※この作品はR-18です。

季節は次々死んでいく   作:路輪一人


原作:監獄学園
タグ:R-18 監獄学園 緑川花 藤野清志
リハビリ 是非、あまざらしの季節は次々死んでいく、を聞きながらどうぞ。

空が高くて空気が澄んでいるくせに、風は湿っぽい。置き去りにされた夏の只中にいるようで居た堪れない。嗚呼、秋だ。

1 / 1
季節は次々死んでいく

抜ける様に空が高くて空気は澄んでいた。

ただ風だけは重苦しいうだる熱気を持っていて地面周りにヘドロの様な熱を貯めている。木陰の中に俺は隠れていたはずなのに、きっとこの晴れやかさに耐えられなくなった夏の熱気もまた、ここに身を潜めていたんだろう。頬を伝う粘りを持った不快感を片手の甲で拭ったら、なめらかな汗の筋を通って塩水が、目尻に染み込んだ。粘膜を焼く刺激に片目を閉じたら、世界が静謐な白になった。

私立八光学園の校舎の裏にある古ぼけたベンチに座って、俺はその時を待っている。遠く聞こえてくるのは陸上部のダッシュの掛け声。健康的な尻や太腿が躍動する校庭は、女性達のもの。彼女達の肉体を眼差さなくなったのは、つい最近の事だ。そうして俺はよく、自分の掌を見るようになった。自分の手は酷く不恰好だ。彼女達の細い白魚のような指先、曲線を描く肘、そして薄く脂肪の乗った二の腕に比べれば随分醜い。けれど彼女達のような過剰な美しさが俺の掌にはない事を悟って俺は安堵する。日に焼けた指先で俺は俺の掌を舐めた。血豆の後が硬く膨らんで節をつくってしまったし、釘で作った引っかき傷はまだ治っていない。花さんに折られた手首は完治までもう少しかかるだろう。

俺逹、私立八光学園のたった5人の男子生徒達が、不純極まりない理由でこの学校に入学してからやっと二ヶ月が過ぎた。一ヶ月で捨てれると思っていた童貞は、代わりに一ヶ月の監獄生活となり変わった。俺逹男子生徒が、その溢れ出る性欲によって犯した重大犯罪、『女子浴室の覗き行為』。俺たちは性欲に踊らされ、性欲に操られ、彼女達の生まれたままの姿を見ようとした。結果卑劣極まりないこの犯罪計画は失敗し、俺たちは『プリズン』と呼ばれる懲罰房に一ヶ月収監されることになる。長時間の重労働、無慈悲な折檻と言う名の暴力。そして自由のない生活。たった一ヶ月の監獄生活にすら耐えられなくなった俺たちは、脱獄を計画した。脱獄は成功し、監獄を管理、支配していた、裏・生徒会は消滅し、俺たちは自由になり、筋肉質な肉体と、やはり持て余すばかりの性欲と、間違った意味での度胸を身につけてしまう事になったのだ。

手のひらに落としていた視線を上げる。そこには今は空になった懲罰房が廃墟の無垢さを持って佇んでいた。そういえば、あの木の杭はアンドレ、こと、安堂麗治が運んだやつだったっけ。学園一の(と言っても男子は5人しかいないが)巨漢である彼が地面に引っかき傷を作りながら運んだ大きな木の杭だ。それを俺と俺の幼馴染の真吾がふらふらになりながら地面へと打ち付けて、それから三国志オタクのガクト、蟻の観察が趣味のジョーが有刺鉄線を巻きつけていった。 ボロボロの軍手では防ぎきれない鋭い針が、彼らの手を傷だらけにし、俺たちの腕は筋肉疲労で昼夜問わず痛み続け、浅い眠りの中で、副会長の振るう鞭、その向こうに見える彼女の瑞々しい股間を夢に見たあの一ヶ月。俺は今、あの懲罰房が懐かしい。あの無垢さが、あの潔癖さが、あの凡ゆる抑圧が懐かしい。

懲罰房を出た俺たちは物の見事に羽目を外した。目の前であの恐ろしい副会長の暴力的な乳房となりふり構わない開脚が齎す女性自身を見てきたのだ。入学した頃からは状況がだいぶ変わっている。女生徒を避けながら顔を隠していた俺逹にも、もの珍しさをたたえた女生徒からの声がかかる様になっていた。

