本因坊秀策全集を閉じる。その表紙を撫でながら、傍らのマグネット碁盤に棋譜を並べていく。
400譜ほどの棋譜は既に覚えた。藤原佐為がどう考え、その一手を打ったのかが、わかるようになってきた。
佐為の成長の軌跡を追うことで佐為の思考の変化が詳細にわかるようになった。ああ、本当におまえはすごかったんだな。
それはヒカルの絶望を刺激してやまない。
一手一手、碁石を置いていく。
本因坊秀和の堅実な棋風に追いつかんと打つ迫力の碁、その緊迫はいかほどであったのだろうか。
一手一手、碁石を置いていく。
太田雄蔵との30番勝負、一進一退の身命を削った戦い。雄蔵の名誉と維持のジゴ、これほどの手を打ち合うことが出来た佐為の喜びが伝わってくる。
佐為の苦しみ、足掻き、苦悩しながら最善の一手を探す喜び、全てが盤上から伝わってくる。佐為に打たせてやればよかった。神の一手を目指さんとする佐為の軌跡を追うごとにヒカルの後悔が募る。
ああっ、だけどもう佐為はいない。俺に出来ることはもう一つしかない。佐為として打ち、神の一手を極める。そして、碁の神様を倒す。もうそれしかない。
「ヒカル、本当に大丈夫?」
「へーき」
海王中で行われている囲碁大会、初戦、2戦目とヒカルは三将として危なげなく勝ちを拾った。加賀も勝った為、葉瀬中囲碁部は決勝戦まで駒を進めることが出来た。
だが、ヒカルは疲労困憊であった。どんな碁でも極度の集中を求められる現状のヒカルには連戦はまだ無理があるのかもしれない。
だけど、そんなこと言ってられねー、碁打ちが1日1回しか打てねーとか笑い話にもならねー。慣れていくしかないんだ。ヒカルは覚悟を決めていた。
それでもふっくらしていた頬はこけ、顔色も青白くなってしまっているヒカルにあかりは心配でどうにかなりそうであった。それは加賀や筒井も一緒であったが、どんなに言ってもへーきとしか言わないヒカルに匙を投げていた。
「それでは、男子決勝、海王中対葉瀬中、開始してください」
塔矢アキラは海王中の校長室にいた。4月から海王中に進学するにあたり、挨拶をしに来たのだ。面倒でも、父の後援会関係への挨拶は義務であると自分を納得させ、笑顔を作りながら校長と話をする。
それが終わり、帰りがけに今校内でやっている囲碁大会を見て欲しいと校長に誘われる。断れずに見に行くことになる。
海王の囲碁部には入らないつもりのアキラとしては、あまり囲碁部には近づきたくないのだが、仕方がない。
パチリパチリと音が聞こえてくる。人垣の中で打つ三組、校長に勧められ、一番手前の碁盤を覗く。
それを見てアキラは思わず、顔を顰める。あまりに酷い碁であった。序盤の布石がぼろぼろで何がしたいのかわからない。
ただの素人が石を置いただけのような有様。どういうことだと、顔を上げて打ち手を見る。
そこにいたのは顔を青ざめさせ、目が虚ろになった状態の少年。白石を置く手が震えて定まらない。震える手を何とか対局時計まで伸ばし、時間を止める。
これは、打てる状態じゃない。この小さな打ち手はあまりに酷い体調のようだ。止めさせるべきだ。
大会運営の先生もそれに気づいたようで、保健室に行きましょうと話しかける。でも、この打ち手はへーきというだけで、止めようとしない。
ふと、こちらと視線が合う。
すると、大きな目をさらに広げて驚いた顔をする少年。そして、少年は何かを覚悟した顔をする。その様はあまりに真剣で思わず息を飲むほどであった。
前髪が金髪の少年は大きな目を細めると呼吸を忘れたかのように碁盤を見つめる。
それからの展開は予想だにしないものとなる。白番の少年の怒涛の攻撃、荒らし、乱戦へと持っていったと誰もが、そうアキラも思ったその後の、下辺全てを切り取ってしまう会心の一手。
そう、最初から狙いは乱戦ではなかったのだ。この下辺への踏み込みの準備をカモフラージュする為の荒らし、その後のシノギとあまりの打ち回しにアキラは茫然と盤上を見つめる。
勝負は決した。海王の生徒に悪手はなかった。厚みを活かして丁寧に打てば勝てる碁であった。アキラであってもひっくりかえせなかっただろう、そこまで進んだ碁、それをこの少年は!!
