夢なのか、現実なのか…目の前に無数の邪龍の群れがいる…その群れは、アウロス学園を目がけて飛んでいるようだ。俺は邪龍の群れをの前にいる。
『お願い…ソーナを殺す前に、私を殺して…』
リアスからの念話を拾った。あの中にリアスがいるのは確かだ。しかし、外見からでは、どれがリアスかが判らない。個体差も無いようだし。もうすぐ群れと接触する。俺はどうすれば良いのだろうか…
団長のような蘇生能力もスキルも無い俺…リアスを殺せば、蘇生は無理である。あいつの身体には俺とあいつの子宝が宿っているし。
俺をスルーしてアウロス学園へ向かう群れ…俺の背後から阿鼻叫喚な響きが聞こえる。振り返ると、腹ボテのソーナが先頭になって群れと抗戦していた。
だけど…
「いや~、お腹は止めてぇぇぇぇぇ~!」
ソーナの膨らんだお腹が、邪龍の口が噛みつき、そして、ソーナから子供を奪い、咀嚼している。
クシャ、クシャ
ソーナの絶望的な顔…俺を睨んでいる。
「どうして…どうして…助けてくれないの…ぎゃぁぁぁぁ~」
ソーナに頭を丸かじりする邪龍…うっすらと、見知った、いや身近な者のオーラを感じた。あれがリアスなのか…邪龍はソーナの肩口をかじっている。実に美味しそうに…
ピカッ!ゴロゴロ…ドッカ~ン!
天空から稲光がリアスに落ちた。その衝撃でリアスの姿が元に戻った。俺は彼女に近づこうとしたが、足を止めた。鬼がリアスを見下ろしていた。その目はどこまでも冷たく深い。
「ソーナは上手かったか?僕とソーナの子供は美味だったか?」
リアスは蛇に睨まれたカエル状態で、固まって動けないようだ。俺は、リアスの前に飛び出し、彼女の盾になる。
「ほぉ~♪それがお前の決意か…残念だよ。お前は味方には出来ない」
うっ!肩口に激痛が走った。何?リアスが邪龍化し、俺を食おうとしていた。
「女房に食われるのも一興だな。お前の護るべき者に、食われてしまえ♪」
俺の身体からかみ切った部位を咀嚼する音が、リアスの口の中からする。肩口を食い切られ、俺の右腕は地面に落下していた。
傷口からウジ虫が体内に入っていく。内部からも食われているようだ。助けてぇぇぇぇ~、団長…
「はぁ?お前はソーナ親子を見殺しにした。なんで、僕が助けないといけないんだ?」
俺の目の前で、元の姿に戻ったリアスの口で奉仕させている鬼。
「あぁ、ほおばってくれ。お前がソーナの代わりだ。僕に奉仕し尽くせ」
頷くリアス…
ふざけるな…俺のリアスだぁぁぁぁぁ~!
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「大丈夫?ねぇ、イッセ…」
目の前に心配そうなリアスの顔…夢だったようだ。俺はリアスに夢の内容を話した。
「ねぇ…夢で良かったって思っているの?」
リアスの問いかけに頷く俺。
「私が罪人になってもいいの?」
「良い訳無いだろ?何を言っているんだ?」
悲しそうな顔のリアス。
「でも、ソーナ殺しの罪からは逃げられない…」
「だって、リアスの意志じゃないんだぞ…」
「じゃ、逆だったらどうする?」
ソーナがリアスの立場ってことか…
「リアスを護る為、ソーナを…決まっているだろ」
彼女の言いたいことはわかる。俺の正義は、相手によって変わるのだ。
「子供に…生まれて来る子供に…胸を張って、今の話を出来るの?」
「出来る…護るべき者を護る為なら…」
本当にそうか?
「そう…残念だよ、イッセ…私の願いは叶えて貰えないんだね」
リアスの願い…脳裏に甦る言葉…『お願い…ソーナを殺す前に、私を殺して…』
「団長は、その意味を理解して、レイヴェルさんを殺した。罪の無い人々を護る為に…彼女の正しいと思う心を無にしない為に」
でも…
「産まれてくる子供…を…二人で育てようよ。もう、団長の元へ帰るのは諦めてさぁ。イッセには無理だよ」
無理?俺は無敵の魔王のはずだ!リゼおじさんの作り上げた最凶傑作のはずだ。リアスは、もうその話題に触れようとしなくなった。
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何かが吹っ切れた俺は、リゼおじさんの元を訪れた。
「この前の続きをしたいです」
何故か、リゼおじさんの顔は悲しそうだった。
「ゲームとして割り切るのねん?」
読まれている…お見通しかぁ…そう、VRゲームとして割り切り、あの邪龍の群れを叩こうと思っているのだ。
「あのステージは無くなったよん」
なくなった?
