた。
やがて手が脚を登り切り、付け根へと到達する。言葉でさえ抵抗しなくなったアヤに、耳元で適当な賛辞を送りながら下着越しに割れ目をなぞり撫で上げた。
「ああっ、ひあぁ♡ 光司っ、キス♡ きす、しみゅっ、ん、んんんぅ♡」
唇を貪りながら指を滑り込ませた。下着を横にずらして侵入した指が、すでに充分濡れそぼった膣をかき分けて刺激していく。指の腹で天井部を押し上げると、アヤの脚がピンと伸びて快感に打ち震えていた。
「っはあ、ここ、気持ちいいのか?」
「う、っん♡ すごい、きもちいいっ♡」
互いの間に掛かる唾液の橋も気にせずに、アヤは与えられる快感に溺れていく。そんな様子に、俺は嗜虐心が燻るのを感じていた。
経験回数は置いておき、これまで一人の男しか知らなかった彼女の身体に、本当の快楽というモノを叩き込んでやる。10年近くかけて教え込まれた幼馴染とのセックスを、俺が上書きして、塗りつぶして、染め上げてやる。
そんな悪辣な俺の内心を知らずに、アヤは可愛らしい嬌声を上げながら俺を求めていた。
「光司ぃ……もっとぉ……♡」
「よしよし」
枕に使っていた腕を肩に回して抱き寄せて、さらに指を激しく動かしてかき回す。もちろん痛みなど与えない。今の状態なら痛みすら快感になるかもしれないが、それは今日の趣旨に反するからな。
アヤは俺の胸にしがみつきながら耐えるように目を瞑っているが、ぞくぞくと背中を駆け上がる快感に少しずつ理性の防壁が剥がれていくのが分かる。そして最後に弱い部分を徹底的にいじめてやると、ついに絶頂まで高まった快感がアヤの口から甘い吐息を吐き出させ、膣は収縮して俺の指を締め上げた。
「はあっ、ああああ♡ はぅ、ふうぅ……んんっ♡」
「ふふ、可愛いな、アヤは……」
陶酔した瞳が虚ろに彷徨っている彼女の頬にキスを落として耳元で囁くと、微かに身動ぎして呼吸を整えだした。女は質の良いオーガズムを与えればしばらく浸っていられるからな、僅かに込めたチカラも相まって数分は悶えているだろう。それを邪魔しないように少しずつ服を肌蹴させていく。軽い肌触りのシフォンシャツのボタンを外していくと、未だ息の整わないアヤが手をもたげて俺の動きを邪魔しようとするが、全く力の入っていないそれは抵抗にすらなりえなかった。
「ダメぇ……光司、まってぇ……」
「そんなこと言って、俺の為にこんな可愛い下着着けてきてくれたんだろ?」
「そ、だけど……恥ずかしいよ……」
シャツを完全に開き、その下のワンピースの紐を肩から滑り落とすと、淡いブルーのブラが覗いた。なかなか似合ってるなと思ったので素直に褒めると、アヤは恥ずかしそうにしながらもまんざらではなさそうに俯いた。
ぽそぽそと漏れる制止の声を唇で塞ぎながら、滑らかな肌を撫でるように服を下ろしていく。残すは下着のみとなったところで、俺も着ていた服をゆっくりと脱いでいった。程よく鍛えられた(ように作った)身体は男ですら美しいと思わせる肉体美だ。アヤはそっと胸筋に手を這わせて「……すごい」と小さな声で呟いていた。
細かく愛撫を繰り返しながら残った下着も剥いでいく。微かだった抵抗さえもなくなり、ついに互いに一糸纏わぬ姿となった。怖がらせないように静かに、覆いかぶさるような体勢になっていく。
「ほ、ほんとにしちゃうんだ……」
「嫌だった?」
真っ赤な顔をして俺を見上げるアヤに最後通牒のような問いを投げかける。俺自身はもう1ヵ月くらいなら伸ばしても良かったしな。しかし彼女は小さくかぶりを振って、無言で俺を受け入れたのだった。俺は最後にチカラを使ってアヤの心を読んでみた。
『まだ出会って1ヵ月なのに……アイツと別れたばっかりなのに、私……この人のこと、好きになっちゃってる……』
