---ルヴァル---
謝罪すべき相手に謝罪することなく、制裁をうけてしまった俺達兄妹。そして、愚弟の魔王への悪態、止められなかった。冥界のメディア関連の仕事している賢弟は難を逃れた。その弟に、今後の財政をすべて賄ってもらうことになった俺達二人。レイヴェルは人質に取られ、玩具にされているようだ。
制裁により、悪魔から人間にされ、能力を奪われてしまった、俺とライザー。取り敢えず、賢弟に手配をしてもらった家に、住むことが出来た。今後、どうすれば良いのか?ライザーは仕返しをして、レイヴェルを奪還すると言うのだが、俺達には戦闘能力がなくなっている。さて、どうしたのものだろうか。
「兄貴、アイツの家を襲撃しようぜ」
現状を理解していない愚弟。
「お前なぁ、今度何かしたら、レイヴェルの命が危なくなるかもしれないぞ。魔王全員を怒らしているんだからな」
「はぁ?なら、魔王を全員、魔王の座から引き摺り降ろせば、問題ないだろ?」
「クーデターでもするのか?戦力はどうするんだ?」
「旧魔王派と手を組めば良いじゃないか、なぁ、兄貴よ」
こいつ…人間になった自覚があるのだろうか?人間の戯言に旧魔王派が手を貸すわけがない。
「そんな事より、仕事を探してく来いよ、ライザー。当分、人間界で暮らさないといけないんだからな」
「仕事?なんで?」
「生活費を稼がないとダメだ」
「そんな物、冥界から送ってもらえば良いだろ、兄貴」
コイツ、制裁の意味をわかっていないのか?ここまで愚かだったとは。
「俺達の行いは、魔王サイドに監視されているんだ。今後の行い次第で、悪魔に戻れるかが決まるのに、お前ってヤツ…」
「へいへい、仕事を探してくれば良いんだな」
ライザーは、意気揚々と仕事を探しに行った。はぁ…なんで、アイツは強気で居られるのだ?俺も仕事探しに行ってくるかな。
---ライザー---
「兵藤」という表札が掲げられた家を見つけた。さてと、金を貰うか。ドアを破壊して、中に入る。俺の顔を恐怖で歪んだ表情で見るご婦人を見つけた。
「あなた…どなた?」
「有り金を総て、出せ!お前の息子に貸しているんだ。早く出しやがれ~」
ご婦人の腹を蹴り上げる。天井にぶち当たって落下してくるタイミングで蹴り出すと、窓を突き破って庭に飛び出た。
家の中を漁る。が、金が見つからない。庭に落ちているご夫人を拾って、ありかを聞き出そうとするも、息絶えていた。人間って、脆い生き物だなぁ。
もう一度、一階中を探し回って、多少の金を手に入れた。次は二階だな。だが、二階への入り口が見つからない。どういうことだ?
玄関を出ると、もう1つ玄関を発見。ここだな。ドアを壊そうとするが、壊れない…フェニックスの翼があれば、2階の窓から入れそうだが、くそっ!
その場を後にした。
---イッセー---
帰宅すると…両親の家の玄関が破壊されていた。え?なんで?トスカに家全体に結界を張ってもらってから、みんなで家に入ると…破壊されていた。庭に面した窓が破壊されている。まさか?僕は庭に向かって走って行くと…母さん…冷たくなっている母さん。恐怖で顔が…誰がこんなことを…僕は怒りのオーラに染まっていくが、暴走することなく怒りのオーラを蓄えていく。
そんな僕の背中にだきつくアーシア。
「お願いです。イッセーさん、怒りのオーラに染まらないでください」
そうだった。あの人が暴走防止装置を入れてくれたおかげで、暴走はしないで済んでいる。これからは自分の意志で、怒りに染まらないようにするんだった。でも…
僕は、母さんの時間だけを止めて招魂して蘇らせた。時間を動かすのが怖い。こんな顔で亡くなった母さん。記憶を消さないと…
「イッセー先輩…」
白音が母さんに気を送る。記憶は消えないが、穏やかな気分にはなれるはずだ。
---ファルビウム---
イッセー君の母上が襲撃されたそうだ。一報が届き、俺達魔王全員は、イッセー君の家に集合した。母上の死に顔…惨い。誰だ?誰がやった?そんな俺の脳裏に一人の顔が浮かんだ。アイツらが人間になったことで、この家の警戒を解いた矢先だった。もう少し警戒をしていれば…イッセー君に申し訳なさすぎて、彼と目を合わせられない。
俺はフェニックス兄弟の人間界の家に転移した。
「おい、待てよ。一人行くなんて水臭いぞ」
振り返るとアジュカがいた。え?イッセー君も。
「ファルビーさん、アイツだよね?他にいないよね?」
「いや、可能性の1つだ。確定ではない」
俺の心のどこかで、間違っていてくれ!他の勢力であってくれ!と願う部分もあった。ここまで愚かな者と思いたくなかったから。
家には誰もいなかった。しばらく待っていると、サーゼクス、セラフォルーも来た。
「留守なのか?」
「あぁ、サーゼクス」
「イッセー君の優しいお母様を狙うなんて許せない」
イッセー君同様に、目に涙を溜めているセラフォルーが、拳を握っている。
---ルヴァル---
家に帰ると、家の前には魔王が全員待っていた。
「どうしました?人間に成り下がった私達に、何かご用ですか?」
「ライザーはどこだ?」
魔王達の雰囲気がいつもと違う。戦闘モードのようだ。なんでだ?