「どうしてですか?」
「イッセたんには絶対に無理って、シュウたんが判断したんの」
そんな…
「次のステージも、イッセーたんを試すステージよん…」
何が待ち受けているんだ?VRヘルメットを装着して、カプセルに横になった俺。
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どこかのデカい建物にいるようだ。出てくる敵を倒していく。が…そのステージのボスを見て固まった。俺の恩人であるリゼおじさんだったのだ。
俺の世界のリゼおじさんでは無い。わかっているけど、攻撃が出来ない。どうすれば、いいんだ?
『こうすれば、いいんだ』
えっ…ヴァーリが、リザおじさんの頭部を粉砕した。
『このステージのリリンは俺の世界の俺の実の祖父だ。コイツのせいで…俺はシュウに深い傷を幾つも与えてしまった。護る対象だったのに…』
リゼおじさんが死の間際に何かすると、突然、死を感じるオーラを感じ始めた。鬼降臨か?なんで?
『はぁ?これはシュウのオーラでは無いぞ。ふふふ♪ここからが地獄の始まりだ。リリンはステージボスでは無い。この先にいるヤツが、このステージのボスだ。ここからの脱出条件は、ボスを倒すか、お前が死ぬかだけだ。精々がんばれよ』
おい…団長以外にこのオーラ持ちが居るのか?いや、もしかして、コイツが元祖か?
膝が笑っている。腿が震えている。背筋を何か冷たい物が流れている。俺は恐怖に飲み込まれていた。戦う前から、いや、相手に遭遇する前から…なんだ、コイツ?
一歩ずつ踏み出す。その度に心臓が潰れそうに感じる。何て言うプレッシャーだ…こんなヤツを団長は倒したのか…たぶん、一人で…
L字に曲がった廊下を右に曲がる。息をするのも苦しくなっていく。こんなんで戦えるのか?その時に閃きにも似た記憶が甦ってきた。
団長はあるヤツと戦う為、普通の生物を辞めた。コイツじゃないのか…戦闘特化生物…戦う為の機能だけを残し、後は総て捨てた化け物である。
廊下の行き止まりに扉があった。これを開ければ、戦闘開始だろう。俺は生きて帰れるのか?
『あの時、アイツは、生きて帰ることは考えていなかった。アイツは俺達の世界を護ることだけしか考えていなかった。お前に、その覚悟があるのか?行って来い!地獄へ♪』
次の瞬間俺は、戦闘フィールドにいた。目の前には見た事のない化け物がいた。首が10本ある…そうか。こいつがトライヘキサのダミー体かぁ。10本の首の先にある頭部が、俺を叩きに迫ってきた。避ける…しかし、口からブレス攻撃の洗礼。それも10種類のブレスが俺を襲う。
『ドラゴンブレイカー』
ドラゴンの力を覚醒して、防御力を上げる。ブレス攻撃に対する耐性が上がったようで、ダメージが少ないが、素早さが失われ、頭部が直撃してきた。ドラゴンの身体なのに、激痛を感じる。ドラゴンオーラ弾を撃ち込むが、効果が無いようだ。どうすれば、倒せるんだ?
ブレス攻撃によるダメージが蓄積されていく。主に酸系がドラゴンの皮膚を傷だらけにして、毒系が体内を蝕んでいく。マズい…ただでさえ、あのオーラで体内のダメージが大きいのに…
俺からもブレスを叩き込むが、まるで効果が無い。どうすればいいんだ?
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気が付くと病院にいた。
「まだ、あきらめていなかったのね…」
リアスが呆れたように言う。
「俺はどうなったんだ?」
「ゲームオーバーで、カプセルから緊急脱出させられたそうよ」
俺はVR世界で死んだのか…
「もう、無理はしないで。ねぇ、お願いよ!子供がもうすぐ産まれるの。傍にいて欲しいのよ」
リアスが俺に縋る。リアスの手は小刻みに震えていた。恐いのだろう。俺も恐い…あんな化け物にどう戦えばいいんだ?
「この世界で最強なら、それでいいでしょ!」
リアスがキレたように言う。だけど…だけど、その目には涙が溜まっている。悔しいのだろうか。俺がヘタレだから。
「ヘタレでもいいのか?」
「それがイッセなら、しょうが無いでしょ…」
リアスを引き寄せ、抱き締めようとする。
「ダメ!子供が潰れちゃうよ~。あんた、父親の自覚ってあるの?」
あ…また、子供の存在を忘れていた。
「そこがダメなんだよ。あの鬼は子供に優しい。私を抱き締めようとしない。ソーナすら抱き締めない。産まれた後の楽しみってね♪」
いや、産まれた後もダメだって…
「イッセは子供の未来を護る覚悟は無いんでしょ?私だけ護れればいいんでしょ?私だけを愛せればいいんでしょ?」
それではダメなのか…子供はジャマだな…
「団長が言っていたわよ。イッセの最大の弱点はドラゴンであること…ドラゴンは卵生だから…卵を産めば、抱き合える…」
言葉が出ない。そうだ。子供がジャマでは無い、卵なら抱けるはずだ。交互に卵を温めれば良いし。俺は、愛し方がドラゴン化していることに、気づかされた。
「悪魔である私は卵を産まないのよ。だから…身籠もったら抱き合えない」
悲しそうなリアスの顔。俺は基本的なことを勘違いしていた。
「いい?ほ乳類は、産まれた後も交われないの。交わり、母体がメスになると母乳は出ないのよ。それが、何をもたらすか、判っているの?」
子供の成長に影響が出る。卵の場合とは違う。
「イッセ…私との愛し合いと子供のどっちを取るの?」
2択になるよな。う~ん…
「悩んだ時点で、イッセは負けだよ…」
負けって?え…リアスの腹回りが細くなっていく。子供は?
