「あの野郎、どこ行きやがったんだよ。銀時……。」
あの風来坊が姿を消して、1ヶ月。今まで、危ない依頼とかで居なくなることはあった。けど、俺には一言言って行ってたし、連絡もあった。なのに、何もないのは今回が初めてだった。
「ニ゛ャ゛~」(土方いる?)
そんな折、1匹の猫が迷い混んできた。閉めるのが面倒で開けっ放しにしていた襖から鈍いダニ声で、ノコノコとやって来てちょこんと胡座を組んでいる所に登りそこで寝始めた。真っ白の毛、アイツみたいに癖っ毛でふわふわの毛並み。アイツの髪みたい。触っていて気持ちいい。
「いつまで居るつもりなんだ?お前。」
猫を触りながら、問いかける。返事なんてないけど……。
「お前が、銀時なら良かったのにな。」
「……」(俺なんだよ?トシ…)
見上げると今にも泣きそうな顔をしていた、トシ。
「ニ゛ャ゛~ニ゛ャ゛~」(俺ここに居るから、泣かないでよ。)
いくら鳴いても、人間の言葉は喋れなかった。
1ヶ月前、トシが2ヶ月ぶりにやって来た。俺が、玄関を開けると乱暴にkissされた。前もって電話があったから、彼奴が前に好きだって言ってくれた包み焼きハンバーグ(隠し味にはマヨネーズを使っていて)を作って他にも彼奴の好きな物ばっかり作っていて、ご飯食べてゆっくりしてから………シようと思っていたのに……。玄関で押し倒されてそのままそこでやられて、布団に行ってからも乱暴にされた。トシから血の臭いがしたから誰かを斬って来たんだとわかった。別にその事については、なんとも思わないし怒ることもないけど……乱暴にされ何回もやられて、風呂から上がった後もまたシようとしてきたから頭に来て……そのまま喧嘩。結局、トシのために作った料理は食べて貰えず万事屋をトシは無言のまま出ていった。
翌日、理由はわかないが朝起きたら猫になっていた。神楽たちが来る前に机に置きっぱなしになって冷たくなった料理を食べ、家を出た。
どうしようか悩んで歩いていたら、自然と屯所に足が向いていた。トシの部屋に行き、膝の上に乗ったら以外にも撫でてきて、“ギン”という名前を貰った。
最初の頃は、キャットフードを持ってきたけど俺が食べないと、煮魚とか自分の食べかけのご飯(マヨネーズのかかっていない所)をくれた。
「ギン。行こうか?」
トシが俺を呼ぶ、昔の事を思い出していてすぐに反応できない。
「ニ゛ャ゛~」(行く~)
俺は最近、トシと見回りに行ってる。なんでも、沖田くんの差し金で最初行ったら、子どもや女の人の受けが良かったからってことで局長命令が出たのだ。いわゆる、マスコットみたいなものらしい。最近、鬼の副長が丸くなったって噂されてる。
まぁ、俺もこいつがこんなにも笑うなんて知らなかった。
「来ねぇと、置いてくぞ。」
自分の姿が写るガラスに見とれていた。
「ニ゛ャ゛~」(待って~)
俺が、駆け寄ると抱っこされた。
「ニ゛ャ゛!!」(痛゛っ゛!!)
子どもから尻尾を引っ張られた。途端にトシの背中に爪を立てた。トシが、子どもを注意しながら尻尾を撫でてくれた。徐々に痛みが薄れていく。
「大丈夫だったか?……もう、帰ろうか。」
「ニ゛ャ゛」(帰る)
俺が鳴くと、“後で怪我してないか診てやるからな”と言われた。銀時の時は、心配なんてしてくれなかったのに……。腰が痛いって言っても止めてくれなかったのに。
最近、銀時って言うこともなくなった。万事屋に行くことも……俺は、トシに愛されてなかったの?
新しい恋人がいる訳じゃないけど、探している気配もないと不安で仕方がない。
俺は、トシの恋人じゃなかったのかなぁ?
「いいぞ。舐めるなよ?」
考え事していたら、いつの間にか屯所に帰っていて尻尾の付け根に薬を塗ってくれた。
「ちょっと、会議あるからここに居ろよな。」
頭をクシクシ撫でて、部屋を出ていった。
トシの机の前にある座椅子。ここが俺の指定席。ちょこんと座ると、今までなかったダンボールが机の下分かりにくいところにあることに気づく。
(なんだろう?)
