---アザゼル---
絶対神の遣い人(つかいびと)、シュウの癒やしと浄化の能力のおかげで、冥界に蔓延っていたPTSDの患者は減り、小猫達重篤な火傷患者は助かり、炎柱の惨劇のトラウマすら薄れさせていった。口だけ男ではなく、ちゃんとアフターケアもしてから去ったようだった。
彼と接触したであろう者と面談して情報を集めようとした。だが、彼に関する情報はあまり得られなかった。そんな中、イッセーからは彼とは違う情報を得た。イッセーの中にいる、新種のドラゴンと思われていたペニーが、実はサタンらしい。
「サタンって、ドラゴンではないの?」
「ドラゴンではない。悪魔だ。ルシファーは冥界の魔王だったが、サタンは地獄の魔王だった。閻魔の前任者だ。かって起きた三大勢力戦争の際に、ルシファーの援軍に来たサタンだったが、ルシファー共々死んだはずだ。もしサタンだとしたら、死なずに魂のまま彷徨い続けて、お前に宿ったのかもしれない」
「サタンって、強いの?」
「あぁ、ルシファーとサタンは、悪魔のツートップだ。お前はそのツートップの血と魂を手に入れている。お前は最強のドラゴンであり、最強の悪魔ってことになる」
「僕はどうなるの?」
「今まで通りだろう。今迄も最強の悪魔と、最強のドラゴンはお前を護ろうとしてくれていた。怒りの飲み込まれた暴走状態では、どうすることもできないみたいだが、今のお前には暴走を防止する装置が埋め込まれている。正常に動作すれば、問題ないと思う」
「そっか…」
イッセーは未だに入院中だった。途轍もない魔法を喰らい、全身が痛いらしい。外傷も精神も癒えたのだが、筋肉の回復にはまだ少しかかりそうだった。
「まぁ、大人しく静養しろよ」
俺は、イッセーの病室を後にし、魔王領の魔王の間に転移した。サーゼクスは回復したようだが、セラフォルーは未だに、自分の妹が怖いらしい。
「夢の中の事って思っても、無表情のソーたんに切り裂かれて、イッセー君に潰されたんだよ。悪夢すぎる」
シュウは惨劇を、実経験ではなくて夢で見たことにしたようだ。それでもセラフォルーの体験は、きつそうだ。
「悪夢でも夢なんだから。実際、お前はそうして生きているだろう?」
アジュカが、慰めにならない慰めをしている。いや、それしかないよな。
「生きているけど…ソーたんの顔を見ていると、いつ無表情になって斬りかかってくるのかなって怖いんだよ」
これは時間がかかるなぁ…セラフォルーを見ているとそう思った。
「ところで、フェニックス兄妹と、ライザーの眷属はどうするんだ?」
俺は、軍事担当のファルビウムに聞いた。
「こんな事態になって、詫び状だけでは、済まない状況だ。ただ、兄妹は純血悪魔だし、ライザー眷属を止められなかったが、関与していないみたいなので、痛い目には遭わせにくいな。実行部隊の眷属の方は厳罰にするよ」
「殺傷力のある炎柱攻撃を、仮想フィールド以外で使ったんだから、極刑でもいいくらいだよ。見せしめの意味も込めてね」
アジュカは、未だに怒りが収まらないみたいだ。サーゼクスを消したことが、原因なんだろうけど。あとは、仮想フィールド以外での、殺し合い禁止もあるかもしれないな。
「イッセー君の具合は、どうだった?」
「シュウが来る前とは違い、穏やかだ。ただなぁ、厄介な情報があるんだが」
サーゼクスに答えた俺。
「厄介?」
「あぁ。シュウがなぁ、イッセーの中のペニーの正体を、見破ったみたいなんだが…」
「新種のドラゴンでないのか?」
「違うそうだ。ペニーの正体はサタンだと」
「「サタン様?」」
「あぁ、シュウとサタンが会話しているのを、イッセーが聞いていたそうだ」
「あのサタン様か?」
「他にいないだろ?ってことで、ルシファーの血を持ち、サタンの魂を取り込んでいるイッセーは最強な悪魔ってことになるぞ」
「魔王候補として申し分ないなぁ」
嬉しそうなアジュカ。
「そうなるが…現在のイッセーは、最強のドラゴンの身体を持ち、最強の悪魔の能力が使える可能性があるということだ。暴走したら、この世界の勢力では、もう誰も止められないのが問題だ」
「暴走させないように、心掛けるしかないよな」
弱気の発言のファルビウム。
「それか、シュウって奴がまた来て止めてくれるかだな」
他力本願な俺。
---リアス---
小猫、祐斗、朱乃の容体は良い方向に向かっている。火傷の痕もあまり目立たなくなっている。毎日、黒歌が気の調整をしてくれて、退院も近いかもしれない。
問題はイッセーだ。前よりは、穏やかにはなったけど…時々、夢で小猫が燃える場面を見てしまうことに苦しんでいた。あれはイッセーの責任ではないんだけど、責任感が強いから余計苦しめているのがわかる。どう接してあげれば良いのかな?
私は難を逃れたので、その時の修羅場加減もわからない。毎日、病室の前には来るんだけど、病室の中に入れない。どんな顔をして入れば良いのだろうか?そんな私の前にアーシアが現れた。
「リアスさんまで病んでは、イッセーさんをより辛くしてしまいますよ」
私の心を癒やしてくれる彼女。少し軽くなった感じがする。
「そうよね。アーシア、イッセーに会いましょう」
「はい」
アーシアの笑顔も私の心を癒やしてくれる。二人で病室の中に入った。
「イッセー、調子はどう?」
「イッセーさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、リアス、アーシア。良くは成ってきているよ。シスコンサーゼクスにやられた時より軽傷なんだけど、今回は、的確に弱点を攻められてみたいで、治りは悪いみたいだ」
イッセーの顔に笑顔が戻っていた。良かった…
「また、当分エロいことができないな…」
「言ってくだされば、ここでしますよ」
アーシアが大胆な発言をしている。
「そうだな。アーシアとなら、治りも早くなるかもしれないな。おい、リアス。険しい顔をしていると、眉間に皺が出来るぞ!」
はっとした私。そうだよ。笑顔でいよう。
「良くなったら、リアスと十字架プレイしたいから、よろしく」
「え?嫌だわ。十字架プレイは止めましょう」
「そうなの?じゃ、媚薬風呂プレイは?」
「どこで覚えてきたのよ。それも嫌だわ」
こういう会話はイッセーとしかできない。会話だけなら楽しいんだけどな。プレイはなぁ…
「両親が帰国するまでに、退院しないと、心配をかけちゃいそうだよ」
急に真顔になるイッセー。
「そうだわ。心配はかけない約束だものね。アーシアとの癒やしプレイは許可しましょう。今回だけの特別許可よ。イッセー、アーシア、良いわね」
頷く二人。たぶん、今回だけでは済まないだろうな。でも、イッセーが元気なってくれるのが一番だわ。