「愚弟が何かしましたか?」
アイツ、また何かしたのか?
「聞きたいことがある。今日、イッセー君の母上が、自宅で襲われて亡くなった。家も破壊されていて、普通の人間の仕業ではないみたいなんだ。悪魔、堕天使の残留オーラもないことから、君達二人が容疑者なんだが、ルヴァルはそんなマネはしないよな?」
普段温厚なファルビウム様がキレている…不味い状況だ。ライザーなんてことを…
「私はしておりません。それに、いくらなんでも、ライザーがしたとは思いたくないです」
「で、ライザーはどこに行ったのだ?」
ファルビウム様の迫力に飲み込まれた俺。ライザー…早く帰って来い…
「仕事を探しに行きました…」
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ライザーが、帰宅したのは深夜過ぎになってからだった。
「兄貴、稼いで来たぜ!」
大量の財布を部屋に撒いた。その財布の中に血痕や血糊が付いた物があった。
「お前…この財布をどうしたんだ?」
「人間から奪って来たよ。身体能力は普通の人間より俺の方が上だからな。ははは」
「おい、なんで母さんの財布が入っているんだ?それに父さんのまで…」
アイツの絞り出す声…その場に力なく崩れた彼を、セラフォルー様が抱きしめる。視線は愚弟をロックしたまま。
「おい、ライザー。どういうことかな?」
ファルビウム様の声に気づき、周りを見回して微笑む愚弟。
「人間になった俺は、アンタらに裁かれる覚えはない。何しようが俺の勝手だろ?」
「勝手?罪のない人間を殺して良い理由にはならないぞ」
「悪魔のアンタらに言われる筋合いはない。兄貴、人間から毎日奪えば、生活は楽に出来るぜ。二人でやれば、大金持ちになれる。いっそ、地上の人間を屠りまくって、俺達二人だけの世界にしようぜ。」
ライザー…俺も限界だよ。
「ライザー、もう俺は、お前を庇ってあげる気が起きない」
「何、弱気になっているんだよ、兄貴!」
そんな上機嫌に見えた愚弟に変化が訪れた。
「あれ?何も見えないけど、電気を消したのか?明るくしてくれよ、兄貴…れ?音が何もしない。なんでだぁ?自分の声すら聞こえないよ~」
パニックに陥り始めた愚弟。
「僕の両親に手を掛けるとは…視覚と聴覚を奪ってやった。この先、それで生きろ!」
両親を失ったアイツにより、天罰が愚弟に下りたようだ。俺もこの処置に口は出さない。コイツはクズに成り下がってしまったようだ。サーゼクス様から放たれた滅なる力。愚弟の首から下に纏わり付き、消し去った。床に転がる愚弟の首。
「ルヴァル、そのクズの面倒はお前が見ろ。いいな!」
ファルビウム様に下された、俺の追加の処罰。受けるしかないな。俺は頷いた。
魔王達はこの場からいなくなった。俺と愚弟の二人だけになった。
「兄貴、どこにいるんだ?なぁ、声を聞かしてくれ…」
愚弟は、サーゼクス様の滅の力によって、首だけで生きる愚弟…この愚弟と最後の時を迎えるまで、一緒にいよう。
レイヴェル…俺達のせいで、すまない…
---アーシア---
帰宅したイッセーさん。セラフォルー様に支えられて戻って来た。出先でショックな事があったようで、床にへたりこんで動かなかった。セラフォルー様から、原因を聞かされた私達…あの優しかったイッセーさんの両親が…イッセーさんの両手に二つの財布が握られていた。1つはお母様の、もう1つは血糊がべったりとついた男物の財布…私に出来ること、イッセーさんの心を癒やしてあげること位しか浮かばない。
今日、兵藤家の時間は止まった。