巨漢でドMのアンドレは、副会長への飽くなき妄執を抱えながら、少しSっ気のある女生徒達に大人気で、彼の周りには学園でも美人、と言われる部類の女子がたむろっている。あの裏・生徒会と渡り合った、という噂はこの小さな学園では一気に広まった。お陰で男子生徒は今や、学園におけるヒエラルキーの登竜門、男子学生と仲良くするという事は「イケている事だ」という空気が醸成されたのだ。だから僕も、脱獄するために授業中クソを漏らしたガクトも、ストーカー気質のジョーも廊下を歩けば女子に声を掛けられる。だが、俺逹五人は皆それぞれに恋に落ちた。アンドレは言うまでもなく、副会長に永遠の愛と妄執を誓い、ジョーはお菓子作りの得意なケーキさん、これは愛称であるが、明るく元気な彼女に首ったけだ。真吾は、杏子さんと付き合って一ヶ月らしい。ガクトも三国志好きで腐女子の横山みつこさんと誤解だらけの愛を育んでいる。

 

俺は。思い立って手のひらを鼻に近づけた。自分の汗の匂いと、仄かなアンモニア臭が感じられた。それは予感であり、予兆だった。俺はそのためにここに佇んでいる。今度は手のひらを返して、指先を臭った。記憶と欲情が撹拌されて、指先から彼女の匂いがした。千代ちゃんに会う前にはきっと体を清めておかなければ。俺は、あの恐ろしい会長、栗原万里さんの妹、千代ちゃんが好きだ。入学したての子鹿の様だった俺に、相撲デートに行こうと誘ってくれた千代ちゃん。俺の事を信じて脱獄にまで加担してくれた千代ちゃん。俺の事をいつも信じてくれて、こんな俺に笑いかけてくれる千代ちゃん。俺は千代ちゃんを抱きしめたい。千代ちゃんが許してくれるならキスをしたい。千代ちゃんを泣かせるやつは俺が許さない。だけど、俺は今確実に千代ちゃんを泣かしてしまう男になっている。

 

俺たちの半数、正確には、ガクト、俺、真吾の三人は童貞を捨てた。俺の場合は捨てさせられた。クソ漏らしのガクトですら捨てた。俺たちは今、自室に入るときですらノックを忘れない。誰がベッドの上で重なっているかわからないからだ。深夜、自室で素っ裸になっていたガクトと話した事がある。男子寮の寝室は二つ、俺と慎吾、その他三人。皆それぞれ、そういった夜には示し合わせて部屋を空けた。たった一人、明かりもつけず素っ裸で椅子に座っているガクトの体からは仄かに、クソと必死で塗りつけたであろう石鹸の香りがした。ポツポツとあいつが語り出したのはスカトロマニアの女生徒との変態行為、乾いた笑いを吐いた後ガクトは憔悴しきった瞳のまま呟いた。

「クソを、全身に塗りつけてくれ、と言われたでござるよ、キヨシ殿。小生、言われるままにクソをあの綺麗な女性の顔に………」

この学園に男子生徒はたった5人、つまり俺たちは女生徒1016人全員の性欲処理機械でもある。昔の俺だったら歓喜していただろう。だけど、今は違う。1016人の女性の性の対象になる恐怖。それぞれに性癖を違え、鬱屈した性をぶつけられる恐怖は、ドMのアンドレならいざすらず、ノーマルの俺たちからするとあの監獄以上の抑圧をもたらした。

「えづきながらクソを舐める彼女のケツを持ってバックで犯したでござる。童貞時代、何もかもが新鮮だった女性の体が今や、なんの感動ももたらさんのでござる。セックスとはこんなものでござったか、キヨシ殿、我々が憧れた女体というものは、もはや幻想で、あれは肉の塊なのではなかろうかと」

「それは、俺逹も一緖だろ。俺たちだって、肉の塊だ」

ガクトを励ますために笑いながら俺は言った。けれど俺の中にもその虚しさはある。あれほど執着していたセックスという行為が、今はただの反復運動で、排泄行為の一種にしか感じられない。陰茎を擦る肉の感触、亀頭に響く粘膜の愛撫。それが過ぎたら一瞬のクライマックス。そして、排泄後の罪悪感。彼女達は酔いながらそれを喜ぶ。男性性を煽る、ありとあらゆる手を使って、俺たちの勃起した陰茎に群がる。本当は俺たちだって、使う相手は選びたいんだ。俺は千代ちゃんと初めてを迎えたかった。ガクトもそうだろう。

