※この作品はR-18です。

Metro2033 -影を見る者-   作:きゃすたー(7mg)

1 / 36
ざっくりと大まかに、適当に書き上げた感じ。
上巻読み終わったので次は下巻ですね。社畜はつらいよ。


――当モスクワメトロのご案内――
番外その1 ―用語解説集―


 記念すべき今日、彼女は地上に出たらしい。

 小奇麗に片付けた部屋の片隅、近づくだけでもガイガーカウンターが鳴り出すほど収集品が載せられたテーブルに近づくと、彼女は背嚢をごそごそとあさり始める。

 どさり、と目の前に女ストーカーが持ち帰ってきた“収穫物”が提示される。一つ一つを手に取り、じっくりと眺める。

 なるほど、それなりの量だ。

 

「今日の成果は……ふむ、なるほど」

 

 

 

―ある遺体から見つかったメモ用紙―

 メトロの駅について解説されたらしい手紙。おおよそのことしかまとめられておらず、価値は低い。しかも共産主義者のものときた。

 

 我ら共産主義同盟、レッドラインは全メトロの共産主義化を推し進めるべく、日夜共産主義思想を説いている。我々の組織はメトロの北東部における各駅の共産主義化を担っている!

 これは北東部の主要駅の現状についてまとめたものである。同志諸君はこれらの駅についての知識と情報を共有し、メトロの共産主義化のために尽力して欲しい。

 一人は皆の為に、皆は一人の為に! 平等で平和な社会こそ我らレッドラインの理想である!

 

コムソモーリスカヤ駅

:コムソモーリスカヤ駅はかつてのコムソモール(共産党の青年組織)にちなんだ駅名を持つ、ソコリニキ線にとって由緒正しい駅である。

 地上にはサンクトペテルブルクやシベリア方面へ向かう地上の鉄道駅も存在している。

 我らレッドラインはかつてのハンザ同盟・アルバート連盟との戦争の折にこの駅の打通を許した屈辱を味わった! かろうじてソコリニキ線側の駅は守られたが、ハンザ側のコムソモーリスカヤ駅は未だにハンザによって支配されている! 我らはこのコムソモーリスカヤ解放を基点とし、ハンザの専横と資本主義の支配に立ち向かわなければならない!

 

キタイ・ゴーロド駅

:ザモスクヴォレーツカヤ線とカルジスカヤ=リジヤスカ線が交差する駅である。原作小説では駅のホームで分割統治されており、人種間での闘争が頻発する駅でもある。我らは未だに続く人種間闘争に終止符を打ち、共産主義の教義の下に彼らに平等なるメトロの平穏を約束しようではないか!

 

ポリス(地下都市)駅

:我ら共産主義の象徴、クレムリンを頭上に掲げる憎き駅である。我々ソコリニキ線を含む四路線の駅とその間の地下通路などをまとめて一つの駅として機能している。事実上のモスクワメトロの中心地と言えるこの駅の地上にはレーニン図書館が存在しており、そこに眠る文献や技術書などの遺産を探索するレンジャー組織がある。“オーダー”ことスパルタンオーダーの本拠地でもある。彼らは非常に手強い相手であるが、同志諸君らの献身と挺身を持ってすれば必ずやこの駅を支配下に置くことができる!

 

ツルゲーネフスカヤ駅

:カルジスカヤ=リジスカヤ線の駅。カース駅とも呼ばれる。度重なるノサリスの襲撃に悩まされている様が“呪われている”とさえ思えたのか、呪いを意味する“カース”駅となっている。最早無人同然の駅ではあるが、我らレッドラインの教義は遍くメトロの民を救うものである!

 

スハレフスカヤ駅

:カルジスカヤ=リジスカヤ線の駅。ドライ駅とも呼ばれる。小説中では物乞いや浮浪者が居る駅で、平和通り駅の休憩所のような位置づけになっているが、ゲーム中では野盗の住処になっている。

 野盗はメトロの住民の生活を脅かす悪魔の如き存在である! レッドラインの定める教義に於いて奴等は無辜の民から奪うことしかできぬ愚か者である! 情け容赦無く、一人残らず駆逐せよ!