爪を引っ掻けて引っ張り出した。ご丁寧にガムテープまでしていて中身がわからない。ガリガリと引っ掻いてダンボールに穴を開けると、俺の………銀時の写真がいっぱい出てきた。
(へぇ?)
神楽たちも含めて撮った“家族写真”、俺は嫌がったのに無理矢理とられた事後の写真。それと、小さい箱。開けると、指輪が出てきた。
トシは、これを捨てようとしてるの?俺の事を無かったことに………トシに必要なのは、“銀時”じゃなくて“ギン”なの?
…………俺は、その小さい箱をくわえ屯所を飛び出した。
走って、走って、走って、走って、どこまで来たかわかんない。けど、たぶん屯所からはそんなには離れてないと思う。川原に座り、川を見てるとトシの声がした。
振り返ると、トシが血相を変えて近づいてきた。
「ギン、待ってろって言ったろ。あんな悪戯して、これも返せ。」
指輪の入った小さい箱を、取り上げられてしまう。なんで、返せなんて言うだよ。思わず、トシの手の甲を引っ掻いた。
「痛っ!」
慌て駆け寄る。今まで、トシに好意的には引っ掻いたことなくて……。
「大丈夫だよ。」
頭を撫で、俺の隣に座った。
「これはな、お前のじゃなくて銀時のなんだよ。」
小さい箱を開けて、指輪を見つめながら言う。
「1ヶ月前……銀時が居なくなる前の日、銀時と会ったんだ。というか、押し掛けたに近いけど……。あの日、大掛かりな捕り物があって、言い訳になるけどその前の日まで徹夜してて斬りかかって来られてるのに気づくのが遅れて、次の瞬間目の前に血が飛び散った。俺のでも、攘夷志士のでも無かった。まだ、入って間もない隊士の血だった。そのまま、その子は死んで………。
親に会いに行ったら、“こんな仕事してるんだから、仕方がない。”って“貴方のせいじゃないから……”ってそんなこと言われても嬉しくなかった。責められる方がよっぽどましだった。
気が付いたら、万事屋に行ってて銀時のこと乱暴に抱いてた。そんなことするつもり無かったのに……」
俺を膝の上に乗せて、遠い目で話してるトシ。俺の鼻先に冷たいのが当たった。見上げると、トシが泣いていた。
俺の事、嫌いになったんじゃぁ?全部、俺の想い出ごと捨てようとしたんじゃ……。
「ニ゛ャ゛~ニ゛ャ゛」(俺なんて要らないんじゃないのかよ?)
トシの方を向く。
「ゴメン。こんな話、猫のお前に言ったって仕方ないのにな。」
(なんで戻れないんだろう?トシと喧嘩したから?戻りたいよ……)
頬に温かいものを感じた。トシにkissされてる。徐々に口の方へ動いてきて、猫の俺の口に柔らかく少しかさついた唇が触れた。ほんの少しの時間のkiss、けど長く感じた。それは、猫になったからだと思う。
「ごめんな、ギン。」
ポッンっと白い煙がたち、トシがキョトンとして見つめてる。
「なに?………へぇ?喋れてる?」
身体を見ると、人間に戻っていた。
「銀時?え?なんで?」
「俺だってわかんねぇよ。朝起きたら、猫になっててトシんとこ行ったら俺飼われちゃったし。あんなに猫好きなんて知らなかった。」
「んなんじゃねぇよ。バカ、あんま心配させんな。」
強く俺を抱き締めてきた。
「なんだよ。俺の事嫌いになったんじゃ……?写真、箱に詰めてたし捨てる気満々だったじゃん。」
少し怒り気味に言う。
「あれは、捨てるためじゃなくてアルバムに入れてたんだけど、足りなくなってその辺に置いてたらギンがってお前だけど、汚すと思ったから箱に詰めただけ……。そんなに、膨れんなって……。それと、ホテル行かねぇ?」
「なんで、ホテルに行くんだよ?」
「久しぶりだから、シたいに決まってるだろ?危うく、ギンを犯そうかと思ったぐらいなのに……」
「へ、へんた~い!!」
青空に俺の大声が、響いた。