送るその先は 作:にしまる
「お、早かったなー!」
部活を早めに切り上げ、教室へ戻るとトラが待っていた。
「今日は先生来なかったから、みんな早めに終わったんだ」
ウチの顧問は、一個上の三年生の学年主任をしている為、何かしら放課後は忙しいのだ。今日みたいに来ないことも間々ある。
「あのー、彼が長月陽平くんなの?」
机の上に座っていたトラの陰に隠れて見えなかったが、小柄な男子生徒が席に座っていた。男子にしては髪も少し長かったので、制服で男子だと分かるくらいだった。身長は百五十センチくらいだろうか。
「僕だけど、その人は?」
「こいつは
お互いに軽く自己紹介を済ませる。彼とは同じクラスだが、グループが違うために全く話したことが無かったので、ほぼ初対面な状態だ。だが、やけにトラは上機嫌だな。
「で?今回は何があったんだ?」
早速本題に移る。
「まぁまぁ、急くなよ。何も悪い話じゃないんだ」
ご近所のお手伝いから暴力沙汰まで引き受けるトラにしては、今回は比較的穏やかなようだ。
「そ、それは僕からお話ししますっ!」
トラの野太い声と反対に声変わりのしていない少年のような高い声だった。クラスでも話しているところをあまり見たことが無かったから、少し新鮮だ。
「僕、実はストーカーに遭ってて、その相談で
「すとーかぁー?」
男が?ストーカーされる?あまりに突拍子も無い話に頭がついていかず、間抜けな声をあげてしまった。実際、目の前にいる大南康太は、美少年と言っても過言でないほど可愛らしい顔をしており、男子生徒の制服を着ていることにやや違和感を覚えたが、それでも、やはり単純に驚いた。
「まぁ、陽平も驚くよなぁ。いくら可愛いツラしてるっつっても男にストーカーとはなぁ?」
「あぁ、あり得ないよ。そのストーカーにつけ回されて迷惑してるの?」
「はい。登下校中とか、体育の授業中の写真が封筒に入れてポストにあったり、家に居ても誰かに見られているような気がするんです」
普通にストーカーに遭っていた。しかも、写真を撮ったり家を監視したり悪質なものだ。
「トラ、これは警察沙汰だぞ。どうするつもりだ?」
いくらトラブルメーカーのトラでも、警察沙汰になるようなことには関わってこなかったが、今回は毛色が違ったようだ。
「昨日の放課後に康太から相談を受けてな、軽く身辺調査してみたんだ。授業中の写真もあるから、そんな素振りをしているやつが居ないかさり気なく探してみたりしたんだが」
「まさか、俺たちだけで解決しようとしてないか?」
「おっ、さすが陽平!鋭いな」
これは少し骨が折れそうだ。
「本気かよ。その調査の結果はどうだったんだ?」
「ちょっと怖いです」
当の本人は怯えているようだ。無理も無い。こんなの不気味で気分が悪いだけだ。
「昨日の成果だと、犯人は全然分からん。ただ、可能性としては、三年棟にいるだれかかも知れない」
「どうして三年棟なんだ?」
「それは、写真見りゃ分かる。康太、写真見せてもいいか?」
「うん。虎雨君と陽平君なら、、、いいよ」
自分の写真を見られるのは恥ずかしいだろうが、女子と見間違えそうな美少年に頬を赤く染めながら言われると少し緊張してくる。
「これだよ」
「確かに授業中とか昼休みに教室にいる康太を写してるな」
どれもこれも似たような写真ばかりだ。しかも、本人に送りつけてくるんだから何を考えてるんだか分からない。康太は窓際の席だから、外から写しているようなアングルだ。
「そうか。全部窓の外から写してるから三年棟なのか」
「あぁ、そうだ。しかも、少しだが角度的に上から撮ってる。そして、この康太の席から三年棟を見て少し上の角度ってなると」
「ただの空き教室、ですよね?」
「空き教室は、普段使われないから基本的に施錠されている。鍵は、二年棟一階の用務室にあるから犯人は分からないってことか」
「あったりー!用務員のおっさんを疑ったが、基本的に学校の管理や清掃業務とかで朝から夕方まで働いてて昼休みは用務室で飯食ったら寝ている。あのおっさんに写真撮ってる時間はないだろーぜ」
二高の校舎は三棟に分かれており、それぞれの棟に生徒の教室がある。全て三階建てで、丁度真ん中の二階に教室があり、一年棟と三年棟の一階は、図書室や音楽室、理科室など、学校の通常授業に使用する教室がある。二年棟一階の三年棟の一階半分は、用務室や校長室、職員室など、学校職員の業務に必要なスペースとなっている。また、三棟の三階は、空き教室や文化部の部室である。
「文化部って線は無いのか?」
「あり得ることだが、疑うにはちと材料が足らん。それに、三年棟の部室フロアには、体育会系の連中が物置にしてる部屋もあるからな。文化部とは一概に言えねーんだわ」
情報が少なすぎて的が絞れない。この学校の用務室なんて、借用ノートに記録すれば誰でも借りることができるしなぁ。それに、ストーカー犯が律儀に名前書いてるはずないだろう。
「康太は何か心当たり無い?」
「うーん、一つあるけど」
2000字台だと読む量はどうなんだろ?
まずは三人を揃えたいので、この事件終わったらほのぼのします。
多分。