 

プロスペクト・ミーラ駅(平和通り駅)

:“マーケット駅”で通用しているハンザ同盟の環状線駅。カルジスカヤ=リジスカヤ線と交わっている。商業が非常に発達している駅。

 この駅を共産化することができればハンザは大いに弱体化するであろう! 貧富の差は是正され、人々は平等に平穏と日々の生活を約束される! ハンザの齎す悪性を排除し、メトロの民を救うべく共産化を急がねばならない!

 

パルク・クリトゥリ駅

:ソコリニキ線と交わる環状線駅。特に作品中で描かれることがない。ハンザの環状網を絶つためには必須の駅である。よって南西方面の駅ではあるがここに記載する。

 

アレクセーエフスカヤ駅

:カルジスカヤ=リジスカヤ線の駅の一つ。マーケット駅の先、リジスカヤ駅と博覧会駅との間にある駅。特に有名な産物などもない普通の駅。ゲーム中では保安用トンネルで迂回するため、登場しない。小説中では困窮している様子が描かれ、博覧会駅、リジスカヤ駅との同盟を切望している。

 彼らは救済をこそ求めている民達だ。かつて革命によってソヴィエトが平和を勝ち取ったように、我らレッドラインは万難を排してメトロに共産主義の火を行き渡らせねばならない!

 

リジスカヤ駅

:カルジスカヤ=リジスカヤ線の駅。リガ駅と呼ばれる。マーケット駅に近いことから、環状線の外側の駅ながらそれなりに繁栄している。

 マーケットに程近いこの駅はカルジスカヤ=リジスカヤ線を共産化するために必要な駅である。

 

博覧会駅

:カルジスカヤ=リジスカヤ線の駅の一つ。博覧会駅から先は無人駅が続くだけである。ゲーム中ではエキシビジョンという名であるが、正式には国民経済達成博覧会駅(ВДНХ:ヴェーデーエヌハー)という長い名前である。

 駅の規模は大きくないが、養豚とキノコ茶の栽培によって繁栄している駅でもあり、文字の読み書きなど教育にも力を入れている駅。

 この駅はかつてのソヴィエトの栄光とその軌跡を残す地である。よって我らレッドラインによる行政を敷くことが道理である。急げ、同志達よ!

 

 

 

―名も知らぬ人が作った書物―

 間違いや抜け落ち、説明の不足などにより信憑性は低い。これでは解説書ですらないのではないか?

 

勢力・組織名

 

オーダー

:正式には“スパルタンオーダー”と呼ばれる精鋭のレンジャー・ストーカーの集団。ポリス駅が本拠地である。メトロ全域で活動し、ミュータントの駆除や危険調査などの任務に着く。オーダーは厳しい訓練と試験、そして地上での二年間の薪集めをこなしてようやく一人前になれる言われる。

 

レンジャー

:ゲーム中ではオーダーも駅のレンジャーも一まとめで紹介されているが、レンジャーは駅ごとの戦闘員の集団で、警察・軍のようなものとして組織されている。

 

ストーカー

:荒廃した地上を探索し、貴重な資源や物資をメトロへと持ち帰る職業。その危険度と貢献から、ストーカーは一種の畏敬の念を込めて“スタルカー”や“スタルケル”とも呼ばれる。

 

ハンザ同盟

:メトロ環状線の駅が友好同盟を結んで成り立つ組織。商業に非常に強く、ハンザといえば裕福というイメージが持たれるほど。だが同時に守銭奴扱いされることも少なくなく、メトロの資源とカネを独占していると見られることもある。移民が非常に多いことが悩みの種になっている。かつてレッドラインと血みどろの戦争を繰り広げたことでも知られる。元々長ったらしい正式名称があるらしいが、通称でハンザと呼ばれている。

 

レッドライン

:ソコリニキ線に起こった共産主義勢力の通称。ソコリニキ線はソビエト時代に縁のある場所や名が連なる路線であり、路線を支配した彼らは次第にメトロ全域の共産主義化を目指して人員を送り込むようになった。その後ハンザとの衝突が起こり、血みどろの戦争に到る。

 その結果はハンザに環状線打通を許し、その上自らが得たものは争乱で荒廃した駅なのだから、事実上の敗戦に等しい。書記長は同志モスクヴィン。流派東方不敗とか使いそうな御声であらせられるが、ゲーム中でそれらが存分に振るわれることはないため安心してよい。

