---イッセー・ルシファー---
VR鍛錬を終えて、家に帰ると、リアスの様子がおかしかった。
「どうしたんだ?」
「できたよ♪」
「飯か?」
「イッセーとの子供♪」
はぁ?この前、交わったばかりでないか。
「気のせいでは?結果がわかるまで、まだかかるだろ?」
種を植えたソーナでさえ、出来たかは植えてから3ヶ月かかったらしいし。
「ふふふ♪団長がねぇ、出来たって言うの。それも男の子だって♪」
えっ?ちょっと、待て!団長…って…
「団長が来たのか?」
「うん、うん♪」
何故か嬉しそうなリアス。
「用件は?」
「私が呼び出したの~」
よ、よ、呼び出した~って…
「おい!呼び出し賃は高額だぞ」
「今回はチャラでいいって。残念だけど、取引が成立しなかったから…」
残念そうなリアス。
「何を願ったんだ?」
「イッセを助けてって…」
「供物は?」
成立しなかったってことは、見合わない物だったんだろう。
「生まれて来る子供…」
おい…何を差し出そうとしたんだ?
「でも、男の子だから、出来無いからいらないって…」
女の子だったら、持って行かれたのか…
「おい、そんな願いをするな!」
「でね、私ならどうかって持ちかけたんだけど、いらないって」
いやいや、ダメだって。
「困る。リアスがいないと困るよ!」
「言われたわ。私がいなくなると、私の亭主はもっとダメになるって。団長は、イッセのことを見てくれているんだよ」
見ていてくれても、俺は団長の期待に沿えない。
「で、どうにかして、欲しいって、せがんだら…イッセの手で私を差しだして、イッセの覚悟を見せろって…」
俺を見つめるリアス。目は涙で潤んでいる。悔し涙っぽい。俺が不甲斐ないから。
「もっと強くなって、団長に拾って貰えるようになる。だから、リアスは、無茶をしないでくれ!なぁ、頼むよっ」
リアスに縋り付く俺。リアスだけは護りたい。鬼の手から…
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翌日…VR装置へ…リゼおじさんと相談して、このステージを楽勝で終わらせる事が出来たら、次のステージに挑むということになった。体験しているので、ペース配分を考えることに注視していく。
1ヶ月後…ようやく楽勝に近くなり、次のステージへ挑むことにした。
「イッセーたん…最初の邪龍と抗戦したら、ギブアップは出来無いからねん」
抗戦前ならギブアップ出来るのか…って…なんで抗戦前にギブアップ出来るんだ?嫌な予感が脳裏を過ぎる。単なる邪龍では無いのか?
「あとねん、邪龍が拠点に到達したら、ゲームオーバーだからねん…スタートからやり直しで、ギブアップは出来無いから、注意よん!」
リゼおじさんの顔が、珍しく険しい。どんなステージなんだ?VRヘッドギアを頭に装着して、装置の中に身を委ねた。
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俺の出た場所はアウロス学園の上空であった。翼は既に展開している。目の前には、空が真っ黒になるほどの邪龍の群れ…これを倒すだけか?拠点はアウロス学園だろうな…脳裏にギブアップしろと文字が浮かんだ。このシチュエーションって…
『そう…シュウの心が壊れた戦いの幕開けだよ』
ヴァーリの声が聞こえた。確か、邪龍は聖杯によって強制変異させられた仲間達だったっっけ…
『お願い…ソーナを殺す前に私を殺して…』
リアスの声が脳裏に響いた。おい…あの中にリアスがいるのか?
『この前半戦は、君の覚悟を決めることにある』
ヴァーリの声がした。ダメだ…リアスは身重なんだぞ!
「ギブアップだ!」
『残念だ…次回はハンデが重くなる。覚悟をしておけ!』
ヴァーリの声…そして、VR装置の中で目覚めた。
「残念だよ~ん、イッセーたん」
リゼおじさんの表情は暗い。まさか…俺は自分の家へと急いだ。
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家にはリアスがいるはずだったが、リアスはいない。どこへ行ったんだよ!家中を探し回る俺…俺の部屋の机の上に、リアスが書いたメモが置かれていた。
『団長へ、イッセの覚悟を見せつけろよ!』
そんな…あの邪龍の中にリアスがいるのか…殺せる訳無いだろ…
「私の亭主はヘタレだったんだ~!」
え?顔を上げるとリアスがいた。
「リアス♪」
彼女に抱きつく俺。俺をかわす彼女…なんで?