暫くの沈黙があって、ガクトはため息とともに、みつ子殿、と呟いた。勉強用の机から望む窓の向こうには、あの懲罰房が見えている。重苦しくなった空気を払拭する為に、俺は真吾の話をする。

「……真吾のやつは、良いよな。杏子さんオンリーだろ」

空気を切るための言葉が、重い鉄になって俺たちの間に沈んでいく。だから、またおどけた。

「子供出来たらどうすんだろうな」

ガクトから返事はなかった。だから俺も窓の外、薄闇の中に佇む無垢な懲罰房に目を向ける。

「………キヨシ殿………」

掠れたガクトの声が聞こえた。俺はそのまま懲罰房を見つめている。

「………我々は、あの懲罰房にいた方が、幸せだったのではあるまいか。あの懲罰房の中で、美しい副会長殿にしばき倒されている方が、罪深い我々にはお似合いだったのではあるまいか………」

 

「なにやってんの」

記憶回想を打ち破ったのは高い声だ。聞き覚えのある高い声、そして俺の支配者の声だ。

声の方向にゆっくり瞳を向けると花さんがいた。いつものように綺麗で、花のように可憐で、暴力的だ。俺の返事も聞かず、花さんは不機嫌そうに口を結んだまま俺の前に立った。花さんを待ってたんですよ、と嘘をつこうとしたけどそれもやめた。花さんはこれから俺の腕を掴んで立ち上がらせるだろう。そうして有無を言わさず、俺をトイレの中に連れ込むだろう。予想通り腕を掴んで引き上げられた。やっぱり不機嫌な顔を照れ隠しにして、花さんは俺を近くの古いトイレの中へと連れ込むため足を早める。だから、俺は微笑んで言った。「花さんを、」ぎろり、と音が聞こえる視線が俺に投げられる。「待ってたんですよ」

 

薄暗い女子トイレの中で、俺たちはむきあって立っている。真っ赤になった花さんは俯いてばっかりだ。花さんは可愛いと思う。本当に可愛い。こんな可愛い女の子が俺に暴力的な愛情を向けている、それは喜ばしい事だと思う。だけど、俺の脳裏には千代ちゃんが笑いかけてくる。花さんの手が、震えながら俺の両腕を掴む。痛みで肘が曲がった。それは、抱擁の合図だ。「………かキヨシ」細い息を連続して吐きながら、花さんの小さな体が俺の胸の中に埋もれていく。「ばかきよし………」

花さんの頬に手を添えた。嫌がって逃げる肌はもう熱かった。髪を撫でながら頭を支えると、欲情した花さんのだらしない顔がだんだんと俺の方を向いてくる。あ、あ、と小さな嬌声を漏らしはじめた花さんの耳元に唇を寄せて、俺は諦めたまま欲情の吐息を吐いた。「花さん」ひくり、と彼女の体が震える。「俺に、おしっこ、かけてください」

 

洋式便所に腰掛ける俺に、花さんがまたがっている。俺の下半身の、彼女が言うところのエリンギは、もう既に彼女のメデューサの口の中だ。カチカチに固まって、メデューサの口を生でフェラチオしている。あひ、ひ、と花さんがいやらしい声をあげる。俺は腰を回し、花さんの奥をつつきながら、むき出しになったおっぱいを吸った。頭の上で、花さんの遠慮のない嬌声が響く。

「あ、あ、ばか、きよ、しッ………!全部ッ………!全部ゥ!」

花さんの中はあったかい。あったかくてきゅうきゅう、俺のチンコを締め付ける。俺が腰を突き出すと、仰け反った花さんの喉から獣みたいな切ない声が出た。俺は花さんが満足するまで腰を振る。生の勃起したチンコで花さんの頑なな膣を揉み解す。揺れる花さんの体が、反動で俺の胸に寄りかかってきた。キスをしてほしい、合図だ。花さんの後頭部を支えて、キスをする。口の中に舌を突きいれる。ディープキスで昔の花さんは気絶したけれど、今の花さんの大好物はこのキスだ。舌を絡めて、口内をお互いに弄り合う間、花さんの膣は痺れながら俺を奥に引き込む。唇を離した花さんが、下半身をきゅんきゅんさせながらにやりと笑って呟いた。