 

第四帝国

:ファシストと呼ばれる人種差別主義者の集団。とはいってもドイツの第三帝国とは円も縁も無いのでネオナチである。やはりというべきか、現在は共産主義者―レッドライン―と抗争中である。

 他民族排斥を掲げる組織である上に過激で知られ、数々の拷問や見せしめを行っているためメトロ中から嫌われている。

 

北方路線同盟

:カルジスカヤ=リジスカヤ線の博覧会駅、リジスカヤ駅、その間のアレクセーエフスカヤ駅間で結ばれた同盟。ゲーム中では冒頭で演説が行われる程度だが、小説内ではその動向や背景も描かれている。

 

 

 

―地上で死んでいたストーカーの所有物らしき本―

 どうやら銃器・装備類についての仕様書らしい。手書きで乱雑に書かれており、見るに耐えない。

 

拳銃

:44口径弾を使用する、メトロ内では一般的な武器。

 

リボルバー

:44口径の回転式弾倉の銃。メトロ産の武器の一つ。高火力なのでヘッドショットならノサリスも一撃で沈む。サプレッサーとスコープ、ストックでより便利に。

 

ローライフ

:続編であるメトロ・ラストライトから登場。セミオートマチックの自動拳銃で、アタッチメントの豊富さがウリ。野盗が持っていることが多い。Low lifeということなのだろうか。パーツ一つでサブマシンガンに早変わりする。ただしそのころには既に軽機関銃があるので…。

 

デザートイーグル

:皆さんご存知例のアレ。デカイ・ゴツい・無骨と三拍子揃った漢の武器。なお、Metro2033には小説・ゲーム中共に存在していない。

 

 

ライフル系

:7.62mm若しくは5.45mm弾を使用する。汎用弾薬と軍用弾薬がある。

 

バスタード:メトロ製の簡易製造のサブマシンガン。5.45mm弾を使用。保弾板を右側から銃身に差し込んで装填する。眼に見えて残弾が分かりやすい仕様。ただし性能は5.45mm弾使用の銃では最も低い。ばらける、すぐオーバーヒートする。でもその形状はロマン。

 

AK74

:皆さんご存知カラシニコフの74年式。5.45mm弾を使用。フルオートだとかなりばらけるため、基本的にショートバーストが有効。中盤のメイン武器として役立つ。

 

AK47

:皆さんご存知カラシニコフの47年式。こちらは7.62mm弾を使用。生産初期から現代に到るまで最も多く製造された銃。ただしその性能は製造者次第。ゲーム中では登場せず、小説内だけでしか出てこない。

 

カラシニコフ2012

:ゲーム中に登場する最新式のアサルトライフル。5.45mm弾を使用する。アタッチメントは少ないものの、最新式だけあって非常に高性能。銃、もしくはブルボンに思い入れが無いなら74から乗り換えてしまっていい。

 

バルブ

:7.62mm弾を使用するボルトアクション式のスナイパーライフル。メトロ・ラストライトより登場。リロード時のコッキングが非常に痺れる。火力も高めでハウラー程度は一発で沈められる。が、サプレッサーが無いのでステルスできない。

 

プリーブド

:メトロ製の対物ライフル。メトロ・ラストライトより登場。バルブ以上の火力で敵を遮蔽物ごとブチ抜く銃。例によってサプレッサーなんて無い。こちらは専用の大型口径弾を使用する。

 

 

散弾銃

:12ゲージショットシェルを用いる。簡易火炎放射機にできるショットシェル、“ドラゴンブレス弾”などもある。

 

デュプレット

:ソードオフタイプの水平二連式ショットガン。中折れ式。二発同時発射可能で、同時に叩き込めばノサリス・ハウラーは一撃。ただし装填数二発のため、撃ったら即リロードである。

 

シャンブラー

:リボルバー式のショットガン。六発装填。リロードがクセになる快感。だけど遅い。ラストライトではドラゴンブレス弾というものを使用することができると判明。

 

オートマチックショットガン

:サイガ、と呼ばれるフルオートショットガン。メトロ・ラストライトより登場。拡張マガジンによる装填数の多さが強み。

 