その深層の声を聞き、思わず笑みが零れてしまう。幸いにしてアヤは俯いていてこちらを見ていない。しかしその視線の先にぶら下がっていたモノを見て驚いたように声を上げた。
「ひゃ、まってまって! 光司の、おっきすぎるよ……」
慌てふためいているアヤだが、コレはちゃんと彼女に合わせて造った特注品だ。彼女の膣にぴったりとハマって最上の至福をもたらす肉の棒。だが彼女には巨大すぎる兵器のように見えてしまっているらしい。
「大丈夫だよ。ほら、触ってみて……」
「で、でもっ、わ、わ、すごい……」
「それに、アヤもちゃんと準備できてるみたいだし」
「あっ、やんっ♡ だって、光司の指が、気持ちよかったから……」
彼女の指が俺のモノに添えられたまま、濡れた秘所に肉棒をあてがう。ぬるりとした感触と、期待の熱が先端を包んだ。だがここでまたアヤのストップがかかる。
「あ、ゴム、ゴム付けないと……」
「要らないよ」
「でっ、でも」
「デキてもデキなくても、責任は取るよ。いや、責任なんかなくても、俺はアヤが欲しいんだ」
「……光司」
なーんて、淫魔の精液(モドキ)じゃ妊娠なんてできませんけどね。この国の女は「責任」という言葉が好きな奴が多い。もちろん行きずりセックスが好きな奴もいるし、スポーツ感覚で後腐れなくってのが好みな奴もいる。全員死んでるけど。
まあアヤみたいな真面目タイプはこの言葉が効くってことだ。この1ヵ月でやらしくない程度に金持ちアピールしてきたしな。自らを養える財力と社会的地位。これがこの国の多くの雌が求める、強い雄の証明だ。肉体は二の次……だが見た目が良いと話も聞いてもらいやすいからな。
「アヤの全てを、俺にくれ……」
「……うん」
相変わらず芝居じみたセリフがお好みなようで。分かりやすいから全然いいんだけど。
アヤはうっとりと俺の目を見つめている。これが悪魔に魅入られるってやつだな。俺はあてがっていたモノをゆっくりと秘所に沈み込ませ、そのままじっくりと膣壁を味わいながら最奥まで突き入れた。
「ふ、あ♡ ~~ッ、ほんとに、全部入った、の?」
「ああ、苦しくないか?」
「うん……大丈夫」
サイズ調整もばっちり、アヤの
「おくっ♡ あたって、これ、だめぇ……♡」
「ここも好きみたいだな」
「わかっにゃい♡ こんなの、初めて、だもんっ……」
だろうなあ。読み取った過去の記憶からじゃ、あんまり満足した性交をしてこなかったみたいだし。俺も慣れきったこととはいえ、淫魔だからな。女を満足させることにも快感を覚える。だからアヤのセリフは俺のプライドをくすぐる良い燃料となった。
「ちょっと強めに動く、ぞっ」
「んんぅ♡ あっ、あ、はう、ふうぅぅ♡ ふか、すぎぃ♡」
引き抜くギリギリまで腰を下げ、また一気に奥まで突き入れる。長いストロークのピストン運動が繰り返される毎に、アヤの嬌声は激しさを増していく。その中で何度か絶頂を迎えていたようだが、攻勢を崩さずにしばらくいじめ続けた。
「まっへ、まっ、あ♡ イってう、イ、って、からぁ♡ あ、あ、また……っ! ――っ♡」
「可愛いな……最高だよ、アヤ。もっと、感じてるところ見せてくれ」
呂律の回らなくなったアヤの耳元で甘言を以て誉めそやす。チカラの籠った言葉が言霊となってアヤに刻まれる。もはや全身が性感帯と言ってもいいくらいに、彼女の身体は昂ぶっていた。胸を軽く揉んだだけでも淫靡な声を上げて身を捩じらせる。
「なんでぇ……っ、こんな、きもちいのっ♡ こんなの、しらなっ、いいぃ♡」
「身体の、相性も、ばっちりってことかな」
「うん、んんぅ、うれ……しい、よお♡」
アヤの身体を抱き上げ、対面座位の状態へ移行する。ひと際深く挿入されたモノに、アヤの子宮が押し上げられた。