「ありません」
海王の生徒が負けを認める。それを確認し、気が緩んだのか少年がパイプ椅子に座ったまま頽れるように倒れこむ。アキラはそれを慌てて支える。隣で見ていたセーラー服の少女もヒカル、と悲鳴を上げながら手を出してくる。
「意識がない!」「保健室へ!」
会場が騒然となる中、ヒカルと呼ばれた少年は保健室へ運ばれていく。
他の対局も既に終わっていたようで、葉瀬中の勝利が言い渡される。そこに保健室へ運ばれた少年、進藤ヒカルが実は小学生だという事実がギャラリーから発せられ、さらに場は騒然となる。
アキラは葉瀬中の生徒が謝っているのを聞きながら、黙考していた。あの攻めをどうすればかわせるか、頭の中でシミュレートしていたのだ。そして、ふと我に返り、あの少年、進藤ヒカルと打ちたいという思いが猛烈に湧き上がってくる。
急いで保健室へ向かう。途中で保健室の場所を生徒に聞きながら早足で向かう。
「ヒカル、本当に大丈夫?」
「うん、へーき。あかり、ごめんな、心配かけた」
保健室のベット脇で涙ぐむ少女の頭を撫でているヒカルにアキラは声を掛けるのを躊躇する。そのアキラを助ける為ではないだろうが、養護教諭から、いちゃいちゃしないで、安静にしなさいと声が飛ぶ。アキラは当たり障りない言葉を掛ける。
「あの、もう調子は大丈夫なのかい?」
「……塔矢」
「あれ、僕のこと知ってるの?」
「……あ~、まぁお前囲碁界じゃ有名だぞ?親父さんのがもっと有名だけどな」
「それは、父と比べられても困るけど。そうだ、僕も囲碁をやっているんだけど、君のさっきの対局を見てね。ぜひ、僕とも対局して欲しいとここに来たんだ。もちろん、君の体調がよくなってからだよ。お願い出来ないかな?」
「ほんとか!こっちこそお願いするよ。俺、この前塔矢と対局したくて、名人の碁会所に行ったんだぜ?でも塔矢居なかったから対局出来なくてさ」
「それは悪いことしちゃったみたいだね」
「あ~、でも代わりに緒方センセに打ってもらえたから悪くはなかったんだけどな」
「緒方さんと打ったの?どんな対局だったか知りたいな。検討させてくれないかな」
「あ~、それがあんまり覚えてないんだ。そん時もちょっと調子が悪くなっちゃってさ。すっげー大負けしたことくらいしか覚えてねーわ、はははっ」
「そうなのか、じゃあ、体調がよくなったら連絡をくれないか。これ僕の連絡先だから。よくなったら碁会所で打とう」
「お前、小学生なのに名刺なんて持ってんだ、すげーな。後、出来れば別の場所で打たないか?俺、金欠でさ、席料払えねーんだよね」
「はははっ、お金は大丈夫だよ。父が経営している碁会所だから、お願いすればタダにしてもらえるから」
「う~ん、そっか、なんか悪いな!じゃあ、明後日でどう?ただの疲労だから一日寝てれば治るからさ。塔矢とはすぐに打ちたいんだ俺!」
「君がいいなら、そうだな、明後日の16時に碁会所でよいかい?」
「もちろん、楽しみにしてるぜ!」
「僕も楽しみだ、じゃあ、あんまり話してると彼女に悪いから僕はもう行くね」
「おお~またな」
「また」
すごい視線を進藤ヒカルの隣に座っていた女の子から感じて、さすがに居づらくなってしまった。でも、アキラはかなり満足していた。同い年の少年とこんなに気安く喋ったのは初めてだった。囲碁という共通の話題と、進藤ヒカルの気安い雰囲気のおかげだろう。
進藤ヒカルがどれほどの実力なのか、楽しみで仕方ない。明後日が待ち遠しい。
夜、食卓で進藤ヒカルの話をお父さんにしたら、その棋譜が見たいと言われた。また、お父さんから衝撃の事実を教えられた。
緒方さんが先週の木曜の勉強会に進藤ヒカルを呼んでいたのだそうだ。でも、進藤は来ず、緒方さんが相当怒っていたと言う。