 

空気銃

:5mmベアリング弾、もしくは専用ボルトを用いる銃。

 

ヘルシング

:専用のボルトを空気圧で射出するボウガンの一種。ボルトは八本装填可能。空気圧を最大まで加圧することで敵のヘビーアーマーだろうが撃ち抜き、凶悪なミュータントも抹殺できる。ただし射程は短いので注意。その静粛性から暗殺にも向く。

 

 

装備品

 

ヘッドランプ

:トンネル探索のお供その1。これがなきゃメトロは歩けない。一歩踏み出しただけで闇に飲まれる。多数の形状のものがあり、武器に装着するものや手持ちなど様々。

 

ダイナモ(発電機)

:トンネル探索のお供その2。手でグリップをカッチンカッチンと握ることで発電できる。電気が無ければヘッドランプや暗視ゴーグルはただの飾りです。ゲーム中では様々な仕掛けの起動にも使う。

 

ガイガーカウンター

:トンネル探索のお供その3。放射能の危険に晒されるとカリカリと嫌な音で警告してくれる。

 

ガスマスク&フィルター

:地上探索のお供。これがなければ人間は地上で一分と生きていられない。フィルター、それは即ち地上での己の命数でもある。

 

服

:服といっても戦闘用。放射線や毒ガスなどから身を守る防護服や銃弾から己を守るヘビーアーマーなどがある。普通の服で地上探索は自殺行為に等しい。

 

背嚢

:道具や野宿に必要な道具一式を入れられる。商人なら軍用弾や商品を。ストーカーなら収穫物を。

 

簡易テント

:駅という狭いスペースでは宿泊施設が不足している。旅人や階級の低い者はこうしたテントで基本的に寝泊りする。個室がある人間はそれなりの地位にある人間と言っていい。

 

水筒・スキットル

:酒や飲み水を持ち歩くための道具。水を飲みたいのならそこの水溜りに顔を突っ込めばいいだけだが、長生きしたいなら浄化済みの水を飲みましょう。

 

ライター

:人類の最古のツールである火を簡単に灯すための道具。わずかな灯りでも、メトロの闇の中ではその人を守り導く光となる。

 

ナイフ

:投げる、突く、斬る、抉る、焼いて肌に当てて傷口を塞ぐなど使い方は十人十色。

 

食料

:このメトロに於いて食料といえばキノコである。豚肉を燻製にしたものもあるが、貧しい駅では豚そのものが貴重だ。

 

パスポート

:駅での“入国審査”に必要なもの。出身駅などが記されている。

 

軍用弾

:世界が滅べどカネは不滅。これがあれば困らない。死後に役立つかどうかは不明だが。

 

路線図

:メトロを歩くには必要なもの。ただしその精度はピンキリ。

 

時計

:時間という概念は人間にとって切り離せないもの。地下世界であるメトロにだって昼と夜がある。無論、時計の針に従って照明を落とすだけだが。フィルターの残り時間を計るためにも、地上を探索するストーカーには必携である。

 

医薬品

:レンジャーなどが用いる軍用品から商人や駅の施設で作る民生品まである。おおよそのクスリはよく効く。ただしその表記と中身が合致していればの話だ。

 

 

 

―表紙が破れている小説―

 題名さえ不明のままだが、読めないほどの損傷ではない。登場人物についてまとめられたらしいページがある。

 

主要登場人物

 

ラスヴェート=ロマノフスキー

:当作品内における主人公。年齢は17歳~20歳未満。本人も詳しい年齢を覚えていない。幼少に駅同士の戦争で敗北し、売り飛ばされる寸前にハンターに救出される。しかしその直後に人買い商人の手に落ち、キタイ・ゴーロド駅の娼館に売り飛ばされる。14歳前後で脱出し、カーンに引き取られて後にハンザのストーカーであり、ポリスの組織であるスパルタンオーダーとなる。

 トンネルの闇を深く見つめ、肌で感じ取ることができるが、同時にその感度の良さから逆に取り込まれかねない事態もしばしば。人の魂が持つ“業”を陰影のように見ることができ、それを吸い上げることも移すこともできる。蓄えた“業”を燃やすことで発火能力を用いることができる。

 