「ふああぁあっ♡ これ、ダメ、だめ、おかしくなるっ……」
「そうか? ……じゃあ自分で動いてみなよ」
「はあぅ……、うん……。――っ!?」
腰の小さな動きで、子宮口にあてがわれていた亀頭部分がぐりゅんとうねって、最奥の広がっている膣壁を蹂躙した。アヤは自ら動いたにも関わらず、その刺激に一瞬意識を失うほどの快感を得て俺の方へ倒れ込んできた。それを受け止めてやって、背中を優しく撫でる。
びくびくと痙攣を続けるアヤが、息も絶え絶えに俺にしがみついて、強すぎる快感に恐怖を覚えていた。
「あーっ、ああーっ♡ こうじ、だめ、すごいの、きちゃう……♡ あっ、こわい、こわいよっ」
「大丈夫だよ、ほら、ちゃんと抱き付いてな」
「うん、うんっ♡ あ♡ あ、くる、く……、イッ、あ――――」
優しい言葉と緩やかな愛撫でまた昂ぶらせながら、最後に腰を動かして一突き。それでアヤはまた一瞬の意識の喪失と共に盛大な絶頂を迎えたのだった。
がくがくと意思もなく激しく痙攣する脚と、反して健気に俺にしがみ付く両腕。何も見えていなさそうな瞳に笑いかけて、少しだけ吸精した。肉棒に纏わりつく愛液と、いじらしくも俺に刺激を与え続けている膣壁から熱を奪うように、僅かにひとくち分だけ、アヤの精力を頂く。
――――美味。
言葉通りに俺に全てを捧げんとした女の精は、なんとも甘美でトロけるような美味さだった。ああ、もっとだ。もっとくれ。
もう少し楽しもうと思っていた理性を本能が押し流そうとした瞬間、アヤの携帯が着信を知らせる音楽を奏でながら振動し始めた。
「ん……電話だぞ、アヤ」
「ひあ……あうぅ……ぅい、むりぃ……♡」
ようやく自我を取り戻したアヤの背中を軽く叩いて知らせてやるも、甘い痺れに酔いしれている彼女は俺の首元に顔をこすりつけるのみで、電話をとることを放棄したのだった。ま、あと数分は動けないだろうしな。
やがて静かになった携帯と同じくして、再びアヤをベッドに寝かせる。固いままの俺のモノを引き抜く際にも身体が跳ねていた。
「はあ、はあ……、光司は、イってないの……? 私の身体、気持ちよくなかった……?」
未だそそり立つ肉棒を目にして、アヤが心配そうに俺に問いかける。可愛い奴め。
「いーや、最高だったよ。それを少しでも長く楽しみたかったんだ。けどアヤが保ちそうになかったからな」
「うう、だってぇ……光司のスゴすぎるんだもん……」
淫魔としても本音だが、その答えにアヤは恥ずかしそうに俯いた。まあ実際はあとちょっとで吸い殺しそうになったんだが。それを思えば、さっきの電話はナイスアシストだったな。
肉棒をティッシュで拭くフリをして纏わりついていた愛液を吸収し、アヤの眼前へと突き出す。次はこっちを楽しませてもらおうかな。
「今度は口で、してくれないか?」
「ん……、いいよ♡」
肉棒の大きさに一瞬瞠目しつつ、アヤは舌を伸ばして答えてくれた。柔らかなそこに乗せるようにして差し出すと、音を立てて俺のモノを味わっていく。
「んちゅ、ん♡ やっぱり、おっき……、ほんとにコレが、全部入っちゃったんだ……♡」
「ああ……、奥まで、ぴったりな」
「うん……♡ すごかったよ♡」
「あとでまたしてやるからな」
「気持ちよすぎて、死んじゃうよぉ……。はむ、ん、ん……♡」
まさしくそうなるわけだが。
そんな未来を知らないアヤは、愛情をたっぷり込めたフェラチオをしてくれている。心地良い刺激にカウパーのような液体が漏れ出るが、それは淫魔の体液、ヒトにとって致死性の甘い毒。知らずに摂取し続けるアヤの身体は、昂ぶっていくと同時に思考能力が下がっていく。無意識の内に、アヤの愛撫がどんどんと激しいものとなっていった。
「ぢゅ、っちゅ、んんん♡ じゅる、っはあ♡ あむ、んぐぅ♡」