「もう、いらない…子供なんかいらない。イッセは私と愛し合いたいんだよね?ならば、子供はいらない」
要らないって…どこへ?
---ソーナ---
もう…リアスったら、無茶をお願いするんだものな…自分の身体を好きにしていいから、子供を借り腹でお願いって…
私のお腹には、リアスの子供も入っている。おかげで、食欲が2倍だよ。
「悪いなぁ…他に借り腹候補がいなくて」
困った顔の彼。その顔は好きだけど…これ、どうなんですか?私の体力で二人は無理な気がする。特にリアスの子供がデカいらしい。
「ドラゴンの遺伝子入りだから、成長は早いはずだ。予定日に二人同時だと思うよ」
って…痛いのは嫌いです。
「痛く無い方法で取り出す」
自分の子供だけ、痛みに耐えて産みたい。
「それは無理だな…一人だけを取り出すって難しいんだよ」
リアス…これは高く付くからね…う~ん…
「まぁ、あと二ヶ月くらい頼むよ、ソーナ♪」
「はい♪」
彼からの頼みを断れず、その上、嬉しそうに頷く私。惚れた弱みってヤツのようだ。
「で、イッセ君はどうにかなりそうですか?」
「ドラゴンとして目覚めれば…考え方がドラゴンぽくなっているよな。魔王としてどうなのって感じだな。それに、あのステージはドラゴンでは超えられないし。一番恐いのは邪龍化だな。本能だけのドラゴン…それは、もはやイッセではなくなるから」
今、イッセ君のチャレンジしているステージの攻略は、さほど難しく無いそうだ。首を10本、根気良く斬れば終わりだという。だけど、ドラゴンでは首を斬ることが難しいらしい。ドラゴンでは聖剣エクスカリバーが使えないそうだ。ドラゴンの手の平は、聖剣を握れる仕様では無いのが原因だと言う。
「まぁ、気づくかどうかだな。その辺りを…」
彼は期待をしているのだろうか?
---リアス---
身体を好きにして良いとは言ったが…う~ん…どうなんだろうか?ソーナのメイドとして使われている私。特に料理だよ。私の子供が入っているので、無下な扱いは出来ない。ソーナ的には一人でも苦しいのに、貸し腹もしているから。
「苦しい?」
ソーナに訊いてみた。
「苦しいよ。お腹の中でケンカしている感じ。仲良くして欲しいなぁ~」
ドラゴンの子供と鬼の子供だ。仲良くは難しいだろうな。
「いいなぁ…リアスは。イッセ君と乳繰り愛を再開したんでしょ?」
羨ましそうに言うソーナ。種を植えて1年。身籠もって1年。母乳を与えて半年。合計2年半は出来無いようだ。そもそも、交わって出来た訳でも無いし。
「いいなぁ~」
「毎日、愛してくれているよ。でもねぇ…以前のようなイッセで無いのが、寂しいんだよ」
最凶な魔王として君臨していたイッセは輝いていた。なのに、今ではヘタレ魔王としてくすぶっている。いや、この世界において無敵なのは変わらない。だけど…
比較対象が良く無いんだと思う。最凶最悪なる鬼と比べてはいけない。アイツは上に立つなんて野望が無い、子供大好き、女体はウェルカムの性欲バカ。戦闘は護るべき戦いしかしない。イッセのように頂点に君臨するってことに、興味すら抱かない。
「最底辺を目指して、最低路線を行くって…彼の偏屈な野望は、どうにかならないのかな?」
あれを野望と言っていいのか、疑問である。アイツのドエスプレイは最低な辺りの路線を行くと思うし。
「今でも鍛錬はしているみたいだよ。もっと強くなりたいって…」
最凶なる戦闘生物は、まだ強くなるのか?確かに、前回の作戦で多くの仲間と娘さんを失ったのが原因であると思う。うちのボンクラ亭主がボンクラになった原因の作戦だ。
「リベンジ中だよね…手伝えることは無いかな?」
「子育て♪手伝ってね。二人は無理だよ~」
そうだね…その胸では…って、妊娠すると胸が大きくなるのでは?私の一番の疑問はそれであった。大丈夫か、ソーナの胸…二人分っていうか一人分の母乳すら出ないのでは…