「お前、バカか?身重の妻に正面から抱きつくなよ~!」
あぁ…そうだってね…
「まったく、戦闘力がいくら高くても、精神がダメダメじゃないの!」
だな…
「もう、団長の元へ復帰するのは、あきらめなさい!あなたには無理だから」
いや…それは…イッセーの笑顔が脳裏から消えてくれないんだ。俺はアイツを救えなかった…だから、今度こそ…
「なんで、固執するのか、私にはわからないよ~。この世界において、最強な戦士で、魔王で、私の亭主で…後、何を望んでいるの?」
このままでいろと、リアスは望んでいるのか。ヘタレのままの俺で…
「ヘタレ魔王でもいいよ。私はねぇ。イッセは何が気に入らないの?高望みしすぎだよ」
高望み…
「だって、イッセは戦死したんだよ。その程度の魔王なんだよ。もう、団長に迷惑を掛けちゃダメだよ」
リアスが泣いている。俺の為の涙か?団長への申し訳無さか?
「なんで、戦死なんかしたんだよ!なんで、生きて戻ってきたんだよ!イッセー君は団長に殺されたんだよ。メイビスさんはイッセー君に殺されて…戻って来れないのに…なんで、戻って来たのよ~!うっ…うぅぅぅ~」
俺に泣きすがるリアス。戦死して戻って来られなかった者達に、申し訳無い気持ちがいっぱいなんだろう。俺の覚悟が足り無かったせいで…ヴァーリさんまでも…
「なんで、私の元に帰りたいって、団長に望んだの?私的には嬉しいけど…イッセー君もメイビスさんも、自分の弱さを詫びて、団長に別れを告げたそうなのに…」
え…そうなのか…初めて聞いた真実…俺は、自分の弱さを詫びずに、リアスの元に帰りたいと願ったらしい。
「団長が私に謝っていったわよ。イッセの強さを読み違えたって…」
リアスにも言ったのか…
「私は、イッセのしたようにして欲しい。だけど、もう団長を振り回さないで」
リアスは団長を…紅髪コレクターを…慕っていた…もしかしたら、俺が団長の元で働けたのは、リアスのおかげか?
「うん?勘違いはしないでよ~。私の旦那はイッセだけよ。でも、団長のことは戦士として尊敬しているんだよ。ソーナもそうだし」
戦士…俺は戦士になれない魔王ってことか…
「そうだよ!お前はヘタレの魔王だよ!
この声は…振り抜くと、魔王になったリアスがいた。団長の元で鍛錬を積み、魔王になったリアスだ。
「お前も、クリス兄さんも、サーゼクス兄さんも、みんなヘタレだよ!」
「どうして、ここに?」
「団長がねぇ♪ヘタレと戦って来いって♪」
団長へのメロメロ加減が伝わってくれる。
「ヘタレを叩きのめしたら…口と口…マウストゥマウスしてくれるの~♪」
ずいぶんと安い褒美だな…
「安い褒美?ふん!お前が弱すぎるからだよ!」
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そして、俺は魔王リアスと、スタジアムで戦うことになった。ここなら、死ぬ事は無いはずだ。問題は魔法リアスの能力だ。殲滅姫と呼ばれているらしい魔王リアス。危険が一杯だ。俺のリアスは、自分の新たな可能性を見る為に、観戦するそうだ。リザおじさんもいるし。
「審判は俺、ガイア・グレモリー・鬼門が務める」
団長の長男の魔王だ。
「リアスの攻撃で、イッセの装甲が少しでも抉れたら、リアスの勝ちにする。それ以上のダメージだと、イッセの死は確実だからな。イッセが勝利するには、リアスがまいったと言った場合だけだ。では、開始だ!」
え!いきなり開始か…俺はリアスから距離を取った。そして、エクスカリバーを手にして、飛ぶ斬撃を放っていく。しかし、リアスからも飛ぶ斬撃が…紅色の斬撃だし…あれって…避けないと。
リアスの放った斬撃が着弾した箇所は、ロストしていた。滅の力を飛ばしているようだ。危険過ぎる。避けながら斬撃を放つが、リアスの纏った紅色の鎧に触れるとロストしていく。滅びの力を具現化して装備にしているようだ。
「どうしたのよ!最強な魔王よ!私の前では赤子かしら♪」
確か、30分耐えれば、エネ切れになるんだっけ?って、不利すぎる。攻撃が総て無効化されていく。滅の力、恐るべし。
スタジアムがボロボロになっていく。飛ぶ滅なる斬撃は、強烈である。着弾した場所を中心に直系1メートル位ロストしているし。
もうすぐ30分だ。魔力キレになれば、反撃のチャンスはある。耐え無いとな。
「あぁ、そういうことか。悪いけど、私の魔力は30分でキレないわよ。これでも日々鍛錬を積んでいるの。ふふふ♪」
うっ!なんだって…マズい、足場が無くなってきた。そうか、闇雲に撃ち出しているのでは無く、俺の行動範囲を狭めていたのか…