「あー……、すげぇ気持ちいいよ……」
「ん♡」
優しく頭を撫でると、アヤは嬉しそうに目尻を下げてまた口での情事に没頭していく。ヒトには辛い、喉の奥まで使って俺に奉仕をしていた。しかし淫魔の体液によって性感帯と化した喉は俺のモノが擦れる度に彼女に至福の快感を与えているのだ。
そしてフェラチオでも彼女は絶頂へと上り詰めようとした、その時に、またもやアヤの携帯が着信を知らせたのだった。
「また電話か。友達?」
「んぅ……、はふ、良いとこなのに……もう。……アイツだ」
物寂しそうに俺のモノから口を離したアヤが、胡乱気に携帯を手に取って画面を見ると、眉間に皴を寄せて吐き捨てた。アイツってのは、元カレさんかね。
困ったように俺を見る彼女に、出ていいぞと首肯する。むくりと起き上がって女の子座りになり、受話器の形をしたマークにタッチした。
「……もしもし」
先ほどまでの甘い声とは真逆の不機嫌そうな低いトーンで電話に出る。俺はくつくつと喉が鳴りそうなのを必死に抑えていた。彼女を染め上げるのは順調に進んでいる。電話の向こうの声は集中すれば聞こえなくもないが、必要もないので無視してアヤにちょっかいをかけることにした。
「はあ? 何が誤解なの、あんな――ひゃうんっ♡ ちょ、光司……!」
『――? ――!』
「ちが、これは、あんっ♡ 待ってよ、電話、ぁあ♡」
あれだけ昂ぶっていた身体が、電話ごときで静まるわけもなく。座る彼女の後ろから首筋にキスを落とし、胸をまさぐると、声の中に情事の最中の甘さが戻ってきた。電話の向こうが何か叫んでいるけど知らん。
潤んだ目で文句を言うアヤをそっと押し倒して、四つん這いになり秘所を差し出すような形になった彼女の尻を掴む。まさか、と目を見開いているが、そのまさかだよ。
「ねえ光司――」
「アヤ、言ってやれよ。お前は誰のモノになったのか」
「そんな……」
「ほらコレが欲しいんだろ?」
「あっ♡ ん、んんっ♡」
突きだされた秘所を、肉棒でつつくように刺激する。それだけで、毒に侵された彼女の身体は臨戦態勢へと入るのだ。電話越しの幼馴染の声さえ耳に入らずに、アヤはおねだりをするように腰をうねらせた。
「ほら……」
「あああっ、私は、光司の、モノに、――――あああぁぁああっ!」
俺への絶対服従を言霊にして、再び彼女の膣は肉棒を咥えこんだ。自らの意思で根元まで飲み込んだソレは、これまでよりも強く、かつ甘い快感を彼女に与え続ける。感覚さえも曖昧になった、溶けかけた脳にも甘い痺れが染み渡るのだ。
「はは、俺とソイツの、どっちがイイんだ?」
「ふあっ、ああっ! こうじ、光司のがイイですっ!」
携帯を握り締めたまま涎を散らしてアヤが叫ぶ。彼女の視界に映らない背後で、俺は悪辣な笑みをついに表に出して浮かべていた。
「なにがイイって?」
「せっくしゅ♡ せっくす気持ちいいのっ♡ 光司のおっきいおちんちんが気持ちいいのっ!」
『――――!』
「ハハハ!」
満たされた征服欲に、思わず笑い声が零れた。相変わらず電話の向こうでは何か叫んでいるが、コレの出番はもう終わりだ。あとはアヤが塗りつぶされるのを聞いているといいさ。
「ほおら、愛してるぜ、アヤぁ……!」
「わた、しもぉっ♡ すき♡ あいしてるのっ♡」
「っは、アヤ、イクぞ。全部受け止めてくれるよな」
「うんっ、うんっ♡ 出して、いっぱいだしてぇ♡」
そろそろ頃合いかと、玉部分にチカラを集中させる。男を模した淫魔でも、本物の精液は無いからな。自分で精製せにゃならん。けどおかげで量も濃さも自由自在だ。これを喰らって堕ちなかった女はいない。魂を溶かして糧にする、淫魔の猛毒。
「っ、アヤ……!」
「あっん、あっ、あ♡ あああああああっ♡ ふあぁぁ……♡、こう――――じ――」