アルチョム

:小説・ゲーム中の主人公。原作小説とゲーム中での様子がまるっと違うため作者も困惑した人物。

 ポリス駅を目指して旅をする二十台過ぎの青年で、銃の腕が非常に良い。また本好きでもある。

 

ブルボン

:口の悪い自由商人。実はアルチョムとそこまで大きく違わないが、その顔はオジサン。ゲーム中では詐欺師、ペテン師よばわりされるほどに悪評が着いて回る人物。

 小説中では自由商人であるのは変わりないが、密輸業者のような仕事をしているらしい描写がある。

 

カーン

:小説中ではハンと呼ばれ、自らを“チンギス=ハーンの最期の生まれ変わり”と称するアブナイおじさん。小説中では神秘主義者であり、トンネルの闇やメトロの謎、現象について熟知している博識な人物。

 ゲーム中では腕の立つ放浪者という装いだが、一風変わった哲学者・探求者というような印象の人物。小説中と同じくトンネルの闇や怪奇現象に通じ、アルチョムの道程を助ける。

 

ミラー大佐:小説中ではメリニクと呼ばれるオーダーの指揮官。ゲーム中でも自ら戦線に立つ軍人で、カーンの顔見知りでありハンターの上司。

 

 

 

 ばさり、と本を乱雑に投げ捨てる。見ると、彼女は不満げに眉をひそめている。どうやら私の態度がお気に召さなかったらしい。

 

「ふぅむ…」

 

 彼女の収穫物を眺める。本、本、本、紙、ビラ、新聞紙。どれも紙媒体ばかりだ。よく残っていたなとは思うものの、これといって軍用弾(カネ)になりそうなシロモノではない。

 

「ねー、ダメ?」

「ダーメだ。これじゃ二束三文ですらない」

「ちぇー、ケチ」

「次はもっといいもの持ってこい。そうすりゃあ軍用弾(カネ)は出してやるよ」

 

 渋々、といった感じで彼女は提示された金額、クリップでまとめられた5発の軍用弾を手に取る。

 

「はぁ………もっとおいしい話は無いのかなぁ…」

「ならスパイダーの巣はどうだ? あそこはどうも軍事基地に繋がってるってウワサだ」

「ウワサはウワサ。それにあそこは危険地帯もいいとこだよ。四方八方上下左右からスパイダー尽くめ。ああやだ…気持ち悪くなってきた…」

「相変わらずのスパイダー嫌いだな。まあ確かに噂でしかないし、あんな場所には行きたがらないだろうな。昨日も二人ほど向かったと聞いていたが、結局戻らずだ」

「………だろうね。スパイダーなんて大嫌いだ」

 

 ふてくされるように彼女は空になった背嚢を背負って部屋を出る。

 束ねた黒髪を翻し、しかしその背中はとぼとぼと疲れ果てたサラリーマンのようで、なんとも哀愁の漂う気配を醸し出している。

 

 さて、記念すべき独り立ちの最初の報酬は軍用弾5発分でしかなかったが、これから彼女はどのようなストーカーとなるだろうか。

 廃品に魅せられるのか、文明の名残に魅せられるのか、銃や武器に魅入られるのか。

 

「ようこそヴェートお嬢ちゃん、ストーカーの世界へ。地上は楽しかったかい?」

「………寝てくる!」

 

 ムッとした顔で振り返った彼女の目じりには僅かに涙が浮かんでいる。

 そりゃあ命がけで持ち帰ったものがたったの5発では価値に見合わないとでも思っているのだろう。

 

 けどな、それは間違いだよお嬢ちゃん。今生、人間の命なんぞ汎用弾一発にすら劣る世界だ。軍用弾(カネ)がもらえただけ感謝しなきゃならない。生きたまま戻れたことをこそ感謝しなければならない。

 その一発は、まさに命運を分ける。それが地上だ。

 

「………安い。本当に、安いもんだな…命ってのは」

 

 煙草を一口、ふぅと息を吐けば紫煙が立ち上る。

 この煙草は果たして、軍用弾何発分(ヒトの命何人分)だったかな。




ストーカーの日常、的な感じで作ってみました。

近々下巻を読み進めていきますので、そこでさらに改訂や補足なども増えるかもしれません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。