あのヘタレのリアスが、ここまで化けたのか…そうか、足場が無いなら、空へ飛び出せば…翼を展開して、空へ行こうとした時、翼に激痛が走った。
「勝負あり!勝者リアス!」
翼が撃ち抜かれていた。唖然とする俺…読まれていた。
「ふん!昔はヘタレってバカにされていたけど、今はアンタがヘタレよね♪」
完敗だった…
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特薬草の青汁で、怪我は治った。でも、精神的にやられた…
「はぁ~、異世界の私に完敗って、どうなのよ!」
病室のベッドで寝ている俺。ベッドサイドには俺のリアスがいる。
「そうか、滅の力って、あんな風に使い熟せばいいんだね。って、今からは無理だな。ハードそうな鍛錬だし」
あれって、勝てる要因ってあったのかな?全身、無敵状態なのに…
「だから、お前は覚悟が出来ていないって言うんだよ!」
団長の声…リアスの背後に転移してきた。
「どういうことですか?」
「リアスの顔を狙えば良いんだよ。あの力は顔の前には具現化出来無い。空気をロストしてしまうからな」
あっ!窒息死…だから、フルフェイスの兜じゃなかったのか。
「女の顔すら潰せない程度の覚悟で、戦いの場に来るなよ、クソガキが!」
「えっ…ここじゃダメ…やめて下さい…」
団長が、俺のリアスの胸を揉んでいた。
「身籠もっても、変わらないのか…」
「え?小さくは成らないですよ」
「まさか…これより大きくなるのか?」
「う~ん、どうだろう?初めてだから…って、ダメです。濡れてきたよ~破水しちゃうって…」
団長とリアスが楽しそうだ。蚊帳の外の俺…って!
「俺のリアスに何をするんですか?」
「うん?ヘタレなのに、所有権は主張するんだな」
「所有権って言うか、俺のリアスの旦那は俺だけです!」
「それは戦って奪い取れってことか?」
団長の声から死の恐怖を感じている。マジ、奪い取るのか?
「まぁ、戦う勝ちは無いか。じゃ、リアス、またな。ソーナの処へ行かないとだ」
「はい♪子供が生まれてからにしてくださいよね」
「早々、来れないと思うよ。忙しいんだよ、僕は♪」
団長が転移していった。
「リアス…」
「うん?浮気はしていないよ」
「だって…」
「あぁ、アレ?乳房に異常が無いかチェックして貰ったのよ。私には手を出さないよ。私より若いリアスがいっぱいいるし♪」
いや、娘枠のリアスには手を出さないと思う。あの魔王リアスもそうだし。
「で、彼女と再戦したら、顔を潰せるの?」
「無理だ…だって、リアスの顔だよ」
その時、ふと思い出した。そうだ、団長は白音さんの顔を、粉砕したことがあるんだった。団長の言う覚悟、仲間であっても、敵になったら容赦はしないってことなのだろうか。
でも、邪龍の群れにリアスがいたら、それは敵では無い…どうすれば良いんだ…
---ソーナ---
出産が近いので、抱き合うことすら出来無い…せっかく来てくれたのに…涙がこぼれていく。
「おいおい、泣くなよ。しょうがないだろ?その腹じゃ」
だけど…うっうっうっ…お腹がジャマでキスすら出来ない…
「で、名前はどうすんだ?」
「リーアにしようかなって…」
彼が一番愛する者の愛称…彼自身はそのことに気づいてはいないのが、問題ではある。
「なんで、よりによって、最悪だろ?最悪な女の代名詞だぞ!」
やはり気づいていない。愛することを封印されていた彼。その影響で、愛情がねじ曲がっているらしい。彼の世界の私が教えてくれた。
「決めたの♪」
「う~、黒髪のリーアか…なんだかなぁ~」
「で、イッセ君はどうだったの?」
「ダメだな。アレは使い物にならない。前線には連れて行けない。どうしてもってリアスに頼まれたら、平和維持活動程度ならいいかな」
イッセ君の評価はガタ落ちのようだ。この世界では敵無しの彼なのだが、団長の行く世界において、使い物にならないレベルらしい。
「戦闘力自体は2軍クラスだけど、精神がなぁ。一度壊れているから、無理も無いが…入団基準に満たない。あと、覚悟が無さ過ぎる」
この世界で敵無しの彼に、覚悟は無いと思う。どう戦っても敵無しだったから。
「ソーナの学校で教えられないかな?その辺りをさぁ」
「そうですよね。有能な戦士を育てる上で、必要な事ですものね」
覚悟…自分の死をもってやり遂げる覚悟。味方をもう苦しませないように、生の時間を終わらせてあげる覚悟。私が教えるにしてはハードルが高い。
「どなたか、講師を派遣してもらえますか?」
「う~ん…誰が適任かな…わかった。捜してみる、少し待っていてくれ」
彼が唸っている。彼の、この顔も好きだ。私のことを、親身になって悩んでくれていると思えるから♪