確かにあの日の勉強会で緒方さんは機嫌が悪かったと思い出しながらアキラは、進藤君は体調が悪かったそうですから、それで来れなかったのでしょう、とヒカルの代わりに言い訳をする羽目になった。来ないなら来ないで連絡をしない時点でアウトなので苦しい言い訳だけれども。
お母さんは、アキラさんから同い年の子の話が聞けて楽しいと言われてしまった。今度、その子をうちに連れてらっしゃいとまで言ってくるお母さんに、友達がいなくてすみません、と謝りたくなってしまった。
進藤はとんだ藪蛇だったのかもしれないと苦笑いを噛み殺す。
「お父さん、緒方さんと進藤ヒカル君との対局を緒方さんから見せてもらいましたか?」
「ああ、すばらしい一局だった」
「では、その対局を見せてもらえますか」
「そうだな、この後、今日の進藤君の対局を見せてもらう前にその一局の検討をしよう」
「ありがとうございます」
「ああ」
「ほら、あなたたち、だったらお話してないで、ごはんを食べてくださいな」
「はい」
「うむ」
いつになく和やかな食事がヒカルのおかげ?で塔矢家に訪れたのであった。
葉瀬中囲碁部(二名部外者)の大会の結果は、失格という形で幕を閉じた。それでも、筒井さんは楽しかったと大喜びし、加賀も皮肉げな笑みを浮かべながらも楽しそうにしていた。
ヒカルの体調を心配していた筒井さんと加賀に別れを告げ、あかりと家路につく。日曜の夕方、木枯らしが吹く中、あかりと寄り添いながら歩く。
「ヒカル本当に大丈夫?」
「へーき。……それもう10回目の質問なんだけど」
「ヒカルのへーきは今日だけで20回は聞いてるよ。でも全然平気じゃないじゃない!」
「……ごめん、あかり」
「ううん」
「ありがとう」
あかりに感謝して、その小さな手を握る。あかりが握り返してくる。すこし、気分がよくなる。
「そういえば、あかり。そのセーラー服にスクールコートってしおりさんの?」
「うん、海王中に行くのに私服じゃ目立つと思って借りたの、かなりぶかぶかでずり落ちそうになって大変」
「そっか。似合ってるよ、あかり」
「本当?」
立ち止まってあかりを見る。あかりの方が身長が高いので少し見上げる形になる。あかりは笑顔だ、夕日に照らされたその顔は綺麗で、ヒカルは思わず見惚れてしまう。
「よし、あかり、寄り道しよう!」
むらむらしたヒカルは即決で、あかりを犯すことに決める。ヒカルはあかりを引っ張っていく。
「っちょ、ちょっと、ヒカル、どこ行くの?」
目的の場所にすぐ、たどり着く。家の近所にある比較的大きな公園。この時間なら人はいないだろうと思ったが案の定、公園に人影はない。
公園の奥の遊歩道、その脇の植え込みに入っていく。大きな木の後ろに小さなスペースがある。子供の頃、かんけりをした時に隠れるのに使った場所で、周囲から死角になっているのだ。
「しよう、あかり」
抱きつきながら、あかりの目を覗きこみ、端的に言う。ヒカル疲れてるのにダメだよ。ここ外だよ、ヒカル。ヒカルの家ですればいいじゃん、寒いよ。あかりは早口で否定してくるが、何も言わずにじっと抱きついたまま、あかりを見つめ続ける。
「一回だけだよ?」
「うん、あかり、大好きだよ」
辺りは薄暗い。街路灯の灯りがわずかに回り込んで差し込みヒカルたちを照らす。あかりのスクールコートを脱がし、樹の枝にかける。
「あかり、ちょっとくるっと一回転してみて」
「はいはい」
あかりが、一回転する。ふわりとスカートと上着が膨らむ。おお~。前世では散々見飽きたあかりのセーラー服だが、こういう状況で見るとまた違って見える。エロい。ぶかぶかのセーラー服を着ている様は、女の子から、女へと成長する途中を象徴しているようだ。
その少女を犯すと思うと背徳感が増す。抱きついて、顔を寄せる。あかりも静かに目を閉じてこちらに顔を寄せてくる。