常人の射精ではありえない量が肉棒から放たれる。膣はすでにそのペニス自身によって埋め尽くされているがゆえに、子宮の奥へまで精に似た毒が侵入していく。子宮を通じ、身体全体にまで甘い毒が回りきると、アヤの意識は静かに消え去って行った。全てを吐きだし、トロけた表情を残した彼女の精力を今度は逆に吸っていく。
無意識の内か、最期に俺の名を呼んで、アヤは砂へと還っていった。え? 塵? どっちでもいいだろ。
「んん~~……、デリシャス♪」
誰もいなくなった部屋の中で、満足げに呟く。1ヵ月かけて取り入ったおかげで、今回の吸精はなかなか質が良い。
ほうと息をつくと、砂の山から音が響いているのに気が付いた。ああ、まだ電話繋がってたのか。それを拾い上げて耳へ近づける。
『おい、アヤ、アヤ!?』
「アヤなら気持ちよーく逝っちまったよ」
『なん――、誰だお前は? アヤをどうした!』
「だから逝ったっつの」
微妙に噛みあわない会話を数回で切り上げる。その後も元カレくんはぎゃあぎゃあ喚いていたが。俺に言い訳しても無意味だろ。1ヵ月も放置してたのは事実だし。
「あっそ、じゃーな」
『おいまて――』
通話ボタンを押すのも面倒になってスマートフォンごと握りつぶして黙らせた。はあすっきり。
アヤの部屋を出ると夜風が火照った身体に気持ちいい。俺は上機嫌でその場を後にするのだった。
――――――
――――
――
「――とまあこんな感じ?」
「うん、ゲスね」
長い話を得意げに語り終えた光司に一言で感想を言い渡した。彼は悪びれもせずにくつくつと喉を鳴らしているだけだったけど。
まあ私も彼の行いを悪と言っているわけでもないしね。それ以上のこともしてきたわけだし。
「まあそういうことで、質が良いのを望むんなら多少時間をかけることを覚悟しとけってわけさ」
「そこは参考にさせてもらうわね」
フフフと二人して悪人じみた笑みを浮かべて珈琲をすすった。ヒトと違って思考は読めないけれど、こうして腹を割って話せるというのはなかなかに楽しいものだ。他の淫魔も、みんなこういう性格をしているのかしらね。ちょっと聞いてみよう。
「ねえ、他の淫魔にも会ったことはあるの?」
「ん、あるぞ。どこで何をしてるかは、いやナニをしてるんだろうが、この国なら後二人いるはずだ」
「へー。思ったより少ないのね」
「それもそうだが多すぎても目立つしなあ。大体、一つの国に5,6人、広いとこなら10人いくかってとこだな」
「なるほどね。みんな光司みたいに気さくな淫魔だと良いんだケド」
「向こうにとってもそうだろ。別に争う意味なんてないんだし、気楽に構えときゃいいんだよ」
それもそうね。そう言ってまだ見ぬ淫魔たちに思いを馳せる。誰も彼も私より長く生きているのだろう。彼らに会うまでに、自慢できるような食事ができると良いなと願いながら。
「あ、そうだ。ねえ携帯とかどうやって買うの? そういうの、私まだ分からないのよね」
「おお、買ってやるって言ったっけか。んじゃ店に向かいがてらもうちょい話すか」
椅子を引いて席を立つ。さりげなく伝票を取る光司の手際にくすりと笑みを浮かべて、私たちは揃って街へと繰り出したのだった。
というわけで淫魔ちゃんお仲間と出会いました。
彼の役割はドラえもん的な、世渡りに便利なモノを授けてくれる事です。
よく漫画とかで偽造パスポートとかありますけど、実際どうやって作るんでしょうね?
携帯だって支払いは住所か預金口座が必要ですし。
まあそういう諸々を全部用意してくれるのが光司の役割なんですが。
これで色々なことが出来るようになりました。
次は塩ようかんさんにアイディアを頂いたプールへ行ってみたいと思います。夏が終わる前に!!