「………ばかきよし…………」

こっそり、腰を回して膣内をかき回してやる。ひくッと震えた花さんの体と、乳首は硬く尖っていた。あんたの、まで聞こえた。それから、また舌が絡み合う音が響く。お互いの吐息と、夏の蒸れる女子トイレと、汚物と、愛液の匂いが俺たちの体を包んでいく。

「あんたの………初めて、ぜんぶ、うばって、やった………ざまあ、みろ………」

ひひ、と笑った花さんの頬に汗が伝った。破かれた俺のワイシャツや、むき出しになった花さんの胸元にも汗の玉が吹き出ている。きゅう、と締まった花さんの膣内の刺激に耐えかねて、汗の絡まった声で俺は吐き出す。

「はなさ、俺、でそう………」

花さんの細い腰を持って、下から突き上げる。下半身からぐちゅぐちゅと卑猥な音がする。花さんも、歯をかみしめて声を堪えている。頭の先からつま先まで、俺たちは汚水に浸かっている。これは排泄だ、と俺は千代ちゃんに呼びかけた。千代ちゃん、これは愛の行為じゃない、排泄なんだ。腹の奥から熱いものがこみ上げてくる。花さんの目に涙が浮かんでいる。ああ、花さんが愛しい。

瞬間、俺は膣内からそいつを引き出して、片手で持って強くしごいた。ふらつくばかりの花さんの腹と、俺の汗ばむ腹の上に、排泄の証拠が飛び散った。荒い息を吐く俺の口元に苦い汗が入り込む。よだれまみれの花さんは暫く俺に抱きかかえられながら呆然と天井を見つめていた。息を整えながら花さんを見上げる。俺はいつもここで死にたいような泣きたいような感情にかられる。これは、自分の現在を明確にするための儀式だ。俺と花さんは排泄で繋がっている。

俺の腿に乗った花さんの、びしょ濡れのクリトリスに指を這わした。二度、体を震わせた花さんが、おしっこをする。それは俺の指を濡らす、腹を、腿を、制服を、俺の精液を、性欲を、罪悪感を、押し流していく。

 

西の空はもう薄暗かった。念入りにシャワーを浴びた俺は再び、ジャージ姿のままあのベンチで西の空を見ている。手のひらからは、石鹸の香りしかしなかった。星の瞬き始めた明るい西の空を眺めていると、細い声がかかる。

清志クン。俺は千代ちゃんを見た。女子のジャージ姿の千代ちゃんは俺に駆け寄って、笑顔のまま色々なことを話す。俺の隣に小さな体を寄せて、相撲の事、お姉さんの事、ガクトの事、真吾の事、副会長の事、アンドレの事を話す。俺はそれを笑顔で聞いている。千代ちゃんが悲しい顔をしないように、話を合わせて、話を聞いている。ころころとかわる表情を見る。ふっくらとした唇を見る。星が宿っているようなまつげを見る。千代ちゃんの少し濡れた髪から甘いシャンプーの香りがした。それでね、と千代ちゃんが言葉を紡ぐ。俺は真っ直ぐに千代ちゃんを、もう遠くなってしまった、千代ちゃんの柔らかい唇を見つめている。点り始めた街灯が、俺を陰にして千代ちゃんを覆った。千代ちゃんはあの監獄の残酷さで持って俺を見る。沈黙の隙に風が流れていった。

「清志クン、どうしたの?」

千代ちゃんの声が遠くなる。千代ちゃんの目も、綺麗な肌も、瞳も、焦がれてやまない唇も、死んでいく夏の風に吹かれて俺の前からかき消されてしまう。千代ちゃんは綺麗だ。だから、俺は微笑んだ。

「………なんでもないよ………」

高い星空から秋の風が降りてくる。空は高くて空気は澄みはじめた。俺の周りにある、粘った夏の汚水は次々と漂白されて、季節は死んでいく。いたたまれない感情を抱えながら、俺は千代ちゃんから目をそらし、無垢でもなく、濁るでもない、どっちつかずの秋空を眼差した。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。