「ぷちゅっ!んっ、んちゅっ、ちゅば……ん、っちゅぱちゅぱ……んんふぁあ」
貪るようなディープキス。あかりの熱い口内を堪能する。舌を絡めあう。そのまま、あかりの舌をヒカルの口内へ引き入れる。あかりの舌を唇で抑え込み、フェラのように唇でしごく。舌の先端を高速でレロレロと嘗め回す。
「んちゅっ、ちゅばっ!ちゅばっ!ぶちゅうううううう、ふんぁんんんっちゅうううう」
セーラー服の下から手を入れ、ブラをずらす。そのまま胸を揉む。乳頭を高速で振動させる。
「ちゅぱっ、んちゅっ!ちゅううんぁん、ふあああああんんんぁ、あああ」
あかりの股間部分をスカート越しに腿でぐりぐりと刺激する。
「ひぁっ、んちゅうう、べちゃべちゃ、れろっ……んっんっんっ、んんんんんんんん」
涎が垂れ、セーラー服にかかる。胸を揉むのに乱雑に扱われたセーラー服に皺が出来る。スカートにあかりの愛液が染みて色が変わる。
「ぷはっ、はぁっ、はぁっ、はぁ、ヒカル、激しいよぉ、はぁあああんんん、ひゃあっ」
スカートの中に手を突っ込みパンツを脱がす。片足を持ち上げ、そのまま、あかりの膣中に肉棒を挿入する。
「ああっ、きた!あああん、んんん、ふああ」
「気持ちいい?」
「んぁっ、んんん、気持ちいいよヒカルぅ……んんんっ」
「誰か、来たみたい。ばれたらどうする?」
「んぁあっ、えっ、えっ、ヒカル止めて止めて、んんんっああ、んあはぁ」
「声我慢すれば大丈夫だよ」
ヒカルは抽送を早める。ぐっちゃぐっちゃと接続部分から卑猥な音が漏れる。顔を真っ赤にしながら必至にヒカルに抱きつき声を我慢するあかり。
「んんん……ふぅ……んん……ふぅぅ…………んん」
こうなると声を上げさせたくなるのは仕方ないだろう。挿入したまま、足を入れ替え、立バックに移る。木の幹に手を突かせ、スカートを捲る。真っ白なお尻を見ながらヒカルはあかりの膣奥を激しく突く。
「んんんんんんんっ、ふっ、ふっっふゥんンん……」
「もう立ち去ったみたい。声出して大丈夫だよ、あかり」
「んあっ!あっ!あっ!はぁっ、はぁっ、はぁっ、ふあぁぁあああああああ、いっぐうぅんんんんんんんんんん」
声を我慢していたせいか、あかりはすぐにいってしまった。強烈な締め付けがヒカルの肉棒を襲うが、一緒にいきそこなう。
あかりの淫壺から肉棒を抜く。あかりを後ろから抱きしめる。ふぅふぅと息を整えるあかりの胸を後ろから揉みながら、落ち着くのを待つ。
「もう大丈夫、ごめんね、ヒカル」
「気にすんなって、俺も悪かったし、あかり、フェラで抜いてくれる?」
「わかった」
あかりが地面に膝を付きヒカルの肉棒を口に含む。
「んじゅっ、づちゅっ、ちゅぷっ、っちゅっちゅ、んじゅうううううううう」
「あかり、すっげーいいよ」
あかりは一生懸命肉棒を含んだまま頭を前後する。舌をペニスに巻き付け、その柔らかな唇でヒカルの肉棒を擦る。そして思いっきり吸い尽くすようにバキュームする。睾丸を手で優しくさすってくる。これにはヒカルも堪らない。
「あかり、射精る!!」
「んんっ、ぷはっ、飲んであげる……れろっ、んじゅっ、んじゅっ、じゅぞおおおおおっ、ごくごく、んんん、はぁはぁはぁ」
「ありがとう、あかり」
「ん~ん、どういたしまして」
「んじゃ、帰るか」
「ああっ、どうしよう、お姉ちゃんの制服、ぐちゃぐちゃだよ!」
「どれどれ、うわぁ、これはひでーな」
「どうしようヒカル?」
「ん~まぁ、ファブリーズして、返すしかないんじゃない?とにかくこの匂いはまずいだろ。後は……謝ろう」
「ん~、はぁ、またお姉ちゃんに無理なお願い言われそう」
「あははっ、頑張れあかり」
もう、無理なお願いされるのはヒカルなのに、というあかりの囁き声はヒカルに届かなかった。聞こえたところでヒカルの運命は変わらないのだが……。